特集レポート FX

年末に向けて円高が加速するか?今秋に向けた注目点

2024/8/27
提供:SBIリクイディティ・マーケット社

市場参加者の予想を裏切ってきたドル円相場

2022年10月21日151円95銭まで円安が進行した際、市場では「世界的なインフレ緩和によって23年は円高に転じる」との見方が優勢となりました。日銀の政策転換への思惑とともに23年1月16日には127円23銭まで円高が進行したものの、結果的にこの水準を安値に昨年11月13日には再び151円94銭へ反発。さらに、昨年末には市場関係者の大勢が「日銀が緩和から引き締め、FRBが緩和政策へ転換」として、24年は円高に転じると見込んでいました。しかし、3月に日銀がゼロ金利を解除、賃上げを背景に金融正常化が進むとしたものの、米国のインフレの粘着性が想定以上に高かったことからFRBによる利下げ開始時期が当初見込みより遅れ、7月3日には161円95銭まで円安が進行しました。

※出所:SBIリクイディティ・マーケット

その後、7月末の日米金融政策会合や米経済市場の強弱交錯の結果とともに8月5日に141円70銭へ急落後、8月15日には149円38銭へ反発しましたが、心理的節目とされる150円00銭を前に伸び悩み、8月26日の東京市場の朝方には8月6日の安値(143円63銭)を下回る143円45銭まで下落するなど、140円00銭から150円00銭のレンジを形成しつつある状況が続いています。

円高警戒感が根強いだけにアルゴリズムに過剰反応?

7月までの相場展開であれば、「150円割れはドル買い」が市場コンセンサスになっていましたが、前述の通り、8月15日に149円38銭へ反発した際も積極的にドル買いを進める勢いはなく、むしろ戻り売り優勢となったことが、「相場の流れ」が大きく変化し象徴的だったと言えそうです。実際、シカゴIMM投機筋のポジションは7月2日時点で184,223枚の円売りと2007年6月以来の最大規模まで拡大。しかし、8月13日時点では2021年3月以来の円買い(23,104枚)に転じるなど、1ヵ月半の間に円売りポジションを解消したことが明らかになりました。
さらに、先週19日にはカナダ企業による本邦大手コンビニに対する買収提案が報じられ、時価総額ベースで4兆6千億円規模に達すると見込まれ、海外企業による日本企業に対する過去最大規模とされました。そのため、日本の通貨当局による6月から7月に実施された円買い介入規模(5.5兆円)に近いとの数値が一人歩きし、米労働統計局による非農業部門就業者数の年次改定で大幅に下方修正されるとの報道も重なったことで過去の経験則に基づきプログラム売買に敏感に反応する「アルゴ取引」が過度に円買いに反応した可能性も指摘されています。すなわち、買収提案報道に関しては「買収を検討」の段階にありながらも、すぐさま時価総額そのまま全額為替ヘッジの円買い対象になるとする先走った動きであること、さらに、就業者数の年次改定の大幅な下方修正に対してもFRBは「金融政策は今後のデータ次第」とし、先週末23日のジャクソンホールでのパウエル議長の講演でも「利下げのタイミングとペースは今後のデータやリスクバランス次第」と述べており、今後のデータが重要視されることには変わりはないと思われます。

年次改定とは

四半期毎の雇用/賃金調査に基づき、雇用主が新たに就業者を雇用する際に義務化されている失業保険の申告記録から集計するため、精度が高いとされています。今回の年次改定により昨年4月から今年3月まで月毎およそ6.8万人が過大計上されていたことになりますが、最終的には来年2月に発表される1月雇用統計で対象期間の確定値が公表されること、さらに、年次改定の対象外となる可能性がある不法移民の雇用を考慮すると懸念するほどの下方修正にはならないとの見方もあること、いずれにしても9月FOMCで決定する利下げ幅やその後の金融政策については直近8月までの雇用統計や消費者物価指数が重要視されるため、「アルゴ取引」が過剰に反応したと言えるかもしれません。

日米金融政策の方向性の違いは明らか・・・

先週末のパウエル議長の講演では利下げ幅や先々についての具体的言及はなかったものの事実上、9月の利下げ開始が予告されたこととなり米10年債利回りは3.84%近辺から3.79%台へ低下したことを受けて週明けの東京市場では143円45銭まで円高が進行しています。
9月17-18日のFOMC 及び 9/19-20日の日銀金融政策決定会合に向けた日米の指標を受けて、ドル円は23年1月16日の安値(127円23銭)と23年3月24日の安値(129円64銭)を結んだライン1を回復できるか、あるいは8月5日の安値(141円70銭)を下抜け週足雲の下限(140円77銭)、さらに140円割れを試すことになるか注目されます。

※出所:SBIリクイディティ・マーケット

日銀の追加利上げは10月?/FRBは9月に続き12月にも追加利下げか?

先週末23日の衆院財務金融委員会で植田日銀総裁は「緩和調整の基本姿勢は変わらない」と述べた一方、午後の参院財政金融委員会では「金融市場が不安定な状況で利上げすることはない」とした内田副総裁の考えに「違いはない」との考えを明らかにしました。また、7月の追加利上げの効果や影響を見極める必要があるとして9月は現状維持に留まるかもしれません。

先週8月20日に日銀調査統計局が以下の調査結果(論文)を発表しました。
   1)「消費者物価における最近の企業のサービス価格設定行動」
   2)「人口動態の変化が労働市場や賃金動向に与える影響」
1)の中で「幅広い物価上昇が実現するためにはサービス部門で賃金から物価への波及が強まることが大切」とした上で「今春には値上げが確認されるなど企業の価格設定行動が変化している」との見解が示されました。
2)の中では「人手不足により、硬直的な労働市場に変化が見られ、最低賃金の引き上げが正社員の賃金上昇にもつながっており、企業の賃金設定行動が一段と積極化する可能性」を指摘しています。
おそらく、こうした調査結果を参考に7月の追加利上げの根拠の一つになった可能性があると考えられます。

9月の政策会合に続く10月30-31日の日銀金融政策決定会合までには10月のサービス価格の改定が行われる可能性(通常、4月や10月に改定される傾向が強いとされます)に加え、10月の日銀支店長会議の後であること、10月25日発表の東京都区部10月消費者物価指数が発表された後であること、などを考えれば、これらのデータを基に追加利上げに動く可能性があるかもしれません。

一方、FRBは9月の利下げが確実視されるものの、11月6-7日のFOMCは11月5日の大統領選直後の開催であること、9月の利下げ効果を確認する可能性があること、来年1月20日の新大統領就任式の前に景気下支えに動く可能性もあり、12月17-18日のFOMCで追加利下げも想定されます。

※出所:SBIリクイディティ・マーケット

年末に向けて日米金利差が縮小することは明らかではあるものの、絶対的な金利差に着目した場合、ドル円の下値メドはどの程度に留まるのか、今後のデータ次第であること、日米の政治スケジュール(日本は年末あるいは遅くとも来年2月までに総選挙が行われれる見通し/米国は1月の新大統領がハリス候補となるか、トランプ候補になるか、それぞれの影響)も含めて2025年の相場を占う上で今秋から年末に向けた動きが注目されます。

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