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今週の5銘柄 ~大幅な株価上昇となっている最近のIPO銘柄をご紹介~

2020/12/14
投資情報部 榮 聡

先週は市場で期待が高まっていた追加経済対策の合意が実現せず、また、当局によるフェイスブック提訴がテクノロジー株の利食いを誘うなどして下落となりました。今週はCOVID-19ワクチンの接種開始、追加経済対策の実現、FOMC(米連邦公開市場委員会)、米中の経済指標などが注目材料です。

今回は大幅な株価上昇となっている最近のIPO銘柄から、ドアダッシュ A(DASH)エアビーアンドビー(ABNBシースリーエーアイ A(AI)シーア(SEER)ヤトセン ホールディング ADR(YSG)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 1週 1ヵ月 3ヵ月
エネルギー 1.1% 20.4% 25.0%
通信サービス 0.1% 3.8% 11.7%
生活必需品 -0.3% -0.3% 3.8%
公益事業 -0.4% -6.2% 4.3%
資本財・サービス -0.5% 3.4% 12.9%
ヘルスケア -0.8% -0.5% 5.4%
S&P500 -1.0% 2.2% 8.3%
一般消費財・サービス -1.2% 1.2% 4.5%
素材 -1.2% 2.5% 7.4%
情報技術 -1.4% 2.5% 7.8%
金融 -1.8% 5.2% 13.7%
不動産 -2.9% -3.5% -0.4%
騰落率上位(1週) 騰落率
ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニー 14.0%
オキシデンタル・ペトロリアム 12.4%
イーライリリー 7.8%
フィリップ・モリス・インターナショナル 5.3%
ロウズ 5.2%
騰落率下位(1週) 騰落率
クアルコム -8.5%
サイモン・プロパティー・グループ -6.4%
ゼネラル・モーターズ(GM) -5.6%
マスターカード -4.9%
アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG) -4.7%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

7日(月)、8日(火)はCOVID-19の感染再拡大による経済指標の悪化を受けて物色が成長企業にシフトしてテクノロジー株を多く含むナスダック指数が連日最高値を更新したものの、S&P500指数はもみ合いに終始しました。

一方、9日(水)は連邦取引委員会(FTC)と米48州が合同でフェイスブックを提訴したことからテクノロジー株が主導して下落しました。このほか、英国でのファイザー社製のワクチン接種でアレルギー反応が出たことや米議会が追加経済対策に依然として合意できないことも足を引っ張ったとみられます。

10日(木)は新規失業保険申請件数の増加が嫌気されるもワクチン承認への期待が相場を支え、11日(金)はミシガン大学消費者マインドの改善がポジティブサプライズとなりましたが、追加経済対策に関する合意の遅れが重石となりました。S&P500指数は週間で1.0%の下落でした。

業種指数では、原油価格が一段高となったことから「エネルギー」が騰落率トップでした。全体的には、「通信サービス」「生活必需品」などディフェンシブ色のある業種が相対的に強く、「金融」「素材」など景気敏感業種が相対的に弱い傾向がみられます。

個別銘柄では、ウォルト ディズニー(DIS)が11日(金)に13.6%の上昇となって上場来高値を更新しています。10日(木)のリリースで、インターネット動画の加入が1.37億件(うち、「Disney+」は87百万件)と予想を上回るペースで拡大しており、2024年の目標を3.0~3.5億件に引き上げるとしたことが好感されました。

経済指標では、中国の11月貿易統計で輸出は前年比21.1%増(予想は同12.0%増)、輸入は同4.5%増(予想は同7.0%増)と輸出が好調でした。米国の12月ミシガン大学消費者マインドは前月の76.9から81.4へ予想外に改善しました。COVID-19の感染急拡大を受けて76.5へ悪化と見込まれていましたが、ワクチン開発進展が希望の光となったようです。

今週の米国株式市場

COVID-19ワクチンの接種開始、追加経済対策の実現、FOMC(米連邦公開市場委員会)、米中の経済指標などが注目材料です。

先週の下げは基本的には過去1ヵ月余りの株価上昇に対する過熱感を冷ますための調整と考えられ、今週は相場の底堅さを試すことになるとみられます。ワクチン開発の進展を受けて経済回復を織り込む、上昇基調は継続すると期待できるでしょう。

COVID-19ワクチンについては、FDA(米食品医薬品局)が11日(金)夜にファイザー社製のワクチンの緊急使用を承認したと発表、14日(月)から接種が始まる見込みです。また、モデルナ社製のワクチンも17日(木)に承認される見通しです。接種は医療従事者等が優先され、一般国民には来年2~3月頃からと見込まれています。

追加経済対策については、中長期的にはワクチンの普及によって経済回復が見込まれるものの、足もとの経済活動の落ち込みを支えるために必要と考えられます。仮に今週も実現しないと相場には再びネガティブな影響が想定されます。FOMCでは、金融緩和姿勢の継続が期待されており、最近のCOVID-19新規感染者数の再拡大と経済指標の悪化をどのように評価しているかが注目されています。

テクノロジー大手に対する物色動向も注視しておく必要がありそうです。とくに当局から「インスタグラム」と「ワッツアップ」の買収が反競争的として事業売却を勧告されているフェイスブックは要注意でしょう。独占禁止法に関する調査は1年以上前に始まっており、今回の動きも想定されていたため、株価は週間で2.2%の下落にとどまっています(図表3)。

ただ、国の内外を問わず米国のテクノロジー大手に対する視線が厳しくなっているため、業績は良くても買われにくい状態が続きやすいとみられます。ご参考に当社特集レポートの『GAFAの独占禁止法調査開始、「深刻になりうる会社」と「そうでもない会社」を読まれることをお勧めします。

経済指標では、12/15(火)に中国の11月鉱工業生産(前年比7.0%増の予想)・小売売上高(前年比5.0%増の予想)・固定資産投資(前年比2.6%増の予想)、12/16(水)に米国の11月小売売上高(前月比0.3%減の予想)、12/17(木)に米国の11月住宅着工件数・建設許可件数(着工件数は前月比0.2%減、建設許可件数は前月比0.9%増の予想)、などの発表が予定されています。

企業決算では、フェデックス、アクセンチュア、ナイキなどの発表が予定されています。

今週の5銘柄

先週全般相場は調整に転じましたが、金余り現象を背景として市場の物色意欲は強いとみられ、新規上場市場は活況でした。

上場初日の公募価格からの株価上昇率は、エンタープライズAIのシースリーエーアイが120%、フードデリバリーのドアダッシュが86%、民泊仲介のエアビーアンドビーが113%と大幅な上昇となっています。

そこで、上記の3銘柄を含み10月後半以降のIPO銘柄から、ドアダッシュ A(DASH)、エアビーアンドビー(ABNB)、シースリーエーアイ A(AI)、シーア(SEER)、ヤトセン ホールディング ADR(YSG)を選んでご紹介いたします。なお、後半の3社は現在のところ、Bloombergに業績予想のコンセンサスが掲載されていない点にはご注意ください。

上場直後で市場センチメントが最高潮に達しているものも多いため当面の投資には注意を要しますが、ドアダッシュを除いて上場企業として新規性も高く、中期的にも注目できる企業と考えるため、ご紹介する次第です。

図表3 フェイスブックの株価チャート(日足、6ヵ月)

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

今週の注目銘柄

銘柄 株価
(12/11)
予想PER
(倍)
ドアダッシュ A(DASH)175.00ドル546.9

【フードデリバリーの米最大手】

・2013年にカリフォルニア州パロアルトで創業したフードデリバリーの会社です。現在、39万の事業者、18百万の消費者、百万を超える「Dasher」(同社の配達人)をつなげるビジネスを展開しています。会社資料によると、米国での市場シェアは2018年1月には17%で、グラブハブの39%、ウーバーイーツの27%に次ぐ3番手でしたが、2020年10月には50%に躍進、ウーバーイーツの26%、グラブハブの16%を大きく上回っています。

・大都市よりも市場の成長が高い大都市の郊外および小都市を中心に展開し、また、大手チェーンだけでなく独立した飲食店とも取引していることがシェア獲得に有利に働いているとみられます。2019年から2020年1-9月期にかけて、売上は8.9億ドルから19億ドルへ増加、粗利が3.4億ドルから9.4億ドルへ増加、純損失が6.7億ドルから1.5億ドルへ減少しています。12/9(水)に新規上場、公募価格の102ドルから12/11(金)終値175ドルに上昇しています。

エアビーアンドビー(ABNB)139.25ドル- (赤字予想のため)

【民泊仲介をグローバルに展開】

・2008年にサンフランシスコで創業した会社で、宿泊施設・民宿を貸し出す人と利用者を結びつけるサイトを運営しています。2020年9月末時点で世界220の国・地域における10万の都市で560万件の宿泊物件が登録されています。ホストが得る予約料金から一定の比率で徴収する手数料が同社の収益となっています。COVID-19のパンデミックによって旅行需要が減退している中ではありますが、通常のホテルなどに比べて需要の落ち込みは相対的に小さいとされます。

・民泊の予約では圧倒的なトップですが、宿泊場所の予約という市場に広げてみると、Booking.com、Agoda.com、エクスペディアなどグローバルに展開している旅行予約サイトがあり、競合状況は非常に厳しいと言えます。「FANG」のようなインターネットのグローバルトップ企業になれるかはまだ見極める必要がありそうです。12/10(木)に新規上場、公募価格の68ドルから12/11(金)終値139.25ドルに上昇しています。

シースリーエーアイ A(AI)119.58ドル- (業績予想なし)

【エンタープライズAIの会社】

・2009年に元オラクルのトーマス・シーベル氏が創業、エンタープライズAI(人工知能)が開発できるソフトウェアをSaaSで提供している会社です。エンタープライズAIは企業が自社の業務のために開発するAIです。エンタープライズAIの市場は2020年の180億ドルから2024年の440億ドルへ年平均成長率24%で成長すると予想されています(IDCによる予想)。

・AIに関するサービスは、グーグル、IBM、マイクロソフト、アマゾンなどのIT大手が提供する一方、専業企業の上場はなかったため、注目を集めているとみられます。20年4月期の業績は、売上が156百万ドル、純損失が69百万ドルです。12/9(水)に新規上場、公募価格の42ドルから12/11(金)終値119.58ドルに上昇しています。

シーア(SEER)75.65ドル- (業績予想なし)

【プロテオーム解析のツールを提供】

・2017年3月に創業したライフサイエンスの企業で、プロテオーム解析のツール「プロテオグラフ」を主力製品としています。プロテオーム(proteome)とはprotein(タンパク質)とgenome(ゲノム)を組み合わせた造語で、ゲノムが一個の生物の持つ全ての遺伝情報を指すのに対し、プロテオームは、細胞内で発現している(発現する可能性をもつ)全タンパク質のことを指します。

・ゲノム解析で得られる情報は、特定のタンパク質を作る可能性をもった遺伝子があるという情報ですが、プロテオーム解析によって実際に細胞内で働いているタンパク質についての情報を付加することにより、生物のゲノム情報は産業に利用しやすくなると考えられます。生命科学に影響力をもつ科学者に対して2020年10月に製品を提供し始めたところであるため、20年1-9月期の業績は、売上が32万ドル、純損失が20百万ドルです。12/4(金)に新規上場、公募価格の19ドルから12/11(金)終値75.65ドルに上昇しています。

ヤトセン ホールディング ADR(YSG)16.40ドル- (業績予想なし)

【グローバル展開を狙う中国の化粧品会社】

・2016年に創業した中国の化粧品企業で、カラーコスメティクスやスキンケアの分野で「Perfect Diary(完美日記)」「Little Ondine」「Abby's Choice」などのブランドを展開しています。消費者への直接販売が中心で、20年1-9月期の販売顧客数は23.5百万人、SNSのファンベースは48百万人に達しています。

・主力の「Perfect Diary」が中国ECサイトのカラーコスメティクスの分野でトップを獲得、中国だけでなくグローバル市場に展開しようとしていることから、注目を集めています。20年1-9月期の業績は売上が32.7億人民元、純損失が11.6億人民元です。11/19(木)に新規上場、公募価格の10.5ドルから12/11(金)終値16.40ドルに上昇しています。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。ドアダッシュとエアビーアンドビーは21年12月期です。シースリーエーアイ、シーア、ヤトセンホールディングはBloombergに業績予想のコンセンサスが掲載されていません。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
14(月) ・日銀短観(12月)
・中国新築住宅価格(11月)
・ユーロ圏鉱工業生産(10月)
・アップルが「Apple Watch」と連携するフィットネス動画のサブスクリプションサービス「Fitness+(フィットネスプラス)」をスタート
15(火) ・中国鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(11月)
・中国調査失業率(11月)
・ニューヨーク連銀製造業景気指数(12月)
・米鉱工業生産(11月)
・アップルがオーバーイヤー型のワイヤレスヘッドフォン「AirPods Max(エアポッドマックス)」を発売
16(水) ・日本貿易統計(11月)
・じぶん銀行日本製造業PMI(12月)
・マークイットユーロ圏製造業PMI(12月)
・ユーロ圏貿易収支(10月)
・米小売売上高(11月)
・マークイット米製造業PMI(12月)
・米NAHB住宅市場指数(12月)

・米FOMC政策金利
 
17(木) ・EU27ヵ国新車登録台数(11月)
・米住宅着工・建設許可件数(11月)
・フィラデルフィア連銀景気指数(12月)
・新規失業保険申請件数(12月12日に終わる週)
フェデックス、アクセンチュア
18(金) ・米先物・オプション清算日
・独IFO企業景況感(12月)
・日銀金融政策
ナイキ
21(月) ・シカゴ連銀全米活動指数(11月) ・テスラがS&P500指数に組み入れ
22(火) ・ユーロ圏消費者信頼感(12月)
・米実質GDP(7-9月期、確報値)
・米コンファレンスボード消費者信頼感(12月)
・米中古住宅販売件数(11月)
 
23(水) ・米個人所得・個人支出(11月)
・米PCEコアデフレータ(11月)
・米ミシガン大学消費者マインド(12月、確報値)
・米新築住宅販売件数(11月)
 
24(木) ・米国市場短縮取引(クリスマスイブ)
・米新規失業保険申請件数(12月19年日に終わる週)
・米耐久財受注(11月)
 
25(金) ・米国市場休場(クリスマス)  

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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