金・銀・プラチナ
マーケットレポート

金は景気回復期待で投資資金流出が圧迫

2020/11/24
提供:ミンカブ・ジ・インフォノイド

金は新型コロナウイルスのワクチン開発進展で見通し改善が圧迫要因

11月16日の週のニューヨーク金市場は、新型コロナウイルスのワクチン開発が進展し、景気回復期待が高まったことに加え、感染急増でリスク回避のドル高に振れたことも圧迫要因となって軟調となった。週明けに英製薬大手アストラゼネカの新型コロナウイルスのワクチン開発の中間結果が良好な内容となったことが伝えられると、中心限月となる2月限はドル高を受けて一段安となり、7月17日以来の安値1,834.4ドルを付けた。短期的には感染拡大で景気の下振れリスクが残ることが下支え要因だが、ワクチン開発進展で中長期の見通しが改善し、金ETF(上場投信)から投資資金が流出しており、下落基調に転じつつある。ただ米シティバンクはワクチン完成と緩和的な金融政策により、2021年はドルが20%下落する可能性があるとの見通しを示しており、今後の米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和の行方とドル相場の反応を確認したい。

米製薬大手ファイザーは18日、独ビオンテックと共同開発している新型コロナウイルスのワクチンの治験で95%の予防効果が確認されたと発表し、20日に米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可(EUA)を申請した。米FDAは12月10日に治験データを入念に検査する諮問委会合を予定しており、許可が下りれば12月半ばから接種が開始される。またバイオ医薬大手の米モデルナのワクチン候補も治験で94.5%の効果が確認されたとする暫定結果を発表しており、数週間でEUAを申請する可能性があるとした。どちらのワクチン候補もメッセンジャーRNA(mRNA)技術に基づくものであり、遺伝子を人工的に合成することから短期間で大量のワクチンを製造できるという。さらに英製薬大手アストラゼネカは23日、英オックスフォード大学と共同開発しているワクチンの治験の中間結果を発表し、深刻な副作用を起こさず感染を予防できる有効率が約90%だと明らかにした。従来型のウイルスベクターワクチンでファイザーやモデルナのワクチンと比べて格安だという。各社のワクチン開発が進んだことで景気回復期待が高まった。

ただ短期的には新型コロナウイルスの感染拡大が続いていることで景気の下振れリスクが残っている。ジョンソン英首相は、再導入したロックダウン(都市封鎖)を終了させ、感染率が低い地域で経済を再開させる従来の措置に12月2日から戻る方針を発表したが、ドイツはロシアの感染拡大で部分的なロックダウンを12月20日まで延長する可能性が出ている。米国では1日当たりの新規感染者数が過去2週間で約50%増加するなか、21日に過去最悪の19万3,000人超を記録した。米新規失業保険申請件数は74万2,000件と前週の71万1,000件から予想外に増加した。一時解雇が増え、労働市場の回復は一段と鈍化した。米ダラス地区連銀のカプラン総裁は、新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、多くの州や都市で消費者の行動が慎重になるため、第4四半期の経済は縮小する恐れがあると述べた。

11月23日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は13日比14.15トン減の1,220.17トンとなった。景気回復期待の高まりを受けて投資資金が流出した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、11月17日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは25万1,270枚と前週の23万9,736枚から拡大した。今回は新規買いが1万1,182枚、買い戻しが352枚入り、1万1,534枚買い越し幅を拡大した。

プラチナは景気回復期待でレンジ上放れ

ニューヨーク・プラチナ1月限は、新型コロナウイルスのワクチン開発進展による景気回復期待を受けて堅調となり、9月17日以来の高値969.2ドルを付けた。9月半ば以降のレンジを上放れ、テクニカル面で改善した。ただ感染拡大で短期的に景気の下振れリスクが残っていることは上値を抑える要因である。一方、ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)の四半期報告「プラチナ・クォータリー2020年第3四半期」で2019年から2021年は3年連続の供給不足となる見通しが示された。堅調な投資需要が供給不足の背景にある。

プラチナETF(上場投信)の現物保有高は、19日のロンドンで19.02トン(13日19.09トン)、23日のニューヨークで38.32トン(同39.04トン)、20日の南アで16.63トン(同16.39トン)となった。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、11月17日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは1万6,172枚と前週の1万1,599枚から拡大した。

ニューヨーク金は支持線割れで弱気に転じる

ニューヨーク金2月限は各社の新型コロナウイルスのワクチン開発が進展し、景気回復期待からドル高に振れたことを受けて軟調となった。11月9日の安値1,854.0ドルを割り込み、7月17日以来の安値1,834.4ドルを付けた。景気回復期待から株高に振れ、金ETF(上場投信)から投資資金が流出するなか、支持線を割り込み、テクニカル面で弱気に転じた。新型コロナウイルスの感染増加が続いていることは下支え要因だが、ワクチンが承認されれば中長期の見通しが大きく改善し、金の圧迫要因になるとみられる。

11月23日からの週の注目ポイント

23日 勤労感謝の日  
24日 独国内総生産(7-9月期確報) ☆☆☆
独ifo景況感指数(11月) ☆☆
米S&Pケース・シラー住宅価格指数(9月) ☆☆
米消費者信頼感指数(11月) ☆☆
25日 米国内総生産(7-9月期改定値) ☆☆
米耐久財受注(10月) ☆☆
米新規失業保険申請件数 ☆☆
米個人所得・支出(10月) ☆☆
米新築住宅販売(10月) ☆☆☆
米ミシガン大消費者信頼感指数(11月確報) ☆☆
米FOMC議事録公表 ☆☆☆
26日 米国休場
景気動向指数(9月改定)
27日 仏国内総生産(7-9月期確報値) ☆☆

※重要度を3段階で表示

金(現物1oz.あたり)日足 6ヵ月

参照:SBI証券 > マーケットデータより

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