金・銀・プラチナ
マーケットレポート
金は米FRBの大幅利上げ見通しが圧迫
提供:ミンカブ・ジ・インフォノイド
金はインフレ対策や原油の動向も焦点
6月20日の週のニューヨーク金市場は、米連邦準備理事会(FRB)の大幅利上げ見通しを受けて軟調となった。パウエル米FRB議長は議会証言で、米FRBは40年ぶりの高水準で推移するインフレを引き下げることに「強くコミット」しており、「そのために迅速に」行動しているとの見方を示した。また景気後退リスクがあっても物価抑制に全力を傾けているとした。ボウマン米FRB理事は、7月の米FOMCで75ベーシスポイント(bp)の利上げを実施し、その後数回の会合で少なくとも50bpの引き上げが適切となる可能性があるという見方を示した。CMEのフェドウォッチでは、7月の75bp利上げを織り込んでおり、9月以降の見通しが焦点である。景気減速懸念の高まりを受けて米国債の利回りが低下しており、今後発表される経済指標を確認したい。
シティグループは、世界的な景気後退の可能性が50%近くあると予測した。今後18カ月の世界経済の動向を予想し、景気後退は「ますます明白なリスク」だと指摘した。6月の米総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は5月改定値53.6から51.2に低下し、5カ月ぶりの低水準となった。高インフレと消費者心理の悪化によって全般的に需要が減少した。6月の米ミシガン大消費者信頼感指数(確報値)は50.0と速報値の50.2から下方修正され、過去最低を更新した。バイデン米大統領は22日、連邦ガソリン税の3カ月停止を議会に要請した。ただペロシ下院議長は、この措置を講じても石油会社や小売業者が消費者にほとんど還元しない可能性を懸念している。一方、ニューヨーク原油は景気減速懸念を受けて軟調となり、5月11日以来の安値101.53ドルを付けた。米政府のインフレ対策や原油の動向も当面の焦点である。
ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁は、今夏に政策金利を2回引き上げる計画を再確認した。市場では、ユーロ圏の国債市場の分断化防止措置の行方が注目されている。ECB理事会メンバーのセンテノ・ポルトガル中銀総裁は、ECBが検討している分断化防止措置はこのリスクに取り組むECBの決意を示すものになるとする一方で、国債利回り差に関する具体的な目標はないと述べた。今後の協議の行方と当局者の発言を確認したい。
6月24日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比14.50トン増の1,061.04トンとなった。米連邦準備理事会(FRB)の大幅利上げ見通しを受けて投資資金が流出した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、6月21日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは16万3,287枚となり、前週の15万4,598枚から拡大した。今回は新規買いが1,523枚、買い戻しが7,166枚入り、8,689枚買い越し幅を拡大した。
プラチナは景気減速懸念が圧迫も南アの動向を確認
ニューヨーク・プラチナ7月限は、景気減速懸念の高まりなどを受けて軟調となり、4月28日以来の安値900.6ドルを付けた。米連邦準備理事会(FRB)の大幅利上げ見通しを受けて景気減速懸念が高まった。900ドル付近が強固な支持帯となっているが、複数の支持線を割り込むと、テクニカル要因の売りが出て一時的に急落する可能性がある。一方、今夏の南アの賃金交渉の行方も当面の焦点である。南ア全国金属労働者組合(NUMSA)は20日、インパラ・プラチナム(インプラッツ)が契約しているルステンバーグ鉱山の3企業で組合員が低賃金を理由に無期限ストを開始したことを明らかにした。同社は労働力の8%未満であり、影響は限られるとの見方を示したが、大手労組である南ア全国鉱山労働者組合(NUM)と南ア鉱山建設労働組合(AMCU)の動向も確認したい。南アの電力会社エスコムは24日、賃金交渉の行き詰まりを受けた労働者の抗議行動により、電力供給の削減を拡大すると明らかにした。電力供給の削減が鉱山会社の操業に影響するかどうかも焦点である。
プラチナETF(上場投信)の現物保有高は、23日のロンドンで16.31トン(前週末16.25トン)、ニューヨークで36.51トン(同36.66トン)、南アで10.67トン(同10.68トン)となった。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、6月14日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは1,491枚となり、前週の2,214枚から縮小した。新規売りが新規買いを上回った。
ニューヨーク金は200日移動平均線付近の動き
ニューヨーク金8月限は、1,817.7~1,850.3ドルで軟調となった。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が議会証言で、インフレを引き下げることに「強くコミット」しているとし、大幅利上げ見通しが圧迫要因になった。200日移動平均線(24日1,849.9ドル)付近で推移しており、どちらに放れるかがテクニカル面の焦点である。金ETF(上場投信)から投資資金が流出しており、引き続き売られると下放れる可能性が出てくる。
6月27日からの週の注目ポイント
27日 | 米耐久財受注(5月速報) | ☆☆ |
米中古住宅販売仮契約指数(5月) | ☆☆ | |
28日 | 米S&Pケース・シラー住宅価格指数(4月) | ☆☆ |
米消費者信頼感指数(6月) | ☆☆ | |
29日 | 独消費者物価指数(6月速報) | ☆☆ |
米国内総生産(1-3月期確報) | ☆☆☆ | |
30日 | 鉱工業生産指数(5月速報) | ☆☆ |
中国製造業購買担当者景況指数(6月) | ☆☆ | |
英国内総生産(1-3月期確報) | ☆☆ | |
米個人所得・支出(5月) | ☆☆☆ | |
米新規失業保険申請件数 | ☆☆ | |
シカゴ購買部協会景気指数(6月) | ☆☆ | |
1日 | 香港、カナダ休場 | ☆ |
失業率(5月) | ☆☆ | |
日銀短観(6月調査) | ☆☆☆ | |
ユーロ圏製造業購買担当者景況指数(6月確報) | ☆☆ | |
ユーロ圏消費者物価指数(6月速報) | ☆☆☆ | |
米ISM製造業景況指数(6月) | ☆☆☆ |
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