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今週の5銘柄 ~上半期の主要IPO銘柄、滴滴出行、コインベース、ユーアイパスほか~

2021/7/5
投資情報部 榮 聡

先週は海外での新型コロナ感染拡大が気にされる場面はありましたが、雇用関係指標の改善で米国経済は堅調との見方から、S&P500指数は連日最高値を更新しました。今週は7/7(水)のFOMC議事要旨、7/9(金)からのG20財務相・中央銀行総裁会議、株価の高値更新、などが注目されます。

今回は本年1月~6月に米国市場に新規上場した主要銘柄(時価総額100億ドル以上で当社で取り扱っているもの)から、滴滴出行 ADR(DIDI)コインベース グローバル A(COIN)ユーアイパス A(PATH)クアルトリクス インターナショナル A(XM)マルケタ(MQ)を選んでご紹介いたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
情報技術 3.2% 7.2% 8.4%
一般消費財・サービス 2.1% 6.4% 4.9%
ヘルスケア 2.0% 5.2% 9.4%
コミュニケーションサービス 1.9% 4.0% 7.8%
S&P500 1.7% 2.9% 6.7%
資本財・サービス 0.9% -1.7% 3.2%
素材 0.8% -5.5% 3.0%
生活必需品 0.4% -1.5% 2.1%
不動産 0.0% 0.6% 10.8%
公益事業 0.0% -1.5% -1.0%
金融 -0.1% -3.7% 6.4%
エネルギー -1.1% -0.6% 11.6%
騰落率上位(5日) 騰落率
エヌビディア 7.7%
アップル 5.1%
マイクロソフト 4.8%
アボットラボラトリーズ 4.7%
オラクル 4.3%
騰落率下位(5日) 騰落率
ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス -7.6%
ボーイング -4.7%
IBM -4.6%
ウェルズ・ファーゴ -2.8%
エクソンモービル -2.3%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

6/28(月)は英国や東南アジアでの新型コロナ感染拡大が懸念されて景気敏感株が下落しましたが、テクノロジー株は買われてナスダック指数は1%上昇しました。6/29(火)も新型コロナの動向が気にされる一方、予想を上回る改善となった米消費者信頼感が支えとなってもみ合いました。

6/30(水)はテクノロジー株には利食いが出ましたが、景気敏感株に押し目買いが入って全体は小幅高、7/1(木)は新規失業保険申請件数が予想以上の低下となって幅広い銘柄が上昇しました。7/2(金)は6月雇用統計で非農業部門雇用者数が前月比85万人増と市場予想の同70万人増を上回って続伸しました。

S&P500指数は週間で1.7%、NYダウは1.0%、ナスダック指数は1.9%の上昇でした。S&P500指数は6/24(木)から7営業日連続で最高値を更新しています。

業種指数では、成長企業を多く含む業種が市場平均を上回る一方、景気敏感業種が劣後しました。個別銘柄では、エヌビディア(NVDA)がトップでした。現在各国当局が審査中のアーム社買収に関して、ブロードコムなどアーム社の取引先半導体企業3社が賛意を示したことがポジティブに働いたとみられます。

経済指標では、米国の6月ISM製造業景気指数、中国の6月製造業・非製造業PMIとも前月から低下、企業景況感がピークアウトしつつあることが示唆されました。長期金利の低下と成長株に対する物色が優位となる背景になったと考えられます。

一方、米国の6月コンファレンスボード消費者信頼感が前月の120.0から127.3へ大幅な改善となりました。また、新規失業保険申請件数は予想以上の低下、6月の非農業部門雇用者数は予想以上の増加と、雇用の改善基調が確認されています。

今週の米国株式市場

7/7(水)のFOMC議事要旨、7/9(金)からのG20財務相・中央銀行総裁会議、株価の高値更新、などが注目されます。

前回FOMCの結果発表では、2023年に2回の利上げを想定するFOMCメンバーが過半となっていたことがサプライズとなりました。今回の議事要旨では、「テーパリング」(FRBによる資産購入の縮小)の開始時期に関する議論が注目されています。

「テーパリング」に関する現在の市場コンセンサスは、8月末のジャクソンホール会合で詳細(開始時期、資産購入縮小のペースと終了時期、国債とモーゲージ債の内訳がどうなるかなど)が発表され、2021年末あるいは2022年の初めに開始される、となっているようです。

7/9(金)からイタリアで開催されるG20財務相・中央銀行総裁会議では、国際的な最低法人税率に関する合意が本決まりとなりそうです。先のG7で支持が確認されており、順調に決まれば従来の法人税率引き下げ競争に歯止めをかける画期的な動きと評価されます。

S&P500指数は6/24(木)から7/2(金)まで7営業日連続で高値を更新していますが、今週も高値更新が続くか注目されます。もみ合って「値固め」というのが通常の想定でしょうが、4月半ばから6月半ばまで2ヵ月間レンジ相場となったため25日移動平均線乖離率は2.5%と、さほど上昇過熱感があるわけではありません。筆者が今年の高値目途と考えている4,400ポイントに到達する可能性もありそうです。

経済指標では、7/6(火)に米国の6月ISM非製造業景気指数(前月の64.0から63.5に低下の予想)、などの発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回は2021年1月~6月に米国市場に新規上場した銘柄をご紹介いたします。

米国の新規上場市場は、1~3月にはSPAC(特別買収目的会社)が多くを占めて、通常のIPOは低調でした。しかし、4月頃からは通常のIPO案件も増え始め、6月にはかなり活況となりました。図表3に時価総額100億ドル以上で当社で取り扱っているものをリストアップしています。

ここから時価総額が大きいものを中心に、滴滴出行 ADR(DIDI)、コインベース グローバル A(COIN)、ユーアイパス A(PATH)、クアルトリクス インターナショナル A(XM)、マルケタ(MQ)を選んでご紹介いたします。

なお、滴滴出行 ADR(DIDI)については、7/4(日)に中国のネット規制当局が個人情報の取り扱いに関する違反を確認したとして、中国のスマホでは同社のアプリがダウンロードできなくなっています。規制による業績への悪影響が懸念されるため、当面は注意が必要と考えられます。

図表3 2021年上半期の主要IPO銘柄(直接上場を含む)

銘柄(コード) 時価総額
(億ドル)
カバーアナリスト数 上場日 公募株価
(ドル)
株価
(7/1)
(ドル)
公募価格
からの
株価騰落率
(%)
事業内容
滴滴出行 ADR(DIDI) 791 3 06/30 14.0 16.40 17.1 中国のライドシェア最大手
コインベース グローバル A(COIN) 504 18 05/14 250.0 241.44 -3.4 暗号資産の取引所
ユーアイパス A(PATH) 343 20 04/21 56.0 67.38 20.3 業務自動化ソフトウェア
アップラビン A(APP) 259 10 04/15 80.0 70.98 -11.3 モバイルアプリの開発支援
クアルトリクス インターナショナル A(XM) 188 19 01/28 30.0 36.63 22.1 アンケート作成・分析ツール
アファーム ホールディングス(AFRM) 181 12 01/13 49.0 68.37 39.5 消費者金融
マルケタ(MQ) 151 2 06/09 27.0 28.10 4.1 クレジットカード発行プラットフォーム
トゥーシンプル A(TSP) 132 12 04/15 40.0 63.08 57.7 中国の自動運転トラック
エンデバー グループ A(EDR) 122 12 04/29 24.0 27.21 13.4 総合格闘技団体の運営など

注:コインベースは上場に際して資金調達を行わない「直接上場」、公募で資金調達を伴う通常のIPOとは異なります。上表の公募価格には、上場前に取引所が示した「参考価格」を使っています。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

銘柄 株価
(7/2)
予想PER
(倍)
滴滴出行 ADR(DIDI)15.53ドル-

【中国のライドシェア最大手】

・2012年設立の中国ライドシェア最大手で、4,000近くの都市でライドシェアサービスを提供しています。2021年3月末時点(過去12カ月間)の年間アクティブユーザーは4億9,300万人、1日平均利用件数は4,100万件です。ソフトバンクグループ(ビジョン・ファンド)が筆頭株主となっているほか、ウーバーテクノロジーズ、テンセントが大株主となっています。なお、7/4(日)に中国のネット規制当局が個人情報の取り扱いに関する違反を確認したとして、中国のスマホでは同社アプリがダウンロードできなくなっています。規制による業績への悪影響が懸念されるため、当面は注意が必要と考えられます。

・2021年12月期のコンセンサス予想は、売上が1,923億人民元(前年比36%増)、純利益が65億人民元の赤字(前年は107億人民元の赤字)です。

コインベース グローバル A(COIN)240.72ドル29.4

【暗号資産の取引所】

・2012年に創業したビットコインなど暗号資産の取引所を運営する企業です。2020年末時点で、個人43百万人、法人7,000社、エコシステムパートナー(開発業者、事業者、暗号資産発行事業者など)11.5万社が参加し、90以上の暗号資産を取り扱うプラットフォームとなっています。同社が保管する暗号資産の時価総額に対するシェアは11.3%で業界最大手です。スクエア、ペイパルホールディングス、ロビンフッドなどが新規に参入しているため手数料に対する低下圧力はあるものの、先行者利益も大きいと考えられます。

・2021年12月期のコンセンサス予想は、暗号資産の値上がり効果と利用者の増加見通しから、売上が62.7億ドル(前年比4.9倍)、純利益が21.5億ドル(同6.5倍)と大幅に伸びる見込みです。

ユーアイパス A(PATH)66.55ドル-

【業務自動化ソフトウェアの世界的大手】

・2005年創業のロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)のソフトウェアを提供している企業です。RPAは企業向けのソフトウェアで最も高い成長を遂げている分野で、同社は世界的な大手として名前があがるうちの1社です。2021年4月末の顧客数は8,500社以上、うち年率換算売上が10万ドル以上の会社が1,105社となっています。

・5-7月期のガイダンスは、売上が前年同期比32%増の183百万ドル、年率換算売上では前年同期比55%増の703百万ドルです。2022年1月期のコンセンサス予想は、売上が851百万ドル(前年比40%増)、調整後純利益が35百万ドルの赤字(前年は92百万ドルの赤字)です。

クアルトリクス インターナショナル A(XM)36.15ドル-

【エクスペリエンス・マネジメントのソフトウェア企業】

・企業の顧客や従業員のエクスペリエンス・マネジメントの企業で、具体的にはアンケートの作成・分析ツールをクラウドで提供しています。2002年の創業で2019年1月にドイツのSAP(現在も大株主となっています)に買収された後、2021年1月に新規上場しています。調査会社ガートナーの「2020マジック・クアドラント」において、ボイス・オブ・カスタマーの分野でリーダー企業に認定されています。

・2021年12月期のコンセンサス予想は、売上が978百万ドル(前年比28%増)、調整後純利益が58百万ドルの赤字(前年は272百万ドルの赤字)です。

マルケタ(MQ)29.69ドル-

【クレジットカードの発行システムを提供するフィンテック企業】

・2010年創業でクレジットカードの発行システムを顧客企業に提供するフィンテック企業です。創業来2021年3月までに3.2億枚のカード発行が行われ、2020年の決済総額は約600億ドルに達しています。顧客には、ドアダッシュ、インスタカート、スクエア、Affirm、Klarnaなどのデジタル企業を含みます。6/9(水)に公募価格27ドルで新規上場しています。

・2020年12月期のコンセンサス予想は、売上が458百万ドル(前年比58%増)、営業利益が43百万ドルの赤字(前年は47百万ドルの赤字)です。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2021年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
5(月) ・米国市場休場(独立記念日の振替休日)  
6(火) ・ドイツZEW景気期待指数(7月)
・ユーロ圏小売売上高(5月)
・米ISM非製造業景気指数(6月)
 
7(水) ・EU夏の経済見通し発表
・米求人労働異動調査(5月)
・米FOMC議事要旨(6月15日、16日分)
 
8(木) ・米新規失業保険申請件数(7月3日に終わる週)
・米消費者信用残高(5月)
 
9(金) ・中国生産者・消費者物価指数(6月)
・中国資金調達総額(6月、15日までに発表)
・G20財務相・中央銀行総裁会議(イタリア、10日まで)
 
12(月) ・日本機械受注(5月)
・日本工作機械受注(6月)
 
13(火) ・中国貿易統計(6月)
・米NFIB中小企業楽観指数(6月)
・米消費者物価指数(6月)
JPモルガンチェース、ゴールドマンサックス、ペプシコ
14(水) ・ユーロ圏鉱工業生産(5月)
・米生産者物価指数(6月)
・米地区連銀経済報告(ベージュブック)
ウェルズファーゴ、バンクオブアメリカ、シティグループ
ブラックロック、デルタ航空
15(木) ・中国実質GDP(4-6月期)
・中国鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(6月)

・ニューヨーク連銀製造業景気指数(7月)
・フィラデルフィア連銀製造業景気指数(7月)
・米新規失業保険申請件数(7月10日に終わる週)
・米鉱工業生産(6月)
TSMC、モルガンスタンレー、ユナイテッドヘルスグループ
16(金) ・EU27ヵ国新車登録台数(6月)
・米小売売上高(6月)
・米ミシガン大学消費者マインド(7月)

・日本政策金利
 

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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