金・銀・プラチナ
マーケットレポート
金はインフレ高進も一時的との見方で押し目を買われる
提供:ミンカブ・ジ・インフォノイド
金は米雇用統計も確認
5月24日の週のニューヨーク金市場は、長期金利の落ち着きやドル安を受けて堅調となり、中心限月となる8月限は1月8日以来の高値1,915.6ドルを付けた。米10年債利回りが1.557%と4月15日以来の低水準となり、ドル安に振れたことが支援要因になった。ブレイナード米連邦準備理事会(FRB)理事、セントルイス地区連銀のブラード総裁、アトランタ地区連銀のボスティック総裁が、それぞれ米FRBの現行の緩和的な金融政策に支持を表明した。また5月の米消費者信頼感指数が117.2と事前予想の119.2を下回った。一方、4月の米個人所得・消費で、食品・エネルギーを除くコア個人消費支出(PCE)価格指数は前年同月比3.1%上昇し、1992年7月以来の大幅な伸びを記録した。事前予想の2.9%上昇を上回り、インフレ高進が示された。ただパウエル米FRB議長はこれまでインフレは供給不足による一時的なものとの見方を示しており、ドルの戻りは売られた。今週は米雇用統計の発表がある。事前予想は非農業部門雇用者数が65万人増(前月26万6,000人増)、失業率は5.9%(同6.1%)。米新規失業保険申請件数は40万6,000件と前週の44万4,000件から改善し、2020年3月中旬以来の低水準となった。
ホワイトハウスはバイデン米大統領の掲げる大型インフラ投資計画「米雇用計画」について、野党共和党との超党派の合意に向け、規模を当初の2兆2,500億ドルから1兆7,000億ドルに縮小すると発表した。ただ米上院共和党は9,280億ドル規模の新たなインフラ投資計画を提示し、依然として大きな隔たりがある。米大統領は2022会計年度(21年10月~22年9月)の予算教書を28日、議会に提出した。インフラ投資や教育、気候変動対策などに重点を置き、歳出額は要求ベースで6兆0,100億ドルに膨らんだ。国債増発に対する懸念が出たが、赤字額は1兆8,400億ドルと、過去2年の水準からは縮小する見通しとなった。
バイデン米大統領は26日、新型コロナウイルスの起源を巡り「明確な結論に近づくことができるよう、米情報機関に対し情報の収集・分析に関する取り組みを強化し、90日以内に報告するよう要請した」と述べた。米国は27日、新型コロナウイルスの起源を探る中国での2次調査を実施するよう世界保健機関(WHO)に要請した。WHOは3月、新型コロナウイルスの起源について報告書を発表し、「武漢の研究所から流出した可能性は極めて低い」としたが、米大統領は報告書の中立性に疑問を呈していた。南アジアの新型コロナウイルス感染者が累計で3,000万人を突破した。インドで感染拡大が続いているが、ワクチン接種が遅れ、先行き懸念が残っている。米国は中国の新疆ウイグル自治区の人権状況や香港情勢、インド太平洋地域への動きを受けて欧州諸国と包囲網を形成しており、今後の対立の行方を確認したい。
5月28日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比0.29トン増の1,043.21トンとなった。ドル安を受けて投資資金が流入したが、1,900ドル達成で利食い売りが出た。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、5月25日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは21万4,642枚となり、前週の19万8,889枚から拡大した。今回は手じまい売りが2,001枚、買い戻しが1万7,754枚入り、1万5,753枚買い越し幅を拡大した。
プラチナはレンジ内で下げ一服
ニューヨーク・プラチナ7月限は4月14日以来の安値1,162.0ドルを付けたのち、ドル安や金堅調を受けて下げ一服となった。ただ米国のインフレ関連指標の発表を控え、1,200ドル台で戻りは売られた。中長期の景気回復見通しに変わりがないことが下支え要因だが、南アジアでの新型コロナウイルスの感染拡大で先行き懸念が残ることが上値を抑える要因である。
プラチナETF(上場投信)の現物保有高は、27日のロンドンで19.37トン(前週末19.48トン)、ニューヨークで39.37トン(同39.37トン)、南アで16.50トン(同16.71トン)となった。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、5月25日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは2万2,987枚買い越し(前週2万5,814枚買い越し)に縮小した。
ニューヨーク金は1,900ドル台を達成
ニューヨーク金8月限は長期金利の落ち着きやドル安を受けて堅調となり、1月8日以来の高値1,915.6ドルを付けた。インフレ懸念が強いなか、ドル安を受けて上値を伸ばした。ただ金ETF(上場投信)に利食い売りが出た。一方、米個人消費支出(PCE)価格指数で大幅な伸びが示されたが、インフレは一時的との見方も強く、押し目を買われており、直近高値を更新して上値を伸ばせるかどうかがテクニカル面の焦点である。今週は米雇用統計などの発表がある。
5月31日からの週の注目ポイント
31日 | 英国・米国休場 | ☆ |
鉱工業生産指数(4月速報) | ☆☆ | |
小売業販売額(4月速報) | ☆ | |
中国製造業購買担当者景況指数(5月) | ☆☆ | |
独消費者物価指数(5月速報) | ☆☆ | |
1日 | 豪準備銀行政策金利発表 | ☆☆☆ |
中国財新製造業購買担当者景況指数(5月) | ☆☆ | |
ユーロ圏製造業購買担当者景況指数(5月確報) | ☆☆ | |
ユーロ圏消費者物価指数(5月速報) | ☆☆☆ | |
ユーロ圏雇用統計(4月) | ☆☆ | |
米ISM製造業景況指数(5月) | ☆☆☆ | |
2日 | ユーロ圏生産者物価指数(4月) | ☆☆ |
米地区連銀経済報告(ベージュブック) | ☆☆ | |
3日 | 中国財新サービス業購買担当者景況指数(5月) | ☆☆ |
ユーロ圏サービス業購買担当者景況指数(5月確報) | ☆☆ | |
全米雇用報告(5月) | ☆☆☆ | |
米新規失業保険申請件数 | ☆☆ | |
4日 | ユーロ圏小売売上高(4月) | ☆☆ |
米雇用統計(5月) | ☆☆☆ | |
米製造業新規受注(4月) | ☆☆ |
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