特集レポート FX

「完全雇用」なのに賃金上昇が鈍化・・・雇用統計結果が示すこととは?

2019/10/8
提供:SBIリクイディティ・マーケット社

9月雇用統計結果のポイント

  4 5 6 7 8 9
非農業部門 雇用者数(万人) 21.6 6.2 17.8 16.6 16.8 13.6
失業率(%) 3.6 3.6 3.7 3.7 3.7 3.5
時間給賃金 前月比(%) 0.2 0.3 0.2 0.3 0.4 0.0
時間給賃金 前年比(%) 3.2 3.1 3.1 3.3 3.2 2.9

※出所:SBIリクイディティ・マーケット

【米9月雇用統計】
・就業者数は13.6万人増、8月(速報値+3.8万人)7月(+0.7万人)上方修正
・ヘルスケアが4.14万人増、輸送・倉庫が1.57万人増、一方小売りは1.14万人減
・失業率は3.5%と1969年12月以来、50年ぶりの低水準へ改善
・労働参加率は63.2%と前月と変わらず、失業率改善により就業率の上昇を確認
・正規雇用を望む広義の失業率(U6)も2000年12月以来の6.9%へ改善
・時間給賃金は前月比横ばい、前年比∔2.9%と予想比下振れ、前月から鈍化
・労働時間34.4時間と8月と変わらず、個人消費支出下支えへの期待継続
・10/30のFOMCでの追加利下げ観測期待を継続
・NY株式市場は利下げ期待継続を背景に全セクターで上昇

非農業部門雇用者数(万人)の推移

※出所:米労働省

米時間給賃金 前年比(%)、前月比(%)

※出所:米労働省

トランプ政権は対中貿易戦略を見直しか?

失業率は1969年12月以来50年ぶりの低水準となる3.5%へ改善したものの、時間給賃金は前月比横ばい、前年比2.9%と鈍化しました。

経済理論に基づけば、失業率の低下は物価や賃金の上昇につながるとされたものの、消費者物価指数(インフレ率)は前年比でFRBの掲げる2.0%の目標を下回る状況が9月(予想:+1.8%、8月:1.7%)も継続しそうです。失業率が3.5%まで改善している状況は明らかに「完全雇用」との位置づけに違和感のない水準であり、「経営者は人材確保に向けて賃金を上昇させることから、賃金上昇は加速するはず」というのが一般的な経済理論に基づく考え方であるにもかかわらず、9月の時間給賃金は鈍化するという逆転現象が生じました。

これについて、「より高い賃金を目指して自発的に職を離れる高所得者層と、単純労働に従事する低所得者層との格差が拡大している」という推測が成り立つかもしれません。例えば、25歳以上の高校卒業以下の労働者の失業率は5.4%から4.8%へ大幅に改善(前年同月比では5.6%から4.8%へ)した一方、高校卒以上大卒以下の失業率は7月以降3ヵ月連続で3.6%と変わらずの状況となりました。

また、大卒以上の失業率も3.1%から2.9%への小幅な改善に留まったほか、学士以上の高学歴労働者の失業率は2.1%から2.0%への改善に留まりました。また、職を探していないものの働く意欲のある人、さらには経済的な理由から止む無くパートタイム職に甘んじている労働者などを含む広義の失業率(U6)も前月の7.2%から2000年12月以来の6.9%に改善するなど、労働市場の堅調な状況が確認されています。米中通商問題の影響が懸念される中での労働市場の堅調継続が確認されており、今週10/10-11の米中閣僚級による通商交渉に進展が見られることになれば一段の改善も期待されるだけに、通商交渉の行方が注目されます。

先月9/17-18のFOMCを前にした9/16-17の短期金融市場では、資金不足から金利が急騰したことから、FRBは数百億ドルの資金を供給することで金利を目標レンジに押し下げた経緯があります。今週10/9に公表される議事要旨には、保有資産の規模拡大の再開の時期と方法のほか、短期金融市場の変動を減らすための新しい手段の導入についても検討されたと思われることから、議事要旨が注目されます。さらに、こうした賃金上昇率の鈍化に対して、10/30のFOMCで追加利下げがあるのか、9月FOMCで示されたドットチャートでは年内あと1度の利下げがあるとの見方となっており、打ち止め感が確認されるのか注目されます。

先週発表された米ISM製造業景況指数が10年ぶり、ISM非製造業景況指数が3年ぶりの低水準へ低下するなど、米国経済にも景気後退への懸念が台頭しています。こうした状況の下、トランプ政権が来年11月の大統領選に向けて対中貿易戦略の見直しに踏み出すのか、米中通商問題の長期化懸念を後退させる成果を見出すことができるのか、今週10/10-11の米中閣僚級による通商交渉がFRBの金融政策に影響を及ぼす可能性がある重要なイベントとなるだけに注目されます。

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