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『ココがPOINT!』
≪決算発表シーズン直前≫日経平均の方向感は!?
投資情報部 鈴木英之・長谷川綾乃
米国での長期金利上昇やインフレへの懸念が一服し、企業業績への不安も後退する中、米国株が上昇に転換。それを好感する形で日経平均株価も上昇傾向となっています。
こうした中、東京株式市場は2021/7~9期の決算発表シーズンを迎えます。
強弱材料が対立し、戻り売り圧力が強まりつつある印象ですが、日経平均株価は3万円を回復することはできるのでしょうか。
ココがPOINT!
1.日経平均株価が反発基調
日経平均株価の10月第3週(10/11~10/15)終値は29,068円63銭となりました。前週末(10/8)比で1,019円69銭(3.6 %)高、週足ベースでは反発となりました。
一方、NYダウは10月第3週(10/11~10/15)終値が前週末比3.8%高、週足ベースで反発となりました。
10/13(水)までは企業業績に対する不透明感や物価指数への警戒から軟調となっていました。
10/14(木)は主要企業で市場予想を上回る好決算が相次いだことや、9月の卸売物価指数(PPI)が市場予想を下回ったことでインフレ懸念が後退し、5日ぶりに反発しました。
10/15(金)はゴールドマン・サックスが決算発表を行い、市場予想を上回る増収増益にとなり、1銘柄でダウを97ドル押し上げました。また、9月の小売売上高が市場予想を上回って増加し、総じて堅調な値動きとなりました。
表1 日経平均株価の値動きとその背景
日経平均株価 | 株式市場の動き | ||
終値 | 前日比 | ||
10/12(火) | 28,230.61 | -267.59 | 4日ぶりに反落。 原油高による米長期金利上昇懸念から売りが優勢に。一方、自動車など輸出関連株の一部は外国為替市場で円安・ドル高が進み、輸出採算の改善期待から上昇。また、原油高を背景にINPEXや石油元売りなど資源関連も買われた。 |
10/13(水) | 28,140.28 | -90.33 | 米株安を受けて、売りが優勢。一時、節目の2万8,000円を割り込んだ。 国際通貨基金(IMF)が2021年の実質成長率予想を引き下げた。日本の成長率を引き下げたことも悪材料となった。また、9月の米消費者物価指数(CPI)の公表を控えて、様子見の投資家もいた模様。 |
10/14(木) | 28,550.93 | 410.65 | 3日ぶりに反発。 米長期金利の上昇が一服し、安心感から買いが優勢。東京エレクトロンやスクリンHD、アドバンテストなど、半導体関連株が総じて高い。一方、海運大手3社が安い。 |
10/15(金) | 29,068.63 | 517.70 | 米株高を受けて幅広い銘柄に買いが入り、約2週間ぶりの高値を付けた。 外国為替市場で円安・ドル高が進み、自動車など輸出関連株は追い風となった。米卸売物価指数(PPI)が市場予想を下回って、過度なインフレ懸念が後退したことも好材料となった。 |
10/18(月) | 29,025.46 | -43.17 | 3日ぶりに小幅反落。 日経平均は前週末に2万9,000円を約2週間ぶりに回復していたものの、決算発表の本格化を前に様子見の投資家もいる様子。 中国の7~9月期国内総生産(GDP)が市場予想を下回ったことも重荷となった。引き続き、円安・ドル高基調で輸出関連株が買われ、下値は堅い。 |
図表2 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図表3 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図表4 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図表5 主な予定
月日 | 国・地域 | 予定 | 備考 |
10/20(水) | 日本 | 9月貿易統計 | |
アメリカ | 地区連銀経済報告(ベージュブック) | ||
★決算発表 | テスラ、IBM、ベライゾンコミュニケーションズ | ||
10/21(木) | 日本 | ★決算発表 | ディスコ |
アメリカ | 9月中古住宅販売件数 | ||
新規失業保険申請件数 | |||
★決算発表 | AT&T、インテル、ダウ、ユニオンパシフィック | ||
10/22(金) | 日本 | 9月消費者物価 | |
★決算発表 | 中外製薬、東京製鉄 | ||
アメリカ | ★決算発表 | アメリカンエキスプレス、サウスウエスト航空 | |
10/25(月) | アメリカ | 9月シカゴ連銀全米活動指数 | |
★決算発表 | フェイスブック | ||
10/26(火) | 日本 | 9月企業向けサービス価格指数 | |
★決算発表 | 日本電産、オービック、日東電工、キヤノン | ||
アメリカ | 9月新築住宅販売件数 | ||
10月CB消費者信頼感指数 | |||
★決算発表 | マイクロソフト、3M、ビザ、AMD、ツイッター | ||
10/27(水) | 日本 | 日銀金融政策決定会合(~28日) | |
★決算発表 | エムスリー、信越化学、NRI、富士通、JR東海 | ||
アメリカ | 9月耐久財受注 | ||
★決算発表 | コカ・コーラ、マクドナルド、ボーイング、サービスナウ | ||
10/28(木) | 日本 | 黒田日銀総裁会見 | |
日銀「経済・物価情勢の展望」(展望レポート) | |||
★決算発表 | ZOZO、武田薬、三菱電、パナソニック、ソニーG | ||
アメリカ | 7-9月期GDP速報値 | ||
★決算発表 | アップル、メルク、マスターカード、スターバックス | ||
欧州 | ECB定例理事会(ラガルド総裁会見) | ||
10/29(金) | 日本 | 9月失業率・有効求人倍率 | |
9月鉱工業生産 | |||
10月消費動向調査 | |||
★決算発表 | イビデン、メルカリ、NEC、レーザーテック、商船三井 | ||
アメリカ | 9月個人所得・個人支出 | ||
★決算発表 | アマゾン、アルファベット、アルトリアG、エクソンモービル、アッヴィ、モデルナ | ||
10/31(日) | 日本 | 衆議院議員選挙投開票 | |
中国 | 10月製造業PMI、非製造業PMI、コンポジットPMI | ||
国連 | 第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)開催(~12日) |
図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定
2021年 | 2022年 | ||
日銀金融政策決定会合 | 10/28(木)、12/17(金) | 1/18(火)、3/18(金)、4/28(木)、6/17(金)、7/21(木)、9/22(木)、10/28(金)、12/20(火) | |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 11/3(水)、12/15(水) | 1/26(水)、3/16(水)、5/4(水)、6/15(水)、7/27(水)、9/21(水)、11/2(水)、12/14(水) | |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 10/28(木)、12/16(木) | 1/20(木)、3/10(木)、4/14(木)、6/9(木)、7/21(木)、9/8(木)、10/27(木)、12/15(木) |
図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位
コード | 銘柄 | 東証33業種 | 株価(10/18) | 株価(10/11) | 騰落率(10/11~10/18) |
5707 | 東邦亜鉛 | 非鉄金属 | 3,475 | 2,697 | 28.8% |
7211 | 三菱自動車工業 | 輸送用機器 | 375 | 322 | 16.5% |
5706 | 三井金属鉱業 | 非鉄金属 | 3,520 | 3,130 | 12.5% |
5202 | 日本板硝子 | ガラス・土石製品 | 623 | 562 | 10.9% |
5714 | DOWAホールディングス | 非鉄金属 | 4,885 | 4,420 | 10.5% |
7261 | マツダ | 輸送用機器 | 1,059 | 960 | 10.3% |
7004 | 日立造船 | 機械 | 933 | 846 | 10.3% |
5541 | 大平洋金属 | 鉄鋼 | 2,165 | 1,964 | 10.2% |
5713 | 住友金属鉱山 | 非鉄金属 | 4,562 | 4,141 | 10.2% |
7012 | 川崎重工業 | 輸送用機器 | 2,762 | 2,513 | 9.9% |
図表8 日経平均株価採用銘柄の下落率上位
コード | 銘柄 | 東証33業種 | 株価(10/18) | 株価(10/11) | 騰落率(10/11~10/18) |
8233 | 高島屋 | 小売業 | 1,147 | 1,236 | -7.2% |
9104 | 商船三井 | 海運業 | 6,440 | 6,920 | -6.9% |
2502 | アサヒグループホールディングス | 食料品 | 5,251 | 5,598 | -6.2% |
9531 | 東京瓦斯 | 電気・ガス業 | 1,899 | 2,013 | -5.7% |
8750 | 第一生命ホールディングス | 保険業 | 2,419.5 | 2,556.5 | -5.4% |
9532 | 大阪ガス | 電気・ガス業 | 1,904 | 2,008 | -5.2% |
9107 | 川崎汽船 | 海運業 | 5,020 | 5,270 | -4.7% |
9021 | 西日本旅客鉄道 | 陸運業 | 5,331 | 5,553 | -4.0% |
4568 | 第一三共 | 医薬品 | 2,839.5 | 2,951.5 | -3.8% |
8267 | イオン | 小売業 | 2,583.5 | 2,684.5 | -3.8% |
2.≪決算発表シーズン直前≫日経平均の方向感は!?
10/19(火)の東京株式市場では、半導体関連のディスコ(6146)が買い優勢の展開になっています。
同社は、10/21(木)に決算発表を予定していますが、2021/4~9期業績概要について営業利益が370億円前後(前年同期比6割増)になる旨、報じられたことを好感され、注目が高まっているようです。
こうした報道は、3月決算銘柄の2021/4~9期決算発表シーズン開始を告げる号砲と言えるかもしれません。
10/29(金)には、383社の企業が決算発表を予定(10/19現在)しており、決算発表の第1のヤマ場となります。そこで今回は改めて、企業業績と株価の関係について、現在の株価の妥当性を考えてみます。
純資産は定義的に、総資産から負債を引いた数字で、企業の“解散価値”を示していると言われます。
その数値を発行済み株式数で割った数字がBPS(1株純資産)です。株価がBPSの何倍で買われているかを示す株価指標がPBR(株価純資産倍率)で、この数字を日経平均株価採用銘柄について求めると、10/18(月)時点のPBRは1.31倍となります。同日の日経平均株価終値は29,025円46銭ですから、後者を全社で割ると、BPSは22,156円と計算されます。
図表9は、日経平均株価とPBR0.9倍、PBR1倍(BPS)、PBR1.1倍、PBR1.3倍、PBR1.5倍ライン(いずれも月終値)をグラフ化したものです。日経平均株価は過去10年間でおおむね、PBR0.9~1.5倍の範囲内で推移してきました。また、過去10年間のPBRの平均は1.2倍でした。
仮に、日経平均株価の妥当株価をPBR0.9倍~1.5倍の範囲内とした場合、計算のベースになるBPSの水準がグラフの青い線のように10年前の2倍以上に増えたことで、妥当な日経平均株価のレンジも上昇してきたとみられます。
では、現在のPBR1.3倍は妥当な水準といえるのでしょうか。
日経平均株価の過去10年間のPBRの平均1.2倍に対し、PBR0.9~1.5倍の範囲内ではあるものの、平均を少し超えるので、割高とも割安とも言えない微妙な水準にあるといえそうです。ちなみに、テクニカル的には、日経平均株価の25日移動平均線は29,271円(10/18)でこれも時価近くです。こうした点と、合わせて考えると現在の日経平均株価は非常に強弱感が対立しやすい水準にあると言えそうです。
今後、日経平均株価は上昇するのでしょうか。
図表9を見る限り、2015年以降、日経平均株価のPBRは1.33倍程度が上限で、現在のBPS 22,156円にこれを掛けると、29,467円であり、おおよそ29,500円程度が有力な上値抵抗線になりそうです。
ただ、企業業績の向上により、BPS自体が上昇する可能性も高まっています。
円安・ドル高の進展に加え、東南アジアの新型コロナウイルスの新規感染者数が減少し、大手自動車会社の生産調整が一巡しそうなことが背景にあります。2021/7~9期決算発表を通じ、日経平均株価のBPSが上昇する可能性もありそうです。
また、米S&P500指数は既に、最高値水準まで戻しています。米国株が再び高値更新の動きに転じれば、投資家のリスク許容度が増し、日本株を押し上げる材料になりそうです。
図表9 日経平均株価、PBRの推移
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