新興株ウィークリー
テンバガー期待の"反発の芽"とは!?2021年後半に逆転期待の10銘柄
投資情報部 鈴木 英之
足元の東京株式市場では新興市場が底固い動きとなっています。
特に東証マザーズ銘柄の値上がりが目立ち、時価総額トップのメルカリ(4385)や、健康美容機器のファブレスメーカーであるMTG(7806)が上昇しました。
このように、事業素質等を期待された銘柄が、業績悪等により急落したものの、当初投資家が抱いた期待が“本物”であったことが、業績回復や株高によって“証明”されることもあります。
こうした銘柄に投資することができた時、その銘柄は大きく下落した分、反発余地が大きく、スケールの大きい上昇相場が期待できるとみられます。
そこで今回は、6/29(火)時点の株価が、52週高値から大きく下げた新興市場銘柄のうち、“反発の芽”が感じられる10銘柄をピックアップしました。
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■執筆者のプロフィール
SBI証券 投資情報部長 鈴木 英之
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロ(牧野真莉愛推し)の応援と旅行(のりテツ)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・好きな場所 秋葉原
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
今回のポイント
1.東証マザーズ銘柄が強い
6/22(火)~6/29(火)の主要株価指標の騰落率は、日経平均株価が-0.2%、TOPIX-0.5%、日経ジャスダック平均+0.9%、東証マザーズ指数+3.0%と、東証マザーズ指数の上昇率が他の主要株価指標よりも大きくなりました。
米国では、長期金利が心理的節目の1.5%をたびたび下回り、マイクロソフトなど主力ハイテク株が上昇。ナスダック指数は連日で最高値を更新する展開となりました。その流れを受け、日本でも成長期待の高いIT関連銘柄の多い東証マザーズ指数が、他の指数に対して優位となりました。
また、東証マザーズ指数は、6/16(水)から6/21(月)にかけての下げが他の指数に比べ、相対的に大きかったこともあり、反発場面での上昇率が大きくなった側面もあるようです。
個別銘柄では、新興市場全体で時価総額トップのメルカリ(4385)が大幅高となり、東証マザーズ市場のけん引役となりました。なお、同社は6/23(水)取引終了後、2021/6期(通期)の予想営業利益を「-15億円~15億円」から「45億円」に大幅上方修正。それが好感される形で、6/24(木)~6/28(月)に16.2%上昇しました。
また、ワークマン(7564)やハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)も堅調です。
ジャスダック平均の値動きは、東証マザーズ指数に比べると穏やかですが、根強い景気回復期待を背景に、およそ3年ぶりの高値水準を回復。特にジャスダック市場の時価総額上位に買いが入りやすくなっています。
健康美容機器のファブレスメーカーであるMTG(7806)は大幅高となりました。6/14(月)から6/29(火)にかけて12連騰し、この間の値上がり率は37.1%に達しました。
株価は5/17(月)をボトムに上昇基調となっていましたが、5/26(水)に自社株買いを発表し、流れが一転。こうした中、6/14(月)に電流で筋肉を鍛える「シックスパッド」について、洗濯可能な新商品を発表したことがきっかけで連騰となったようです。
図表1 日経ジャスダック平均と東証マザーズ指数の推移
図表2 主な新興市場銘柄の値動き
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価(6/29) | 6/22比 | 20/12末比 |
4385 | メルカリ | 東証マザーズ | 5,930 | +15.1% | +29.6% |
7564 | ワークマン | ジャスダックS | 8,090 | +7.9% | -8.1% |
2702 | 日本マクドナルドホールディングス | ジャスダックS | 4,945 | -0.1% | -1.1% |
6324 | ハーモニック・ドライブ・システムズ | ジャスダックS | 6,020 | +4.0% | -34.7% |
4478 | フリー | 東証マザーズ | 9,970 | +1.7% | -1.3% |
4816 | 東映アニメーション | ジャスダックS | 12,610 | +1.3% | +55.9% |
2782 | セリア | ジャスダックS | 4,100 | -0.7% | +8.2% |
4483 | JMDC | 東証マザーズ | 5,200 | +1.8% | -11.0% |
7716 | ナカニシ | ジャスダックS | 2,380 | -1.0% | +5.1% |
4194 | ビジョナル | 東証マザーズ | 6,200 | -2.1% | - |
【ご参考】 | 日経平均株価 | - | 28,812.61 | -0.2% | +5.0% |
TOPIX | - | 1,949.48 | -0.5% | +8.0% | |
日経ジャスダック平均 | - | 3,986.48 | +0.9% | +7.2% | |
東証マザーズ指数 | - | 1,205.54 | +3.0% | +0.8% |
図表3 6/22(火)~6/29(火)の株価上昇が大きかったおもな新興市場銘柄
コード | 銘柄名 | 市場 | 株価(6/29) | 6/22比 | 20/12末比 |
7806 | MTG | 東証マザーズ | 2,211 | 27.0% | 95.3% |
7094 | NexTone | 東証マザーズ | 4,025 | 23.3% | 59.3% |
6521 | オキサイド | 東証マザーズ | 9,780 | 19.9% | - |
2158 | FRONTEO | 東証マザーズ | 1,227 | 19.6% | 98.9% |
4883 | モダリス | 東証マザーズ | 1,779 | 17.1% | -19.6% |
4385 | メルカリ | 東証マザーズ | 5,930 | 15.1% | 29.6% |
4431 | スマレジ | 東証マザーズ | 6,520 | 13.2% | 17.7% |
4176 | ココナラ | 東証マザーズ | 2,192 | 11.0% | - |
3966 | ユーザベース | 東証マザーズ | 2,649 | 8.6% | -26.0% |
4051 | GMOフィナンシャルゲート | 東証マザーズ | 21,480 | 8.6% | 25.5% |
2.2021年後半に逆転期待の10銘柄
事業素質などから期待され、株価が大きく上昇した銘柄が、業績の悪化などにより急落し、低迷が長期化するケースは珍しいことではありません。こうした中、当初投資家が抱いた期待が“本物”であったことが、業績回復や株高によって“証明”され、スケールの大きい上昇相場となる銘柄もあります。
例えば、メルカリ(4385)は新興市場を代表する銘柄のひとつですが、赤字が先行したこともあり、株価は一時、上場直後の高値から74.1%も下げた時期もありました。その後は実質的に高値を更新し、現在は次の高値をめざす過程と考えられます。
また、MTG(7806)も2019/9期に、営業赤字144億円を計上するなど、業績が大きく落ち込み、株価も上場来高値から93.5%下げたこともありますが、その後持ち直しました。
なお、メルカリ(4385)は大きく下落した後の安値から一時は同3.9倍、MTG(7806)は同4.8倍になりました。
元の株価が10倍に跳ね上がることを“テンバガー”と言いますが、事業素質がありながら急落した銘柄を見つけ出すことこそ、“テンバガー”への意外な近道になるかもしれません。
そこで今回は、6/29(火)時点の株価で、52週高値から大きく下げた新興市場銘柄のうち、“反発の芽”が感じられる10銘柄をピックアップしました。
選定条件は以下の通りです。
(1)東証マザーズ市場、またはジャスダック市場に上場している銘柄であること。
(2)時価総額300億円以上の銘柄であること。
(3)広義の金融以外の業種であること。
(4)定量的に“反発の芽”が存在するとみられる銘柄であること。
これらの条件を満たす銘柄について、52週高値からの下落率が大きい順にピックアップしたものが図表4です。
そのほとんどが東証マザーズ銘柄でした。投資家の皆さまが“反発の芽”は実際に“花開く”と期待できる銘柄があれば、中長期的に分散投資を行ってみるのも、ひとつの方法かもしれません。
図表4 2021年後半に逆転期待の高い10銘柄
取引 | チャート | ポートフォリオ | コード | 銘柄 | 市場 | 株価(6/29) | 52週高値株価 | 騰落率(52週高値比) | “反発の芽” |
4485 | 4485 | 4485 | 4485 | JTOWER | 東証マザーズ | 5,420 | 13,050 | -58.5% | Q4営業利益が2.4倍 |
4056 | 4056 | 4056 | 4056 | ニューラルポケット | 東証マザーズ | 4,640 | 10,850 | -57.2% | Q1営業利益が237%増 |
4053 | 4053 | 4053 | 4053 | Sun Asterisk | 東証マザーズ | 2,159 | 4,765 | -54.7% | Q1営業利益が39%増 |
3914 | 3914 | 3914 | 3914 | JIG-SAW | 東証マザーズ | 9,320 | 18,670 | -50.1% | Q1営業利益が56%増 |
2160 | 2160 | 2160 | 2160 | ジーエヌアイグループ | 東証マザーズ | 2,106 | 4,070 | -48.3% | Q1営業利益が85%増 |
4165 | 4165 | 4165 | 4165 | プレイド | 東証マザーズ | 2,789 | 5,080 | -45.1% | 営業利益は通期計画達成か |
4308 | 4308 | 4308 | 4308 | Jストリーム | 東証マザーズ | 3,765 | 6,840 | -45.0% | Q4営業利益は2.5倍 |
6612 | 6612 | 6612 | 6612 | バルミューダ | 東証マザーズ | 6,310 | 10,610 | -40.5% | Q1営業利益は前Q比14%増 |
3966 | 3966 | 3966 | 3966 | ユーザベース | 東証マザーズ | 2,649 | 4,445 | -40.4% | Q1営業利益は10億円増加 |
6324 | 6324 | 6324 | 6324 | ハーモニック・ドライブ・システムズ | ジャスダックS | 6,020 | 9,510 | -36.7% | 今期営業利益は66億円予想 |
JTOWER(4485) 屋内携帯インフラの構築を一本化。大手通信事業者と提携し、さらなる飛躍か。
■屋内携帯インフラの構築を一本化
2019/12に、東証マザーズに上場。
中心は国内IBS(イン・ビルディング・ソリューション)事業です。これまで携帯事業者各社が単独で行ってきた屋内携帯インフラの構築を、独自開発した共用設備で一本化します。
なお、2020/11には、5Gに対応したインフラ・シェアリング・ソリューションを、東京都庁において、携帯電話事業者向けに国内で初めて提供しています。
2021/3期の連結業績は、売上高35億円(前期比36.9%増)、営業利益4.2億円(前年同期は6,900万円)。国内IBS事業における新規導入物件数が順調に推移。66物件への新規導入が完了し、累計導入済み物件数は227件となりました。
2022/3期の連結業績予想は、売上高46億円(前期比31.4%増)、営業利益2.6億円(同37.9%減)としています。市場コンセンサスでは営業利益が今期3.3億円、2023/3期10.8億円、2024/3期20.8億円、2025/3期30.7億円と拡大する見込みです。
■大手通信事業者と業務・資本提携し、さらなる飛躍へ
2021/5/14(金)、KDDI(9433)との間で資本業務提携契約を締結すること、およびKDDI、日本電信電話(NTT)(9432)に対し第三者割当による新株発行を行うことを発表しました。
KDDIとは、(1)インフラシェアリング推進、(2)IBS・ルーラルタワー、スマートボール等の展開計画の精度向上、(3)技術支援・ノウハウ共有などについて協議していく方針。第三者割当はKDDI、NTTそれぞれに55万3,473株を割り当て(1株発行価額6,640円)、約73億円を調達しました。なお、NTTは同社の既存株主であり、2019/7に資本業務提携契約を締結しています。
第三者割当による希薄化懸念もあり、株価は「ダメ押し」を入れた形ですが、大手通信事業者との提携の意義は大きそうです。市場コンセンサス通り、業績拡大シナリオが実現する方向となれば、反発に転じそうです。
ニューラルポケット(4056) AI(人工知能)アルゴリズムを独自開発
■AI関連。第1四半期は好調なスタート
2020/8に、東証マザーズに上場。
独自開発のAI(人工知能)アルゴリズムに基づいた画像・動画解析と端末処理技術を軸に、各種のソリューションを提供しています。
主にスマートシティ関連サービス、サイネージ広告関連サービス、ファッショントレンド解析サービスを展開。受託開発をせず、自社AIを複数のサービスに展開することで、開発費、人件費の抑制を図っています。
2021/12期第1四半期(1~3月)は、売上高2.9億円(前年同期比76.4%増)、営業利益は8,500万円(同3.4倍)でした。「人流・防犯」、「駐車場・モビリティ」、「3D都市マップ」、「在宅勤務支援」、「ファッション解析」をはじめ、スマートシティを形成するサービスを独自に開発し、提供を進めました。
2021/12期(通期)は、売上高12.6億円(前期比64.7%増)、営業利益は3.8億円(同2.2倍)を計画しています。
■株価は大きく下落後、底入れの様相
政府が進めるスマートシティ計画などに参加している他、AI搭載のドライブレコーダーの提供、AIカメラを使った駐車場管理と、新型コロナ時代に対応したリモートワーク支援サービスなどの新規事業の成長が期待されます。
株価は新規上場後の高値10,850円から2020/11には3,385円まで、一時は68.8%も下げましたが、その後は底入れの様相も出てきています。
Sun Asterisk(4053) 事業開発支援で成長
■事業開発支援で成長
2020年7月に東証マザーズに上場。デジタルを活用した新たな事業開発を行うクリエイティブ&エンジニアリングサービスと、人材紹介のタレントプラットフォームサービスが両輪です。
クリエイティブ&エンジニアリングサービスでは、専門チームが顧客の事業アイデア創出からプロダクト開発までを支援。ベトナムのハノイ、ダナン、ホーチミンに拠点を持つ子会社を活用したグローバルITチームが顧客のニーズに合わせた素早いプロダクト改善を実施し、成長プロセスを高速で実行することで事業価値の最大化を目指します。
また、タレントプラットフォームサービスでは、デジタライゼーションを促進する人材の育成と、就職の支援を手掛けます。
■第1四半期好調なスタートで割安感も
2021/12期・第1四半期の営業利益は前年同期比39.2%増となり、24.2%増益を見込む通期計画に対して好調にスタート。
主力の事業開発支援への引き合いは活発なようです。
市場コンセンサスでは2021/12期に前期比38%の営業増益後、2022/12期、2023/12期ともに20%超の営業増益が予想されています。
株価は2020年8月高値から、6/21(月)に58.7%下落し、一時2,000円を割り、底値固めのような展開になっています。
2023/12期の予想EPSは45円前後で、東証マザーズ市場の情報・通信株としては割安感が強いと考えられます。
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- ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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