特集レポート FX

円買い介入に踏み切ることは容易ではない?

2024/4/16
提供:SBIリクイディティ・マーケット社

今月初めにシリアのダマスカスにあるイラン・イスラム共和国の外交施設に対する攻撃により、上級司令官を含む7名のイラン軍高官が殺害されたことに対し、イランが7日の日本時間早朝にイスラエルに大規模な報復攻撃を行ないました。しかし、イランの攻撃はイスラエルの大都市を避けたほか、事前に米国に対しイスラエルへの砲撃を伝え、被害が大規模とならないよう配慮がなされていたほか、現時点で作戦を継続することはないとの声明を発表しています。こうしたことから、イランは弱腰外交との国内世論の非難をかわす狙いで報復したとも伝えられており、本音ではイスラエルとの報復の応酬を回避したい意向があったと考えられ、バイデン大統領もネタニヤフ首相と電話会談を行いイランに対して報復攻撃を自制するよう求めたとされています。そのため、12日の取引を85.66ドルで取引を終えたNY原油先物価格は14日の先物取引で85.32ドルと小幅ながら低下するなど落ち着きを取り戻しつつあります。

また、先週末12日にウォール・ストリート・ジャーナルの「イスラエルがイランからの24時間から48時間以内の国内への報復攻撃の可能性があるとして準備を進めている」との報道を受けNYダウは一時581.78ドル安まで下げ幅を拡大し475.84ドル安で取引を終え、週間ベースでも2.37%安と23年3月以来の下落率となったほか、S&Pも1.55%安と昨年10月以来の下落率となりました。しかし、イスラエルが対イラン報復攻撃を控えるとの楽観的な見方にサポートされ15日のNYダウ先物、S&P先物は反発しています。

ユーロなどリスク通貨全般が下落

12日に発表されたドイツ3月消費者物価指数(HICP ユーロ基準)が前年比+2.3%と2021年6月以来の低い伸びを記録したほか、ストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁が、FRBの金融政策運営スタンスから決別し、6月の利下げ着手と年内4回の利下げ実施の可能性を指摘。さらにECB内部でタカ派とされるカザークス・ラトビア中銀総裁が「驚く事態が発生しなければ、6月に最初の利下げを実施するだろう」と発言。こうした中、中東情勢を巡る地政学リスクへの警戒感とともにユーロドルは重要な下値メドとされた2月14日の安値1.0695ドルを下抜け、昨年11月3日以来の1.0623ドルへ下落し1.0641ドルで取引を終えました。

また、ポンドドルも、2月GDPが前月比+0.1%と1月(+0.3%)に続いてプラス成長を維持したものの、昨年後半の景気後退局面からの回復は穏やかなペースに留まっていること、さらに英米の金利格差は拡大基調を続けると見込まれることなどを材料に、昨年11月17日以来の1.2427ドルへ下落し1.2449ドルで先週末の取引を終えています。そのため、主要6通貨に対するドル・インデックスは昨年11月3日以来の106.109へ上昇し、3日連続で年初来高値を更新しています。

また、中東情勢の緊迫が高まっても鎮静化してもドル高基調は大きく変わらないというのが現状の見通しとなっており、資源エネルギーの輸入依存度の高い日本は輸入インフレを通じた物価上昇により実質賃金のプラス転換は見込みにくく、インフレの高止まりでも日銀は政策金利を上げられないジレンマに陥るリスクもあり、こうした構造的問題や日米金利差から円安基調は続くと見られています。

米経済指標の結果次第で一段のドル高進行か?

※出所:SBIリクイディティ・マーケット

FF金利先物から見たFRBによる年内の利下げ回数について、先週10 日の米3月消費者物価指数の発表前後で2.5回強から1.5回強へ後退。こうした早期利下げ観測の後退とともにドル円の円安基調が加速しています。今週発表の上記指標を受けて「年内利下げ見送り」との観測が高まればドル円は155円を突破して円安が進む可能性も高くなり、さらにFRBがインフレ指標として最も重要視している26日発表の3月個人消費支出(PCE)コアデフレーターの結果を受けて追加利上げ観測まで出てくると、一段とドル高が進み160円も視野に入るかもしれません。

このように考えれば米経済指標の結果を見極めることなく日本の通貨当局が円買い介入に踏み切れば、その効果が剥落してしまう可能性もあるだけに、当局としても介入を躊躇せざるを得ないという状況に直面することもあるかもしれません。

また、4月1日に発表された3月ISM製造業景気指数は50.3と2月(47.8)から改善し一昨年10月以来となる好不況の節目の50.0を上回る中、内訳の支払価格指数も55.8と2月(52.5)から大幅に上昇し、製造業におけるインフレ圧力の高まりを示唆する結果となりました。そのため、5月1日に発表される4月ISM製造業景気指数の先行指標として注目される18日発表の4月フィラデルフィア連銀製造業景気指数の結果と反応が注目されます。

※出所:SBIリクイディティ・マーケット

フィラデルフィア連銀製造業景気指数は3月に3.2と2月(5.2)から鈍化したものの、新規受注は5.4と昨年8月(12.2)以来、設備投資も23.6と22年3月(25.8)以来の高い伸びを記録しただけに米経済の先行きを示すこうした数値が3月に続いて高い数値となれば4月IMS製造業景気指数が強含むことを示唆することになります。こうした思惑も含めてFRBによる利下げ開始観測が一段と後退すればドル高が一段と進むことになるだけに注目されます。

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