金・銀・プラチナ
マーケットレポート

金は米失業率悪化でドル高一服が下支えに

2021/7/5
提供:ミンカブ・ジ・インフォノイド

金は米FOMC議事録などを確認

6月28日の週のニューヨーク金市場は、米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和の縮小(テーパリング)が見込まれることなどを受けて軟調となったが、米雇用統計の発表を控えて売られ過ぎ感から買い戻しが入ると、下げ一服となった。中心限月となる8月限は4月15日以来の安値1,750.1ドルを付けたのち、1,795.9ドルまで戻した。6月のADP全米雇用報告で民間部門雇用者数が69万2,000人増と、事前予想の60万人増を上回ったことを受けてドル高が進んだ。一方、6月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比85万人増と、前月の58万3,000人増から伸びが加速した。ただ失業率が5.9%と前月の5.8%から悪化し、雇用不足に対する懸念が残る。雇用者数は今後も増加する見通しだが、成人女性の復職に対する見方が分かれており、見極めるにはしばらく時間がかかるとみられている。今週は米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の発表があり、タカ派転換の背景が焦点である。

欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は2日、ユーロ圏経済は新型コロナウイルス危機を受けた不況から回復し始めているが、その動きはなお脆弱との見方を示した。6月のユーロ圏の製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値は63.4と前月の63.1から上昇し、1997年6月の調査開始以来最高となった。ただ6月のユーロ圏の消費者物価指数(CPI)速報値は前年比1.9%上昇となり、前月の2.0%上昇から鈍化した。米国のインフレと金融当局者のタカ派発言との違いからドル高に振れやすい状況が続いている。米ダラス地区連銀のカプラン総裁は、急激な引き締めを避けるためにも、米連邦準備理事会(FRB)は早めに量的緩和の縮小(テーパリング)を開始することが望ましいという見方を示した。

新型コロナウイルスの変異株の感染拡大の行方も当面の焦点である。国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミストは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)からの回復過程について、ワクチンへのアクセスが不平等なため、世界的に一様ではないとし、特に感染力が強い「デルタ株」が拡大している地域では医療用品も十分に行き渡っていないと警戒感を示した。世界保健機関(WHO)の米州事務局である汎米保健機構(PAHO)事務局長は、北米で新型コロナウイルス感染者数が減少している一方、多くの中南米・カリブ海諸国では増加しており、収束は「かなり先のことになる」と述べた。デルタ株は欧州やアジア、ロシアなど世界96カ国で猛威を振るっており、オーストラリアではシドニーやブリスベン、パースでロックダウンが導入された。リスク回避でアジア株が下落しており、金に逃避買いが入るかどうかも確認したい。

7月2日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比0.29トン減の1,042.58トンとなった。米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和の縮小(テーパリング)などが見込まれるなか、投資資金が流出した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、6月29日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは16万2,226枚となり、前週の16万6,214枚から縮小した。今回は新規買いが1,053枚、新規売りが5,041枚出て、3,988枚買い越し幅を縮小した。2019年6月以来の低水準となっており、売られ過ぎ感が強まると、買い戻しが下支えになるとみられる。

プラチナは米経済成長率予測の引き上げが下支え

ニューヨーク・プラチナ10月限は6月17日以来の高値1,116.1ドルを付けたのち、ドル高を受けて上げ一服となった。ただ金が買い戻し主導で上昇したことが下支えになった。米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和の縮小(テーパリング)見通しが圧迫要因だが、米議会予算局(CBO)や国際通貨基金(IMF)が米経済成長率予測を引き上げたことが下支え要因である。米CBOは2021年会計年度(9月30日まで)の米経済成長率予測を7.4%と、2月時点の3.7%から引き上げた。米下院は1日、7,150億ドル規模のインフラ投資計画法案を221対201の賛成多数で可決した。景気回復見通しから安値拾いの買い意欲が強まると、プラチナの下支えになるとみられる。

プラチナETF(上場投信)の現物保有高は、1日のロンドンで19.60トン(前週末19.43トン)、ニューヨークで39.93トン(同39.93トン)、南アで15.93トン(同15.87トン)となった。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、6月29日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは1万4,744枚となり、前週の1万2,940枚から拡大した。

ニューヨーク金は安値更新もドル高一服が下支え

ニューヨーク金8月限は、米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和の縮小(テーパリング)が見込まれるなか、4月15日以来の安値1,750.1ドルを付けた。ただ米雇用統計の発表を控え、売られ過ぎ感が出るなか、買い戻しなどが入って下げ一服となった。米雇用統計では非農業部門雇用者数が増加したが、失業率が悪化し、雇用不足に対する懸念が残った。金融政策に対する慎重な見方が出ると、ドル高が一服し、金は底堅く推移するとみられる。ただ金ETF(上場投信)から投資資金の流出が続くと、上値を抑えることになりそうだ。テクニカル面では1,800ドルを抵抗線としたもみ合いが続くとみられる。

7月5日からの週の注目ポイント

5日 米国休場
中国財新サービス業購買担当者景況指数(6月) ☆☆
ユーロ圏サービス業購買担当者景況指数(6月確報) ☆☆
6日 豪準備銀行政策金利発表 ☆☆☆
独製造業受注(5月) ☆☆
独ZEW景況感指数(7月) ☆☆
ユーロ圏小売売上高(5月) ☆☆
米ISM非製造業景況指数(6月) ☆☆☆
7日 独鉱工業生産指数(5月) ☆☆
米FOMC議事録 ☆☆☆
8日 国際収支・経常収支(5月)
独貿易収支(5月)
米新規失業保険申請件数 ☆☆
9日 中国消費者物価指数(6月) ☆☆
中国生産者物価指数(6月) ☆☆
英貿易収支(5月)
英鉱工業生産指数(5月) ☆☆
米卸売在庫(5月)

※重要度を3段階で表示

金(現物1oz.あたり)日足 6ヵ月

参照:SBI証券 > マーケットデータより

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