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今週の5銘柄 ~最高値奪回のリチウム&バッテリーETF、レアアースETFとリチウム関連企業~

2021/7/19
投資情報部 榮 聡

先週は7/13(火)に発表された米国の6月消費者物価指数が市場予想を上回って、金融引き締め時期が前倒しとなる可能性が懸念されて反落となりました。今週は4-6月期決算発表、インフラ投資法案の進捗、米10年国債利回りの動向、などが注目されます。

今回は過去1ヵ月で株価上昇が目立っているグローバルX リチウム&バッテリーETF(LIT)ヴァンエック ベクトル レアアース ETF(REMX)、および、同ETFに組み入れられているリチウム関連企業のアルベマール(ALB)ソシエダードキミカイミネラデチリ ADR(SQM)ライベント コーポレーション(LTHM)を今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
公益事業 2.6% 4.2% -0.9%
生活必需品 1.2% 3.9% 2.8%
不動産 0.7% 4.7% 11.3%
ヘルスケア -0.2% 4.3% 5.9%
コミュニケーション・サービス -0.3% 3.6% 6.4%
情報技術 -0.6% 6.0% 5.8%
S&P500指数 -1.0% 2.5% 3.4%
資本財・サービス -1.5% 2.6% 1.2%
金融 -1.6% 2.9% 2.4%
素材 -2.4% 0.7% -1.5%
一般消費財・サービス -2.6% 3.5% 0.8%
エネルギー -7.7% -5.9% 1.0%
騰落率上位(5日) 騰落率
ペプシコ 4.2%
デューク・エナジー 4.1%
ビザ 4.0%
ネクステラ・エナジー 3.9%
マスターカード 3.8%
騰落率下位(5日) 騰落率
エヌビディア -9.4%
バイオジェン -9.4%
ボーイング -9.1%
コノコフィリップス -7.7%
エクソンモービル -6.4%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

7/12(月)は米10年国債利回りが反発して、「米10年国債利回りの連日の低下は景気回復の鈍化を示唆するのでは」との市場の不安が後退した7/9(金)の流れが持続して続伸となりました。

しかし、7/13(火)に発表された6月消費者物価指数が市場予想を大きく上回って市場の雰囲気が変わりました。インフレ圧力が想定よりも強い可能性が市場の懸念となっています。主要項目別にみても、食品、食品・エネルギー以外の物品、サービスともに物価上昇の加速に寄与していることから、インフレ上昇は一時的との見方が揺らいでいると考えられます(図表3)。

7/14(水)、7/15(木)にパウエルFRB議長のハト派コメント、アップルによるiPhone生産の強気見通し、市場予想を上回る銀行決算などポジティブと考えられる材料が出ましたが流れは変わりませんでした。一方、7/15(木)のTSMC決算発表では、粗利率が予想以上に低下したことがサプライズとなって半導体株の下落に波及しました。

7/16(金)は6月小売売上高が前月比で予想外に増加したことを受けて上昇して始まったものの、7月のミシガン大学消費者マインドがインフレ懸念から前月の85.5から80.8に低下して下落に転じました。新型コロナ感染拡大も気にされて続落となりました。

S&P500指数は週間で1.0%、NYダウは0.5%、ナスダック指数は0.2%の下落でした。

業種指数では、相場全体の調整色が強まる中、ディフェンシブ業種とされる「公益事業」「生活必需品」などがプラスとなりました。原油価格はOPECプラスでの減産幅縮小の合意を受けて反落、「エネルギー」の下落が大きくなっています。個別銘柄では、ペプシコ(PEP)ビザ A(V)マスターカード A(MA)と「経済再開」から恩恵を受ける銘柄が物色されている気配があります。

経済指標では、米国の6月小売売上高が前月比0.6%増と同0.4%減の市場予想を大きく上回りました。現金支給とともに株式と住宅の値上がりによって積みあがっている貯蓄が消費を想定以上に刺激している可能性が考えられます。

中国の4-6月期実質GDPは前年比7.9%増で市場予想の同8.0%増を下回りましたがまずまずの水準でした。6月の鉱工業生産・小売売上高とも5月の伸びを上回って、減速懸念がある中国経済は堅調と言えるでしょう。

今週の米国株式市場

4-6月期決算発表、インフラ投資法案の進捗、米10年国債利回りの動向、などが注目されます。

今週の決算発表には、IBM、ネットフリックス、ジョンソン&ジョンソン、コカ・コーラ、ベライゾンコミュニケーションズ、AT&T、インテルなどが予定されており、NYダウ構成銘柄の約3分の1が発表されます。

先週発表された商業銀行・投資銀行大手6行の決算では、いずれもEPSが市場予想を大きく上回りました。S&P500指数採用企業の4-6月期EPS(発表済み企業の実績と未発表企業の予想の混合)は、前年同期比69.3%増の予想です。6月末時点の同63.3%増から上方修正となっています。

インフラ投資法案について、米上院民主党トップのシューマー院内総務は上院で審議入りに向けた動議の採決を7/21(水)に実施すると表明しています。米議会の夏休み(8月9日~9月10日の見込み)前に目途を付けるには、今週に議論が進捗する必要があるでしょうから、注目です。

米10年国債利回りは先週底入れするかと思われましたが、6月消費者物価指数が予想を上回ったにもかかわらず再び1.3%前後まで低下しました。あまり下げが続くようだと先行き株式にも悪影響が出てくる可能性があるので注意が必要です。

今後の景気が予想以上に弱いとみる向きにとっては10年国債利回りの低下は整合的と考えるでしょう。一方、経済再開で成長が高まると考える向きにとっては、10年国債利回りの低下は行き過ぎで、長期金利上昇を見込んで積み上げられていた債券のショートポジションの巻き戻しが影響しているのではと考えているようです。筆者は後者の可能性が高いと考えていますが、まだ答えは出ておらず、引き続き注目です。

経済指標では、7/20(火)に米国の6月住宅着工・建設許可件数(着工件数は前月比1.2%増、建設許可件数は同1.0%増の予想)、7/22(木)に米国の6月中古住宅販売件数(前月比1.7%増の予想)などの発表が予定されています。

今週の5銘柄

今回はグローバルXリチウム&バッテリーETF(LIT)ヴァンエック ベクトル レアアース ETF(REMX)、および、同ETFに組み入れられているリチウム関連企業のアルベマール(ALB)ソシエダードキミカイミネラデチリ ADR(SQM)ライベント コーポレーション(LTHM)をご紹介いたします。

筆者は毎週当社が取り扱う約300の米国上場ETFの騰落率をフォローしていますが、上記2つのETFは先々週、先週と2週連続でパフォーマンス上位5位以内(ブル・ベアのETFを除く)に入って注目に値すると考えました。過去1ヵ月の騰落率は、グローバルX リチウム&バッテリーETF(LIT)が16%、ヴァンエック ベクトル レアアース ETF(REMX)が20%に達しています。

EV関連として物色が強まった2月に高値を付けたあと調整していましたが、その後もEV化のトレンドに変化がないことから物色が盛り返して2月に付けた高値を奪回しています。2月に高値を付けたときと比べて出来高がさほど多くなっておらず、物色が続く可能性が高いと考えられます。目先は相場全体の調整色に引っ張られそうですが、調整色が落ち着くときには戻りも早いのではないかと考えます。

図表3 米消費者物価上昇率(前年比)の5月、6月比較

※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

図表4 グローバルX リチウム&バッテリーETF(LIT)の週足チャート(2年)

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

今週の注目銘柄

銘柄 株価
(7/16)
予想PER
(倍)
グローバルX リチウム&バッテリーETF(LIT)77.20ドル-

【リチウムおよびバッテリー関連銘柄のETF】

・EV向けのバッテリーおよびバッテリーに使用されるリチウム関連のETF。2010年7月に設定、2021年6月末の純資産は36.4億ドルです。

・組み入れトップ銘柄を米国企業のアルベマールとするほか、中国の本土上場銘柄、オーストラリア企業、香港上場の比亜迪 (Byd)(01211)、韓国のサムスンSDI (006400)などが組み入れられています。

ヴァンエック ベクトル レアアース ETF(REMX)95.46ドル-

【レアアース関連銘柄のETF】

・主に希土類および戦略的金属や鉱物の生産、精錬とリサイクルに関連する銘柄に投資するETF。2010年10月に設定、2021年6月末の純資産は7.6億ドルです。EVの生産増加でモーターに対する需要が拡大しており、モーターの性能を上げるために欠かせないレアアースへの需要増大が注目されています。

・組み入れ上位銘柄は、中国本土上場銘柄、オーストラリア企業が多くを占めるほか、当社が取り扱う香港上場のガンフォン(01772)も組み入れられています。

アルベマール(ALB)180.66ドル50.2

【リチウム生産の世界的大手】

・特殊化学品の老舗で、2020年12月期の売上はリチウムイオン電池などに使用されるリチウムが37%、難燃剤などに使用される臭素化学品が31%、触媒事業が26%を占めます。リチウム生産では世界的大手で、チリのアタカマ塩湖、オーストラリアのグリーンパッシズ鉱山、米国のネバダ州塩湖などで生産しています。

・昨年まで供給過剰で価格が低迷していたリチウムは、需要拡大によって今年に需給が均衡すると見込まれます。同社は今年2月に株式で15億ドルを調達してオーストラリア、チリでの生産設備を拡大、今後の需要増大に備えています。1-3月期は、触媒事業の弱さをリチウム事業の伸びによってカバー、売上が前年同期比12%増、調整後EPSが同10%増と回復に転じています。

ソシエダードキミカイミネラデチリ ADR(SQM)47.47ドル36.5

【リチウム生産で世界2位】

・チリの肥料・化学製品メーカーで、2020年12月期の売上は、特殊植物栄養素が39%、リチウムおよび派生製品が21%、ヨウ素および派生製品が18%、カリウム製品が12%、産業化学ほかが10%を占めます。リチウムの生産では中国の天斉リチウム(深センの上場企業)に次ぐ世界2位、生産コストは世界最低レベルとみられています。

・1-3月期は多くの製品が増収となり、売上は前年同期比35%増、純利益は同51%増と伸びました。リチウムおよび派生製品は、価格が前年同期比で約26%落ち込んだものの、販売数量が同約2.8倍に伸びて、売上は同2.1倍となっています。リチウムの市場価格は2020年10-12月期比では8%上昇して底入れしたとみられます。リチウムの需要は2021年に3割程度増えると見込まれています。

ライベント コーポレーション(LTHM)17.85ドル137.3

【リチウム専業企業】

・2018年に化学品メーカーのFMCから分離上場したリチウムの専業企業です。アルゼンチンに確保している高濃度の塩水資源からリチウムを抽出・精製し、高性能のリチウム製品を製造しています。2021年6月に株式の公募により2.6億ドルを調達し、水酸化リチウムの生産能力を現在の2万トンから2023年末にかけて4万トンに引き上げる計画です。

・1-3月期の決算は、売上が前年同期比34%増、純利益は80万ドルの赤字が続きました。ただし、アルゼンチン・ペソの下落(過去1年で対ドルで26%下落している)などの影響を除いた調整後EBITDAは前年同期比18%増の11.1百万ドルに改善しています。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、いずれも2021年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
19(月) ・米NAHB住宅市場指数(7月) IBM
20(火) ・米住宅着工・建設許可件数(6月) ネットフリックスフィリップモリスインターナショナル
インチュイティブサージカル
21(水)   ジョンソン&ジョンソンコカ・コーラベライゾンコミュニケーションズ
テキサスインスツルメンツ
22(木) ・ECB主要政策金利
・米シカゴ連銀全米活動指数(6月)
・米新規失業保険申請件数(7月17日に終わる週)
・米中古住宅販売件数(6月)
AT&Tインテル、バイオジェン、ツイッター
ダウ、ニューコア
23(金) ・夏季五輪・東京大会開催
・マークイットユーロ圏製造業PMI(7月)
・マークイット米国製造業PMI(7月)
アメリカンエキスプレス、シュルンベルジェ、ネクステラエナジー
26(月) ・じぶん銀行日本製造業PMI(7月)
・ドイツIFO企業景況感指数(7月)
・米新築住宅販売件数(6月)
テスラ、ロッキードマーチン
27(火) ・中国企業部門利益(6月)
・米耐久財受注(6月)
・米S&Pコアロジック住宅価格指数(5月)
・米コンファレンスボード消費者信頼感(7月)
アップルアルファベットマイクロソフトビザ3M
ゼネラルエレクトリック、AMD、UPS
マーチンマリエッタマテリアルズ、アーチャーダニエルズミッドランド
28(水) ・米FOMC政策金利 フェイスブックボーイングファイザーペイパルホールディングス
マクドナルド
ブリティッシュアメリカンタバコ
、ショッピファイ
フォード、クアルコム
29(木) ・ユーロ圏景況感(7月)
・米新規失業保険申請件数(7月24日に終わる週)
・米実質GDP(4-6月期、速報値)
・米中古住宅販売成約(6月)
アマゾンドットコムエクソンモービルアルトリアグループ
ギリアドサイエンシズピンタレスト、メルク、マスターカード
ユナイテッドレンタルズ
30(金) ・日本鉱工業生産(6月)
・ユーロ圏失業率(6月)
・米個人所得・個人支出(6月)
・米消費支出物価指数(6月)
・米ミシガン大学消費者マインド(7月)
P&Gエクソンモービル、キャタピラー、アッヴィ

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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