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今週の5銘柄 ~「GAFAM」は通期EPSの上方修正でバリュエーション(PER)が改善~

2021/5/17
投資情報部 榮 聡

先週はインフレ懸念や長期金利の上昇で前半は調整、後半は長期金利の低下と押し目買いで反発に転じました。今週はFOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨、大手テクノロジー株の動向、大手小売企業の2-4月期決算、などが注目されます。

今回は1-3月期の好決算を受けて通期の予想EPSが上方修正されてバリュエーション(PER)が改善した「GAFAM」、アップル(AAPL)アルファベット A(GOOGL)アマゾン ドットコム(AMZN)フェイスブック A(FB)マイクロソフト(MSFT)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
生活必需品 0.4% 1.4% 7.5%
金融 0.3% 7.0% 17.8%
素材 0.1% 6.4% 18.5%
公益事業 -0.4% -2.3% 6.3%
ヘルスケア -0.6% 1.5% 5.9%
資本財・サービス -0.6% 3.5% 16.4%
エネルギー -0.8% 9.9% 15.5%
不動産 -1.0% 1.3% 10.8%
S&P500 -1.4% -0.3% 6.2%
コミュニケーションサービス -2.0% 0.3% 5.5%
情報技術 -2.2% -5.2% -0.7%
一般消費財・サービス -3.7% -5.1% -0.3%
騰落率上位(5日) 騰落率
オールステート 5.3%
ギリアド・サイエンシズ 3.0%
キンダー・モルガン 2.9%
シュルンベルジェ 2.9%
チャーター:コミュニケーションズ 2.4%
騰落率下位(5日) 騰落率
テスラ -12.3%
ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニー -6.0%
クアルコム -5.6%
ゼネラル・モーターズ(GM) -5.1%
ホーム・デポ -4.6%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

物価指標の発表や米国債の入札を控えて週初よりインフレ高進の可能性が気にされて、5/10(月)にはテクノロジー株への売りが再燃し、5/11(火)には株価の下落は景気敏感株にも広がって市場全体が調整モードとなりました。

5/12(水)は4月の消費者物価指数が市場予想を上回る上昇となって市場の懸念が顕在化、米10年国債利回りは1.7%近くまで上昇して主要3指数とも下落しました。一方、5/13(木)、5/14(金)は市場予想を下回る弱い経済指標で米10年国債利回りが反落する中、押し目買いが入って主要3指数とも反発しました。

S&P500指数は週間で1.4%の下落、同じくNYダウは1.1%、ナスダック指数は2.3%の下落でした。

業種指数では、半導体やソフトウェアなどのテクノロジー株が株価下落を主導したことから、「生活必需品」「公益事業」のディフェンシブ業種と「金融」「素材」の景気敏感業種が揃って相対的に強いという珍しい形となりました。個別銘柄では、米中対立の激化を受けて上海工場の拡張計画を凍結したテスラ(TSLA)が10%を超える下落となりました。

経済指標では、米国の4月消費者物価指数が前年比4.2%増と3月の同2.6%増から上昇が加速しました。COVID-19の影響からの反動増を含むため加速が見込まれていましたが、市場予想の同3.6%増を上回りました。食品・エネルギー除くコア指数も前月比0.3%増の市場予想に対して0.9%増と上振れています。

一方、米国の4月小売売上高は、前月比0%で同1.0%増の市場予想を下回り、また、5月ミシガン大学消費者マインドは前月の88.3から82.8に大幅に低下、4月鉱工業生産も前月比0.7%増と同0.9%増の市場予想を下回りました。いずれもインフレ圧力に対する懸念を抑える方向に作用して、5/14(金)の米10年国債利回りの低下を促したとみられます。

今週の米国株式市場

FOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨、大手テクノロジー株の動向、大手小売企業の2-4月期決算、などが注目されます。

FOMC議事要旨では、量的緩和の縮小に関する議論が注目です。金融政策決定に関する投票権のあるメンバーではありませんが、ダラス連銀のカプラン総裁は「検討を開始したい」と先週を含め何回も発言していることが報道されています。メンバーの中でどの程度の勢力なのか気になります。

大手テクノロジー株は株価の調整が一巡したか注目です。下掲の「今週の5銘柄」で述べる通り、「GAFAM」のバリュエーションは改善したことから、下値抵抗が増していると考えられます。一方、長期金利の上昇やインフレ懸念から、さらに下がるようだとナスダック指数はダブルトップのテクニカルに悪い形が完成してしまうため、踏ん張りどころと言えるでしょう。

大手小売企業の決算では、ウォルマート、ターゲット、ホームデポ、ロウズなど大手小売企業の決算発表が予定されています。売上が好調に推移していることはほぼ間違いないとみられますが、マージンの動向やインフレや消費の見通しなどマクロ経済に対する示唆が注目点となりそうです。

S&P500指数採用企業の1-3月期EPSは、発表済み企業と未発表企業の予想の混合で、前年同期比50.3%増となっています。決算発表前3月末時点の予想は同23.7%増でしたから26.6%ポイントの大幅な上方修正です。2021年通年の予想EPSも3月末時点の176ポイントから188ポイントへ、2020年の予想EPSも210ポイントまで上方修正されています。

S&P500指数の予想PERは2021年基準で22.2倍、2022年基準では19.8倍と計算されます。2021年基準では割高感が残るものの、2022年基準では許容範囲と言えるかもしれません。

経済指標では、5/17(月)に中国の4月鉱工業生産(前年比10.0%増の予想)・小売売上高(前年比25.0%増の予想)・固定資産投資(前年比20.0%増の予想)、5/18(火)に日本の1-3月期実質GDP(前期比年率4.5%減の予想)、ユーロ圏の1-3月期実質GDP(前年比1.8%減の予想)、米国の4月住宅着工・建設許可件数(着工件数は前月比2.0%減、許可件数は同0.6%増の予想)、5/21(金)に米国の中古住宅販売件数(前月比1.1%増の予想)、などの発表が予定されています。

企業決算では、上記の大手小売企業のほか、アプライドマテリアルズ、シスコシステムズ、アナログデバイセズ、キーサイトテクノロジーズなどテクノロジー系も発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は「GAFAM」、つまり、アルファベットアマゾンドットコムフェイスブックアップルマイクロソフトを取り上げ、バリュエーション(PER)が改善している状況をご紹介いたします。

GAFAMの2021年1-3月期決算は非常に好調でした。5社の業績の前年同期比変化率を単純に平均すると売上は前年同期比40%増、EPSは同122%増、市場予想との比較で売上は8%増、EPSは45%増といった具合です。

一方、決算発表後の株価の反応は、フェイスブックが大きく上昇した以外は、好決算の割に渋いものとなりました。市場で株価のバリュエーション(PER)が高いことが気にされており、それを押し上げているのがGAFAMだということが背景にあるとみられます。

しかし、1-3月期の好決算を受けて通期の予想EPSが上方修正されたため、バリュエーション(予想PER)は改善しています。その状況を確認したのが図表3になります。

インフレ懸念が高まったり、長期金利が上昇する局面では、相対的に売られやすい傾向は続くと思われますが、予想PERが調整したことで下値抵抗は増したと考えられます。インフレ懸念や長期金利が落ち着いている局面では、物色される可能性もありそうです。

図表3 「GAFAM」のバリューエーション(PER)改善

  通期EPSの
修正率
(4週間)
株価
騰落率
(1ヵ月)
予想PER
(1ヵ月前)
予想PER
(現在)
予想PER
変化率
(%)
アップル 14.8 -3.5 29.7 25.0 -15.9
アルファベット 19.2 1.6 28.7 24.5 -14.7
アマゾン・ドット・コム 8.4 -3.3 55.0 49.1 -10.8
マイクロソフト 3.7 -2.9 34.6 32.4 -6.3
フェイスブック 11.0 4.3 24.0 22.6 -6.0

注:5/14(金)時点のデータによります。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

今週の注目銘柄

銘柄 株価
(5/14)
予想PER
(倍)
アップル(AAPL)127.45ドル25.0

【iPhone販売が予想以上に好調】

・2021年1-3月期は、売上が前年同期比54%増、EPSが同119%増で、市場予想をそれぞれ16%、41%上回りました。主力のiPhoneが同66%増となって市場予想を17%上回ってけん引したほか、サービスも同27%増と好調でした。業績好調を受けて、四半期配当を従来比7%引き上げ、自社株買いプログラムに900億ドルを新たに追加しています。

・2021年1-3月期は、地域セグメント、製品・サービスセグメントのいずれも前年同期比25%以上の伸びを示し、使用中の保有台数は過去最高を更新しました。2021年9月期はハイエンドのデジタル機器の販売好調により、前年比29%の売上成長が見込まれています。ただし、4-6月期の売上はコンセンサス予想で前年同期比22%増と前四半期からモメンタムが低下する見通しです。

アルファベット A(GOOGL)2278.38ドル24.5

【ネット広告市場が予想を上回る伸び】

・2021年1-3月期の売上は前年同期比35%増と10-12月期の同24%増から大幅に加速しました。前年同期はパンデミックによる混乱で企業広告が当初抑えられたことに加え、その後の消費者によるデジタルメディアへの関与の高まりが反映されていると考えられます。YouTubeの広告収入が同49%増と伸びたほか、クラウドも同46%増となって全体をけん引しています。500億ドルの自社株買いを追加で承認しました。

・コアの検索広告事業を含め、YouTube事業、クラウド事業、「Google Play」ストア事業など幅広い事業により成長していくことが期待されます。その意味では、独占禁止法のリスクはフェイスブックよりも低いと考えられます。一方、欧州では独占禁止法違反で過去何度も罰金を課されていることから、企業行動の修正を行う必要があるとみられます。

アマゾン ドットコム(AMZN)3222.90ドル49.1

【ネット通販の収益性が改善】

・2021年1-3月期の売上は前年同期比44%増、EPSは同3.2倍でした。巣ごもりでネット通販の需要が強い状態が続き、北米、海外ともネット通販の収益性が大きく改善しました。アマゾンウェブサービスの売上は前年同期比32%増でした。4-6月期の売上ガイダンスはアマゾンプライムデーの開催を前提に前年同期比24~30%増の予想です。

・経済再開につれて21年の下半期の売上成長は低下する見通しですが、通年の売上は前年比27%増、EPSは同57%増が予想されています。アマゾンウェブサービスに関しては、企業によるITシステムのクラウド化が加速する可能性があり、その恩恵を受けると期待されます。株価は昨年8月から横ばい圏で推移しており、動き出すのは巣ごもり需要の剥落の程度が見えてきてからでしょうか。

フェイスブック A(FB)315.94ドル22.6

【広告単価が前年同期比30%も上昇】

・2021年1-3月期の売上は前年同期比48%増と、2020年10-12月期の同33%増から大幅に加速、EPSは同93%増となりました。同46%増となった広告収入をけん引しているのは、広告の単価が同30%増となったことで、消費者のネット関与の強まりと企業の広告活動の活発化が背景にあるとみられます。広告の数量は同12%増でした。単価上昇によって営業利益率は43%と、前年同期の33%から大幅に上昇しています。

・広告先メディアのTVからネットへのシフトが加速する中で、ソーシャルメディアでトップのポジションを保持してディスプレイ広告(ブランド広告に使われる)に強い同社への恩恵が大きくなっていると考えられます。独占禁止法による是正措置のリスクを反映して予想PERは20倍台前半、来期予想基準では20倍割れまで低下しています。

マイクロソフト(MSFT)248.15ドル32.4

【企業のDXが進む中、良いポジションを確保】

・2021年1-3月期の売上は前年同期比19%増、EPSは同39%増と好調が持続しました。成長をけん引するクラウド事業はアジュール事業の売上が前年同期比50%増など拡大モメンタムは横ばいでしたが、「Windows」などパソコン関連事業のモメンタムが強まって市場予想を上回りました。

・今回の四半期決算では、市場予想に対するEPSの超過は10%にとどまり、40%を超える他の4社に比べて地味な決算でした。しかし、アマゾンに次ぐクラウド事業、パソコンのOS、「Office」や「Teams」などのソフトウェア群を併せ持つことは、企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を一層進める中で優位なポジションを確保していると考えられ、持続的な高成長が期待されます。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、アップルが2021年9月期、その他は2021年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
17(月) ・中国鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(4月)
・中国調査失業率(4月)
・中国新築住宅価格(4月)
・日本工作機械受注(4月)
・米ニューヨーク連銀製造業景気指数(5月)
・米NAHB住宅市場指数(5月)
 
18(火) ・日本実質GDP(1-3月期、改定値)
・ユーロ圏実質GDP(1-3月期、改定値)

・米住宅着工・建設許可件数(4月)
ホームデポ、ウォルマート
19(水) ・EU27ヵ国新車登録台数(4月)
・ユーロ圏消費者物価指数(4月)
・FOMC議事録(4月27、28日分)
ターゲット、ロウズ、シスコシステムズ、アナログデバイセズ
キーサイトテクノロジーズ
20(木) ・日本貿易統計(4月)
・日本機械受注(3月)
・米フィラデルフィア連銀景気指数(5月)
・米新規失業保険申請件数(5月15日に終わる週)
アプライドマテリアルズ、ロスストアーズ
21(金) ・じぶん銀行日本製造業PMI(5月)
・マークイットユーロ圏製造業PMI(5月)
・マークイット米国製造業PMI(5月)
・米中古住宅販売件数(4月)
プラグパワー(E)、ディア
24(月) ・シカゴ連銀全米活動指数(4月)  
25(火) ・ドイツIFO景気指数(5月)
・米S&Pコアロジック住宅価格指数(5月)
・米新築住宅販売件数(4月)
・コンファレンスボード消費者信頼感(5月)
 
26(水)   オクタエヌビディア
27(木) ・中国工業部門利益(4月)
・米新規失業保険申請件数(5月22日に終わる週)
・米耐久財受注(4月)
・米実質GDP(1-3月期、改定値)

・米中古住宅販売成約(4月)
セールスフォースドットコム、コストコホールセール
ダラーゼネラル、ベストバイ
28(金) ・ユーロ圏景況感(5月)
・米個人所得・個人支出(4月)
・米PCEコアデフレータ(4月)
・ミシガン大学消費者マインド(5月、確報値)
 

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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