金・プラチナ
マーケットレポート

金はリスク回避で上値を試す

2019/8/13
提供:ミンカブ・ジ・インフォノイド

金は米中の貿易戦争激化で1,600ドルの見方も

8月5日の週のニューヨーク金市場は、米中の貿易戦争に対する懸念が高まるなか、米国が中国を為替操作国に認定したことを受けて一段高となった。期近12月限は2013年4月以来の高値1,522.7ドルを付けた。その後は中国人民銀行が人民元の基準値を市場よりも元高に設定し、リスク回避の動きが一服したが、週明けはデモの影響で香港国際空港の全便欠航が伝えられたことに加え、アルゼンチンやイタリアの政局に対する懸念が出たことをきかっけにリスク回避の動きが再燃し、金は上値を伸ばした。

トランプ米大統領は3,000億ドル相当の中国製品に対する10%の追加関税を9月1日付で発動させると発表した。中国の金融規制当局は、市場が米中貿易摩擦や弱い経済成長率を巡る懸念を織り込めるよう、1ドル=7元を超える人民元安を容認した。また中国商務省は、中国企業が米国の農産品の輸入を停止したことを明らかにした。米大統領は中国が約10年ぶりの元安を容認したことを「重大な違反行為」と批判し、米政府は中国を為替操作国に認定した。中国人民銀行は米政府の決定に対し、「国際金融秩序に深刻な打撃を与え、金融市場に混乱をもたらす」と反発したが、人民元の対ドル基準値を市場よりも元高に設定し、市場では元の下落抑制に向けたシグナルと受け止められた。ただ米国は当面、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)と取引は行わない方針としたことに加え、米大統領が米国は引き続き中国との貿易交渉を継続しているが、当面の合意はないとの考えを明らかにしており、9月の追加関税発動は避けられない状況になりつつある。

米ゴールドマン・サックスは、米中の貿易戦争がリセッション(景気後退)につながるリスクが高まっている、と指摘した。第4四半期の米国内総生産(GDP)伸び率見通しを0.2%引き下げて1.8%とした。また同社は今月、9月と10月に利下げが行われる公算が大きい、という見方を示している。金価格に関しては、米中の貿易戦争激化を受けて3、6カ月間の見通しを1,575、1,600ドルと前回の1,450、1,475ドルから引き上げた。同社は米中は2020年の米大統領選まで通商協議で合意しない、とみている。

米中の貿易戦争に対する懸念を受けて景気見通しが悪化し、各国で金融緩和の動きが出ている。ニュージーランド準備銀行は7日、政策金利のオフィシャルキャッシュレート(OCR)を50ベーシスポイント(bp)引き下げ、過去最低の1.00%とした。中銀金融政策委員会は声明で「雇用とインフレの目標を引き続き達成するため、OCRの引き下げが必要との見解で委員会は一致した」と説明した。事前予想の25bpよりも大幅利下げとなった。またインド準備銀行は主要政策金利のレポレートを35bp引き下げ、5.40%とした。事前予想は25bp利下げ、35bp引き下げは異例とみられた。また独IFO経済研究所の四半期調査で、米中の貿易戦争激化により、世界的に景気見通しが悪化していることが示されており、欧州中央銀行(ECB)の刺激策も見込まれている。英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)で合意なき離脱の可能性も高まっており、先行き懸念が強い。一方、アルゼンチンの大統領選挙予備選挙で、野党候補のフェルナンデス元首相が首位となったことや、イタリア極右「同盟」が提出した内閣不信任案で政局に対する懸念が出ており、世界的にリスク回避が広がっている。金ETF(上場投信)への逃避買いが続くと、金価格を押し上げることになりそうだ。

8月12日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は2日比17.01トン増の847.77トンとなった。米中の貿易戦争激化や米連邦準備理事会(FRB)の追加利下げ観測を受けて投資資金が流入した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、8月6日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは29万2,545枚となり、前週の25万4,388枚から拡大した。2016年9月以来の高水準となっており、買われ過ぎの見方が出ると、利食い売り主導の調整局面も警戒される。今回は新規買いが3万8,344枚、新規売りが187枚入り、3万8,157枚買い越し幅を拡大した。

プラチナは金急伸が下支えもリスク回避で上値重い

ニューヨーク・プラチナ期近10月限は、米国の対中追加関税発動によるリスク回避の動きを受けて調整局面を迎えたのち、金急伸が下支えとなったが、株安などに上値を抑えられた。845.3~889.7ドルの新たなレンジを形成した。米連邦準備理事会(FRB)の追加利下げ観測が高まったことは下支え要因だが、景気の先行き懸念から実需筋が高値での買いを見送っていることが上値を抑える要因である。戻り場面でプラチナETF(上場投信)からの投資資金流出が警戒されることも上値を抑える要因であり、米中の通商協議に進展が見られなければ上値の重い状況が続くとみられる。

プラチナETF(上場投信)の現物保有高は、9日のロンドンで12.05トン(2日12.05トン)、ニューヨークで22.75トン(同22.91トン)、12日の南アで32.45トン(同32.67トン)となった。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、8月6日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは2万1,944枚(前週2万5,768枚)に縮小した。手じまい売り・新規売りが出た。

ニューヨーク金はリスク回避で高値更新が続く

ニューヨーク金12月限はリスク回避の動きを受けて上値を試し、2013年4月以来の高値1,531.5ドルを付けた。米中の貿易戦争に対する懸念が高まるなか、米国が中国を為替操作国に認定した。中国人民銀行が人民元の基準値を市場よりも元高に設定し、リスク回避の動きが一服する場面も見られたが、デモの影響で香港国際空港の全便欠航が伝えられたことに加え、アルゼンチンやイタリアの政局に対する懸念が出ると、リスク回避の動きが再燃した。金ETF(上場投信)への投資資金流入が続くと、一代高値1,532.4ドルを突破することになりそうだ。ただRSIが買われ過ぎの水準に入っており、利食い売り主導の調整局面も警戒される。

8月12日からの週の注目ポイント

12日 振替休日  
13日 企業物価指数(7月)
独消費者物価指数(7月確報) ☆☆
独ZEW景況感指数(8月) ☆☆
英雇用統計(7月) ☆☆
米消費者物価指数(7月)  ☆☆☆
14日 機械受注(6月) ☆☆
中国小売売上高(7月)  ☆☆
中国鉱工業生産(7月) ☆☆
独国内総生産(4-6月期速報) ☆☆☆
ユーロ圏国内総生産(4-6月期改定) ☆☆☆
ユーロ圏鉱工業生産(6月) ☆☆
英消費者物価指数(7月) ☆☆
米輸出入物価指数(7月)
15日 米小売売上高(7月) ☆☆☆
米ニューヨーク連銀製造業景況指数(8月) ☆☆
米フィラデルフィア連銀製造業景況指数(8月) ☆☆
米鉱工業生産・設備稼働率(7月) ☆☆
米企業在庫(6月)
対米証券投資(6月) ☆☆
16日 ユーロ圏貿易収支(6月)
米住宅着工・許可件数(7月) ☆☆
米ミシガン大消費者信頼感指数(8月速報値) ☆☆

※重要度を3段階で表示

金(現物1oz.あたり)日足 6ヵ月

参照:SBI証券 > マーケットデータより

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