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『ココがPOINT!』
≪波乱相場の見通し≫結局、日経平均は割高なのか?割安なのか?
投資情報部 鈴木英之
日経平均株価は2/26(金)に前日比1,202円26銭安と急落して以降、調整色の強い展開になっています。
米長期金利の上昇が加速し、内外でグロース銘柄への売りが増えている中、株式市場では「そもそも、今の株価はバブルであり、その崩壊で株価は下落が続く可能性が大きい」との主張が増えてきました。
本当に、株式市場はバブルなのでしょうか。
今後も下落は続くのでしょうか。
ココがPOINT!
1.3月も売り先行でスタート
日経平均株価の3月第1週(3/1~3/5)終値は28,864円32銭となり、前週末(2/22)比101円69銭(0.4%)安となりました。週足ベースでは、2月第4週(2/22~2/26)の3.5%安に続く下落となりました。
米長期金利上昇への警戒感から値がさ株中心に売られ、一進一退の値動きとなる中、3/5(金)は日銀の黒田総裁が長期金利の変動幅拡大を許容しない姿勢を示したことで、日経平均株価の下げ幅は大きく縮小しました。
新型コロナにつきましては、政府は3/5(金)に新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、1都3県に発令中の緊急事態宣言について、7日の期限を21日まで再延長すると決定しました。
一方、3月第1週(3/1~3/5)のNYダウは前週末比1.8%高で、週足ベースで反発となりました。
米長期金利上昇への警戒感と、追加経済対策の成立や行動規制緩和による景気回復期待感が入り混じる展開でした。
米長期金利の上昇に対し、警戒感の強い状況が続く中、3/5(金)は雇用統計の非農業部門雇用者数が予想を上回る増加となったものの、米長期金利の上昇は限定的であったことから、反発となりました。
1.9兆ドルに上る追加経済対策案は3/6(土)に上院にて可決しました。今後は、下院で再可決された後、3/9(火)から再審議を行い、3/14(日)までに成立する予定です。なお、今回の対策により、国民一人当たり1,400ドルの現金給付が3月中に始まる見込みです。
気になるトピックス
3/1(月)に米著名投資家のウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイ社の保有額上位15銘柄に伊藤忠商事が含まれていたことが明らかになりました。以降、伊藤忠商事の株価は堅調に推移し、3/9(火)に年初来高値を更新しています。
図表1 日経平均株価の値動きとその背景(2021/3/2~2021/3/9)
日経平均株価 | 日米株式市場等の動き | ||
終値 | 前日比 | ||
3/2(火) | 29408.17 | -255.33 | 過熱感から値がさ株を中心に利益確定売りが優勢。 |
3/3(水) | 29,559.10 | +150.93 | 一進一退の値動きの中、バリュー株を中心に買われる。 |
3/4(木) | 28,930.11 | -628.99 | 米長期金利が再び上昇し、警戒感が広がる。ファストリ、ソフトバンクGの2社で約325円押し下げる。 |
3/5(金) | 28,864.32 | -65.79 | 下げ幅が一時600円を超えるも、黒田総裁が日銀の長期金利変動幅拡大を否定し、下げ渋る。 |
3/8(月) | 28,743.25 | -121.07 | 米長期金利の動向に警戒感。3日続落も値上がり銘柄数が過半。 |
3/9(火) | 29,027.94 | 284.69 | 4日ぶりに反発。米追加経済対策が週内に成立見通しとなり、景気回復期待感。 |
図表2 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図表3 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図表4 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図表5 当面の重要スケジュール
月日 | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
3/10(水) | 日本 | エルニーニョ監視速報 | |
中国 | 2月生産者・消費者物価指数 | ||
アメリカ | 2月消費者物価指数 | ||
2月月次財政収支 | |||
3/11(木) | 日本 | 2月国内企業物価指数 | |
2月都心オフィス空室率 | |||
東日本大震災から10年 | |||
アメリカ | 新規失業保険申請件数 | ||
1月求人労働異動調査 | |||
★決算発表 | ドキュサイン、GOODRXホールディングス、アルタビューティ― | ||
- | WHO新型コロナウイルスパンデミック宣言から1年 | ||
- | ECB定例理事会 | ||
3/12(金) | 日本 | 1-3月期法人企業景気予測調査 | |
メジャーSQ算出日 | |||
アメリカ | 2月生産者物価指数 | ||
3月ミシガン大学消費者マインド指数 | |||
3/14(日) | アメリカ | 夏時間入り | |
3/15(月) | 日本 | 1月機械受注 | |
1月第三次産業活動指数 | |||
中国 | 2月工業生産 | ||
2月都市部固定資産投資 | |||
2月小売売上高 | |||
アメリカ | 3月NY連銀製造業景気指数 | ||
1月対米証券投資 | |||
3/16(火) | ドイツ | 3月ZEW景況感指数 | |
アメリカ | FOMC(~17日) | ||
2月輸出物価 | |||
2月小売売上高 | |||
2月鉱工業生産・設備稼働率 | |||
3月NAHB住宅市場指数 | |||
3/17(水) | 日本 | 2月貿易統計 | |
アメリカ | パウエルFRB議長会見(経済見通し発表) | ||
2月住宅着工件数 | |||
2月建設許可件数 | |||
3/18(木) | 日本 | 日銀金融政策決定会合(~19日) | |
2月首都圏新規マンション発売 | |||
アメリカ | 3月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数 | ||
★決算発表 | ダラー・ゼネラル | ||
3/19(金) | 日本 | 黒田日銀総裁会見 | |
2月消費者物価 |
図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2021年 | |
日銀金融政策決定会合 | 3/19(金)、4/27(火)、6/18(金)、7/16(金)、9/22(水)、10/28(木)、12/17(金) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 3/17(水)、4/28(水)、6/16(水)、7/28(水)、9/22(水)、11/3(水)、12/15(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 3/11(木)、4/22(木)、7/22(木)、9/9(木)、10/28(木)、12/16(木) |
2.バブルは生じているのか?株価下落は続くのか?
米国のグロース銘柄の上昇や、暗号資産の急騰劇、多くの新興銘柄の大幅上昇など、米株式市場は部分的にはバブルの様な現象も見受けられます。
しかし、日経平均株価については、バブルと呼ばれる水準に達していないと考えられます。
図表7は、日経平均株価とその(1)BPS(1株純資産)、(2)BPS+予想EPS(1株利益)5年分、(3)BPS+予想EPS(1株利益)10年分等の推移を1枚のグラフにしたものです。
リーマンショック以前は、(3)を超えて買われる場面もありましたが、それ以降は(1)と(2)の間で推移してきたことが分かります。
(1)のBPSは「解散価値」を1株当たりに直した金額で、ここでは日経平均採用銘柄をすべて買収し、債務等を弁済して、投資家の手もとに残る金額の1株当たりの数値になります。日経平均株価は過去、(1)のBPSを重要な下値支持線とし、それに予想EPSの5年分の「プレミアム」を追加した(2)前後を上限としてきた形になっています。
2010年以降、日経平均株価は(1)と(2)の間を推移してきました。すなわち、BPSや予想EPSの成長に沿って、株価は上昇してきたといえ、特に過大評価された局面は認められず、「バブルは発生していない」と考えられます。
ちなみに、3/8(月)時点の日経平均株価は28,743円、BPSは22,281円、予想EPS1,301円で、
22,281(BPS)+1,301(予想EPS)×5(年)=28,786(円)となり、
現在の株価水準は(2)で許容されるぎりぎりの範囲内であり、ここを超えてくると利益確定売りが出やすくなるもしれません。
2月相場で、日経平均株価は30,000円を超える場面がありましたが、この考え方に従えば、時期尚早であったと言えるかもしれません。
日経平均株価がここからさらに上がるには、“(2)で計算される理論的上限値の上昇”、言い換えれば、“BPSや予想EPSがさらに増えること”が必要とみられます。
3月下旬以降は2月決算企業、4月下旬以降は3月決算企業の決算発表が本格化し、BPSが上積みされ、予想EPSも上昇してくる可能性が大きいと考えられるため、日経平均株価の上値余地も拡大してくる可能性が大きそうです。
日経平均株価採用銘柄の純利益合計は、会社予想のある銘柄だけの集計では今期4割程度の減益、市場コンセンサス基準では2割超の減益が予想され、来期は市場コンセンサスベースで3割程度の増益になりそうです。
ただし、日経平均株価の寄与度が高いソフトバンクグループ(9984)やソニー(6758)など、来期に予想EPSが減少する銘柄もあるので、予想EPSの増加は1割台程度にとどまる可能性がありそうです。
仮に、予想EPSを上記の1,301円から1割増しとした1,431円とし、前述した式に入れて計算すると、29,436円になります。
この考え方に基づくと、30,000円はバブルのスタート水準と言えるかもしれません。
ちなみに、日経平均株価のPBRは過去10年間で最高が約1.5倍でした。
日経平均はPBRの推移を参考とする見方では上限が、22,281円×1.5倍=33,421円と考えることも可能になります。
この見方に沿えば、33,421円以下の日経平均株価はバブルではないと考えられます。
図表7 「日経平均株価」への評価は、ある意味で妥当?
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