金・銀・プラチナ
マーケットレポート
金は米雇用統計の急減速で堅調
提供:ミンカブ・ジ・インフォノイド
【金はECBの金融政策の見通しも確認】
8月30日の週のニューヨーク金市場は、8月の米雇用統計の発表を控えて利食い売りに上値を抑えられる場面も見られたが、米雇用統計の急減速を受けてドル安に振れると、上値を伸ばし、12月限は8月4日以来の高値1,836.9ドルを付けた。8月のADP全米雇用報告で民間部門雇用者が37万4,000人増と事前予想の61万3,000人増を大きく下回り、労働市場の改善が遅れる可能性が示された。ただ米連邦準備理事会(FRB)の年内の量的緩和の縮小(テーパリング)開始が見込まれており、金市場でポジション調整の売りが出た。一方、米雇用統計で非農業部門雇用者数は23万5,000人増と事前予想の72万8,000人増を大きく下回り、過去7カ月間で最も低い伸びになった。内容次第で9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でテーパリング開始が決定されるとの見方もあったが、労働市場の改善の遅れを受けてテーパリング観測が後退した。新型コロナウイルスのデルタ株の感染拡大を受けて飲食業などで採用を手控える動きが広がった。ただ米食品医薬品局(FDA)が米ファイザーの正式承認したことから、各方面でワクチン接種義務化の動きが広がっている。ワクチン接種が進み、感染拡大が抑制されると、景気の先行きに対する楽観的な見方が強まるとみられる。また米政権は今月20日から3回目のワクチンの追加接種(ブースター接種)の開始を予定しており、ブースター接種の行方も確認したい。
8月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)改定値は59.0となり、15年ぶりの高水準だった前月の60.2から低下、速報値の59.5からも下方修正された。ただ好不況の節目となる50は大きく上回り、高水準を維持しており、年内に新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)前の水準を取り戻すとの見方も出ている。今週は9日の欧州中央銀行(ECB)理事会でパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)縮小の議論が進むとみられている。ECB理事会メンバーのワイトマン独連銀総裁は、ユーロ圏の物価情勢について、物価を押し上げている一時要因が基調的なものになる可能性があり、ユーロ圏のインフレ率がECB予想を上回るリスクがあるとの見方を示した。
米中央軍のマッケンジー司令官は8月30日、米軍がアフガニスタンからの撤退を完了したと発表した。一方、ドイツ政府は2日、アフガニスタンからの大混乱の撤収を教訓にし、欧州連合(EU)に対して危機に対処するため、有志連合軍を素早く派遣できるよう、運用整備を呼び掛けた。アフガニスタンでイスラム主義組織タリバンは4日、制圧していない北東部パンジシール州で抵抗勢力と衝突した。米軍制服組トップは、内戦に陥る恐れがあると警告しており、タリバンが統治を確立できるかどうかを確認したい。確立できなければテロ集団の拡大につながるとみられている。
9月3日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比3.20トン減の998.52トンとなった。米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和の縮小(テーパリング)見通しを受けて投資資金が流出した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、8月31日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは21万6,550枚となり、前週の21万0,653枚から拡大した。今回は新規買いが1万1,920枚、新規売りが6,023枚出て5,897枚買い越し幅を拡大した。
プラチナはレンジ相場を継続
ニューヨーク・プラチナ10月限は予想以下の米雇用統計や金堅調が支援要因になったが、8月半ば以降の954.0~1,029.2ドルのレンジ内の動きとなった。米連邦準備理事会(FRB)の早期の量的緩和の縮小(テーパリング)観測が後退し、ドル安に振れたことは支援要因だが、半導体不足を受けて各自動車メーカーが減産を発表しており、自動車触媒需要の伸び悩みが懸念される。新型コロナウイルスのデルタ株の感染拡大の行方に対する懸念もあり、景気見通しを確認したい。
プラチナETF(上場投信)の現物保有高は、2日のロンドンで19.34トン(前週末19.35トン)、ニューヨークで38.71トン(同38.73トン)、南アで14.62トン(同14.59トン)となった。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、8月31日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは8,057枚となり、前週の9,143枚から縮小した。
ニューヨーク金は200日移動平均線を突破
ニューヨーク金12月限は、中長期の節目となる200日移動平均線(3日1,817.8ドル)を突破し、6月16日以来の高値1,836.9ドルを付けた。予想以下の米雇用統計を受けて米連邦準備理事会(FRB)の早期の量的緩和の縮小(テーパリング)観測が後退し、ドル安に振れた。新型コロナウイルスのデルタ株の感染拡大を受けて飲食業で採用が手控えられた。ただワクチン接種が進んでいることから、年内のテーパリング開始が見込まれており、金ETF(上場投信)から投資資金の流出が続いている。テクニカル面での改善を受けて短期ファンド筋の買いが金価格を押し上げるとみられるが、景気見通しが改善すると、利食い売り主導で調整局面を迎える可能性が出てくる。
9月6日からの週の注目ポイント
6日 | 米国、カナダ休場 | ☆ |
独製造業受注(7月) | ☆☆ | |
7日 | 豪準備銀行政策金利発表 | ☆☆☆ |
中国貿易収支(8月) | ☆☆ | |
独鉱工業生産指数(7月) | ☆☆ | |
独ZEW景況感指数(9月) | ☆☆ | |
ユーロ圏域内総生産(4-6月期確報) | ☆☆☆ | |
8日 | 国内総生産(4-6月期2次速報) | ☆☆☆ |
国際収支・経常収支(7月) | ☆☆ | |
カナダ銀行政策金利発表 | ☆☆☆ | |
米地区連銀経済報告(ベージュブック) | ☆☆ | |
9日 | 中国消費者物価指数(8月) | ☆☆ |
中国生産者物価指数(8月) | ☆☆ | |
独貿易収支(7月) | ☆ | |
欧州中央銀行(ECB)理事会 | ☆☆☆ | |
米新規失業保険申請件数 | ☆☆ | |
10日 | 独消費者物価指数(8月確報) | ☆☆ |
英貿易収支(7月) | ☆ | |
シカゴ購買部協会景気指数(7月) | ☆☆ |
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