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今週の5銘柄 ~S&P500指数は「N字波動」の示現か!?~

2020/2/17
投資情報部 榮 聡

先週は新型コロナウイルスへの懸念が後退して高値を更新する流れが、新規感染者数の増加を受けてストップしました。今週は感染拡大の沈静化がみられるか、再び新規感染者数の推移に注目が集まりそうです。

直近発表の四半期決算が好調な銘柄として、エヌビディア(NVDA)エスティーローダー(EL)マイクロソフト(MSFT)アマゾン ドットコム(AMZN)インテル(INTC)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 1週 1ヵ月 3ヵ月
不動産 4.8% 5.7% 9.1%
一般消費財・サービス 2.6% 3.7% 9.5%
公益事業 2.4% 5.1% 12.1%
情報技術 2.3% 4.8% 16.9%
S&P500 1.6% 1.5% 8.3%
通信サービス 1.4% 0.2% 7.8%
資本財・サービス 1.1% 0.1% 3.0%
ヘルスケア 0.9% -0.7% 7.3%
生活必需品 0.8% 1.3% 5.7%
素材 0.7% -1.0% 0.5%
金融 0.7% 0.2% 4.7%
エネルギー 0.3% -8.7% -7.0%
騰落率上位(1週) 騰落率
エヌビディア 15.2%
デューク・エナジー 5.2%
マスターカード 4.3%
ブッキング・ホールディングス 4.3%
キンダー・モルガン 4.2%
騰落率下位(1週) 騰落率
アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG) -9.3%
クラフト・ハインツ -9.0%
ファイザー -4.0%
イーライリリー -3.6%
バンク・オブ・ニューヨーク・メロン -2.9%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

新型コロナウイルスへの警戒が緩和する中、中国政府による景気刺激策への期待もあって高値を更新してきましたが、その流れが2/13(木)に発表された「新規感染者数急増」で止まりました。感染者の急増は判断基準を変更したテクニカルな要因によりますが、沈静化を再び確認する必要が出てきました。S&P500指数は週間で1.6%の上昇です。

なお、ニューハンプシャー州の民主党予備選では、左派のサンダース氏がアイオワ州の党員集会に続いて優位となりましたが、意外にも相場が嫌気した形跡はありませんでした。「サンダース氏では本選でトランプ氏に勝てないだろう」、「まだ序盤に過ぎず混戦だから」などの相場解釈が出ていました。

業種指数騰落率では、新型コロナウイルスへの警戒が再浮上して米10年国債利回りがもみ合いに転じたことから、配当利回りが高い「不動産」「公益事業」が上位です。その他の上位業種は、インターネットや半導体などテクノロジー株への物色が引き続きけん引しています。

個別では、中国国内の電子決済市場への参入について中国人民銀行から許可を受けたマスターカード A(MA)、旅行需要の減退懸念で売り込まれていた株価が戻り歩調となっているブッキング ホールディングス(BKNG)などが上昇しています。

経済指標では、米国の1月小売売上高が前月比0.3%増と市場予想と一致しました。一方、自動車、ガソリン、建材、食品を除くコア売上高は前月比横ばいにとどまりました。市場予想の同0.3%増、12月の同0.5%増を下回り、個人消費の鈍化が示唆されました。前年比でも、12月の5.5%増から4.4%増へ低下しています。

今週の米国株式市場

引き続き新型コロナウイルスの動向を見守ることになりそうです。新しい感染判断基準で再び新規患者数の減少傾向がみられるかがポイントとなりそうです。

新型コロナウイルスの新規感染者数は、感染判定の基準を検査キットによるウイルスの確認に加え、CTスキャンで肺に影がある場合も加えたことで2/12(水)分が大幅に増加しました(図表3)。

インフルエンザなどによる肺炎も含んでしまうため正確性には欠けますが、短時間で判定できることが重視されたようです。基準の変更によって感染者数は増えたものの2/14(土)、2/15(日)と減少しており、この傾向が続けば懸念は後退しそうです。

10-12月期決算の発表は、2/14(金)までにS&P500指数採用企業の77%が発表を終え、EPSは前年同期比0.9%増(発表済と今後の予想を混合)の見込みです。1-3月期のEPSは前年同期比2.1%増、20年通年では前年比8.0%増の予想となっています。

S&P500指数をテクニカル面からみると、1/22(水)を起点に1/31(金)まで約100ポイント調整した後に急反発して高値を更新して、典型的な「N字波動」を示現しつつあるようです。その場合は1/31(金)の安値を起点として調整幅の2倍の上昇が見込めることになりますので、3,430ポイント辺りが上値の目安と計算できます。

経済指標では、2/19(水)に米国の1月住宅着工・建設許可件数(住宅着工件数は前月比11.7%減、建設許可件数は同2.1%増の予想)、2/21(金)に2月のマークイット米国製造業PMI(前月の51.9から51.5へ悪化の予想)、などの発表が予定されています。

企業決算では、ウォルマート、メドトロニック、アナログデバイセズ、サザン、ディアなどの発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回も先週決算発表を行った企業について先々週・先週号と同様のスクリーニング行い、条件を満たしたエヌビディア(NVDA)を加えて、エスティーローダー(EL)、マイクロソフト(MSFT)、アマゾン ドットコム(AMZN)、インテル(INTC)を継続します。

【スクリーニング条件】
(1)直近四半期決算の売上が予想を1%、EPSが予想を5%以上上回った。
(2)直近四半期決算が前年同期比増収増益であった。
(3)アナリストの目標株価平均が過去4週に上方修正されている。
(4)時価総額が500億ドル以上のS&P500指数採用企業。

図表3 新型コロナウィルス、中国での感染者累計の日次増加数

注:中国「国家衛生健康委員会」が日々公表している中国の感染者数累計の前日比差分を計算したものです。
※中国「国家衛生健康委員会」の公表データをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

銘柄 株価
(2/14)
予想PER
(倍)
エヌビディア(NVDA)289.79ドル38.0

【データセンター向けが用途と顧客の広がりで好調】

・データセンター向けのGPUが好調で、業績の拡大をけん引しています。人工知能の用途が従来の画像認識から自然言語への対応へ広がっていることが背景にあり、マイクロソフトやアマゾンなどクラウドサービスの大手に加え、ペイパル、ピンタレスト、スナップ、ツイッターなど消費者向けネット企業にも販売が広がっているとしています。20年に売上拡大が期待されていた自動車の自動運転分野は立ち上がりが遅れていますが、これをカバーする材料が出てきたと言えそうです。

・2/13(木)に発表の19年11月-20年1月期売上は、前年同期が仮想通貨のマイニング向け需要の落ち込みの影響を受けていたため前年同期比41%増、19年8-10月期比との比較では3%増でした。分野別にはデータセンター向け売上が9.7億ドルと前四半期比33%増と2四半期連続で高い伸びを示しました。2-4月期の売上ガイダンス中央値は、市場予想の28.6億ドルに対して30億ドルと上回って好感されました。

エスティ ローダー A(EL)215.01ドル37.4

【スキンケアが伸びる】

・スキンケアの市場はベビーブーマーがユーザーとして残る一方で、ミレニアル世代や男性がユーザーとして増えつつあり、また、アジアを中心とした海外市場では中間所得層がより良い肌のための支出に積極的なことから成長市場になっています。同社の19年6月期の部門営業利益はスキンケアが75%を占め、スキンケア関連の筆頭格の会社と考えられます。

・10-12月期決算は前年同期比15%増収、同21%増益と引き続き好調でした。主力のスキンケア部門が「アドバンス ナイト リペア」などの好調で前年同期比27%の増収、同37%の営業増益となって業績拡大をけん引しています。アジア・太平洋地域の売上が同30%伸びているため、香港でのデモや中国の新型コロナウイルスの影響が見込まれ、20年6月期の売上は前年比7~8%増から同6~8%増、調整後EPSは5.85~5.93ドルから5.6~5.7ドルにガイダンスが引き下げられました。ただ、影響が一巡すれば、強い業績拡大トレンドが継続すると期待されます。

マイクロソフト(MSFT)185.35ドル32.6

【クラウドのインフラサービスでアマゾンを急追】

・クラウドのインフラを提供する企業としてはアマゾンに次ぐ2位の位置にあり、急速に追い上げています。メールソフトの「Outlook」、ビジネスソフトの「Office」などで企業のIT部門に接点があるため、クラウドの新規開拓営業に有利と考えられます。また、19年10月に米国防総省の100億ドル規模の案件をアマゾンと競ってマイクロソフトが獲得したことも、同社のクラウドが加速するきっかけとなる可能性が注目されています。

・10-12月期決算は前年同期比14%増収、同37%増益と引き続き好調でした。全部門の売上が市場予想を上回って、売上は3%、EPSは14%それぞれ市場予想を上回りました。インテリジェント・クラウド部門が27%増収と成長をけん引、その中心である企業向けクラウドの「Azure」は前年同期比62%増と、7-9月期の同59%増を上回る伸びを記録しています。

アマゾン ドットコム(AMZN)2134.87ドル52.3

【年末商戦の好調で北米の利益が予想を上回る】

・配送日数を短縮するための費用がかさんで利益を圧迫していますが、顧客囲い込みを進めるための先行投資と捉えられ、中期的な利益成長を高める施策と考えられます。一方、クラウドサービスは業界トップして引き続き高い成長が期待されます。また、独占禁止法の調査に係るリスクも、フェイスブックやアルファベットに比べて小さいと考えられます。

・10-12月期決算は好調な年末商戦を受けて売上が前年同期比21%増、EPSも同7%増と7-9月期の減益から増益に転じて市場予想も大幅に上回りました。部門別の営業利益は、北米が19億ドル(市場予想は15億ドル)、海外が6億ドルの赤字(同9億ドルの赤字)、AWSが26億ドル(同25億ドル)でした。19年中は利益が伸び悩んだため株価は出遅れましたが、北米の通販事業の改善を受けて出遅れを縮める動きが想定できるでしょう。

インテル(INTC)67.27ドル13.5

【データセンター投資の復調から恩恵】

・クラウドサービスの提供企業や通信キャリアがデータセンターへの投資を再び活発化したことを受けて業績が回復しており、このトレンドは20年に向けても継続すると期待されます。CPU分野で競合するアドバンストマイクロデバイセズが7ナノメートル技術によるCPUで攻勢をかけていることへの対応が課題となっていますが、一方で予想PERが低水準であることから投資妙味がありそうです。

・10-12月期はデータセンター向けがけん引して売上は前年同期比8%増、EPSは同19%増と好調でした。データセントリックグループの売上は前年同期比19%増の72億ドルとなり、市場予想の64億ドルを大幅に上回りました。20年12月期のガイダンスは売上が約735億ドルで前年比2%増、EPSが約5ドルで同3%増と堅調が見込まれています。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。エヌビディアは21年1月期、エスティローダー、マイクロソフトは20年6月期、その他は20年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
17(月) ・米国市場休場(プレジデント・デー)
・日本実質GDP(10-12月期、速報値)
・中国新築住宅価格(1月)
 
18(火) ・EU27ヵ国新車登録台数(1月)
・ドイツZEW景気指数(2月)
・ニューヨーク連銀製造業景気指数(2月)
ウォルマート、メドトロニック
19(水) ・日本コア機械受注(12月)
・民主党第9回討論会(ネバダ州)
・米国生産者物価指数(1月)
・米住宅着工・建設許可件数(1月)
・米FOMC議事要旨(1月28、29日開催分)
アナログデバイセズ
20(木) ・米フィラデルフィア連銀景気指数(2月)
・ユーロ圏消費者信頼感(2月)
サザン
21(金) ・日本じぶん銀行製造業PMI(2月)
・ユーロ圏マークイット製造業PMI(2月)
・ユーロ圏消費者物価指数(1月)
・米マークイット製造業PMI(2月)
・米中古住宅販売件数(1月)
ディア
22(土) ・ネバダ州党員集会
・G20財務相・中 央銀行総裁会議(リヤド、23日まで)
 
24(月) ・ドイツIFO企業景況感(2月)
・シカゴ連銀全米活動指数(1月)
キーサイトテクノロジーズ
25(火) ・S&Pコアロジック住宅価格指数(12月)
・コンファレンスボード消費者信頼感(2月)
セールスフォースドットコム、ホームデポ、アメリカンタワー
26(水) ・米新築住宅販売件数(1月) スクエア、ブッキングホールディングス(E)
TJX、ロウズ
27(木) ・ユーロ圏景況感(2月)
・米実質GDP(10-12月期、改定値)
・米耐久財受注(1月)

・米中古住宅販売成約(1月)
ブリティッシュアメリカンタバコ、ベストバイ
28(金) ・日本鉱工業生産(1月)
・ユーロ圏消費者物価指数(2月)
・米個人所得・個人支出(1月)
・米PCEコアデフレータ(1月)
・ミシガン大学消費者マインド(2月)
 

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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