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今週の5銘柄 ~10-12月期に業績の「加速」が予想されている銘柄群(中堅銘柄編)~
投資情報部 榮 聡
先週は財務長官に指名されているイエレン氏が積極的な経済支援を提唱、バイデン大統領の就任式が無難に通過したことに加え、ネットフリックスの好決算が大手IT銘柄への物色につながり上昇しました。今週はバイデン大統領の一般教書演説と追加の大統領令、米国の10-12月期決算、FOMC(米連邦公開市場委員会)、米国の10-12月期実質GDP、などが注目されます。
今回は10-12月期の業績が7-9月期実績から「加速」する予想となっている中堅銘柄から、エンフェーズ エナジー(ENPH)、アリスタ ネットワークス(ANET)、インターコンチネンタル取引所(ICE)を、先週の好決算銘柄から、ネットフリックス(NFLX)とプロクター & ギャンブル(PG)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 1週 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
通信サービス | 6.1% | 3.9% | 10.5% |
情報技術 | 3.4% | 3.0% | 12.3% |
不動産 | 2.9% | 2.4% | 3.9% |
一般消費財・サービス | 2.3% | 7.1% | 9.5% |
S&P500 | 1.2% | 3.7% | 10.9% |
ヘルスケア | 0.9% | 5.5% | 9.2% |
公益事業 | 0.8% | 2.7% | -2.9% |
生活必需品 | -1.3% | -2.6% | -0.3% |
資本財・サービス | -1.6% | 0.6% | 9.1% |
素材 | -2.6% | 4.0% | 13.0% |
金融 | -3.6% | 4.7% | 20.2% |
エネルギー | -5.5% | 10.5% | 38.1% |
騰落率上位(1週) | 騰落率 |
フォード・モーター | 13.3% |
ネットフリックス | 12.8% |
フェイスブック | 11.7% |
イーライリリー | 10.4% |
アルファベット | 9.3% |
騰落率下位(1週) | 騰落率 |
シティグループ | -11.1% |
コノコフィリップス | -10.8% |
バンク・オブ・ニューヨーク・メロン | -9.9% |
ウェルズ・ファーゴ | -8.2% |
IBM | -8.0% |
先週の米国株式市場
19日(火)は財務長官に指名されているイエレン氏が指名承認公聴会で経済支援の拡充を提唱して、前週後半の軟調地合いから反発に転じました。20日(水)は大統領就任式を無難に通過、さらにネットフリックスの加入者純増が市場予想を上回ったことが好感され、他のテクノロジー株にも波及して最高値を更新しました。
21日(木)は10-12月期決算への期待でIT銘柄への物色が継続して、小幅に最高値を更新しています。S&P500指数は週間で1.9%の上昇でした。
業種指数では、ネットフリックス、フェイスブック、アルファベットなどネットメディア株の上昇によって「通信サービス」がトップ、ポジティブニュースが続々でている半導体株の上昇がけん引して「情報技術」が2位でした。
個別銘柄では、フォード モーター(F)が上昇率トップでした。先週のトップはゼネラルモーターズで、自動車メーカーの上昇が目立ちます。米国の自動車市場がCOVID-19による落ち込みからいち早く回復していることが背景にあります。さらに、先週は経済専門チャンネルCNBCで、ジム・クレイマー氏がゼネラルモーターズとフォードをEV車関連銘柄として言及し、物色に拍車がかかったようです。
経済指標では、中国の10-12月期実質GDPが前年比6.5%増(予想は同6.2%増)、12月鉱工業生産が前年比7.3%増(予想は同6.9%増)、小売売上高が同4.6%増(予想は同5.5%増)、固定資投資が同2.9%増(予想は同3.2%増)と概ね堅調でした。
米国の12月住宅着工件数は前月比5.8%増(予想は同0.8%増)、建設許可件数は同4.5%増(予想は同2.0%減)、12月中古住宅販売件数は同0.7%増(予想は同2.1%減)と住宅関連指標はいずれも堅調でした。ただ、1月分には長期金利上昇の影響があらわれる可能性がありそうです。
今週の米国株式市場
バイデン大統領の一般教書演説と追加の大統領令、米国の10-12月期決算、FOMC(米連邦公開市場委員会)、米国の10-12月期実質GDP、などが注目されます。
1/20(水)のバイデン大統領の就任式では主に国民の団結が強調され、就任直後に出された大統領令では、パリ協定への復帰、世界保健機関(WHO)への再加入、イスラム圏からの入国制限措置を解除するなど国際協調路線が示されました。
今週も1/27(水)の一般教書演説や追加の大統領令などで政策が打ち出されていく見通しです。環境関連や製造業の強化などの国内政策でどのような措置が出てくるか注目されています。
10-12月期決算は、1/22(金)までの発表分について8割以上が市場予想を上回り、通常ペースながら堅調です。S&P500指数採用企業のEPSは、発表済企業と発表予定企業の合算で、前年同期比4.7%減の予想です(FactSet社集計、1/22(金)時点)。1週間前の予想では同6.8%減でしたので上方修正されています。
今回のFOMCは、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコの4地区連銀のメンバーが交替して初の会合となります。ただ、金融政策について特段の変更は想定されておらず、引き続き株式市場には支援的と考えられます。
経済指標では、1/26(火)に米国の1月コンファレンスボード消費者信頼感(前月の88.6から89に改善の予想)、1/27(水)に米国の12月耐久財受注(前月比1.0%増の予想)、1/28(木)に米国の10-12月期実質GDP(前期比年率4.2%増の予想)、12月新築住宅販売件数(前月比2.3%増の予想)、1/29(金)に米国の1月ミシガン大学消費者マインド(前月の79.2から変わらずの予想)、などの発表が予定されています。
企業決算では、マイクロソフト、アップル、フェイスブック、テスラ、ジョンソン&ジョンソン、ビザ、マクドナルドなどの発表が含まれるピーク週の一つとなります。
今週の5銘柄
今回は前回に続いて、10-12月期の業績が7-9月期実績から「加速」する予想となっているものを、ピックアップいたします。前回はS&P100指数の採用銘柄をスクリーニングの対象としましたが、今回はS&P500指数採用銘柄からS&P100指数の採用銘柄を除いた中堅銘柄をスクリーニング対象としています。
「業績の加速」は、{10-12月期の予想売上増加率-7-9月期の実績売上増加率}を計算してそのプラス幅によって測っています。図表3に抽出された銘柄から、エンフェーズ エナジー(ENPH)、アリスタ ネットワークス(ANET)、インターコンチネンタル取引所(ICE)を選びました。
さらに、先週の好決算銘柄から、ネットフリックス(NFLX)とプロクター & ギャンブル(PG)を加えてご紹介いたします。
図表3 10-12月期に業績の加速が見込まれている銘柄(S&P500指数の中堅銘柄が対象)
コード | 銘柄名 | A-C 売上増加率変化 (%ポイント) |
B-D EPS増加率変化 (%ポイント) |
A 売上増加率 (今期予想) (%) |
B EPS増加率 (今期予想) (%) |
C 売上増加率 (前期実績) (%) |
D EPS増加率 (前期実績) (%) |
EA | エレクトロニック・アーツ | 48.8 | 111.6 | 20.1 | 16.8 | -28.7 | -94.9 |
AEP | アメリカン・エレクトリック・パワー | 22.3 | 28.7 | 17.7 | 29.3 | -4.7 | 0.7 |
ENPH | エンフェーズ・エナジー | 21.5 | 9.6 | 20.7 | 2.1 | -0.9 | -7.5 |
ANET | アリスタネットワークス | 21.3 | 13.7 | 13.8 | 3.7 | -7.5 | -10.0 |
ICE | インターコンチネンタル・エクスチェンジ | 18.0 | 16.8 | 23.6 | 14.0 | 5.6 | -2.8 |
PLD | プロロジス | 13.9 | 17.1 | 28.9 | 9.9 | 15.0 | -7.2 |
SRE | センプラ・エナジー | 11.1 | 15.8 | 6.9 | 3.2 | -4.1 | -12.7 |
PPL | PPL | 10.6 | 12.5 | 8.1 | 7.5 | -2.5 | -4.9 |
PCAR | パッカー | 12.8 | 14.5 | -11.6 | -22.0 | -24.4 | -36.6 |
VFC | VF | 11.6 | 19.1 | -11.6 | -27.7 | -23.1 | -46.8 |
今週の注目銘柄
銘柄 | 株価 (1/22) |
予想PER (倍) |
---|---|---|
エンフェーズ エナジー(ENPH) | 212.07ドル | 115.9 |
【太陽光パネルの価格下落、設置拡大から恩恵】 ・2006年にカリフォルニアで創業した家庭用の太陽光発電向けに直流を交流に変換する「マイクロ・インバータ」を主力製品とする企業です。マイクロ・インバータは、小型化することで個々の太陽光パネルの裏に取り付けることができるインバータで、従来の複数の太陽光パネルを束ねて一つのインバータで変換する方式に比べて発電パフォーマンスを効率化できるものです。創業以来3千万個以上のマイクロ・インバータを出荷しています。 ・7-9月期の売上は前年同期比1%減でしたが、製品需要が底入れして4-6月期との比較では42%増でした。その勢いが続いて10-12月期の売上は前年同期比22%増に高まる見通しです。同社は7-9月期の調整後の粗利率が41%、営業利益率が24%と製品の新規性を背景に高い利益率を達成しています。10-12月期決算は、2/18(木)に発表の予定です。 |
||
アリスタ ネットワークス(ANET) | 311.21ドル | 31.4 |
【21年は2桁増収への復帰が期待される】 ・2004年に米国のカリフォルニア州で創業されたネットワーク機器メーカーで、主にデータセンター、仮想化・クラウドコンピューティング向けのイーサネットスイッチ製品を開発、販売しています。同社はデータセンターの100ギガビットスイッチでは市場のリーダーであり、400ギガビットスイッチへのアップグレードとキャンパス市場での拡大により、中期的に2桁の売上成長に回帰することを目指しています。 ・7-9月期の売上は前年同期比8%減でしたが、4-6月期との比較では12%増で、改善基調は10-12月期にも継続する見通しです。デジタルトランスフォーメーションによって通信トラフィックが強いことから、クラウドおよび企業の通信設備投資意欲を刺激しています。同社の事業環境は改善していると考えられ、21年は2桁の売上成長に回帰することが予想されます。10-12月期決算は、2/18(木)に発表の予定です。 |
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インターコンチネンタル取引所(ICE) | 111.92ドル | 23.2 |
【ビットコイン取引所の上場に注目】 ・商品先物、株価指数先物・オプション、個別株オプション、債券先物などの取引所で、取引手数料や取引データの提供、分析サービスなどから収益を得ています。10-12月期は9月末に買収を完了した住宅ローン処理のソフトウェア企業、エリー・メイの貢献も加わって売上が加速する見込みです。既存事業では、エネルギーや債券の事業環境は難しかったものの、株式関連は良好だったと考えられます。 ・同社は1/11(月)にビットコインの先物取引所を運営する社内ベンチャーのBakkt(バックト)をSPACのVPC Impact Acquisition社のとの合併で上場すると発表しています。Bakktの時価総額は21億ドルが予想され、同社は65%の持ち分を確保する予定です。 |
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ネットフリックス(NFLX) | 565.17ドル | 42.7 |
【加入者純増が回復】 ・10-12月期の加入者純増が851万人と606万人の市場予想を大きく上回りました。7-9月期には220万人と低調で、巣ごもり需要で1-6月期に加入者が急増した反動のほかに「Disney+」との競合激化が懸念されましたが、今回は安心感が広がったようです。21年1-3月期の加入者純増は6百万人を予想しています。10-12月期の売上は前年同期比22%増、営業利益は同2.1倍でした。EPSは市場予想を下回りましたが、ユーロ建て債券に関する為替変動による特別損失2.6億ドルの影響です。 ・21年のフリーキャッシュフローは従来の10億ドルのマイナスからトントンに改善する見通しとし、新たな借り入れは必要ない見通しとしました。100~150億ドルの債券発行残高は維持し、プラスのキャッシュフローは自社株買いに回す意向です。同年の営業利益率は2020年実績を2%ポイント上回る20%を目標とします。営業利益率は中期的な平均で年3%ポイントずつ改善していく見通しとしました。 |
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プロクター & ギャンブル(PG) | 130.00ドル | 22.9 |
【高水準のオーガニック成長率を維持】 ・10-12月期売上のオーガニック成長率は前年同期比8%増と、7-9月期の同9%増を下回ったものの、依然高水準です。COVID-19の感染拡大による除菌、クリーニング需要拡大を受けて、ホームケアが同30%増、オーラルケア、ファミリーケアが同10%以上増となってけん引しています。10-12月期のコアEPSは前年同期比15%増と好調でした。 ・21年6月期の業績ガイダンスについて、売上は前年比4~5%増から5~6%増に、コアEPSは同5~8%増から8~10%増に引き上げています。フリーキャッシュフローの生産性(純利益に対する比率)は95~100%に改善し、支払配当額は約80億ドル、自社株買いは最大100億ドルが想定されています。製品を展開している市場をひっくるめたシェアは0.2%ポイントの改善となって、引き続き市場シェア獲得が進んでいます。 |
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
25(月) | ・ダボス会議(オンライン、29日まで) ・ドイツIFO企業景況感(1月) ・シカゴ連銀全米活動指数(12月) |
|
26(火) | ・IMFの世界経済見通し ・中国工業部門利益(12月) ・米S&Pコアロジック住宅価格(11月) ・米コンファレンスボード消費者信頼感(1月) |
ジョンソン&ジョンソン、マイクロソフト、3M ベライゾンコミュニケーションズ、AMD、アメリカンエキスプレス スターバックス、テキサスインスツルメンツ、GE ネクステラエナジー |
27(水) | ・バイデン大統領一般教書演説 ・米耐久財受注(12月) ・FOMC政策金利 |
アップル、フェイスブック、テスラ、AT&T ボーイング、アンフェノール、TEコネクティビティ |
28(木) | ・米新規失業保険申請件数(1月23日に終わる週) ・米実質GDP(10-12月期、速報値) ・米新築住宅販売件数(12月) |
マクドナルド、ビザ、アルトリアグループ、ザイリンクス ダウ、マスターカード |
29(金) | ・日本鉱工業生産(12月) ・米個人所得・個人支出(12月) ・米PCEコアデフレータ(12月) ・米中古住宅販売成約(12月) ・ミシガン大学消費者マインド(1月) |
キャタピラー、シェブロン、ハネウェルインターナショナル イルミナ、イーライリリー |
31(日) | ・中国製造業・非製造業PMI(1月) | |
2月 1(月) |
・財新中国製造業PMI(1月) ・米ISM製造業景気指数(1月) |
|
2(火) | ・ユーロ圏実質GDP(10-12月期、速報値) ・米自動車販売台数(1月、3日までに発表) |
アマゾンドットコム、アルファベット、ファイザー、エクソンモービル UPS、アムジェン、エマソンエレクトリック |
3(水) | ・ユーロ圏生産者物価指数(12月) ・ユーロ圏消費者物価指数(1月) ・米ADP雇用統計(1月) ・ISM非製造業景気指数(1月) |
アッヴィ、ペイパルホールディングス、クアルコム アラインテクノロジー |
4(木) | ・ユーロ圏小売売上高(12月) ・米新規失業保険申請件数(1月30日に終わる週) ・米製造業受注(12月) |
ロイヤルダッチシェル、ユニティソフトウェア フィリップモリスインターナショナル フォーティネット、メルク、フォードモーター、ヤムブランズ |
5(金) | ・米雇用統計(1月) ・米貿易統計(12月) ・米消費者信用残高(12月) |
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