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今週の5銘柄 ~物色は景気敏感株へシフト!堅調な値動きの銘柄は?~
投資情報部 榮 聡
お知らせ
9月21日(月)は祝日のため「アメリカNOW! 今週の5銘柄」は休載いたします。次回掲載は9月28日(月)を予定しております。
先週はテクノロジー株の調整が続き、相場全体も2週連続の下落となりました。今週は、FOMC(米連邦公開市場委員会)の結果発表、米議会でのCOVID-19の追加経済対策の議論、大手IT銘柄の株価調整の行方、米国の小売売上高と中国の鉱工業生産などの経済指標などが注目されます。
今回は相場全体の調整の中で相対的に堅調な値動きとなっている景気敏感株の性格がある、ダウ(DOW)、フェデックス(FDX)、アメリカン エキスプレス(AXP)、ゼネラル モーターズ(GM)、ナイキ B(NKE)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 1週 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
素材 | 0.9% | 3.6% | 18.3% |
資本財・サービス | -0.1% | -0.1% | 12.8% |
公益事業 | -1.4% | -2.7% | 0.5% |
生活必需品 | -1.5% | 0.8% | 11.8% |
金融 | -1.6% | -1.9% | 3.9% |
ヘルスケア | -1.8% | -2.2% | 7.2% |
不動産 | -2.3% | -0.8% | 0.3% |
一般消費財・サービス | -3.3% | 1.0% | 17.7% |
S&P500 | -3.3% | -0.9% | 9.9% |
通信サービス | -5.2% | 0.4% | 9.9% |
情報技術 | -5.6% | -0.9% | 13.7% |
エネルギー | -6.7% | -15.1% | -18.6% |
騰落率上位(1週) | 騰落率 |
フェデックス | 5.3% |
キャタピラー | 4.8% |
ナイキ | 4.6% |
ゼネラル・モーターズ(GM) | 3.3% |
Dow Inc | 3.0% |
騰落率下位(1週) | 騰落率 |
オキシデンタル・ペトロリアム | -18.8% |
ペイパル・ホールディングス | -10.2% |
フェイスブック | -8.4% |
ネットフリックス | -8.3% |
ブッキング・ホールディングス | -8.3% |
先週の米国株式市場
調整が続いている大手IT銘柄には9日(水)に押し目買いが入って相場全体も反発となりましたが、10日(木)には売り直されて下落基調が続きました。S&P500指数は週間で2.5%の下落、ナスダック指数は週間で4.1%の下落でした。
相場を動かした材料として、中国の8月輸出が前年比9.5%増と伸びたことはポジティブでした。一方、アストラゼネカが開発しているワクチンで、副作用の可能性により臨床試験がストップとなったこと(9/12(土)に再開が発表されています)、米上院で共和党が提出したCOVID-19の追加経済対策法案の採決動議が否決されたこと、雇用の回復が市場予想よりもやや鈍いこと、などネガティブな材料が凌駕しました。
業種指数では、「素材」「資本財・サービス」の典型的な景気敏感業種が相対的に堅調でした。一方、インターネットやソフトウェアを主体とする「情報技術」「通信サービス」は引き続き下落率が大きくなっています。「エネルギー」はサウジアラビアが販売価格を引き下げたことをきっかけに原油価格が下落、1ヵ月で15%と目立った下落となっています。
個別銘柄では、建設機械大手のキャタピラー(CAT)が騰落率上位2位となっています。経済活動の再開が進んだ場合に恩恵が大きい、景気敏感株の象徴として買われているようです。モルガンスタンレーのアナリストが目標株価を101ドルから111ドルに引き上げたことも、現値よりは大幅に低いものの刺激になった可能性があるでしょう。
経済指標では、中国の8月貿易統計で輸出が前年比9.5%増と7月の同7.2%増に続いて増加が定着していることが確認されました。世界景気の改善を示唆している可能性がありそうです。一方、輸入は同2.1%減と低調でした。
今週の米国株式市場
FOMC(米連邦公開市場委員会)の結果発表、米議会でのCOVID-19の追加経済対策の議論、大手IT銘柄の株価調整の行方、米国の小売売上高と中国の鉱工業生産などの経済指標、などが注目されます。
なお、先週末時点では中断していたアストラゼネカのCOVID-19向けワクチンの臨床試験は9/12(土)に再開が発表されており、今週の相場はポジティブ材料の織り込みから始まると期待されます。
9/16(水)のFOMC結果発表では、見通し資料(Projection Materials)に追加される23年の経済見通しと政策金利見通しに加え、フォワードガイダンスの強化があるかが注目されています。
米議会での追加経済対策の議論については、対策への支出額に関して共和党と民主党の主張の溝が埋まっていません。大統領選挙を意識した駆け引きも加わっているとみられ、難航する可能性がありそうです。
大手IT銘柄の株価調整については、「GAFAM」とテスラの株価動向をパウエルFRB議長の会見があった7/29(水)の前日を基準として、S&P500指数が高値を付けた9/2(水)までと9/11(金)までに分けて図表3に示しています。アマゾンドットコム、マイクロソフト、アルファベットなどについては、調整が進んだことが確認できます。
テスラは株式分割、アップルは株式分割と「アップル・ワン」の計画、フェイスブックはソーシャル・コマースへの注目などそれぞれ株価を刺激する材料がありましたが、まだ、調整余地が残っている可能性がありそうです。
経済指標では、9/15(火)に中国の8月鉱工業生産(前月の4.8%増から同5.1%増に改善の予想)、小売売上高(前月の前年比1.1%減から同0.0%に改善の予想)、固定資産投資(前月の前年比1.6%減から同0.4%減に改善の予想)、9/16(水)に米国の8月小売売上高(前月比1.0%増の予想)、9/17(木)に米国の8月住宅着工・建設許可件数(着工件数は前月比1.4%減、建設許可件数は同2.5%増の予想)、9/18(金)に9月ミシガン大学消費者マインド(前月の74.1から75.0に改善の予想)、などの発表が予定されています。
企業決算でレナー、アドビ、フェデックスなどの発表が予定されているほか、アップルの新製品発表(ただし、新型iPhoneについては10月に延期とみられます)、ウォルマートの「ウォルマート+」のサービス開始、アマゾンが正社員採用を集中的に行うキャリア・デイなどの企業イベントが予定されています。
また、バークシャーハサウェイやセールスフォースドットコムの出資で注目を集めるデータウェアハウスのスノーフレイクなど、テクノロジー関連のIPOも複数予定されています。
今週の5銘柄
大手IT銘柄の株価調整が続く中で、景気敏感株の一角の株価が堅調となっています。そこで今回は株価調整が始まる前日の9/2(水)から9/9(水)にかけてプラスを維持して、かつ、過去4週に予想EPSが上方修正された銘柄をS&P100指数採用企業から図表4に抽出しました。
COVID-19のパンデミックによる打撃が大きく出た企業が多く、株価のバリュエーションも来期の業績回復を前提とすれば比較的低位にどとまっている企業が多いと言えそうです。
ここからダウ(DOW)、フェデックス(FDX)、アメリカン エキスプレス(AXP)、ゼネラル モーターズ(GM)、ナイキ B(NKE)を選んでご紹介いたします。
図表3 「GAFAM」とテスラの株価推移
図表4 相場調整の中で比較的堅調に推移している銘柄群(S&P100指数採用企業を対象に抽出)
コード | 銘柄 | 株価騰落率 (9/2→9/9) (%) |
EPS修正率 (4週) (%) |
株価 (9/9) (ドル) |
予想PER (今期) (倍) |
予想PER (来期) (倍) |
DOW | ダウ | 4.1 | 3.7 | 49.2 | 61.3 | 22.0 |
FDX | フェデックス | 0.1 | 3.6 | 225.8 | 20.9 | 17.1 |
AXP | アメリカン・エキスプレス | 1.3 | 2.0 | 103.8 | 30.3 | 15.6 |
MRK | メルク | 0.5 | 1.7 | 84.9 | 14.9 | 13.6 |
GM | ゼネラル・モーターズ(GM) | 7.3 | 1.0 | 32.0 | 13.2 | 7.3 |
NKE | ナイキ | 0.1 | 1.0 | 114.9 | 49.0 | 34.8 |
今週の注目銘柄
銘柄 | 株価 (9/11) |
予想PER (倍) |
---|---|---|
ダウ(DOW) | 49.85ドル | 59.3 |
【景気敏感の代表的企業として物色】 ・19年4月にダウ・デュポンからスピンオフした化学素材メーカーです。スピンオフ以来、事業の透明性が増し、コスト削減への踏み込みが強まって、株式市場からの信頼性が増しているとみられます。また、天然ガスを主な原料としていることで原油を原料とする同業他社に対してコスト競争力が高く、景気回復時には業績の伸びが相対的に高くなると期待されます。 ・4-6月期決算は、COVID-19のパンデミックによる景気の低迷を受けて売上が前年同期比24%減、営業利益が同95%減、調整後EPSが0.26ドルの赤字に落ち込みました。食品パッケージ、衛生関連、ホームケアなどの分野は前年同期比で増加となったものの、自動車など耐久財や建設分野の落ち込みの打撃が大きくなっています。 |
||
フェデックス(FDX) | 232.79ドル | 21.3 |
【今後は企業間物流の回復に期待】 ・小口貨物輸送の世界的大手です。20年5月期の売上は、企業間物流が主体のエクスプレス部門が54%、宅配が主体のグラウンド部門が35%、航空貨物部門が11%を占めています。COVID-19のパンデミック下では、宅配需要が盛り上がりましたが、今後は経済活動の再開にともなって企業間物流の改善が期待されます。 ・3-5月期決算は、企業向けのエクスプレス部門が落ち込んだ一方、ネット通販の利用増によるグラウンド部門の増加や太平洋間の航空貨物需要増により売上は前年同期比2%減にとどめました。しかし、利益率が高いエクスプレス部門の落ち込みやCOVID-19パンデミック下で操業するための費用増により調整後営業利益は同47%減でした。6-8月期決算を9/15(火)に発表の予定です。 |
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アメリカン エキスプレス(AXP) | 103.36ドル | 30.2 |
【クレジットカード関連では景気敏感な性格】 ・クレジットカードの大手です。ビザやマスターカードは電子決済のインフラ提供に特化していますが、同社は消費者に対して信用を供与していることが異なります。このため不況時にはカード利用の減少とともに、信用コストの増加が利益の打撃となるため、ビザやマスターカードよりも減益幅が大きくなる傾向があります。一方、経済活動が正常化するときには回復の度合いも大きく、両社に比べて景気敏感な事業となっています。 ・4-6月期の決算は、クレジットカード利用の減少を受けて売上が前年同期比29%減となった上に、信用コストの増加も加わって、純利益は同85%減と落ち込みました。クレジットカードの利用は月次では4月に底入れして、5月、6月と改善傾向にあるとしています。 |
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ゼネラル モーターズ(GM) | 30.46ドル | 12.6 |
【二コラへの出資が株価を刺激】 ・米国最大の自動車メーカーです。COVID-19のパンデミックは、代表的な耐久消費財である自動車販売への打撃が大きくなりましたが、経済活動の再開に伴って回復基調となることが期待されます。最近の株価上昇は、EV部門のスピンオフによるバリュー顕在化の可能性やEV・水素自動車のスタートアップ企業二コラへの投資が刺激材料になっているとみられます。 ・4-6月期は売上が前年同期比53%減、調整後営業利益は5億ドルの赤字となりました。しかし、北米部門の利益は8週間操業が停止したにもかかわらず、営業赤字は1億ドルにとどめて市場予想を大きく上回りました。売上が大きく、利益率も高いトラックおよびSUVの販売拡大による利益成長を目指しています。 |
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ナイキ B(NKE) | 118.00ドル | 23.2 |
【デジタルによる成長を目指す】 ・スポーツアパレルは不要不急の消費項目としてCOVID-19のパンデミックの打撃を受けましたが、強いブランド知名度に加えてデジタル、イノベーションで成長を目指す戦略への信頼が厚いようです。デジタルについては、テクノロジーのバックグラウンドをもつジョン・ドナホー氏のCEOへの起用で、23年のデジタル売上比率の目標を従来の30%から50%にまで引き上げました。 ・3-5月期のパンデミックによる小売店舗の閉鎖により売上は前年同期比38%減と予想以上の打撃でした。中華圏が同3%減にとどまったものの、その他世界は同30%以上の落ち込みでした。6月末の決算発表時には、店舗の9割はオープンしており、来店客は徐々に戻っているとしていました。9/22(火)に6-8月期決算の発表が予定されています。 |
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
14(月) | ・中国新築住宅価格(8月) ・ユーロ圏鉱工業生産(7月) |
レナー |
15(火) | ・中国鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(8月) ・中国不動産投資(8月) ・中国調査失業率(8月) ・ドイツZEW景気指数(9月) ・ニューヨーク連銀製造業景気指数(9月) ・米鉱工業生産(8月) |
アップル新製品発表会(ただし、新iPhoneは除く) ウォルマートの「ウォルマート+」のサービス開始 アドビ、フェデックス |
16(水) | ・米小売売上高(8月) ・米FOMC政策金利 ・米NAHB住宅市場指数(9月) |
|
17(木) | ・日銀金融政策 ・EU27ヵ国新車販売台数(8月) ・米住宅着工・建設許可件数(8月) ・フィラデルフィア連銀景気指数(9月) ・米新規失業保険申請件数(9月12日に終わる週) |
アマゾンのキャリア・デー |
18(金) | ・ミシガン大学消費者マインド(9月) | |
21(月) | ・シカゴ連銀全米活動指数(8月) | |
22(火) | ・米家計純資産変化(4-6月期) ・ユーロ圏消費者信頼感(9月) ・米中古住宅販売件数(8月) |
ナイキ |
23(水) | ・じぶん銀行日本製造業PMI(9月) ・マークイットユーロ圏製造業PMI(9月) ・マークイット米国製造業PMI(9月) |
ゼネラルミルズ |
24(木) | ・ドイツIFO企業景況感(9月) ・米新規失業保険申請件数(9月19日に終わる週) ・米新築住宅販売件数(8月) |
アクセンチュア、シンタス |
25(金) | ・米耐久財受注(8月) | コストコホールセール |
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