アナリストの視点

アナリストの視点~(15)高配当利回り銘柄への投資ポイント~リスクも存在する点に注意!!

2020/6/11
投資情報部 長谷川 稔

当レポートは、一般投資家の皆さんにも、アナリストの分析手法の基本知識や考え方、さらにはノウハウを身につけていただく一助になればとの思いで執筆しています。毎回一つのテーマに関して、分析手法やその裏側に隠れている大事な意味などについて解説していきたいと思います。当社の国内株の「銘柄スクリーニング(銘柄条件検索)」機能を使って、実際にテーマにちなんだ銘柄のスクリーニングも併せて行ってみたいと思います。

第15回のテーマは、「高配当利回り銘柄への投資ポイント」です。株式の魅力は何といっても成長株への投資による株価上昇にあります。また、毎年コンスタントに実施される配当も大きな魅力です。昨今の日本のように低金利が常態化している局面においては、なおさらその魅力が高まっていると思われます。ちなみに東証1部企業の加重平均の予想配当利回りは2.37%(6/9現在)となっています。これに対して元本がほぼ保証されている確定利回りの定期預金の利率は、メガバンクにおいてはどの銀行でも、わずか0.002%(6ヵ月~3年物いずれも)にすぎません。既発の国債になると3年、5年物はマイナス金利となっています。

ただし、高配当株とはいえ、あくまでも株式ですので、実は種々のリスクが存在することを忘れてはなりません。今回はこうしたリスクや留意事項を整理し、高配当株投資で成果を上げることができるように、重要なポイントを解説していきたいと思います。皆さまの投資のご参考になれば幸いです。

※今回のレポートで「配当利回り」は「予想配当利回り」を指しています。

今回のポイント

1.高配当利回り銘柄への投資に必要な留意点

配当を重視した銘柄選択を行う際に、最初に考えなければならないのは、なぜその銘柄が高配当利回りを予想されているのかという基本的なことです。配当利回りは、配当金を株価で割って求められます。したがって予想配当利回りが高い銘柄は、配当金に対し、株価が割安に放置されているわけで、何らかの理由で投資家から高い評価を得られていないとも考えることができます。最もよくあるケースとしては、その銘柄の成長性が乏しいと多くの投資家がみている場合です。成長期待が高い企業の場合、仮に無配でも株価は上昇するケースが多々あります。

次に考えられるのは、配当実施へのリスクや、場合によっては会社の存続そのものへの懸念がある場合です。成長性と株価の論議は、別の機会に譲るとして、ここでは高配当利回り銘柄投資への留意点として以下の2点を説明したいと思います。

(1)配当実施の支払い能力、実施可能性:配当は基本的には期間利益から支払われます。したがって1株当たりの配当金の金額は、通常EPS(1株利益)の金額以内であることがポイントです。会社が稼いだ利益のうち配当金に充当された金額の比率を配当性向といいますが、これが100%を超えている会社は、内部留保を取り崩して配当金の支払いに充てていることになるため、注意が必要となります。内部留保が潤沢な会社の場合、一時的な収益悪化局面で配当性向が100%を超えるケースはよく見られます。

(2)会社の配当政策:いくら会社が利益を上げても、その余剰資金を配当に回すか、設備投資に使うか、内部留保に回すかは株主総会の決議が必要とは言っても経営陣の判断に委ねられます。したがって会社がどのような配当政策をとっているかを把握することは極めて肝要なポイントです。これは年度の有価証券報告書の中の「提出会社の状況」に「配当政策」という項目があり、そこでチェックすることができます。配当政策は大別すると、以下の3つに分けられます。

a)安定配当型:基本的に毎期決まった金額を業績動向いかんに関わらず支払うタイプ
b)配当性向型:基本的に利益のうち支払う配当金の一定比率をコミットすることにより支払うタイプ、業績連動型とも呼ばれる
c)総還元性向型:b)の配当性向型に自社株買いの金額を配当金に加えた総還元性向を用いるタイプ

a)安定配当型なら、配当金の多寡をさほど気にしなくて良いのですが、b)配当性向型の場合は業績が良ければ配当金は増加しますし、逆に業績が悪ければ減少する可能性が高いので、当該企業の業績動向に注意が必要です。

2.代表的な高配当銘柄はこちら!?

それでは、3月決算を踏まえて、代表的な高配当利回り銘柄をピックアップしてみます。

(1)東証1部、2部、マザーズ、JASDAQ上場企業で時価総額が1,000億円以上
(2)会社側が今期の配当金予想を公表していること

これらの条件を満たす銘柄群をまとめたのが表1です。配当利回りが高い順番に掲載しています。留意点として、前述の、なぜその会社の配当利回りが高いのかのポイントを、SBI証券が推定し掲載してみました。皆さまの銘柄選択の際のご参考になれば幸いです。

表1 【ご参考】代表的な高配当利回り銘柄はこちら!?

取引 チャート ポート
フォリオ
コード 銘柄名 株価(円)
6月10日
予想配当
利回り
(%)
留意点
2914 2914 2914 2914 日本たばこ産業 2,206 7.0% タバコの健康被害、成長性、
2121 2121 2121 2121 ミクシィ 1,768 6.2% 配当性向高い
8304 8304 8304 8304 あおぞら銀行 2,138 5.7% 収益ボラティリティー高い
8058 8058 8058 8058 三菱商事 2,492 5.4% 収益ボラティリティー高い
8306 8306 8306 8306 三菱UFJ FG 469 5.3% 成長性に懸念
8308 8308 8308 8308 りそなHLDG 400 5.3% 成長性に懸念
8053 8053 8053 8053 住友商事 1,333 5.3% 収益ボラティリティー高い
8411 8411 8411 8411 みずほFG 143 5.2% 成長性に懸念
5020 5020 5020 5020 JXTG HLDG 422 5.2% 収益ボラティリティー高い
1808 1808 1808 1808 長谷工コーポレーション 1,364 5.1% 収益ボラティリティー
5857 5857 5857 5857 アサヒHLDG 2,779 5.0% 収益ボラティリティー高い
7181 7181 7181 7181 かんぽ生命保険 1,511 5.0% 成長性、国の株式放出を懸念
1861 1861 1861 1861 熊谷組 2,723 4.4% 成長性に懸念

※当社WEBサイトの「スクリーニング(銘柄条件検索)」等よりSBI証券が作成。予想配当利回り計算の基準となる予想1株配当は会社予想ベース。

  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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