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『ココがPOINT!』
【ドコモ完全子会社化】市場に与える影響とは
投資情報部 鈴木英之
9月第5週(9/28~9/30)は、買い先行の展開となっています。米国株式市場でIT株の見直しが進んだことに加え、9月に配当や株主優待などの権利が確定する銘柄の権利付最終日を迎え、9/28(月)の日経平均株価は前週末比307円00銭高となり、約1ヵ月半ぶりの高値水準回復となりました。続く9/29(火)は、推定で142円台の配当落ちが影響し、売り先行となりましたが、次第に買い直される展開となっています。
米国株式市場の反発傾向が続いていることもありますが、国内最大の通信企業であるNTT(9432)が子会社であるNTTドコモ(9437)をTOB(株式公開買い付け)を通じ、完全子会社化する見通しとの報道があったことも影響していると考えられます。それは、どういうことでしょうか。
ココがPOINT!
1.世界的に株価が下落基調の中、日経平均株価は底堅さを堅持
9月の日経平均株価は上昇後、緩やかな下落に転じました。9月第1週(8/31~9/4)は前週末比322円78銭(1.4%)高、第2週(9/7~9/11)は201円06銭(0.9%)高と続伸しましたが、第3週(9/14~9/18)は46円19銭(0.2%)安、第4週(9/23~9/25)は155円68銭(0.9%)安と続落しました。
米国株を中心に、株式市場が世界的な下落局面を迎え、日本株もその逆風にさらされています。NYダウは9/3(木)から9/24(木)にかけ、最大9.1%、ナスダック指数は9/2(水)から9/21(月)にかけ最大12.9%も下落しました。
特に、割高感や過熱感が指摘されていた主要IT株を中心とした下落が大きな要因となりました。個別には、9月に付けた最高値から月内安値までの下落率(9/25現在)ではアップル25%、マイクロソフト15%、アマゾン19%など、厳しい下げになりました。
このような米国の主要IT株を中心とする割高感や過熱感の調整に加え、スペインやイギリスなど欧州で、新型コロナウイルスの感染が再び拡大傾向となったことや、米国のルース・ギンズバーグ最高裁判事が亡くなったことを受けた後任判事の人選問題など、今後の世界経済の先行きに不透明感が強まってきたことも下落要因の1つとみられています。
もっとも、日経平均株価については、9/14(月)に付けた月内高値からの最大下落率は2.3%にとどまっており、海外の株価指標に比べて底固さが目立っています。その理由に日本は、もともと米国のIT株のようなグロース系銘柄の存在が占める割合が小さく、過熱感が乏しかったことがあげられます。また、バリュー系銘柄は8/30(日)にウォーレン・バフェット氏による日本の総合商社株5社の買い付けが明らかになったことから、大きく注目されるキッカケになりました。
こうした中、日本の首相として歴代最長の在任期間となった安倍前首相が8/28(金)に辞意を表明し、菅新首相への政権後代がスムーズに進行したことで、政治不安が後退した点も日本株の底堅さにつながったとみられます。
また、菅首相指示による「デジタル庁」創設の動きも大きなインパクトとなりました。ITを駆使した行政の効率化を政策の前面に打ち出したことで、中小型のIT関連銘柄が動意付き、東証マザーズ指数が9/23(水)に年初来高値を示現したことも、投資マインド全般を好転させる役割を果たしました。
9月第5週(9/28~9/30)は、買い先行の展開となっています。米国株式市場でIT株の見直しが進んだことに加え、9月に配当や株主優待などの権利が確定する銘柄の権利付最終日を迎え、9/28(月)の日経平均株価は前週末比307円00銭高となり、約1ヵ月半ぶりの高値水準回復となりました。続く9/29(火)は、推定で142円台の配当落ちが影響し、売り先行となりましたが、次第に買い直される展開となっています。
表1 日経平均株価の値動きとその背景(2020/9/23~2020/9/29)
日経平均株価 | 日米株式市場等の動き | ||
終値 | 前日比 | ||
9/23(水) | 23,346.49 | -13.81 | 欧州のコロナ感染再拡大等が逆風。アビガンの10月申請に期待。 |
9/24(木) | 23,087.82 | -258.67 | 大幅な米国株安が逆風。政府のデジタル庁創設でNECに思惑買い。 |
9/25(金) | 23,204.62 | +116.80 | 3日ぶりに反発。9月末の配当狙いの買い期待などで、買いが優勢。 |
9/28(月) | 23,511.62 | +307.00 | 9月末配当権利取りの動きも重なり大幅に続伸。キオクシアが上場延期を正式発表。 |
9/29(火) | 23,539.10 | +27.48 | 米株高の押し上げ効果を配当落ちで相殺。「NTTドコモ完全子会社化」が追い風か。 |
図1 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図2 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図3 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
表2 当面の重要スケジュール
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
9/29(火) | 日本 | 日銀金融政策決定会合「主な意見」 | |
日本 | ★決算発表(15社) | スギホールディングス | |
米国 | S&PコアロジックCS住宅価格指数 | 前回(20都市)は前年同月比4.29%上昇 | |
米国 | コンファレンスボード消費者信頼感指数 | ||
米国 | 大統領選挙、1回目の大統領候補討論会 | ||
9/30(水) | 日本 | 8月鉱工業生産 | |
日本 | ★決算発表(15社) | 西松屋チェーン | |
中国 | 9月製造業PMI | ||
中国 | 9月Caixin中国製造業PMI | ||
米国 | 9月ADP雇用統計 | 雇用者数の市場コンセンサスは648千人増 | |
米国 | 4-6月期GDP確定値 | ||
米国 | 8月中古住宅販売仮契約 | ||
10/1(木) | 日本 | 9月調査日銀短観 | 大企業製造業業況判断指数の前回は-34。今回予想のコンセンサスは-23 |
日本 | 9月自動車販売台数 | ||
日本 | 改正酒税法が一部施行 | ||
日本 | ★決算発表(12件) | キューピー | |
米国 | 9月ISM製造業景況指数 | 市場コンセンサスは55.9 | |
中国 | 国慶節・中秋節休み(~8日) | ||
10/2(金) | 日本 | マネタリーベース | |
日本 | 失業率・有効求人倍率 | 前回は前者2.9%、後者は1.08倍 | |
日本 | ★決算発表(19件) | ニトリHD | |
米国 | 9月雇用統計 | 市場コンセンサスは非農業部門雇用者数が859千人増。失業率8.2% | |
米国 | 8月製造業受注 | ||
10/4(日) | 日本 | 証券投資の日 | |
10/5(月) | 米国 | 9月ISM非製造業景況指数 | 新規受注や雇用等の個別指標にも注意 |
10/6(火) | 米国 | 8月貿易収支 | |
10/7(水) | 日本 | 8月景気動向指数 | |
日本 | ★決算発表(17件) | ファミリーマート、ベル24、壱番屋 | |
米国 | 9月15・16日開催のFOMC議事録 | ||
米国 | 副大統領候補テレビ討論会(ユタ州) | ||
10/8(木) | 日本 | 9月都心オフィス空室率 | |
日本 | 9月景気ウォッチャー調査 | ||
日本 | ★決算発表(27件) | ローソン、良品計画、セブン&アイ・ホールディングス | |
10/9(金) | 日本 | 8月家計調査 | |
日本 | 8月毎月勤労統計調査 | ||
日本 | ★決算発表(81件) | 竹内製作所、吉野家、安川電、ビックカメラ |
表3 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2020年 | 2021年 | |
日銀金融政策決定会合 | 10/29(木)、12/18(金) | 1/21(木)、3/19(金)、4/27(火)、6/18(金)、7/16(金)、9/22(水)、10/28(木)、12/17(金) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 11/5(木)、12/16(水) | 1/27(水)、3/17(水)、4/28(水)、6/16(水)、7/28(水)、9/22(水)、11/3(水)、12/15(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 10/29(木)、12/10(木) | 1/21(木)、3/11(木)、4/22(木)、7/22(木)、9/9(木)、10/28(木)、12/16(木) |
2.「ドコモ完全子会社化」が市場に与える影響とは?
前項で触れたように、9/28(月)の日経平均株価は前週末比307円00銭高となり、約1ヵ月半ぶりの高値水準回復となりました。続く、9/29(火)は推定で142円台の配当落ちが影響して売り先行となりましたが、午後にかけて値を戻す展開になっています。米国株式市場の反発傾向が続いていることもありますが、国内最大の通信企業であるNTT(9432)が子会社であるNTTドコモ(9437)をTOB(株式公開買い付け)を通じ、完全子会社化する見通しとの報道があったことも影響していると考えられます。
そもそも企業は、株式市場に株式を上場することにより、知名度の向上に加え、資金調達が容易になるという大きなメリットを獲得することができます。
しかし、IR(投資家への情報提供活動)や情報公開に伴う手間やコストがデメリットと考えられます。株式非公開化により、こうした手間やコストを気にしなくて良くなる点や、買収防止対策になる点などのメリットにより、上場企業が株式の非公開化を決断するケースも増えています。
最近は、親会社と子会社がともに株式市場に上場する「親子上場」について、おもに海外投資家や機関投資家から、(1)親会社と少数株主の間での利益相反、(2)株式市場からの資金の二重取り、(3)子会社利益の社外流出などの観点から問題視する意見も少なくありません。東京株式市場で最大の親子上場ともいえるNTT・NTTドコモの「親子上場」解消は、日本の株式市場の進歩として素直に受け入れられる側面がありそうです。
この日、NTTドコモは買いが集中してストップ高となりましたが、一部でMBO(経営陣による買収)による非上場化が観測されていたソフトバンクグループ(9984)も買われ、続伸となりました。今後、親子上場がみられる他の企業グループについても、連想買いが広がる可能性もあります。
さらに非常に重要なことは、PBRやPER、配当利回りなどの面で割安に放置されている銘柄に、買収リスクが認識されることや、MBOなどの可能性が意識されて見直し買いが進む可能性があることです。図4は、日経平均株価のPBRについて、過去20年間の推移を月足でみたものです。現在のPBR水準は、長期的レンジの中でも低い水準にとどまり、日経平均株価の割安感が強いことを示しています。したがって、上場企業のMBOや株式非公開化の可能性が広がってくると、株式市場全般が活性化され、日経平均株価の持続的な上昇につながってくる公算も大きいとみられます。
図4 日経平均株価のPBR(株価純資産倍率)・月足
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