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今週の5銘柄 ~「景気敏感株」の押し目に妙味!?過去4週で業績が上方修正されている銘柄に注目~
投資情報部 榮 聡
先週はFOMCで利上げ時期が2024年から2023年に前倒しとなることが示唆され、将来の経済成長とインフレを抑制すると捉えられて、景気敏感株が主導して下落しました。今週はパウエルFRB議長の議会証言、米10年国債利回りの行方、ナスダック指数の動向、などが注目されます。
今回は直近の四半期決算発表後1ヵ月以上経っている銘柄で業績が上方修正されているものから、ゼネラル モーターズ(GM)、ダウ(DOW)、コノコフィリップス(COP)、ファイザー(PFE)、ウォルト ディズニー(DIS)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 5日 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
情報技術 | 0.1% | 4.3% | 9.6% |
一般消費財・サービス | -0.1% | 2.8% | 4.5% |
ヘルスケア | -0.8% | -0.7% | 7.5% |
コミュニケーションサービス | -1.1% | 2.7% | 7.2% |
S&P500 | -1.9% | 0.3% | 6.5% |
不動産 | -2.6% | 4.4% | 15.2% |
生活必需品 | -2.9% | -3.0% | 4.3% |
公益事業 | -3.2% | -3.4% | 3.0% |
資本財・サービス | -3.8% | -3.4% | 3.2% |
エネルギー | -5.2% | 0.5% | 5.9% |
金融 | -6.2% | -6.4% | 3.0% |
素材 | -6.3% | -7.1% | 3.5% |
騰落率上位(5日) | 騰落率 |
エヌビディア | 4.6% |
アドビ | 4.5% |
ペイパル・ホールディングス | 4.4% |
アマゾン・ドット・コム | 4.2% |
ダナハー | 4.0% |
騰落率下位(5日) | 騰落率 |
シティグループ | -11.6% |
シュルンベルジェ | -10.3% |
アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG) | -9.9% |
メットライフ | -9.1% |
Dow Inc | -8.9% |
先週の米国株式市場
6/14(月)、6/15(火)は小幅に最高値を更新しましたが、FOMCを控えて次第に様子見姿勢が強まりました。6/16(水)のFOMCの結果発表では、FRBが従来よりもタカ派だったことを受けて米10年国債利回りが1.58%まで急上昇、S&P500指数は0.5%の下落となりました。
FOMCでは、(1)利上げ時期が2024年から2023年に前倒しとなりそうなこと、(2)メンバーの過半数が2023年末までに2回の利上げを想定していること、また、(3)テーパリング(資産購入の縮小)の議論を始めたことが明らかとなりました。
6/17(木)は10年国債利回りが一転して反落、景気敏感株が売られてNYダウが0.6%安の一方、成長株が買われてナスダック指数は0.9%高でした。6/18(金)はセントルイス連銀のブラード総裁による「インフレ抑制に向け、利上げを2022年終盤に開始すべき」とのタカ派発言が嫌気されて、主要3指数とも大きく下落しました。同日は株価指数先物やオプションの清算日が集中する「トリプル・ウィッチング」だったことも影響した可能性があります。
S&P500指数は週間で1.9%、NYダウは3.4%、ナスダック指数は0.3%の下落でした。
業種指数では、「情報技術」が唯一プラスとなった反面、「素材」「金融」「エネルギー」「資本財・サービス」など景気敏感業種が大幅な値下がりとなっています。
個別銘柄では、エヌビディア(NVDA)がトップでした。6月初めに同社のフアンCEOが各国当局が審査中のアーム買収に関して楽観しているとコメントしてから上昇傾向となっています。先週はジェフリーズのアナリストが目標株価を740ドルから854ドルに引き上げたことも後押ししたとみられます。
経済指標では、米国の5月小売売上高が前月比1.3%減(市場予想は同0.8%減)、前年同期比28.1%増(市場予想は同55%増)でした。前月比は3月からの現金給付の影響、前年比はパンデミックによる前年の落ち込みの影響があり、基調はつかみにくくなっています。
また、中国の5月鉱工業生産は前年比8.8%増(市場予想は同9.2%増)、小売売上高は同12.4%増(市場予想は同14.0%増)と市場予想を下回りました。
今週の米国株式市場
パウエルFRB議長の議会証言、米10年国債利回りの行方、ナスダック指数の動向、などが注目されます。
ブラード・セントルイス連銀総裁による6/18(金)の発言は、6/16(水)にパウエルFRB議長が行ったFOMC後の会見以上にFRBはタカ派なのではないかとの印象を市場に与えました。パウエルFRB議長がこれを否定するか注目です。6/21(月)にブラード氏、カプラン氏、ウィリアムズ氏の講演があるほか、6/22(火)から6/25(金)にも複数のFOMCメンバーの講演が予定されています。
米10年国債利回りは、FOMCを受けて6/16(水)に上昇、6/17(木)はこれが過剰反応として反落、6/18(金)は再び1.4%台に低下と激しく変動しています。市場参加者の見方が割れていることもうかがわれ、トレンドはどちらになるのか引き続き注視する必要がありそうです。
ナスダック指数はここ1ヵ月成長株への物色が続いたことから、先週は2月、4月に付けた高値の14,200ポイント前後まで戻す場面がありました。明確な上抜けとなるのか、「三山」を形成してしまうのか注目です。
経済指標では、6/22(火)に米国の5月中古住宅販売件数(前月比2.4%減の予想)、6/23(水)に米国の5月新築住宅販売件数(前月比0.9%増の予想)、6/24(木)に米国の5月耐久財受注(前年比2.9%増の予想)、などの発表が予定されています。
企業決算では、アクセンチュア、フェデックス、ナイキなどの発表が予定されています。アクセンチュアは、企業部門が攻めに転じるときに恩恵を受ける銘柄として注目しています。フェデックスは、経済再開に向かう中でネット通販が減速しているか注目されます。
FOMCを挟む金融市場の反応
6/16(水)のFOMC結果発表を挟んだ金融市場の反応を図表3にまとめています。
【債券】
政策金利に敏感に反応する2年債、5年債など満期が短い債券の利回りは低下、10年債、30年債など満期が長い債券の利回りは上昇しています。長期債利回りの低下は意外感もありますが、利上げ時期の前倒しによって先行きの成長を抑制し、インフレ上昇の芽を摘むという解釈ができるでしょう。債券市場の専門家によると、景気回復期に利上げに転じようとするときの債券市場の典型的な反応だそうです。
【株式】
主要3指数はいずれも下落です。ただ、NYダウの下落率が大きくナスダック指数の下落率が小さいことからうかがえるように、景気敏感株の下落がきついのに対して、成長株の下落は相対的に小さくなっています。
利上げ時期の前倒しで先行きの成長率が抑制されるため、景気感応度の大きい銘柄が売られ、景気動向への依存度が低く独自の成長要因をもつ成長株が買われたと解釈できるでしょう。
成長力が特に高い銘柄が組み入れられている「アークイノベーションETF」(コード:ARKK、注意:当社での取り扱いはありません)は、同期間に3.3%の上昇となっていることは特筆できるでしょう。
【ドルと金】
ドル指数は、2.0%の上昇です。市場の想定よりもタカ派的なFOMCに対する自然な反応と言えるでしょう。金はドルに対する代替資産との性格があるため、下落したと考えられます。また、金はインフレヘッジを目的とする需要があるため、利上げ前倒しは将来のインフレ抑制につながると捉えられたことも売られた要因でしょう。
今週の5銘柄
今回は過去4週間で業績の上方修正が大きい銘柄をご紹介いたします。
業績見通しの修正は決算発表をきっかけに活発化する傾向がありますが、今回は「直近の四半期決算発表から1ヵ月以上経過している」という条件を加えることにより、決算発表以外の要因で業績が上方修正されている銘柄を図表4に抽出しました。
抽出された銘柄には、このところ売り込まれている景気敏感株と分類されるものが多くなっています。長期金利の利回り低下には、「利上げ時期の前倒し→将来の景気抑制」が過度に織り込まれているとの見方もありますし、足もとで実際に業績が上方修正されている銘柄でもありますので、意外に投資妙味が大きい可能性がありそうです。
ここから、アナリストの目標株価平均値とのプラス乖離率が大きいものを中心に、ゼネラル モーターズ(GM)、ダウ(DOW)、コノコフィリップス(COP)、ファイザー(PFE)、ウォルト ディズニー(DIS)を選んでご紹介いたします。
図表3 6/16(水)のFOMC結果発表を挟む金融市場の反応
指標 | 6月15日終値 | 6月18日終値 | 変化 |
30年債利回り(%) | 2.20 | 2.03 | -0.17%ポイント |
10年債利回り(%) | 1.50 | 1.45 | -0.05%ポイント |
5年債利回り(%) | 0.79 | 0.89 | 0.10%ポイント |
2年債利回り(%) | 0.17 | 0.26 | 0.09%ポイント |
S&P500指数(ポイント) | 4246.59 | 4166.45 | -1.9% |
NYダウ(ドル) | 34299.33 | 33290.08 | -2.9% |
ナスダック指数(ポイント) | 14072.86 | 14030.38 | -0.3% |
ドル指数(ポイント) | 90.536 | 92.321 | 2.0% |
金価格(ドル/トロイオンス) | 1,856.4 | 1,763.9 | -5.0% |
図表4 足もとで業績が上方修正されている銘柄(S&P100指数採用銘柄を対象)
コード | 銘柄 | EPS修正率 (過去4週) (%) |
目標株価 乖離率 (%) |
株価 (6/17) (ドル) |
予想PER (倍) |
GM | ゼネラル・モーターズ゙(GM) | 10.8 | 19.0 | 60.08 | 10.1 |
DOW | Dow Inc | 9.9 | 9.7 | 63.54 | 9.5 |
COP | コノコフィリップス | 6.1 | 16.7 | 59.01 | 17.0 |
CVX | シェブロン | 5.8 | 12.7 | 107.07 | 18.7 |
XOM | エクソンモービル | 4.6 | 5.2 | 61.99 | 16.6 |
F | フォード・モーター | 4.6 | 2.4 | 14.77 | 14.1 |
PFE | ファイザー | 2.9 | 7.2 | 39.48 | 10.4 |
WFC | ウェルズ・ファーゴ | 2.1 | 13.2 | 42.79 | 11.6 |
DIS | ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニー | 1.2 | 17.4 | 174.65 | 77.9 |
GS | ゴールドマン・サックス・グループ | 1.0 | 9.3 | 361.50 | 8.2 |
AMZN | アマゾン・ドット・コム | 1.0 | 21.8 | 3,489.24 | 50.7 |
LIN | Linde PLC | 1.0 | 14.6 | 287.24 | 29.0 |
今週の注目銘柄
銘柄 | 株価 (6/18) |
予想PER (倍) |
---|---|---|
ゼネラル モーターズ(GM) | 58.76ドル | 9.5 |
【半導体不足の解消で工場の稼働再開】 ・フォードと並んで米国最大級、世界5位の自動車メーカーで、キャデラック、シボレー、ビュイック、GMCブランドの中・大型車、SUV、トラックを展開します。2035年までにすべての乗用車モデルをEVにするとして、大手自動車メーカーの中でEVに対する積極姿勢が注目されています。中国の格安EVで注目を集める「上汽通用五菱汽車」の44%を保有する大株主であることも注目されます。5/27(木)に半導体不足でここ数ヵ月操業を停止していた5工場の生産を再開すると発表したことが直近の業績上方修正の主因とみられます。 ・1-3月期は売上が前年同期比1%減にとどまったものの、利益率が高い大型のSUV、ピックアップトラックの販売好調で、調整後EBITは前年同期の12億ドルから44億ドルへ大幅に改善しました。通年の調整後EPSは4.50~5.25ドルを維持しました。半導体不足の影響は出るものの、会社は通期のガイダンスには高い自信があるとしました。 |
||
ダウ(DOW) | 61.98ドル | 9.3 |
【原油価格上昇による製品価格上昇が恩恵に】 ・19年4月にダウ・デュポンからスピンオフした化学素材メーカーです。スピンオフ以来、事業の透明性が増し、コスト削減への踏み込みが強まって、株式市場からの信頼性が増しているとみられます。直近の業績上方修正は、原油価格の上昇を受けて製品価格が上昇する中、天然ガスを主な原料としていることから恩恵が大きいためと考えられます。 ・1-3月期決算は、平均販売価格の上昇により売上が前年同期比22%増、EPSが同2.3倍となり、市場予想も上回りました。平均販売価格は前年同期比19%増、前四半期比でも11%増でした。一方、平均販売数量は前年同期比横ばいにとどまりましたが、建設、通信機器、民生電子機器、消費者向け耐久財などは増加したものの、寒波による供給制約の影響が相殺しています。 |
||
コノコフィリップス(COP) | 57.53ドル | 16.6 |
【原油価格上昇に対する利益レバレッジが高い】 ・石油・天然ガスの探鉱・生産の上流部門に特化するエネルギー企業の大手です。原油価格が安い局面でパーミアン盆地で操業するコンチョ・リソーシズの買収を決めて2021年1月に完了、原油価格回復の恩恵を大きく受けています。カナダのオイルサンド資産を保有するエノバス・エナジー社の保有株式を2022年にかけて売却する方針で、株主還元の拡大が期待されています。 ・1-3月期決算は、原油価格回復に買収効果が加わり、売上が前年同期比60%増、調整後EPSが同53%増と大幅に伸びました。リビアを除く生産量は前年同期比16%増相当の1日当たり石油換算バレルで149万に増加、4-6月期も同150~154万に拡大する見通しです。年率15億ドルペースでの自社株買いの再開を発表しています。 |
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ファイザー(PFE) | 38.81ドル | 10.2 |
【新型コロナワクチンの供給が拡大】 ・米国の医薬品大手です。大衆薬を手がける部門や特許切れ医薬品を手がける部門を分離する一方で、がん治療薬を手がけるアレイ・バイオファーマを総額114億ドルで買収するなどし、バイオ医薬品にフォーカスした医薬品メーカーに転換しつつあります。今後の長期的な成長は開発パイプライン(新薬候補)にかかっていますが、開発後期にある新薬候補のポートフォリオは過去数十年で最大とされます。 ・業績の上方修正は、新型コロナワクチンの生産が順調に拡大していることが主因とみられます。同ワクチンの生産能力は2021年が20億回から25億回に上方修正され、2022年は30億回に増える見通しです。1-3月期の売上は買収や事業売却を除くオーガニックベースで前年同期比42%増、新型コロナワクチンの貢献を除いた場合でも同8%増と堅調です。 |
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ウォルト ディズニー(DIS) | 172.42ドル | 77.0 |
【全世界のテーマパークが再開を果たした】 ・「ディズニーランド」などのテーマパークを世界各地で運営するほか、「ディズニー」や「ピクサー」、「スター・ウォーズ」ブランドの映画制作、「ABC」やスポーツ専門チャンネル「ESPN」といったテレビ番組の制作などを手がける米国の大手娯楽企業です。カリフォルニア州のテーマパークが4月末に、「ディズニーランド・パリ」も6/17(木)に営業を再開して、全世界のテーマパークが再開を果たしています。 ・1-3月期の業績は、テーマパークの減収が足をひっぱって売上は前年同期比13%減の一方、部門営業利益はメディア部門の増益が貢献して同2%増としました。注目のインターネット動画「Disney+」の加入者数は104百万件と市場予想の109百万件をショートして株価下落につながりました。しかし、同加入者数は前年同期比70百万件、2020年末比9百万件増として順調に拡大していると言えるでしょう。 |
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
21(月) | ・シカゴ連銀全米活動指数(5月) | |
22(火) | ・ユーロ圏消費者信頼感(6月) ・パウエルFRB議長証言(米下院特別小委員会) ・米中古住宅販売件数(5月) ・米2年国債入札 |
|
23(水) | ・じぶん銀行日本製造業PMI(6月) ・マークイットユーロ圏製造業PMI(6月) ・マークイット米国製造業PMI(6月) ・米新築住宅販売件数(5月) ・米5年国債入札 |
|
24(木) | ・ドイツIFO景気指数(6月) ・米耐久財受注(5月) ・米実質GDP(1-3月期、確報値) ・米新規失業保険申請件数(6月19日に終わる週) ・米7年国債入札 |
アクセンチュア、フェデックス、ナイキ |
25(金) | ・米個人所得・個人支出(5月) ・米個人消費支出価格指数(5月) ・米ミシガン大学消費マインド(6月、確報値) |
|
28(月) | ・EU夏の経済見通し発表 | |
29(火) | ・米S&Pコアロジック住宅価格(4月) ・米コンファレンスボード消費者信頼感(6月) |
|
30(水) | ・日本鉱工業生産(5月) ・中国製造業・非製造業PMI(6月) ・ユーロ圏消費者物価指数(6月) ・米ADP雇用統計(6月) ・米中古住宅販売成約(5月) |
マイクロンテクノロジー、ゼネラルミルズ コンステレーションブランズ |
7月 1(木) |
・日銀短観(6月) ・財新中国製造業PMI(6月) ・米新規失業保険申請件数(6月26日に終わる週) ・米ISM製造業景気指数(6月) ・米自動車販売台数(6月、2日までに発表) |
ウォルグリーンブーツアライアンス |
2(金) | ・米雇用統計(6月) ・米製造業受注(5月) |
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