金・銀・プラチナ
マーケットレポート
金は米国債の利回り上昇やリスク回避が圧迫
提供:ミンカブ・ジ・インフォノイド
金ETFから投資資金の流出が続く
3月1日の週のニューヨーク金市場は米国債の利回り上昇やリスク回避の動きを受けて軟調となり、中心限月となる4月限は昨年4月以来の安値1,683.0ドルを付けた。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が講演で米国債の利回り上昇を容認した。同議長はFRBの「政策スタンスは適切」とし、最大雇用達成まで現行の緩和的な政策を維持すると再表明した。米10年債利回りは一時1.625%に上昇し、昨年2月以来の高水準となった。ただ米10年債の先物市場でファンド筋が売り方に転じており、利回り上昇が一服するようならリスク回避の動きが一服し、金は買い戻し主導で上昇する可能性が出てくる。一方、米上院で6日、修正された追加経済対策法案が可決された。米下院で9日に改めて採決され、米大統領の署名を経て成立する見通しである。法案成立でリスク選好の動きが戻るかどうかも確認したい。
2月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比37万9,000人増と事前予想の18万2,000人増を上回った。前月は16万6,000人増だった。失業率は6.2%となり、1月の6.3%から低下した。ただ職探しをあきらめた人などを含めると失業率は9.5%に達し、数字ほど良くないとみられている。今週は2月の米消費者物価指数(CPI)の発表がある。事前予想は前月比0.4%上昇。コモディティ価格の上昇などでインフレ見通しが強まっている。一方、11日には欧州中央銀行(ECB)理事会がある。パネッタECB専務理事は債券利回りの上昇を抑えるため、ECBは買い取り額の増額や買い取りプログラムの拡大を躊躇(ちゅうちょ)すべきでないとの見方を示した。何らかの対策が講じられると、欧米の債券利回り上昇に対する見方の違いからドル高が進む可能性がある。
ドイツ政府はロックダウン(都市封鎖)を28日まで3週間延長することを発表した。景気回復期待が強いが、2月のユーロ圏の総合購買担当者景気指数(PMI)改定値は48.8と節目となる50を大きく下回っており、回復に時間がかかる。回復が加速するのは解除を待つことになりそうだ。
3月5日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比24.28トン減の1,069.26トンとなった。米国債の利回り上昇などを受けて投資資金が流出した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、3月2日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは18万9,638枚となり、前週の21万5,733枚から縮小した。今回は手じまい売りが1万8,548枚、新規売りが7,547枚出て、2万6,095枚買い越し幅を縮小した。
プラチナは調整継続で上昇の起点に戻る
ニューヨーク・プラチナ4月限は金軟調や株安・ドル高を受けて調整局面を継続し、2月5日以来の安値1,110.0ドルを付けた。米国債の利回りが上昇するなか、リスク回避の動きとなった。ドイツがロックダウン(都市封鎖)を延長したことも圧迫要因である。ただ米上院が追加経済対策法案を可決しており、今週、米大統領の署名を経て成立する見通しである。景気回復期待からリスク回避の動きが一服すると、プラチナに安値拾いの買いが入る可能性が出てくる。
プラチナETF(上場投信)の現物保有高は、4日のロンドンで18.84トン(前週末19.11トン)、ニューヨークで39.55トン(同39.57トン)、南アで16.37トン(同16.37トン)となった。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、3月2日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは3万0,533枚買い越し(同3万4,967枚買い越し)に縮小した。
金は米国債の利回り上昇やリスク回避が圧迫
ニューヨーク金4月限は米国債の利回り上昇やリスク回避の動きを受けて1,700ドルの節目を割り込み、昨年4月以来の安値1,683.0ドルを付けた。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が米国債の利回り上昇を容認したことを受けて米10年債利回りは一時1.625%と昨年2月以来の高水準となった。一方、米上院で追加経済対策法案が可決された。米下院での採決と米大統領の署名を経て成立する見通しであり、リスク選好の動きが戻るかどうかを確認したい。1,700ドル割れでテクニカル面で弱気だが、RSIが売られ過ぎの水準に入っており、買い戻し主導の上昇も警戒される。
3月8日からの週の注目ポイント
8日 | 国際収支・経常収支(1月) | ☆☆ |
9日 | 独鉱工業生産指数(1月) | ☆☆ |
米卸売在庫(1月) | ☆ | |
国内総生産(10-12月期2次速報) | ☆☆☆ | |
10日 | ユーロ圏域内総生産(10-12月期確報) | ☆☆☆ |
中国消費者物価指数(2月) | ☆☆ | |
中国生産者物価指数(2月) | ☆☆ | |
米消費者物価指数(2月) | ☆☆☆ | |
米財政収支(2月) | ☆☆ | |
カナダ銀行政策金利発表 | ☆☆☆ | |
11日 | 欧州中央銀行(ECB)理事会 | ☆☆☆ |
米新規失業保険申請件数 | ☆☆ | |
12日 | 英鉱工業生産指数(1月) | ☆☆ |
独消費者物価指数(2月確報) | ☆☆ | |
ユーロ圏鉱工業生産(1月) | ☆☆ | |
米生産者物価指数(2月) | ☆☆ | |
米ミシガン大消費者信頼感指数(3月速報値) | ☆☆ |
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