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今週の5銘柄 ~物色の「揺れ」にも対応!?「ウィズコロナ」「ポストコロナ」合わせもつ銘柄とは?~

2020/8/31
投資情報部 榮 聡

先週はCOVID-19治療法への期待、米中通商協議(電話会議)の実現などにより、後半にはゼロ金利政策の長期化に対する期待から、連日史上最高値を更新しました。今週は米中の企業景況感と米雇用統計、株式分割調整後の取引が始まるアップル株、NYダウの構成銘柄としてデビューする3銘柄、史上最高値を更新し続ける米国市場がどこまで伸びるのか、などが注目されます。

今回は、「ウィズコロナ」と「ポストコロナ」を合わせもつと考えられるユナイテッド パーセル サービス B(UPS)ホームデポ(HD)、NYダウに新規採用となる3銘柄、セールスフォース ドットコム(CRM)アムジェン(AMGN)ハネウェル インターナショナル(HON)を今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 1週 1ヵ月 3ヵ月
コミュニケーション・サービス 4.8% 9.5% 16.0%
情報技術 4.5% 11.4% 25.9%
金融 4.4% 5.4% 8.6%
S&P500指数 3.3% 9.0% 15.8%
素材 3.3% 5.8% 15.3%
一般消費財・サービス 3.1% 9.3% 24.9%
資本財・サービス 3.0% 9.6% 16.5%
生活必需品 2.4% 4.9% 11.2%
不動産 1.9% 0.7% 5.7%
エネルギー 1.1% 0.1% -6.6%
ヘルスケア 1.0% 2.2% 4.8%
公益事業 -0.6% -3.4% -1.2%
騰落率上位(1週) 騰落率
セールスフォース・ドットコム 30.6%
キャピタル・ワン・ファイナンシャル 11.5%
スターバックス 10.3%
フェイスブック 10.0%
ブッキング・ホールディングス 9.3%
騰落率下位(1週) 騰落率
ファイザー        -2.5%
ギリアド・サイエンシズ -1.9%
ターゲット -1.8%
ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス -1.8%
デューク・エナジー -1.6%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

24日(月)は米FDA(食品医薬品局)によるCOVID-19に対する血しょう療法の緊急使用許可などが好感されて上昇、25日(火)は前日の米中通商協議(電話会議)の実現を受けて続伸、26日(水)はセールスフォースドットコムの好決算が刺激となってIT銘柄が主導して上昇となりました。

27日(木)のパウエルFRB議長講演では、インフレ率が一時的に2%を上回ることを容認するとして、ゼロ金利政策の長期化が示唆されました。ただ、米長期金利が上昇したために、株式は小幅な上昇にとどまりました。一方、28日(金)は米10年国債利回りが落ち着く中、改めてゼロ金利政策の長期化を織り込んで上昇したとみられます。S&P500指数は週間で3.3%の上昇、史上最高値を連日更新しました。

業種指数では、先週に続いてソフトウェアやインターネット関連を含む「コミュニケーション・サービス」「情報技術」が上昇率上位です。米10年国債利回りが上昇したため、「金融」も市場平均以上の上昇となりました。

個別銘柄では、上昇率1位のセールスフォースドットコムは「今週の5銘柄」で取り上げます。同4位のフェイスブック A(FB)は、ソーシャル・コマースの成長性を理由にアナリストが目標株価を引き上げたことが好感されました。ただ、その後「iPhone」の次期基本ソフト「iOS14」では広告主が端末情報を利用する際に利用者の許可を得る形に変わるとして、先行きの広告収入に打撃となるのではとの懸念が出ています。

経済指標では、米国の8月コンファレンスボード消費者信頼感が84.8と前月の91.7から大幅に低下、失業率の高止まりによる消費者マインドの悪化が示されました。一方、7月の個人所得が前月比0.4%増、個人支出が同1.9%増と政策による下支えが効いていることも確認されました。

また、米国の7月新築住宅販売件数は住宅ローン金利の低下を受けて前月比13.9%増と大幅続伸、7月の耐久財受注も前月比11.2%増と回復が続きました。

今週の米国株式市場

マクロ的な重要イベントは先週までに通過したことから、今週は相場全体を大きく動かすような材料は見当たりません。

その中で、米中の企業景況感と米雇用統計、株式分割後の取引が始まるアップル株、NYダウの構成銘柄としてデビューする3銘柄(「今週の5銘柄」を参照)、史上最高値を更新し続ける米国市場がどこまで伸びるのか、などが注目されます。

S&P500指数は8/21(金)から6営業日連続で史上最高値を更新し続けており、どこまで伸びるか注目されます。ジャクソンホール会合のパウエルFRB議長講演では、ゼロ金利政策の長期化が示唆され、株式市場にポジティブな形となりました。

一方、インフレ率が2%超に上昇することを容認するとしたことから、8/27(木)の米10年国債利回りが0.7%台後半に上昇し、PERの水準が高いIT銘柄に利食いを誘ったとみられます。米国株式市場がどこまで伸びるかに関して、米長期金利の動きを注視する必要がありそうです。

経済指標では、8/31(月)に中国の8月製造業・非製造業PMI(製造業は前月の51.1から51.2に改善の予想、非製造業は前月の54.2と同じの予想)、9/1(火)に米国の8月ISM製造業景気指数(前月の54.2から54.5に改善の予想)、9/2(水)に米国のADP雇用統計(前月比95万人増の予想)、9/4(金)に米国の8月雇用統計(非農業部門雇用者数は前月比140万人増の予想)、などの発表が予定されています。

企業決算では、ズームビデオコミュニケーションズ、クラウドストライクホールディングス、ブロードコムなどの発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は、「ウィズコロナ」と「ポストコロナ」を合わせもつと考えられるユナイテッド パーセル サービス B(UPS)ホームデポ(HD)、NYダウに新規採用となる3銘柄、セールスフォース ドットコム(CRM)アムジェン(AMGN)ハネウェルインターナショナル(HON)をご紹介いたします。

このところ米国市場は、ワクチン開発への期待やその他の様々の要因で大手IT銘柄と景気敏感株の間で物色がゆれています。大手IT銘柄のファンダメンタルズは良いけれどもバリュエーションの高さは気になる、景気敏感株は経済活動の正常化を前提とすれば割安だが目先の業績はまだ厳しそう、と悩ましいところです。

そこで直近の四半期決算を踏まえて、いずれの環境下でも物色される可能性がある、つまり「ウィズコロナ」と「ポストコロナ」を合わせもつと考えられる業界を二つ取り上げます。一つはUPSやフェデックスなどの宅配業界、もう一つはホームデポやロウズなどのホームセンターです。

宅配業界では、ウィズコロナではネット通販への需要増で宅配需要が高まり、ポストコロナでは企業向けの物流が回復すると期待されます。ホームセンターでは、ウィズコロナではDIY需要で恩恵を受け、ポストコロナでは住宅市場の回復から恩恵を受けると期待されます。

NYダウの構成銘柄変更は、アップルが1対4の株式分割により「情報技術」の構成比が下がることで、これを補うためにセールスフォースドットコムを加えて、産業としての存在感が小さくなっている「エネルギー」のエクソンモービル(XOM)を除外するものです。

合わせて「ヘルスケア」ではファイザー(PFE)を削除してアムジェンへ、「資本財」ではレイセオン テクノロジーズ(RTX)を削除してハネウェルインターナショナルへ入れ替えられます。8/31(月)から新しい構成銘柄による指数の算出が始まります。

図表3 NYダウの新しい構成銘柄

  銘柄名 株価
(8/28)
(ドル)
指数寄与度
(%)
1 ユナイテッドヘルス・グループ 314.37 7.2
2 ホーム・デポ 286.29 6.6
3 セールスフォース・ドットコム 271.10 6.2
4 アムジェン 253.12 5.8
5 マイクロソフト 228.91 5.3
6 ビザ 215.71 5.0
7 マクドナルド 214.91 4.9
8 ゴールドマン・サックス・グループ 207.71 4.8
9 ボーイング 175.80 4.0
10 ハネウェルインターナショナル 168.38 3.9
11 3M 165.66 3.8
12 ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J) 153.64 3.5
13 キャタピラー 143.63 3.3
14 ウォルマート 140.30 3.2
15 プロクター・アンド・ギャンブル(P&G) 138.77 3.2
16 ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニー 135.54 3.1
17 IBM 125.07 2.9
18 アップル                       124.81 2.9
19 トラベラーズ 115.89 2.7
20 ナイキ 112.29 2.6
21 JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー 102.77 2.4
22 アメリカン・エキスプレス 102.54 2.4
23 メルク 85.65 2.0
24 シェブロン 85.63 2.0
25 ベライゾン・コミュニケーションズ 59.26 1.4
26 インテル 50.43 1.2
27 コカ・コーラ 49.83 1.1
28 Dow Inc 46.05 1.1
29 シスコシステムズ     42.20 1.0
30 ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス 38.76 0.9

注:株価と指数寄与度は8/28(金)終値によります。アップルは1対4の株式分割を反映した株価としています。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

銘柄 株価
(8/28)
予想PER
(倍)
ユナイテッド パーセル サービス B(UPS)162.3623.1

【今後は企業間物流の回復に期待】

・世界首位の小口貨物輸送会社です。4-6月期決算は、ネット通販の利用増で宅配需要が伸びたほか、ヘルスケア関連の米国内物流を担ったこと、アジアから域外への物流増などの恩恵を受けて、売上が前年同期比13%増、市場予想を17%上回る好調でした。今後は経済活動の再開にともなって企業間物流の改善が期待されます。

・6月に就任した女性の新CEOキャロル・トメ氏の手腕が注目されています。同氏はホームデポでキャリアを積んだ後、2003年からUPSの取締役会メンバーです。テクノロジーへの投資によって現有の物流ネットワークから最大の効果を引き出すことに集中し、周辺事業からは退出を検討して、事業の効率化を目指しています。

ホーム デポ(HD)286.29ドル25.1

【今後は住宅市場の回復に期待】

・ホームセンターは、在宅勤務の広がりや外出抑制による消費の変化をうまく取り込めるポジションにあります。また、経済活動が再開される中でも長期金利の低下による住宅市場回復の恩恵が期待されます。5-7月期の既存店売上は、ホームデポの前年同期比23.4%に対してロウズは同34.2%増と差がつきましたが、ホームデポはプロ向けに強いことが要因と考えられます。今後はプロ向けの回復が期待されるため、ホームデポの伸びに期待できるでしょう。

・5-7月期決算は、売上が前年同期比23.4%増、EPSは同26.8%増と好調でした。既存店売上は同23.4%増、1-3月期の同6.4%増から大幅に加速、来店客数が12.3%増、平均購入額が10.1%増でした。COVID-19の感染防止のため、前四半期から営業時間短縮や来店客数を抑える様々な措置をとっていましたが、消費者の需要は強いようです。COVID-19関連の追加費用として4-6月期に4.8億ドル、上半期合計では13億ドルを支出していますが、これをこなしての増益です。

セールスフォース ドットコム(CRM)271.10ドル74.3

【企業向けソフトウェア大手、NYダウに新規採用】

・企業向けに販売支援(顧客関係管理)、顧客サービス支援、マーケティング支援などのソフトウェアをクラウドで提供する企業で、顧客関係管理ソフトウェアでは世界最大です。企業のクラウド採用拡大を受けて高成長が続いています。アップルの株式分割によって低下する情報技術セクター比率の低下を埋めるためにNYダウに新規採用されます。

・5-7月期の決算発表では売上高が前年同期比29%増と引き続き高い伸び率となったほか、営業利益率の改善もみられました。また、同社が「新型コロナ危機とその先の世界を見据えた新しいソリューション」であるとしている「Work.com」について経営陣から「凄まじい成長」がみられたとのコメントがあったことや、2021年1月期の業績見通しが引き上げられたことで、同社が新型コロナで激変している経済環境にも適切に対応できていることが示唆されました。

アムジェン(AMGN)253.12ドル23.2

【バイオ医薬品大手、ファイザーに替えてNYダウに採用】

・バイオ医薬品大手で、遺伝子組み換え技術を基盤にした医薬品の開発に強みをもちます。関節リウマチ治療薬「エンブレル」、白血球増殖薬「ニュータスタ」、骨粗しょう症治療薬「プロリア」などが主力薬です。パイプラインのがん治療薬「AMG510」は直近発表された臨床試験結果を受けて市場の熱狂は後退しています。8/31(月)からファイザーに替えてNYダウに採用されます。

・4-6月期は、売上が前年同期比6%増、調整後EPSが同7%増でした。同社の製品は注射で投与するものが多く、COVID-19のパンデミックによる病院への訪問減の影響を受けましたが、買収した乾癬治療薬「オテズラ」の貢献で増収・増益の形です。20年12月期のガイダンスは売上を維持、調整後EPSは若干上方修正しています。

ハネウェル インターナショナル(HON)168.38ドル24.4

【資本財のコングロマリット、レイセオンに替えてNYダウに採用】

・航空機エンジン、交通システム、ビルシステム、機能材料・テクノロジーなどの資本財企業です。売上の24%を占める民間航空機向けの事業では厳しい状況が続いています。しかし、需要先が幅広い産業に分散していること、業務執行の対応力が高いこと、90億ドル近い現金を擁する強固なバランスシートにより、他の資本財企業に比べてグローバルリセッションをうまく乗り切れるポジションにあると考えられます。

・デジタル分野にフォーカスした投資とボルトオン型買収(補完的な買収)によって、ソフトウェアで価値を生み出す資本財企業を目指しています。調整後営業利益率は21%と業界平均の14%を上回り、トップ企業との差を縮めつつあります。4-6月期は航空機部門の売上が前年同期比27%減となったほか他部門も売上が減少、EPSは同40%減と落ち込みました。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。ホームデポとセールスフォースドットコムは21年1月期、その他は20年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
31(月) ・日本鉱工業生産(7月)
・中国製造業・非製造業PMI(8月)
ズームビデオコミュニケーションズ
9月
1(火)
・財新中国製造業PMI(8月)
・ユーロ圏失業率(7月)
・ユーロ圏消費者物価指数(8月)
・米ISM製造業景気指数(8月)
・米自動車販売台数(8月)
 
2(水) ・ユーロ圏生産者物価指数(7月)
・米ADP雇用統計(8月)
・米製造業受注(7月)
・米地区連銀経済報告(ベージュブック)
クラウドストライクホールディングス
3(木) ・ユーロ圏小売売上高(7月)
・米貿易統計(7月)
ドキュサイン、ブロードコム
4(金) ・米雇用統計(8月)  
7(月) ・米国市場休場(レイバーデー)
・中国貿易統計(8月)
 
8(火) ・ユーロ圏実質GDP(4-6月期、確報値)
・NFIB中小企業楽観指数(8月)
・米消費者信用残高(7月)
 
9(水) ・中国生産者・消費者物価指数(8月)
・米求人労働異動調査(7月)
・日本工作機械受注(8月)
 
10(木) ・日本機会受注(7月)
・ECB主要政策金利
・米生産者物価指数(8月)
・米新規失業保険申請件数(9月5日に終わる週)
・中国資金調達総額(8月)
 
11(金) ・米消費者物価指数(8月)
・米月次財政収支(8月)
クローガー

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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