金・銀・プラチナ
マーケットレポート
金はリスク回避が圧迫も投げ一巡で値を戻す
提供:ミンカブ・ジ・インフォノイド
金は中東情勢の行方も確認
8月5日の週のニューヨーク金市場は、米景気減速懸念に加え、円キャリートレードの巻き戻しによるリスク回避の動きを受けて急落した。中心限月となる12月限は7月26日以来の安値2,403.8ドルを付けた。その後は、米ISM非製造業総合指数の上昇が下支えになったが、米国債の利回り上昇に上値を抑えられた。一方、米新規失業保険申請件数の減少で労働市場に対する懸念が後退すると、株高に振れ、押し目を買われた。またイランやレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラのイスラエルに対する報復攻撃に対する懸念も金の支援要因になった。
予想以下の米雇用統計を受けて景気減速懸念が高まった。ただ日経平均株価の急落は米雇用統計では説明できず、円キャリートレードの巻き戻しの影響が指摘された。日銀金融政策決定会合で利上げが決定され、今後の利上げ見通しも示され、円を買い戻す動きが進んだ。一方、内田日銀副総裁は株価や為替相場が不安定な状況で利上げは行わず、当面は現行の金融緩和を維持するとの考えを示したことは下支え要因になった。7月の米ISM非製造業総合指数は51.4と前月の48.8から上昇し、活動拡大を示した。また米新規失業保険申請件数は、前週比1万7,000件減の23万3,000件と約11カ月ぶりの大幅な減少となった。労働市場に対する懸念が後退し、市場に安心感が戻った。今週は7月の米消費者物価指数(CPI)や米小売売上高の発表があり、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ見通しに変わりがなければ金の支援要因になるとみられる。
イラン政府は、イスラエルに対する抑止力を再構築するとの方針を示した。イランのカナニ報道官は「国際法の枠内でイスラエルを罰する権利を持っているが、中東の緊張をエスカレートさせることは望んでいない」と述べた。ロシアのプーチン大統領は、イスラム組織ハマスのハニヤ最高指導者の暗殺を巡るイランの対応について、イスラエル民間人への攻撃を控え、抑制的に行うようイラン最高指導者のハメネイ師に伝えた。レバノンの親イラン武装組織ヒズボラの指導者ナスララ師は、イスラエルの攻撃に対してヒズボラは強力かつ効果的に対応すると表明した。米国は中東で海・空軍の展開を強化しており、中東情勢の行方も当面の焦点である。パレスチナ自治区ガザの停戦交渉再開の行方を確認したい。
金の独自材料では、中国人民銀行が7月も金購入を見送ったことが伝えられた。金保有は2,264トンと3カ月連続で据え置きとなった。金価格が史上最高値を更新するなか、購入を見送っている。
8月9日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比1.44トン増の846.91トンとなった。米連邦準備理事会(FRB)の利下げ見通しを受けて投資資金が流入した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、8月6日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは23万8,749枚となり、前週の24万6,473枚から縮小した。今回は手じまい売りが1万5,245枚、買い戻しが7,393枚入って7,852枚買い越し幅を縮小した。
プラチナはリスク回避一服で下げ一服
ニューヨーク・プラチナ10月限はリスク回避の動きを受けて売り優勢となり、3月27日以来の安値913.1ドルを付けたのち、下げ一服となった。景気減速懸念や円キャリートレードの巻き戻しによるリスク回避の動きが圧迫要因になったが、米国の労働市場に対する懸念が後退すると、下げ一服となった。米連邦準備理事会(FRB)の利下げ見通しが強いことも下支え要因である。
プラチナETF(上場投信)の現物保有高は、8日のロンドンで21.53トン(前週末24.82トン)、9日のニューヨークで31.77トン(同31.64トン)、7日の南アで11.36トン(同11.36トン)となった。一方、8月6日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは1万0,291枚となり、前週の1万4,314枚から縮小した。
ニューヨーク金は米利下げ見通しも上げ一服
ニューヨーク金12月限は、米景気減速懸念に加え、円キャリートレードの巻き戻しによるリスク回避の動きを受けて急落し、7月26日以来の安値2,403.8ドルを付けた。ただ米新規失業保険申請件数の減少で労働市場に対する懸念が後退すると、押し目を買われて堅調となった。米連邦準備理事会(FRB)の利下げ見通しが強く、今週発表の7月の米消費者物価指数(CPI)でインフレ鈍化が示されると、上値を試すことになりそうだ。
8月12日からの週の注目ポイント
12日 | 振替休日 | |
13日 | 企業物価指数(7月) | ☆☆ |
英雇用統計(7月) | ☆☆ | |
独ZEW景況感指数(8月) | ☆☆ | |
米生産者物価指数(7月) | ☆☆ | |
14日 | NZ準備銀行政策金利公表 | ☆☆☆ |
英消費者物価指数(7月) | ☆☆☆ | |
ユーロ圏国内総生産(4-6月期改定) | ☆☆☆ | |
ユーロ圏鉱工業生産(6月) | ☆☆ | |
米消費者物価指数(7月) | ☆☆☆ | |
15日 | フランス休場 | ☆ |
国内総生産(4-6月期1次速報) | ☆☆☆ | |
中国住宅価格指数(7月) | ☆☆ | |
中国小売売上高(7月) | ☆☆ | |
中国鉱工業生産(7月) | ☆☆ | |
英国内総生産(4-6月期速報値) | ☆☆☆ | |
英鉱工業生産指数(6月) | ☆☆ | |
米小売売上高(7月) | ☆☆☆ | |
米新規失業保険申請件数 | ☆☆ | |
米輸出入物価指数(7月) | ☆☆ | |
米ニューヨーク連銀製造業景況指数(8月) | ☆☆ | |
米フィラデルフィア連銀製造業景況指数(8月) | ☆☆ | |
米鉱工業生産・設備稼働率(7月) | ☆☆ | |
米企業在庫(6月) | ☆☆ | |
対米証券投資(6月) | ☆☆ | |
16日 | 英小売売上高(7月) | ☆☆ |
ユーロ圏貿易収支(6月) | ☆☆ | |
米住宅着工・許可件数(7月) | ☆☆☆ | |
米ミシガン大消費者信頼感指数(8月速報値) | ☆☆ |
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