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今週の5銘柄 ~テクノロジー株の回復は「アーク銘柄に」も波及!?~
投資情報部 榮 聡
先週は米10年国債利回りの低下を受けて前半はテクノロジー株の戻りが目立ち、後半はバイデン大統領が6兆ドルの予算案を出すと伝わり景気敏感株が物色されました。今週はS&P500指数の高値更新なるか、インフレ懸念の行方(5月の米雇用統計)、米中の企業景況感、などが注目されます。
今回はテクノロジー株の回復がアーク銘柄に代表されるような「ハイフライヤー」(株価の動きに投機的要素が大きい銘柄を指す)にも波及するか注目されていることから、アークイノベーションETFの組入上位銘柄から、ロク(ROKU)、スクエア(SQ)、ショッピファイ A(SHOP) 、テスラ(TSLA)、テラドック ヘルス(TDOC)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
コミュニケーションサービス | 2.5% | -0.1% | 10.9% |
一般消費財・サービス | 2.2% | -3.9% | 6.6% |
不動産 | 2.1% | 1.1% | 16.2% |
資本財・サービス | 1.9% | 2.9% | 15.9% |
情報技術 | 1.6% | -1.0% | 5.8% |
S&P500 | 1.2% | 0.5% | 10.3% |
金融 | 1.1% | 4.7% | 17.6% |
素材 | 0.6% | 5.0% | 18.7% |
エネルギー | 0.0% | 4.9% | 8.2% |
生活必需品 | -0.4% | 1.6% | 11.7% |
ヘルスケア | -0.7% | 1.7% | 9.6% |
公益事業 | -1.6% | -2.8% | 11.6% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
フォード・モーター | 9.0% |
エヌビディア | 8.4% |
テスラ | 7.6% |
セールスフォース・ドットコム | 7.0% |
ゼネラル・エレクトリック(GE) | 6.3% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
バイオジェン | -5.5% |
アムジェン | -5.2% |
メルク | -4.2% |
ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス | -4.0% |
ギリアド・サイエンシズ | -3.8% |
先週の米国株式市場
週初から5/26(水)にかけて、バイデン大統領がインフラ投資計画を2.25兆ドルから1.7兆ドルに縮小する提案をしたこと、複数のFRB当局者がインフレは一時的として金融緩和策への支持を表明したことから、米10年国債利回りが1.6%割れまで低下、テクノロジー株(グロース株)が物色されました。
一方、5/27(木)は、新規失業保険申請件数が4週連続の低下となったことに加え、バイデン大統領が予算教書で6兆ドルの予算案を提出予定と伝わって、米10年国債利回りが反発、景気敏感株(バリュー株)が物色されました。
5/28(金)にはインフレ指標として注目された4月PCEコアデフレータ(個人消費支出物価指数)が前月比0.7%増、前年比3.1%増と市場予想を上回りましたが、4月消費者物価指数が上振れたときほどのインパクトはなく、米10年国債利回りは発表当日低下して、株式は堅調となりました。
S&P500指数は週間で1.2%の上昇、同じくNYダウは0.9%、ナスダック指数は2.1%の上昇でした。
業種指数では、コムキャスト、ウォルトディズニーなどがけん引した「コミュニケーションサービス」、テスラ、フォード、GMなど自動車株が上昇した「一般消費財・サービス」が上位となりました。一方、「公益事業」「ヘルスケア」「生活必需品」などディフェンシブ業種は売られました。
個別銘柄では、EV向けの投資額を220億ドルから300億ドルに引き上げるとしたフォード モーター(F)が2週連続の騰落率トップとなったほか、実績・ガイダンスとも市場予想を上回る好決算を発表したエヌビディア(NVDA)も大きく上昇しました。
経済指標では、米国の4月耐久財受注が前月比1.3%減と市場予想の同0.8%増の市場予想を下回ったほか、4月の新築住宅販売が前月比5.9%減、5月コンファレンスボード消費者信頼感が前月からやや低下するなど、弱めのものが多かった印象です。
一方、新規失業保険申請件数は4週連続の低下となり、雇用市場回復の順調さが確認されています。今週発表の雇用統計が前月から改善すると示唆する内容でした。
今週の米国株式市場
S&P500指数の高値更新なるか、インフレ懸念の行方(5月の米雇用統計)、米中の企業景況感、などが注目されます。
S&P500指数の高値は5/7(金)の4,238.04ポイントで、5/28(金)終値の4,204.11ポイントはあと0.8%まで迫っています。4,100~4,200ポイントのレンジで1ヵ月半もみ合ってきたため、高値更新となった場合は上に走る可能性が高く、注目です。
前月4月雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比26.6万人にとどまりました。経済再開で雇用の需要が高い一方、手厚い失業保険給付により労働供給が不足して、インフレ懸念を高めたと言われています。5月の非農業部門雇用者数が増えて人出不足(供給不足)によるコスト増圧力への懸念が和らぐか、注目されます。
米国の5月ISM製造業・非製造業景気指数、中国の製造業・非製造業PMIとも前月から横ばいないし若干の改善予想となっています。世界経済の順調な回復が確認できると見込まれています。
経済指標では、5/31(月)に中国の5月製造業・非製造業PMI(製造業は前月の51.1から横ばい、非製造業は前月の54.9から55.1へ改善の予想)、6/1(火)に米国の5月ISM製造業景気指数(前月の60.7から60.9に改善の予想)、6/3(木)に米国の5月ISM非製造業景気指数(前月の62.7から63.0に改善の予想)、6/4(金)に米国の5月雇用統計(非農業部門雇用者数は前月比65.0万人増の予想)、などの発表が予定されています。
企業決算では、ズームビデオコミュニケーションズ、シースリーエーアイ、クラウドストライクホールディングス、ドキュサイン、プラグパワーなどの発表が予定されています。
S&P500指数の高値見通しを上方修正
筆者は年初来、S&P500指数の今年の高値見通しを4,000ポイントとしてきましたが、4,400ポイントに引き上げます。理由は、以下の3点です。
(1)1-3月期決算の好調を受けて、今期・来期のコンセンサス予想EPSが大きく上方修正され予想PERが低下したこと、
(2)業績モメンタムが予想以上に強いことから、従来考えていたより高いPERが許容されそうなこと、
(3)懸念していた「テーパリング」(FRBによる資産購入の縮小)に対する市場の反応が乏しいこと、
これまで市場価格が高値目標を超えても慎重に見てきた理由は、「テーパリング」が市場で織り込まれ始めると許容される予想PERが低下して、株価調整につながると考えていたことです。しかし、FOMC議事要旨で議論開始の可能性が言及され、複数のFOMCメンバーが議論の開始を促す発言をする中でも、市場の反応は限定的でした。
高値見通しを4,400ポイントとする根拠は、現在209ポイントとなっているS&P500指数の来期予想EPSが、今年末にかけて220ポイントまで上方修正され、予想PER20倍まで買われる場面があると見込むことによります。
今週の5銘柄
テクノロジー株は「GAFAM」「半導体株」などが株価調整から戻り歩調にありますが、筆者が聞いているBloombergラジオのコメントなどから株価回復は「ハイフライヤー」にまで及ぶのかが市場の注目を集めているようです。
「ハイフライヤー」は、「株価の動きに投機的要素が大きい銘柄」とされ、文脈などからアーク・インベストメントのアークイノベーションETFに組み入れられている銘柄などを指しているようです。
成長ストーリーが魅力的で実際に高成長している一方で、バリュエーションが非常に高く、株価が市場のセンチメントの変動に影響を受けやすい銘柄群と考えられます。
アークイノベーションETFの値動きに代表させてみると、2/12(金)終値の156.56ドルから5/13(木)終値99.48まで36%の大幅な下落となりました。そこから若干戻して5/28(金)終値は112.10ドルです。3月末、5月初の安値近辺にあたり、戻り待ちの売りによって上値抵抗が大きいポイントまで到達しています。
一方、S&P500指数は高値更新の可能性が高まっているとみられること、また、「ハイフライヤー」よりも投機色が強い「meme stock(ミーム・ストック)」と呼ばれる銘柄の株価が急騰していることから、市場センチメントの回復がうかがわれ、「ハイフライヤー」の回復が続く可能性は十分ありそうです。
そこで今回は、アークインベストメントの代表的なETFである、「アークイノベーションETF」の組入れ上位銘柄から、ロク(ROKU)、スクエア(SQ)、ショッピファイ A(SHOP)、テスラ(TSLA)、テラドック ヘルス(TDOC)を選んでご紹介いたします。取り上げた順番は、今期予想EPSが黒字の銘柄を優先した上で、アナリストの目標株価平均値との乖離が大きい順です。
図表3 アーク銘柄の投資指標
今期予想 EPS (ドル) |
来期予想 EPS (ドル) |
来期基準 予想PER (倍) |
アナリスト 目標株価平均 (ドル) |
株価 (5/28) (ドル) |
目標株価 乖離率 (%) |
|
ロク(ROKU) | 0.36 | 1.05 | 330.2 | 452.17 | 346.71 | 30.4 |
スクエア(SQ) | 1.59 | 2.10 | 106.0 | 274.20 | 222.52 | 23.2 |
ショッピファイ A(SHOP) | 4.11 | 4.84 | 256.8 | 1,469.59 | 1,242.87 | 18.2 |
テスラ(TSLA) | 4.49 | 6.49 | 96.3 | 618.16 | 625.22 | -1.1 |
テラドック ヘルス(TDOC) | -2.04 | -0.48 | - | 230.25 | 150.58 | 52.9 |
今週の注目銘柄
銘柄 | 株価 (5/28) |
予想PER (倍) |
---|---|---|
ロク(ROKU) | 346.71ドル | 963.1 |
【動画ストリーミングサービスのアグリゲーター】 ・動画ストリーミングサービスをまとめて表示することで広告収入を得る「プラットフォーム」事業を主力とする企業です。米国の消費者が従来のケーブルTVから動画ストリーミングサービスに移行するにあたり、複数のサービスに加入することが多いため、アグリゲーターの存在意義が生じています。テレビ視聴が動画ストリーミングサービスにシフトする中で成長できる企業と期待されています。アクティブアカウント数は19年末の36.9百万から20年末の51.2百万へ順調な拡大となっています。 ・動画ストリーミングサービスの成長はパンデミック収束後も続く見通しで、今年度は黒字化を達成し、営業利益率は5%に改善する見通しです。今期予想EPSは0.36ドル、来期予想EPSは1.05ドルの予想で、来期基準の予想PERは330.2倍となっています。アナリストの目標株価平均は452.17ドルです。 |
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スクエア(SQ) | 222.52ドル | 139.9 |
【「Cash App」アプリの成長が注目を集める】 ・個人事業主向けのカード決済サービスで創業し、個人間の送金や株式取引、ビットコインの売買ができる「Cash App」アプリへ展開しているフィンテック企業です。2020年末に3,600万人のユーザーを擁する「Cash App」は米国のデジタル・ウォレット市場でリーダーの地位を確保していることから、eコマースや店舗での非接触決済の拡大から恩恵を受けると期待されます。同アプリを通じてチェッキング・アカウント、セービング・アカウントの提供を行い、銀行業に進出すると報じられていることも注目されています。 ・今期の業績は前年にパンデミックの影響で伸びが鈍化したセラー(販売事業者)ビジネスについて、経済活動の正常化を受けて伸びが高まる見通しです。今期予想EPSは1.59ドル、来期予想EPSは2.10ドルで、来期基準の予想PERは106.0倍です。アナリストの目標株価平均は274.20ドルです。 |
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ショッピファイ A(SHOP) | 1242.87ドル | 302.4 |
【デジタル・コマース・ソフトウェア分野でトップ】 ・オンラインストアの構築、管理を行うプラットフォームを提供するカナダの企業で、世界175ヵ国で100万以上のアクティブストアを運営しています。デジタル・コマース・ソフトウェア分野でトップの地位を確保していることから、小売企業によるeコマースへのシフトが加速する中、今後3~5年間は30%以上の売上成長が期待されます。昨年は顧客拡大に苦労がありましたが、今年は景気の回復とともに事業環境は改善すると見込まれます。 ・営業利益率は、2020年12月期実績が4.2%、2021年12月期予想が10.2%に過ぎず、ソフトウェアという事業の性格から考えて、売上を拡大できれば大きな上昇余地を残していると言えます。今期予想EPSは4.11ドル、来期予想EPSは4.84ドルで、来期基準の予想PERは256.8倍です。アナリストの目標株価平均は1,469.59ドルです。 |
||
テスラ(TSLA) | 625.22ドル | 139.2 |
【今期の純利益率は9.5%に高まる予想】 ・米国の電気自動車(EV)メーカー。高級セダンの「モデルS」やSUVの「モデルX」、普及価格セダンの「モデル3」やコンパクトSUVの「モデルY」を製造し販売するほか、ピックアップトラックの「サイバートラック」などの投入も予定されています。EV車市場でトップを走り、テキサスとベルリンに建設中の新工場で年内に生産を開始する計画で、拡大戦略は順調です。一方、競合が強まりつつある点には懸念もあります。 ・前期に黒字化を達成、今期は売上が前年比83%増、純利益率は9.5%にまで高まる予想です。今期予想EPSは4.49ドル、来期予想EPSは6.49ドルで、来期基準の予想PERは96.3倍です。アナリストの目標株価平均は618.16ドルです。 |
||
テラドック ヘルス(TDOC) | 150.58ドル | - |
【バーチャルなヘルスケアサービスを提供する企業】 ・2002年に創業したバーチャルなヘルスケアサービスを提供する企業で、同分野のグローバルリーダーです。電話、ビデオ会議システム、モバイルアプリなどで、遠隔医療、医師の所見などを提供するサービスを提供しています。2021年3月末の米国の有料会員数は51.5百万人、海外市場も含む1-3月期の利用回数は319万回に達しています。 ・2020年12月期の売上はCOVID-19による追い風もあって前年比98%増で、買収したInTouch、Livongoの影響を除いても同75%増と高い成長を実現しています。2021年1-3月期の売上は前年同期比151%増、2021年12月期は前年比83%の売上増が見込まれています。今期予想EPSは-2.04ドル、来期予想EPSは-0.48ドルで、アナリストの目標株価平均は230.25ドルです。 |
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
31(月) | ・米国市場休場(戦没将兵追悼記念日) ・日本鉱工業生産(4月) ・中国製造業・非製造業PMI(5月) ・OECDの経済見通し発表 |
|
6月 1(火) |
・中国財新製造業PMI(5月) ・ユーロ圏失業率(4月) ・ユーロ圏消費者物価指数(5月) ・米ISM製造業景気指数(5月) |
ズームビデオコミュニケーションズ |
2(水) | ・ユーロ圏生産者物価指数(4月) ・米自動車販売台数(5月、3日までに発表) ・米地区連銀経済報告(ベージュブック) |
シースリーエーアイ |
3(木) | ・米ADP雇用統計(5月) ・米ISM非製造業景気指数(5月) |
クラウドストライクホールディングス、ドキュサイン |
4(金) | ・ユーロ圏小売売上高(4月) ・米雇用統計(5月) ・米製造業受注(4月) |
プラグパワー(E) |
7(月) | ・中国貿易統計(5月) ・米消費者信用残高(4月) |
|
8(火) | ・日本工作機械受注(5月、速報値、15日までに発表) ・ドイツZEW景気指数(6月) ・米NFIB中小企業楽観指数(6月) ・米求人労働異動調査(4月) |
|
9(水) | ・中国生産者・消費者物価指数(5月) ・中国資金調達総額(5月、15日までに発表) |
|
10(木) | ・ECB主要政策金利 ・米消費者物価指数(5月) ・米新規失業保険申請件数(6月5日に終わる週) ・米家計純資産変化(1-3月期) |
|
11(金) | ・日銀短観(6月) ・米ミシガン大学消費者マインド(6月、速報値) |
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