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『ココがPOINT!』
足元は波乱も、上昇局面に期待の"ワケ"とは。
投資情報部 鈴木英之
5月第1週(5/3~5/7)の日経平均株価は、5週ぶりに反発しました。
米国では新型コロナウイルス向けワクチンの接種が順調に進み、景気回復期待からNYダウやS&P500が史上最高値まで上昇。ただし、景気回復期待で再び金利上昇懸念が強まったことなどから、ナスダックの下げが厳しくなり、それを嫌気した5月第2週の日経平均株価は波乱含みの動きとなっています。
しかし、過度の懸念は不要と考えられます。
なぜ、日経平均株価の上昇局面が期待できるのか。その理由について解説します。
ココがPOINT!
1.日経平均株価は5月第1週、5週ぶりに反発も、第2週は再び波乱?
日経平均株価は、5月第1週(5/3~5/7)終値が29,357円82銭となり、前週末(4/30)比で545円19銭(1.9%)高、週足ベースでは3月第5週(3/29~4/2)の2.3%高以来、5週ぶりの反発となりました。
5/6(木)は29,000円の節目を上回り、大幅に反発。日本の大型連休中にダウが最高値を更新したことで、米株高を追い風に4/19(月)以来、およそ2週間ぶりの高値をつけました。
5/10(月)は3日続伸し、4/19(月)以来3週間ぶりに2万9,500円を上回りました。一方、新型コロナウイルスの重症者数が過去最多となり、後場は上値が重い展開となりました。
5月第1週(5/3~5/7)のNYダウは前週末比2.7%高、週足ベースで3週間ぶりの反発となりました。
5/3(月)は相次ぐ良好な米経済指標の発表や、新型コロナウイルスの感染拡大により規制されていた行動制限の緩和など、米経済正常化期待が強まり、株価は反発。
5/5(水)は米経済正常化期待への期待感などから3日続伸し、2週間半ぶりに最高値を更新しました。以降、上昇基調となり、5/7(金)は3日連続で最高値を更新。雇用統計が市場予想を大きく下回り低下したものの、FRBの金融緩和長期化に期待が広がり、主要3指標が上昇。S&P500も最高値を更新しました。
一方、ナスダック総合指数は4/30(金)終値に対し、5/10(月)終値は4.1%下落しており、グロース銘柄からバリュー銘柄・景気敏感株へのシフトが鮮明になっています。特に5/10(月)の米国市場ではナスダック総合指数が350ポイント超も下げ、それを嫌気した5/11(火)の東京株式市場は売り先行の展開となっています。日経平均株価は再び29,000円を割り込むなど、再び波乱色が強まっています。
市場予想を大きく下回った米雇用統計
4月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が100万人増の市場予想に対し、26.6万人増と大幅に予想を下回る結果となりました。また、3月の速報値については91.6万人から77万人に下方修正されました。
米雇用統計の前哨戦とされるADP雇用統計の増加や、新規失業保険申請件数が新型コロナウイルス感染拡大以前の昨年3月以降はじめて50万件を下回っていたことなどから、米雇用統計の結果は予想外の出来事でした。
ただし、今回の結果は一時的な要因なども含まれていることから過度な悲観は不要と思われます。
図表1 日経平均株価の値動きとその背景(2021/4/28~2021/5/11)
日経平均株価 | 日米株式市場等の動き | ||
終値 | 前日比 | ||
4/28(水) | 29,053.97 | +62.08 | 反発。ファナックなど、好決算銘柄が株価を押し上げた。一方、新型コロナウイルスの感染拡大が重荷となった。 |
4/29(木) | 休場 | 昭和の日 | |
4/30(金) | 28,812.63 | -241.34 | 反落。決算発表を受けて、ソニーGなど値がさ株の一角が株価を押し下げた。連休前で持ち高調整の売りが優勢。 |
5/3(月) | 休場 | 憲法記念日 | |
5/4(火) | 休場 | みどりの日 | |
5/5(水) | 休場 | こどもの日 | |
5/6(木) | 29,331.37 | +518.74 | 米株高を追い風に、4/19以来およそ2週間半ぶりの高値。大型連休中にダウが上昇し、5日に最高値を更新。 |
5/7(金) | 29,357.82 | +26.45 | 米主要3指標が揃って上昇。ダウは3日連続で最高値更新、S&P500も1週間ぶりに最高値更新。 |
5/10(月) | 29,518.34 | +160.52 | 3日続伸。米雇用統計が市場予想を大きく下回り、FRBによる金融緩和の長期化観測が強まる。 |
5/11(火) | 28,608.59 | -909.75 | 4日ぶりに反落。下げ幅は2/26以来の大きさに。ソフトバンクGなど、値がさ株を中心に売られる。 |
図表2 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図表3 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図表4 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図表5 当面の重要スケジュール
国・地域 | 予定内容 | 備考 | |
5/10(月) | 日本 | ★決算発表 | 伊藤忠商事、パナソニック、日本郵船 |
アメリカ | ★決算発表 | アファームホールディングス、ビオンテック | |
5/11(火) | 日本 | 4/26・27開催の日銀金融政策決定会合の「主な意見」 | |
★決算発表 | ソフトバンク、武田薬、日産、ダイキン | ||
中国 | 4月生産者・消費者物価指数 | ||
ドイツ | 5月ZEW景況感指数 | ||
アメリカ | ★決算発表 | パランティアテクノロジーズ、ロイヤルティファーマ、ユニティソフトウェア | |
5/12(水) | 日本 | 3月景気動向指数 | |
★決算発表 | ソフトバンクG、トヨタ自動車、日本電信電話 | ||
アメリカ | 4月消費者物価指数 | ||
バイデン米大統領、民主・共和党上・下院幹部会談 | |||
5/13(木) | 日本 | 4月都心オフィス空室率 | |
4月景気ウォッチャー調査 | |||
★決算発表 | 旭化成、大塚HD、スズキ、オリックス | ||
アメリカ | 4月生産者物価 | ||
★決算発表 | ウォルトディズニー、アリババグループ、シャオペン | ||
5/14(金) | 日本 | ★決算発表 | KDDI、日本郵政、本田技研 |
アメリカ | 4月小売売上高 | ||
4月輸入物価指数 | |||
4月鉱工業生産・設備稼働率 | |||
5月ミシガン大学消費者マインド | |||
5/17(月) | 日本 | 4月国内企業物価指数 | |
★決算発表 | 三菱フィナンシャルG、ブリヂストン、リクルート | ||
中国 | 4月鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資 | ||
アメリカ | 5月ニューヨーク連銀製造業景気指数 | ||
5月NAHB住宅市場指数 | |||
5/18(火) | 日本 | 日本実質GDP(1-3月期、改定値) | |
3月第三次産業活動指数 | |||
アメリカ | 4月住宅着工・建設許可件数 | ||
★決算発表 | ホーム・デポ、ウォルマート、メーシーズ | ||
5/19(水) | 香港・韓国 | 休場 | |
アメリカ | FOMC議事録(4月27、28日分) | ||
★決算発表 | ターゲット、ロウズ、シスコシステムズ | ||
5/20(木) | 日本 | 4月貿易統計 | |
★決算発表 | 東京海上HD、SOMPOホールディングス | ||
アメリカ | 5月フィラデルフィア連銀景気指数 | ||
★決算発表 | アプライドマテリアルズ | ||
5/21(金) | 日本 | 4月消費者物価指数 | |
アメリカ | 4月中古住宅販売件数 | ||
★決算発表 | ディア |
図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2021年 | |
日銀金融政策決定会合 | 6/18(金)、7/16(金)、9/22(水)、10/28(木)、12/17(金) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 6/16(水)、7/28(水)、9/22(水)、11/3(水)、12/15(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 7/22(木)、9/9(木)、10/28(木)、12/16(木) |
2.足元は波乱も、今後は日経平均株価の上昇トレンドが鮮明化する?
日経平均株価は5/10(月)時点、日足チャートが25日移動平均線(5/10現在29,413円)を上回ってきたことに加え、一目均衡表(日足)が“3役好転”※の形になっています。
なぜ、ここにきて日経平均株価の上昇ムードが強まってきたのでしょうか。
大きく、以下3点の理由が考えられます。
(1)米国市場でNYダウ、S&P500が過去最高値更新の動きになっていること。
(2)5/10(月)からは、多くの企業で大型連休明けとなり、リスク回避姿勢が弱まりやすいこと。
(3)上場企業の業績見通しが予想よりも強い数字となっていること。
このうち、(3)については、株式市場の認識はいまだ強くないと考えられます。
日経平均採用銘柄の業績見通しについて、その方向感を示しているのが日経平均株価の予想EPS(1株利益)です。(図表7)昨年5/19(火)には553円まで減少していましたが、直近の5/10(月)には1,597円まで回復し、企業業績の改善傾向を示唆しています。
日経平均株価の予想EPSは、決算発表が本格的にスタートした4/22(木)に1,339円でしたが、そこからみると13.5%も上方修正された形です。
当初、2022/3期の企業業績は非常に慎重な見通しになるのではないかと警戒しておりましたが、決算発表のフタを開けてみると、それほど悲観的ではありませんでした。
株式チャートの好転のみならず、実際に企業業績に対する見方が前向きな方向に転換してきたことで、株価は上昇しやすくなったと考えられます。
決算発表は5/14(金)にピークを迎えます。また、5/12(水)はトヨタ自動車(7203)やソフトバンクグループ(9984)など、時価総額上位企業の決算発表が予定されています。こうした決算発表や、米国市場の動向には引き続き注意が必要でしょう。
ただし、決算発表を通過し、日経平均株価予想EPSの上昇傾向が鮮明となってくれば、株価の上昇トレンドも期待できそうです。
※一目均衡表で“3役好転”とは、(1)遅行スパンが日々線を下から上に突き抜け、(2)日々線が「クモ」の上に突き抜け、(3)日々線が転換線及び基準線の上に突き抜け、の3条件を満たしている状態を指しています。
図表7 採用銘柄の予想EPS(1株利益)改善を先取りして上昇してきた日経平均株価
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