特集レポート
【マーケット・フラッシュ】「短観」が示唆する投資戦略は?
投資情報部 鈴木 英之
3月末の日経平均株価は18,917円01銭となり、前月末比2,225円95銭(10.5%)の下落となりました。新型コロナウイルスの感染拡大が中国・アジアから欧米に移り、感染拡大ペースも加速する中、主要国で生産・サービス活動もストップとなり、世界経済の悪化が大いに懸念されるに至りました。また、産油国の協調減産体制が崩れ、原油先物相場が急落したことも波乱を助長する形になりました。
こうした中、4/1(水)の取引開始前、日銀短観(3月調査)が発表されました。全国9,653社の企業に景況感をアンケート(調査期間は2/25~3/31)したものです。現時点での景況感について、「良い」とする企業の割合から「悪い」とする企業の割合を引いた業況判断指数は、大企業・製造業で「-8」となりました。この数字は12月調査時点での「先行き」予想である「0」からは8ポイント悪化しましたが、事前の市場コンセンサスである「-10」よりは上放れました。一方、大企業・非製造業の業況判断指数は「8」となりました。この数字は12月調査時点での「先行き」見通しである「18」からは10ポイント悪化しましたが、事前の市場コンセンサスである「2」よりは上放れました。
大企業・製造業の業況判断指数の「-8」は2013年3月調査(業況判断指数は今回と同じ「-8」)以来7年ぶりのマイナスとなりました。なお、3ヵ月後の景況感を予想する「先行き」については、大企業・製造業が「-11」(市場コンセンサスは「-15」)、大企業・非製造業は「-1」(市場コンセンサスは「-10」)となり、悪化が予想されるものの、市場が懸念する程厳しくはなさそうという数字になっています。
数字だけをみればポジティブな印象の「短観」になりました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によりもたらされるとみられる景気悪化の程度を、日本企業が読み切っていない可能性は大きいと考えられます。足元における世界の新型コロナウイルス感染者数・死亡者数は増加を続けており、日本でも感染爆発の兆しがみえています。したがって「短観」自体の上振れは株式市場の材料にはなりにくいと考えられます。
なお、現状では日本企業の2020年度経常利益(大企業・全産業)は前期比1.9%の減益見通しですが、上期に前年同期比5.0%減益、下期に1.9%増益の予想です。下期は消費税引き上げ(2019年10月)の影響も剥落する上、仮に新型コロナウイルスの感染拡大が一巡すれば、その悪影響からも解放されるとみられます。したがって、新型コロナウイルスの感染が一巡すれば、株式市場が下期回復シナリオを織り込み、上昇に転じる可能性がありそうです。
なお、個別業種では、「通信」や「情報サービス」が、12月調査時点での「先行き」見通しに対し、3月調査の数字が上振れる結果になっています。すなわち、これらの業種では例外的に業績予想に対する上振れや上方修正が期待できると思われます。「5G」や「テレワーク」「働き方改革」等は引き続き有望な投資テーマになりそうです。
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