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今週の5銘柄 ~20年上半期の騰落率上位銘柄は?~
投資情報部 榮 聡
先週はカリフォルニア、テキサス、フロリダなどでCOVID-19の感染者が急増し、米国全体でも1日当たり新規感染者数が過去のピークを更新したことが嫌気されて反落となりました。今週はCOVID-19の感染者数の状況に加えて、一段の景気刺激策の話が出てくるか否か、米中の企業景況感と米国の雇用統計、週末に米連邦破産法11条の適用申請を行ったチェサピーク エナジー(CHK)の影響、などが注目されます。
今回はS&P500指数採用銘柄の20年上半期の株価騰落率上位銘柄から、デクスコム(DXCM)、リジェネロンファーマシューティカルズ(REGN)、サービスナウ(NOW)、シノプシス(SNPS)、マーケットアクセス ホールディングス(MKTX)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 1週 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
情報技術 | -0.4% | 3.9% | 29.1% |
一般消費財・サービス | -1.9% | 1.8% | 29.1% |
素材 | -2.5% | -1.5% | 23.3% |
ヘルスケア | -2.8% | -5.1% | 14.8% |
S&P500 | -2.9% | -1.2% | 18.4% |
公益事業 | -2.9% | -7.1% | -0.9% |
生活必需品 | -3.4% | -3.3% | 6.5% |
不動産 | -4.0% | -2.3% | 8.1% |
資本財・サービス | -4.0% | -1.9% | 12.3% |
通信サービス | -5.2% | -3.8% | 19.2% |
金融 | -5.3% | -3.0% | 7.5% |
エネルギー | -6.4% | -4.9% | 27.5% |
騰落率上位(1週) | 騰落率 |
アクセンチュア | 5.4% |
ペイパル・ホールディングス | 4.0% |
シスコシステムズ | 2.2% |
ブリストル・マイヤーズ スクイブ | 2.0% |
イーライリリー | 1.8% |
騰落率下位(1週) | 騰落率 |
シュルンベルジェ | -11.5% |
オキシデンタル・ペトロリアム | -10.2% |
キャピタル・ワン・ファイナンシャル | -10.2% |
フェイスブック | -9.5% |
ゼネラル・エレクトリック(GE) | -9.4% |
先週の米国株式市場
22日(月)、23日(火)はCOVID-19の感染拡大が気にされつつも、当局による一段の景気刺激策への期待から小幅な上昇となりました。一方、24日(水)にはカリフォルニア、テキサス、フロリダなどでCOVID-19の感染拡大が加速、米国全体でも新規感染者数が3万を超える日が増えていることが嫌気されて2.6%の大幅下落となりました。
25日(木)は反発となったものの、26日(金)にはテキサスやフロリダで経済活動の抑制措置が再導入されたことを受けて、景気回復に対する期待が後退して主要指数とも2%を超える値下がりとなりました。S&P500指数は週間で2.9%の下落です。
業種指数では、COVID-19の感染第2波に対する懸念を受けて、「エネルギー」「金融」「資本財・サービス」など景気敏感業種が大幅に下落しました。COVID-19の影響が比較的小さいと考えられる「情報技術」は小幅な下落にとどまっています。
個別銘柄では、6/25(木)に3-5月期決算を発表したアクセンチュアA(ACN)が、ITサービス事業は堅調との見方から上昇率トップとなっています。一方、フェイスブック A(FB)は、ユニリーバが同社SNSでのヘイトスピーチの問題を理由に広告出稿を取りやめるとして下落しました。その後も広告を取り下げる動きは、コカ・コーラ、スターバックスなど大手の広告主に広がっており、懸念されます。
経済指標では、米国の5月中古住宅販売件数が4月の前月比17.8%減に続いて同9.7%減と2ヵ月連続で大幅に減少する一方、5月新築住宅販売件数は前月比16.6%増と4月に底入れの形となっています。
5月の個人所得は前月比4.2%減となったものの、5月に給付金により同10.8%増となったことが効いて2月の水準を3.8%上回る計算です。5月の個人支出は前月比8.2%増で、4月に底入れしています。
今週の米国株式市場
今週はCOVID-19の感染者数の状況に加えて、一段の景気刺激策の話が出てくるか否か、米中の企業景況感と米国の雇用統計、6/28(日)に米連邦破産法11条の適用申請を行ったチェサピーク エナジー(CHK)の影響、などが注目されます。
米国のCOVID-19新規感染者数は、6/27(土)までの7日平均で3万3千人台と、6/20(土)の同2万3千人台から急増し、4月上旬のピークである3万1千人台も超えました。図表3の通り感染者数が10万人を超える7州の状況は対照的で、カリフォルニア、テキサス、フロリダは感染者数の増え方が加速する一方、ニューヨーク、イリノイ、ニュージャージー、マサチューセッツでは落ち着いた動きとなっています。
経済活動を再開すれば感染者数が再び増えるリスクがあると意識されていましたが、そのリスクが現実化しつつあり、市場が想定していた経済回復の経路が後ずれするため、株価がある程度調整するのは避けられないとみられます。
一方、世界はCOVID-19に対する経験を積んできました。つまり、(1)ソーシャルディスタンスで感染を抑止できることを知った、(2)検査体制・医療体制を整備する時間を稼いだ、(3)テレワークによる経済活動の継続を学んだ、などがあげられるでしょう。このような経験を考慮すれば、前例のない経済封鎖を受けて急落した3月のような相場つきにはならないとみられます。
7/2(木)に発表予定の6月雇用統計では、非農業部門雇用者数は現時点で5月の前月比251万人増に続いて同300万人増と予想されています。仮にこれが実現すると、3月から6月にかけての雇用者数は1,655万人減と計算されます。
しかし、失業保険継続受給者数は6/13(土)時点で1,952万人となっており、両者の乖離が大き過ぎる印象です。前月比300万人増の市場予想が下方修正されないまま発表日を迎える場合には、ネガティブサプライズとなる可能性に気をつける必要がありそうです。
チェサピークエナジーは数年前まで米エネルギー大手の一角として知られていましたが、積極的な買収が裏目に出て時価総額は1.2億ドルまで減少して、S&P500指数からも外れています。ただ、原油価格の下落は生産コストが高いシェールオイルをメインとする企業には厳しいことが改めて意識されそうです。
経済指標では、6/30(火)に中国の6月製造業・非製造業PMI(製造業は前月の50.6から50.5へ悪化の予想、非製造業は前月の53.6と変わらずの予想)、米国の6月コンファレンスボード消費者信頼感(前月の86.6から90.5へ改善の予想)、7/1(水)に米国の6月ISM製造業景気指数(前月の43.1から49.5へ改善の予想)、7/2(木)に米国の6月雇用統計(非農業部門雇用者数は前月比300万人増、失業率は12.4%の予想)などの発表が予定されています。
企業決算では、マイクロンテクノロジー、フェデックス、ゼネラルミルズ、メーシーズなどの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回はS&P500指数採用銘柄の20年上半期(昨年末から6月25日まで)の株価騰落率上位銘柄をご紹介いたします。
図表4に抽出した上位20銘柄から、アマゾンドットコム、ネットフリックス、エヌビディアなどこれまで何回も取り上げてきた銘柄および昨年に大幅下落した反動とみられる銘柄などを除いて、これまであまり紹介の機会がなかったデクスコム(DXCM)、リジェネロンファーマシューティカルズ(REGN)、サービスナウ(NOW)、シノプシス(SNPS)、マーケットアクセス ホールディングス(MKTX)を選んで今週の5銘柄といたします。
米国株式はCOVID-19の感染再加速で目先は調整が避けられないでしょうが、株価推移に良いトレンドが出ていれば、押し目買いが検討できる銘柄と言えるでしょう。
図表3 COVID-19の感染者数が10万人を超える7州の感染者数推移
図表4 S&P500指数の年初来騰落率上位銘柄
コード | 銘柄 | 年初来株価 騰落率 (%) |
株価 (6/25) (ドル) |
予想 PER (倍) |
時価総額 (億ドル) |
DXCM | デクスコム | 82.0 | 398.09 | 179.72 | 368 |
REGN | リジェネロン・ファーマシューティカルズ | 65.1 | 619.96 | 22.88 | 635 |
NVDA | エヌビディア | 61.3 | 379.60 | 46.42 | 2,335 |
PYPL | ペイパル・ホールディングス | 59.5 | 172.50 | 51.48 | 2,025 |
AMZN | アマゾン・ドット・コム | 49.1 | 2,754.58 | 83.52 | 13,739 |
WST | ウエスト・ファーマシューティカル・サービシズ | 48.6 | 223.36 | 62.22 | 164 |
NFLX | ネットフリックス | 44.0 | 465.91 | 68.10 | 2,049 |
NOW | サービスナウ | 42.3 | 401.64 | 95.02 | 766 |
ABMD | アビオメッド | 41.7 | 241.75 | 71.31 | 109 |
TMUS | TモバイルUS | 40.8 | 110.19 | 49.79 | 1,526 |
TSCO | トラクター・サプライ | 40.0 | 130.82 | 23.31 | 151 |
CLX | クロロックス | 40.0 | 214.92 | 31.24 | 271 |
EBAY | イーベイ | 36.8 | 49.40 | 14.72 | 347 |
SNPS | シノプシス | 36.3 | 189.69 | 36.00 | 286 |
NEM | ニューモント | 34.8 | 58.59 | 27.10 | 470 |
VRTX | バーテックス・ファーマシューティカルズ | 34.8 | 295.15 | 33.57 | 765 |
MKTX | マーケットアクセス・ホールディングス | 33.8 | 507.36 | 70.78 | 192 |
CDNS | ケイデンス・デザイン・システムズ | 33.6 | 92.66 | 37.71 | 259 |
MSCI | MSCI | 32.5 | 342.17 | 49.14 | 286 |
ADBE | アドビ | 32.5 | 436.95 | 44.74 | 2,096 |
今週の注目銘柄
銘柄 | 株価 (6/26) |
予想PER (倍) |
---|---|---|
デクスコム(DXCM) | 383.06ドル | 172.5 |
【持続血糖測定器の世界トップ企業】 ・糖尿病患者が体に装着して血糖値をモニターするための、持続血糖測定器の世界トップ企業です。体に刺した針で間質液中の血糖値を測定してスマホなどで持続的に監視できるシステムで、血液を採取して行う血糖自己測定を補完して、血糖値管理の効果を高めることができます。 ・持続血糖測定器の普及は米国の糖尿病1型患者で35~40%、糖尿病2型患者で15%程度とまだ低く、欧州、日本での普及はさらに低いため、年率15~20%の売上成長が今後3~4年継続できると見込まれています。主力製品は「Dexcom G4 PLATINUM」で、日本ではテルモが19年3月から販売しています。 ・過去3四半期の売上は前年同期比4割前後の増加と伸び盛りです。COVID-19の影響を考慮して前年比17~20%とした20年の売上ガイダンスは取り下げられましたが、中期の売上ポテンシャルへの影響は小さいと考えられます。 |
||
リジェネロン ファーマシューティカルズ(REGN) | 611.36ドル | 22.6 |
【業績好調に加え、COVID-19治療薬の開発が株価を刺激】 ・同社は米国のバイオ医薬品メーカーで、主力薬は加齢黄斑変性症、糖尿病網膜症などの治療に用いられる「アイリーア」です。加齢黄斑変性症は欧米で失明原因の1位となっていることから、需要が伸びています。 ・COVID-19については、サノフィと共同で関節リウマチ治療薬「ケブザラ」に関して重篤な患者に対する第2相試験および第3相試験を実施していること、また、単独で抗体カクテル療法の臨床試験を6月に開始ていることなどが株価を刺激しているとみられます。 ・1-3月期は主力の「アイリーア」の売上が前年同期比9%増と堅調なうえ、サノフィからの提携収入が前年同期比265百万ドル増えたことを主因に売上が同33%増と好調でした。提携収入の伸びは、アトピー性皮膚炎および喘息治療薬「デュピクセント」の世界売上が855百万ドルと前年同期比2.3倍と伸びていることが主因です。 |
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サービスナウ(NOW) | 399.97ドル | 94.6 |
【企業向けワークフローの自動化サービスを提供】 ・企業向けにワークフローをデジタル化するサービスや、人事、法務、経理などのサービスをクラウド経由で提供する企業です。COVID-19の影響は比較的小さいとみられ、1-3月期の決算が好調であったことを素直に反映して株価が上昇したと考えられます。19年11月にS&P500指数に採用されました。 ・1-3月期決算は、売上が前年同期比33%増、調整後EPSが同57%増と好調でした。年間取引額が1百万ドルを超える顧客企業が933社へ前年同期比30%増え、また、1百万ドルの取引案件が37個と同48%増えて取引の大型化が進んでいます。4-6月期の売上ガイダンスは前年同期比29~30%増の約10億ドル、20年通年では前年比28~29%増相当の41.7~41.9億ドルと好調が持続する見通しです。 |
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シノプシス(SNPS) | 190.42ドル | 36.1 |
【半導体集積回路の設計などに用いられるソフトウェア】 ・集積回路の設計とテストに使用される電子設計自動化(EDA)ソフトウェアを提供する企業です。また、チップ設計のコンポーネントとして用いられる、事前に設計された回路であるIP製品も提供します。ソフトバンク傘下の英アームホールディングスと競合する会社です。 ・2-4月期決算は、売上が前年同期比3%増、営業利益が同9%増と堅調でした。会社は半導体や電子システムのデザイン活動はCOVID-19のパンデミック下でも活発であるとして、20年通年のガイダンスを売上は36.0~36.5億ドルで維持、EPSは5.21~5.28ドルと従来より引き上げています。 |
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マーケットアクセス ホールディングス(MKTX) | 489.83ドル | 68.3 |
【債券の電子トレーディングシステムを提供】 ・債券のトレーディングシステムを提供している会社です。米国の投資適格債、ハイイールド債などを中心に、新興国の債券も取り扱っています。1,700超の機関投資家が利用する大手の一角です。19年11月に米国債の電子取引プロバイダーを買収しています。 ・COVID-19の影響でクレジットのスプレッドが拡大したことから社債の取引が活発化、また、買収効果も上乗せとなり、1-3月期の売上は前年同期比36%増、EPSは同41%増と好調です。米国の社債、新興国債などの取引額(買収した米国債取引事業を除く)は、3月が前年比51%増、4月が同48%増、5月が同35%増と高い伸びが続いています。 |
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
29(月) | ・ユーロ圏景況感(6月) ・米中古住宅販売成約(5月) |
マイクロンテクノロジー |
30(火) | ・中国製造業・非製造業PMI(6月) ・ユーロ圏消費者物価指数(6月) ・米S&Pコアロジック住宅価格(4月) ・コンファレンスボード消費者信頼感(6月) |
フェデックス |
7月 1(水) |
・日銀短観(4-6月期) ・中国財新製造業MPI(6月) ・米ADP雇用統計(6月) ・米ISM製造業景気指数(6月) ・米自動車販売台数(6月、2日までに発表) ・FOMC議事要旨 |
ゼネラルミルズ、メーシーズ |
2(木) | ・ユーロ圏生産者物価指数(5月) ・米貿易統計(5月) ・米雇用統計(6月) ・米製造業受注(5月) |
|
3(金) | ・米国市場休場(独立記念日の振替休日) | |
6(月) | ・ユーロ圏小売売上高(5月) ・米ISM非製造業景気指数(6月) |
|
7(火) | ・米求人労働異動調査(5月) | |
8(水) | ・米消費者信用残高(5月) | |
9(木) | ・中国生産者・消費者物価指数(6月) ・日本工作機械受注(6月) ・米新規失業保険申請件数(7月4日に終わる週) |
ウォルグリーンブーツアライアンス |
10(金) | ・中国資金調達総額(6月) ・米生産者物価指数(6月) |
デルタ航空(E) |
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