新興株ウィークリー

東証1部昇格期待のマザーズ銘柄はコレ!?

2020/6/17
投資情報部 長谷川 稔

株式相場は6月上旬までの上昇相場が一段落した後は、新型コロナウイルスの第2波問題が浮上し、非常に不安定な値動きになっています。これまでのSARSやMERSのように、すっきりと感染が収束という形にならないのが今回の新型コロナウイルスの特徴なのでしょうか。日本では6/19(金)からプロ野球が、6/26(金)には女子のプロゴルフ、7/4(土)からはサッカーのJリーグが、いずれも無観客試合を前提に行われる予定です。早くスポーツを含む各種イベントが、観客を入れてできるようになると良いのですが。

今回の「新興株ウィークリー」は、マザーズから東証1部への昇格が期待できそうな銘柄をピックアップしてみることにしました。新興株式市場に上場している企業の多くが、将来の東証1部への昇格を目指しています。投資家の立場からも、東証1部への昇格は株式の流動性が高まる上、TOPIXに連動する投資信託やETFがその昇格銘柄をポートフォリオに組み入れる必要が出てくるなど、需給面でのプラスが期待できます。また、東証1部への昇格には企業の成長、収益の向上が条件となりますので、優良企業の証でもあるわけです。マザーズから東証1部に昇格が決まると多くの場合株価が上昇するのは、そうした背景があります。

皆さまの銘柄選択の際のご参考にしていただければ幸いです。

今回のポイント

1.東証1部への指定替えは、マザーズ銘柄に有利なルール

新興株式市場の銘柄が東証1部銘柄へと昇格していくコースは、主に以下の4通りとなっています。

(1)東証2部→東証1部
(2)マザーズ→東証1部
(3)東証JASDAQ→東証1部
(4)東証JASDAQ→東証2部→東証1部

このうち、一番多く見られるケースは(2)の「マザーズ→東証1部」のパターンです。これはそもそも、マザーズの位置付けが「東証1部へのステップアップを視野に入れた成長企業向けの市場」となっているためです。このためマザーズから東証1部市場への昇格基準のひとつである時価総額については40億円以上と、東証JASDAQから東証1部への移行に必要な250億円と比べハードルが大変低くなっています。

また、マザーズ上場銘柄は上場から5年経過するとマザーズへの継続上場か東証2部への市場変更かのいずれかを選択しなければなりません。マザーズでの上場継続を希望する場合は、東証に対し「高い成長可能性」に関する説明書の提出が必要となります。マザーズ市場の活性化のために取られている処置といえましょう。

マザーズから東証1部への昇格は、上場してから1年以上経過することが条件となっています。つまり、マザーズに上場してから最短で1年を経過した企業は、必要な条件を満たせば、東証1部へ昇格できることになります。東証1部への昇格を実現する企業への投資は、まずその企業が順調に成長し企業価値を高めている証明である上、東証1部への移行自体がその銘柄の投資家の関心を今後さらに集めることにつながる(TOPIXに採用、機関投資家がポートフォリオに組み入れるなど)ため、大変有効な手段だと思われます。

直近でマザーズから東証1部への昇格の発表があった2銘柄のチャート(図1および図2)を見てみましょう。4/28(火)に市場変更されたプロレド・パートナーズ (7034)、4/9(木)に市場変更されたオイシックス・ラ・大地 (3182)は、いずれも東証から昇格の発表があった日の直後に株価は上昇しています。

また、6/16(火)に東証1部昇格予定を公表したミクシィ(2121)は、6/17(水)の前場取引中の段階で前日比約15%の急騰となっています。

直近で東証1部へ昇格した銘柄のチャート

図1 プロレド・パートナーズ (7034)

図2 オイシックス・ラ・大地 (3182)

※図1、図2ともに当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。

2.東証1部昇格期待のマザーズ銘柄はコレ!?

マザーズから東証1部市場への指定替え基準は、下記のような形式基準があります。

(A)株主数2,200人以上
(B)流通株式数2万単位以上
(C)時価総額40億円以上
(D)純資産額10億円以上
(E)直近2年間合計の経常利益5億円以上または時価総額が500億円以上
(F)直近2年間の有価証券報告書に虚偽記載がないこと

下の表1は、2017年から2019年7月までにマザーズに新規上場した銘柄のうち、上記条件の(A)、(C)、(D)、(E)、(F)を満たす銘柄を上場年月日の新しい順に並べたものです。この銘柄群の中から年内までに東証1部への指定替えを申請する企業が出てくる可能性が大きいと思われます。

ここでは、計算が複雑になる(B)の流通株式のスクリーニングは行いませんでした。また、(E)の「直近2年間」については、対象を「直近実績1年と予想1年」としました。最後に肝心なことは、「指定替え」はあくまでも企業の「申請」によるものです。企業が望まなければ、東証1部への「指定替え」は実現しないことになります。

なお、東証は現在、東証1部市場のあり方の見直しを進めています。東証1部市場の上場企業数が全上場会社の6割近くを占めるまでに「肥大化」したことが背景です。2022年4月に新市場区分(プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3区分か)への移行が完了する予定です。主要市場となるプライム市場へ区分されるためには、現行基準の東証1部へ移行しておくことが有利になるため、現在新興市場に上場している企業にとっては、制度が改正される前に東証1部上場を目指す、いわば駆け込み的な動きが見られるのではないでしょうか。

表1 東証1部昇格が期待されるマザーズ銘柄はコレ!?

取引 チャート

ポート

フォリオ

コード 銘柄名 株価(円)
6月16日
上場日 事業内容
注目点
4931 4931 4931 4931 新日本製薬 1,682 2019/6/27 基礎化粧品のファブレスメーカー
7061 7061 7061 7061 日本ホスピスホールディングス 1,800 2019/3/28 終末期ケアのホスピス住宅運営
4436 4436 4436 4436 ミンカブ・ジ・インフォノイド 1,354 2019/3/19 株式情報メディア運営
4431 4431 4431 4431 スマレジ 3,320 2019/2/28 スマホ使用のPOSレジアプリ
7047 7047 7047 7047 ポート 830 2018/12/21 就活とカードローンのネットメディア
9279 9279 9279 9279 ギフト 1,354 2018/10/19 横浜家系ラーメンチェーン運営
4395 4395 4395 4395 アクリート 847 2018/7/26 企業から個人向けSMS配信代行
4393 4393 4393 4393 バンク・オブ・イノベーション 1,828 2018/7/24 スマホゲームアプリの開発・運営
4390 4390 4390 4390 IPS 2,384 2018/6/27 通信回線提供、フィリピンに強み
4385 4385 4385 4385 メルカリ 3,175 2018/6/19 フリマアプリの国内最大手
6568 6568 6568 6568 神戸天然物化学 1,602 2018/3/15 有機化合物の受託研究・開発など
3446 3446 3446 3446 ジェイテックコーポレーション 2,405 2018/2/28 研究施設向け高精度X線集光ミラー
6556 6556 6556 6556 ウェルビー 1,403 2017/10/5 障害者向け就労支援、職業訓練
3993 3993 3993 3993 PKSHA Technology 2,937 2017/9/22 深層学習などAIアルゴリズム開発
3990 3990 3990 3990 UUUM 2,626 2017/8/30 YouTuberの制作サポート

※表1は東証資料等よりSBI証券が作成。

それでは表1で抽出された銘柄群のうち数銘柄について、チャートと注目ポイントを簡単にご紹介したいと思います。

ミンカブ・ジ・インフォノイド(4436);2019年3月にマザーズに上場しています。2007年に開始したソーシャルメディアサービスの「みんなの株式」、「株探」などが事業基盤となっています。株価診断にいち早くAIを活用するなどの新しい試みが注目されます。株式だけではなく保険、外国為替、仮想通貨などへのサービスエリアの拡大に加え、金融機関向けソリューションサービス提供など、事業分野の拡大が見込まれます。業績はエリア拡大によるユーザー数の増大から、広告収入が拡大しており好調です。前期の経常利益は2.4倍増(ただし前々期は単体、前期は連結との比較)、今期も34.9%増益を会社側は想定しています。

スマレジ(4431);2019年2月にマザーズに上場しています。文字通りスマホを使ったPOSレジアプリのクラウドサービス事業を行っている会社です。飲食店向けのオーダーエントリーシステムや勤怠管理システム、給与計算システムなども提供しています。大手以下の小売、外食、流通業向けが主要顧客です。顧客数の拡大に加え、消費増税時の軽減税率導入が追い風となっています。2020年4月期決算は83.9%経常増益と好調でした。今期は新型コロナウイルスの影響が特に1Qに顕著となる見込みで、会社側は9.7%の経常減益予想と慎重ですが、息の長いキャッシュレス関連銘柄としても注目されます。

ジェイテックコーポレーション(3446);2018年にマザーズに上場しています。産学連携のベンチャー企業として創業した会社です。収益の主力は、放射光施設(生命科学や先端材料の構造解析などに利用)等で使用されるX線ナノ集光ミラーの製造です。ミラーの表面をナノレベルの精密度で仕上げることができる製造工程(世界で同社のみが有する化学処理技術)に強みがあります。このため、世界の最先端放射光施設ではほとんどが同社の製品を採用しています。このほかでは、自動細胞培養装置が注目されます。研究用途だけではなく、今後はiPS細胞など治療用の用途での需要拡大が期待されるためです。この分野では同社が60%のシェアを持ちトップです。自社開発した浮遊培養制御と呼ばれる方式ですが、細胞を傷つけにくく、生産性が高いのが特徴です。ただし、2020年6月期の業績は新型コロナウイルスの影響で、ミラーの受け入れ施設の計画の遅れから会社側は前期比39.1%経常減益を想定しています。

ウェルビー (6556);2017年にマザーズに上場しています。就労を希望する障害者に対して、職業訓練・求職活動・職場定着支援を行っている会社です。これまでは首都圏周辺の比重が高くなっていましたが、全国展開を進めており、就労移行支援事業所の「ウェルビー」は、2020年3月末で71事業拠点を有しています。障害者の就労は政府の重要な施策となっているうえ、同社独自の要因として全国展開の進展により、高い成長が期待できそうです。拠点拡大を背景に、業績は前期が19.4%経常増益(前々期は単体決算、前期は連結決算との比較)、今期の会社側予想は11.0%経常増益と順調な拡大を見込んでいます。

UUUM(3990);2017年にマザーズに上場しています。YouTuberの制作サポート事業を展開しています。動画視聴数連動のアドセンス、広告収入が経営の柱です。同社の強みは、「はじめしゃちょー」、「HIKAKIN」などの人気専属YouTuberを多数そろえていることです。新領域としては人気インスタグラマーによる動画広告の制作サービスも手がけています。日本の動画広告市場はTV市場に比べ10%未満程度と小さく、成長余地は高いと見られます。世代が若いほど動画メディアはTVからYouTubeへシフトしている点が強みです。2020年5月期の業績は、新型コロナウイルスの景況によるイベントの中止、広告出稿の減少などで、前期比24.6%経常減益の見通しですが、今後は経済活動の再開で持ち直す可能性があるのではないでしょうか。

図3:ミンカブ・ジ・インフォノイド(4436)・日足

図4:スマレジ(4431)・日足

図5:ジェイテックコーポレーション(3446)・日足

図6:ウェルビー (6556)・日足

図7:UUUM(3990)・日足

※図3から図7は、当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。

  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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