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 ~上海コンテナ運賃指数の上昇で海運が堅調、バフェット氏はBYD株を売るのか~

2022/7/22
投資情報部 李 燕

7/14-7/21の香港市場は続落しました。ただし、主要指数の下げ幅は前週より縮小しました。中国の不動産市場をめぐる不安とロックダウン懸念が引き続き、相場の重石となりましたが、売り圧力は幾分和らいできました。

今回は、上海コンテナ運賃指数の動向と、バフェット氏のBYD株売り観測をめぐる動きをご紹介します。

図表1 ハンセン指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

注:7/21(木)までのチャートです。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成。

図表2 香港市場の業種別指数の推移(2021年12月31日=100として指数化)

注:業種別指数はハンセン総合指数のサブ指数です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

図表3 香港市場の個別銘柄の騰落率と関連ニュース等(7/21(木)までの騰落率)

ハンセン指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00316 東方海外 13.1% 7.4% 27.1% 海上貨物輸送を手掛ける。米国西海岸や欧州での港湾混雑が報じられ、買い手掛かりとなった。
00669 創科実業 [テクトロニック・インダストリーズ] 9.3% 12.4% -18.9% 大手電動工具メーカー。中長期的な成長見通しに対し、現在の株価水準は割安だとし、大手証券が長期投資観点からの買いを推奨した。
09999 網易 [ネットイース] 8.7% 7.1% 10.6% ゲーム大手。7/25に中国本土で新しいゲームをリリースする予定となり、買われた。中国当局がオンラインゲーム承認のパイロットプログラムを拡大する意向を示したことも好感された。
03690 美団(Meituan) 4.3% -5.4% 38.2% 中国フードデリバリー最大手。北京市が同社を含むプラットフォーム会社を通じて、7/18から累計1億元相当の飲食商品券を発行し、買い材料となった。
00386 中国石油化工 [シノペック] 3.8% 1.1% -9.9% 石油・石油化学製品大手。RSIが短期的に売られ過ぎサインとされる30まで下落した後、買いに転じた。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
00868 信義玻璃控股 [信義ガラス] -7.7% -10.7% -4.7% 大手ガラスメーカー。住宅ローン返済のボイコット事件に対する懸念が響いた。建築用ガラスの需要鈍化を織り込み、売り優勢となった。
01177 中国生物製薬 [シノ・バイオファーマ] -7.9% 5.5% 18.9% 大手医薬品メーカー。RSIが短期的に買われ過ぎサインとされる70まで上昇した後、利益確定売りに押された。
00960 龍湖集団 [ロンフォー・グループ] -11.7% -22.6% -34.1% 中国不動産大手。住宅ローン返済のボイコット事件に対する懸念が引き続き、重石となった。大手投資ファンド数社が持ち株比率を引き下げた。少数の持ち株比率引き上げもみられたが、売りが優勢となった。
02007 碧桂園 [カントリー・ガーデン] -12.2% -32.3% -40.1% 中国不動産大手。住宅ローン返済のボイコット事件に対する懸念が引き続き、重石となった。大手投資ファンド数社が持ち株比率を引き下げた。少数の持ち株比率引き上げもみられたが、売りが優勢となった。
06098 CG SERVICES -16.8% -37.6% -35.2% 不動産大手カントリーガーデン(02007)傘下の不動産サービス会社。住宅ローン返済のボイコット事件に対する懸念が引き続き、重石となった。(SBI証券取り扱いなし)

ハンセンテック指数

騰落率上位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
09999 網易 [ネットイース] 8.7% 7.1% 10.6% ゲーム大手。7/25に中国本土で新しいゲームをリリースする予定となり、買われた。中国当局がオンラインゲーム承認のパイロットプログラムを拡大する意向を示したことも好感された。
09626 ビリビリ 7.1% -5.9% 16.9% 動画プラットフォーム大手。大手証券会社が買い推奨した。VAS収入(ユーザーに対する課金など)が月次ベースで持ち直しているほか、中国当局がゲーム承認を拡大すれば収益回復につながる見通しだとした。(SBI証券取り扱いなし。リンク先は米国上場のBILIとなっています。)
00020 SenseTime Group Inc 4.4% -60.0% -51.5% AIソフトウェア大手。ロックアップ解除後、下落が続いたが、7/19に自社株買いを実施したと伝わり、買い材料となった。
03690 美団(Meituan) 4.3% -5.4% 38.2% 中国フードデリバリー最大手。北京市が同社を含むプラットフォーム会社を通じて、7/18から累計1億元相当の飲食商品券を発行し、買い材料となった。
01347 華虹半導体 [フアホン・セミコンダクター] 4.2% -3.9% -9.4% 半導体受託生産(ファウンドリー)大手。世界ファウンドリー大手のTSMCが予想を上回る決算を発表し、連れ高した。
騰落率下位
(5日)
銘柄名 騰落率
(5日)
騰落率
(1ヵ月)
騰落率
(3ヵ月)
関連ニュース等
09866 蔚来汽車 [ニオ] -6.3% -11.4% 5.2% 新興EVメーカー。中国本土でのオミクロン株「BA.5」の感染拡大を受け、ロックダウン懸念が強まり、売り材料となった。大手証券会社が猛暑により自動車販売は鈍化する可能性があると予想したことも、嫌気された。
00909 Ming Yuan Cloud Group -6.7% -35.6% -13.2% 不動産会社向けソフトウェア大手。住宅ローン返済のボイコット事件に対する懸念が響いた。(SBI証券取り扱いなし)
02015 理想汽車[リーオート] -7.7% 1.4% 48.2% 新興EVメーカー。中国本土でのオミクロン株「BA.5」の感染拡大を受け、ロックダウン懸念が強まり、売り材料となった。大手証券会社が猛暑により自動車販売は鈍化する可能性があると予想したことも、嫌気された。(SBI証券取り扱いなし。リンク先は米国上場のLIとなっています。)
09868 小鵬汽車[シャオペン] -13.1% -13.1% 2.4% 新興EVメーカー。中国本土でのオミクロン株「BA.5」の感染拡大を受け、ロックダウン懸念が強まり、売り材料となった。大手証券会社が猛暑により自動車販売は鈍化する可能性があると予想したことも、嫌気された。
06060 衆安在線財産保険 -16.7% -20.0% -12.8% オンライン保険大手。会社側が2020年上期は純損益が6.5-7.5億元の赤字になる見通しだと発表し、売られた。資本市場の低迷を受け、運用収益が減少したためと説明した。アナリストによる目標株価の引き下げが目立った。

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergをもとにSBI証券が作成。

今週の中国株市況

7/14-7/21の香港市場は、ハンセン指数が0.9%下落、ハンセンテック指数は0.1%下落しました。米国上場のADRで構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン中国指数(HXC指数)は、2.7%上昇しました。中国の不動産市場をめぐる不安とロックダウン懸念が引き続き、相場の重石となりましたが、売り圧力は幾分和らいできました。

不動産市場をめぐる不安は、住宅ローン返済のボイコット事件(※)を受けたものです。(※詳細は、外国株特集レポート「中国の不動産リスク再び、あの「恒大集団」は今どうなっているのか」をご参照願います)

不動産市場に対する懸念を受け、不動産や建築関連株が軟調でした。不動産大手のカントリーガーデン(02007)や龍湖集団(00960)がそろって大幅に下落しました。両銘柄はいずれも3月中旬に付けた年初来安値を更新しました。大手投資ファンドの売買動向を確認してみると、少数の押し目買いもみられましたが、ポジションを減らす動きの方が目立ちました。

中国当局が先週末に事件への介入を示しましたが、より具体的な支援措置を確認したいとの思惑が強いようです。また、再びロックダウンが実施されれば、不動産市場の回復はさらに時間がかかる可能性があり、警戒されました。

中国本土でのオミクロン株「BA.5」の感染拡大を受け、いくつかの都市では大規模検査を実施しています。たとえば、上海は7/19から3日間に9つの地区で検査を実施しました。それを受けロックダウン懸念が強まり、不動産のほか、自動車も軟調でした。3-5月の上海ロックダウン中は、不動産と自動車はいずれも販売が大幅に鈍化しただけに、両業種はロックダウン懸念に最も敏感な業種となっています。

自動車のうち、上海ロックダウン中に販売の鈍化が目立った新興EV3社のニオ(09866)、シャオペン(09868)、リーオート(02015)(※)の下落が目立ちました。他方、新エネルギー車最大手のBYD(01211)は小幅高となりました。上海ロックダウン中も自動車販売が堅調だったほか、大手証券会社による買い推奨も株価を下支えした模様です。(※SBI証券取扱なし、米国上場のリーオートADR(LI)は取扱銘柄です。)

なお、上海が6月にロックダウンを解除した後の動きを確認してみると、新興EV3の販売は回復し、株価も持ち直しました。したがって、ロックダウン・リスクに警戒は必要ですが、ロックダウン懸念の後退の可能性にも留意し、また何より自動車販売の実績に目を配る必要がありそうです。

一方、エネルギーや電気通信は逆行高となりました。電気通信はチャイナモバイル(00941)やチャイナテレコム(00728)が買われました。不動産市場をめぐる不安やロックダウン懸念を受けたリスク回避の動きで、ディフェンシブ銘柄に買いが入りました。

エネルギーは、中国の石油メジャー3社であるペトロチャイナ(00857)とCNOOC(00883)、シノペック(00386)が上昇をけん引しました。中国のロックダウン懸念による需要減への警戒と世界的な供給ひっ迫に対する懸念が併存するなか、原油先物価格は方向感に欠いた展開となりましたが、3銘柄の株価はいずれもRSIが短期的に売られ過ぎサインとされる30まで下落したこともあり、買いが優勢でした。ペトロチャイナとCNOOCは、それぞれ今年上期の純利益が前年同期比50-60%増、112-118%増となる見通しだと会社側が発表したことも好材料となりました。

今回のトピックス

今回は、上海コンテナ運賃指数の動向と、バフェット氏のBYD株売り観測をめぐる動きをご紹介します。

上海コンテナ運賃指数の動向

7/14-7/21の香港市場では、海上運賃の上昇期待でコスコシッピング(01919)や東方海外(00316)など海運株が上昇しました。背景として、米国西海岸や欧州での港湾混雑が報じられたからです。上海コンテナ運賃指数の動向を確認してみると、足元で米西海岸向けや欧州向けの運賃指数が小幅ながら上昇しています。

図表4 上海コンテナ運賃指数とそのサブ指数のデータ

2022/7/8 2022/7/15 前週比(%)
上海コンテナ運賃指数 3232.18 3276.85 1.4%
日本向け 1189.1 1200.30 0.9%
欧州向け 4994.35 5085.87 1.8%
米国西岸向け 2577.61 2642.41 2.5%
米国東岸向け 2959.47 2927.72 -1.1%
韓国向け 1261.68 1263.00 0.1%
東南アジア向け 1799.47 1748.99 -2.8%
地中海向け 5906.55 6012.58 1.8%
オーストラリア/ニュージーランド向け 2866.82 2878.02 0.4%
南アフリカ向け 3012.55 3083.11 2.3%
南アメリカ向け 2242.39 2314.23 3.2%
西東アフリカ向け 1661.71 1665.94 0.3%
ペルシャ湾/紅海向け 3639.88 3707.59 1.9%

※上海航運交易所のデータをもとにSBI証券が作成。

ジェトロによると、米国西海岸のロサンゼルス市港湾局は7/13に、通常は2日間で処理可能な鉄道向けコンテナの平均滞留日数が7.5日まで上昇していると指摘し、関係者に対応を呼びかけました。トラック輸送のドライバー不足やストライキの影響と指摘されています。欧州でもストライキによる影響で港湾混雑が深刻化していると報じられました。米欧の景気後退やそれに伴う貿易量の低下が懸念されていますが、処理能力の低下を背景とした米欧での港湾混雑が長引く場合、上海コンテナ運賃指数の上昇も続く可能性がありそうです。

なお、海上運賃は他の材料にも左右されるため、上海コンテナ運賃指数のデータについては、その都度確認しておく必要があります。詳細は外部サイト(上海コンテナ運賃指数、毎週金曜日に公表)でご確認いただけます。

図表5 上海コンテナ運賃指数の推移(2020年1月から)

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

【バフェット氏のBYD株売り観測の動向】 7/12、BYD(01211)が12%下落しました。7/11に大株主のバークシャー・ハサウェイ(バフェット氏が会長、以下バークシャー)が保有する株数に相当する株式が香港の清算決済システム「中央結算系統(CCASS)」に反映され、バフェット氏がBYD株を売却するのではないかとの観測が広がりました。その後、売り観測に関する確実な情報はなく、大手証券会社がBYDの買い推奨を維持したこともあり、BYDの株価は小幅に持ち直しました。ただし、「バフェット氏による売り懸念」の前の株価には戻っていません。

今回は、香港現地紙やブルームバーグの報道に基づいて、バフェット氏のBYD株売り観測をめぐる直近の動きをご報告します。

まず、事実関係として、現時点でバークシャーによる保有状況に変更はありません。通常、5%を超える大株主に保有の変化があった場合、情報開示が行われます。7/21までのデータに基づけば、バークシャーによる売却はみられませんでした。

それを受け、市場では売却以外の可能性(下記の1)-3))についても、議論し始めています。
1)香港の清算決済システムへの移管(以下、移管)は、空売り業者へ貸株を提供するため
2)バフェット氏が移管することを通じ、何らかの目的で市場の反応を確認したいため
3)移管はバフェット氏の意向と全く関係がない可能性もある

上記は、バフェット氏のBYD株売り観測と同様に、あくまでも考えられる可能性の一つと言えます。なお、この件に関してバークシャーは現時点でコメントを差し控えています。したがって、売却のリスクがなくなった、もしくは売却のリスクが低下したわけではないため、引き続き、バフェット氏の動きには留意する必要性が高いと言えます。

なお、BYDの日本法人であるBYDジャパン株式会社は7/21に、日本の乗用車市場に進出すると発表しました。2023年1月からスポーツタイプ多目的車(SUV)の「ATTO3」を皮切りに、コンパクトカーの「DOLPHIN」とセダンの「SEAL」のEVを順次投入する予定です。7/22寄り付きでBYD株が反発したのは、日本進出に対する期待もあったようです。BYDジャパン株式会社からの公式リリースは、「最新EV3車種を日本で2023年から順次発売」でご確認いただけます。

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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