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『ココがPOINT!』
「強気転換した日経平均株価」の見通しと注意点
投資情報部 鈴木英之
日経平均株価は9月第1週は同495円20銭(2.4%)高と反発に転じました。発表された米経済指標の一部で、同国経済の強さが示されたことや、香港や英国で政治リスクの後退を示す材料が出たことが追い風になりました。足元では9/10(火)まで6営業日連続高となっています。
こうした中、日経平均株価は、一目均衡表(日足)を用いたテクニカル分析上、「3役好転」が成立したこともあり、強気転換したと考えられます。当面、株式相場は堅調に推移すると予想されます。ただ、いくつか注意すべきポイントもありそうです。
ココがPOINT!
1.落ち着きを取り戻した東京株式市場
日経平均株価(図1)は8月第4週(8/26~8/30)に、前週比6円54銭(0.0%)安と小反落で終った後、9月第1週(9/2~9/6)は同495円20銭(2.4%)高と反発に転じました。発表された米経済指標の一部で、同国経済の強さが示されたことや、香港や英国で政治リスクの後退を示す材料が出たことが追い風になりました。
ちなみに、9/2(月)~9/10(火)の日次の動きは以下のようになっています。日経平均株価は9/3(火)~9/10(火)に6営業日連続の上昇となっています。
9/2(月)84円18銭安・・・米国の対中関税第4弾の効果を注視。東証1部売買代金は5年4ヵ月ぶりの低水準の1.33兆円。
9/3(火)4円97銭高・・・米中協議の日程調整が難航。東証1部売買代金は1.39兆円で引き続き低迷。
9/4(水)23円98銭高・・・ISM製造業指数の50割れを嫌気して売り先行も、円高一服が好感され、買い直される。
9/5(木)436円80銭高・・・香港逃亡犯条例撤回や米国債の逆イールド解消を受けて前日のNYダウが237ドル高。
9/6(金)113円63銭高・・米経済指標の上振れに加え、米中閣僚会議を10月に開催と報道され、前日のNYダウが372ドル高。
9/9(月)118円85銭高・・・米雇用統計は強弱対立する内容。発表終了でリスク回避姿勢後退。
9/10(火)73円68銭高・・・米ムニューシン財務長官が米中協議の進展を示唆。
東証1部の売買代金は8/14(水)~8/29(木)に12営業日連続で2兆円割れとなりました。その後少し回復したものの、9/2(月)の米国市場がレーバーデーで休場だったこともあり、同じ日の東京株式市場では、東証1部の売買代金が約1.33兆円にとどまり、5年4ヵ月ぶりの低水準になりました。
なお、8月末現在、米10年国債利回りが1.496%であったのに対し、同2年国債利回りが1.504%であり、長期債利回りが短期債利回り(相対的な意味)を下回る「逆イールド」が成立していました。しかし、10年国債利回りが9/3(火)の1.457%をボトムに上昇に転じ、逆イールドも翌9/4(水)には解消しました。そうした中、8/26(月)に一時1ドル104円台半ばまで円高が進んでいたドル・円相場(図3)でも9/9(月)には107円台まで戻し、円高一巡感が強まりました。
図1 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図2 NYダウ(日足)
図3 ドル・円相場(日足)
2.メジャーSQが到来
9/13(金)はメジャーSQ算出日となります。一般的にこの日は、特に裁定買い残(裁定取引に伴う現物株の買い持ち高)が多かったりした場合、裁定解消売りが膨らみ、波乱となるケースがあります。
ただ、過去10年のパフォーマンスをみた場合、日経平均株価の勝率は9月SQの週が8割で平均1.5%上昇、次の週が7割で平均1.8%の上昇となっています。近年は9月相場は平均して安定する傾向にありますが、SQ前後も同様の傾向がありそうです。
ちなみに、8/30(金)現在、裁定買い残4,257億円に対し、裁定売り残は1兆5,598億円となっており、売り残がネットで1兆1,340億円も多い異常な状態になっています。メジャーSQはむしろ、買い手にとっての投資チャンスと言えるかもしれません。
表1 当面の重要スケジュール
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
9/10(火) | 日本 | 8月工作機械受注 | 年前日のマイナスが縮小すれば底打ち気運につながる可能性 |
米国 | アップルがスペシャルイベント開催 | 新型iPhone発表の可能性 | |
中国 | 8月消費者物価指数 | 前回は前年同月比8.2%増 | |
9/10~9/15 | 中国 | 8月資金調達総額 | 市場コンセンサスは1兆6,045億元 |
中国 | 8月新規銀行融資 | 市場コンセンサスは1兆2,000億元 | |
中国 | 8月マネーサプライ | 市場コンセンサスは前年同月比8.2%増 | |
9/11(水) | 日本 | 内閣改造および自民党役員人事 | |
9/12(木) | 日本 | 7月機械受注 | 市場コンセンサスは前月比0.8%減 |
日本 | 東京ゲームショウ(~9/15) | ||
欧州 | ECB理事会 | 一部主要金利を引き下げるとの予想あり | |
9/13(金) | 米国 | メジャーSQ | |
米国 | 8月小売売上高 | 米個人消費の強弱を占う | |
中国 | ◎株式市場は休場 | 中秋節 | |
9/16(月) | 日本 | ◎東京株式市場は休場 | 敬老の日 |
中国 | 8月都市部固定資産投資 | 市場コンセンサス(年初来)は前年同月比5.7%増 | |
中国 | 8月工業生産 | 市場コンセンサスは前年同月比5.2%増 | |
中国 | 8月小売売上高 | 市場コンセンサスは前年同月比5.7%増 | |
9/17(火) | ドイツ | 9月ZEW景況感指数 | |
9/18(水) | 米国 | FOMC結果発表/パウエルFRB議長会見 | 「政策金利0.25%引き下げ」が市場コンセンサス |
9/19(木) | 日本 | 日銀金融政策決定会合結果発表/黒田日銀総裁会見 | |
米国 | 9月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 | ||
米国 | 8月中古住宅販売件数 | 市場コンセンサスは前月比0.4%増 | |
9/20(金) | 日本 | 8月消費者物価 |
表2 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2019年 | 2020年 | |
日銀金融政策決定会合 | 9/19(木)、10/31(木)、12/19(木) | 1/21(火)、3/19(木)、4/28(火)、6/16(火) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 9/18(水)、10/30(水)、12/11(水) | 1/29(水)、3/18(水)、4/29(水)、6/10(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 9/12(木)、10/24(木)、12/12(木) | 1/23(木)、3/12(木)、4/3(金)、6/4(木) |
3.【ココがPOINT!】「強気転換した日経平均株価」の見通しと注意点
日経平均株価は、一目均衡表(日足)を用いたテクニカル分析上、強気転換したと考えられます。図4に示したように、以下の3つのポイントから「3役好転」が成立したためです。
(1)遅行スパンが日々線を下から上へ上抜け(赤い丸1で図示)。
(2)転換線が基準線を下から上へ上抜け(赤い丸2で図示)。
(3)日々線がクモを下から上へ上抜け(赤い丸3で図示)。
なお、冒頭の図1でおわかりいただけるように、日経平均株価の25日移動平均線は下落から上昇に転じている上、日々線は200日移動平均線の水準を回復しています。これらから、テクニカル的には好材料が急速に積み重なってきたと言えます。こうなると、前項でご説明したように、裁定取引に伴う現物株のポジションがネットで売り越しになっていることも、相場の戻りを加速させる要因になるかもしれません。
当面、株式相場は堅調に推移すると予想されます。日経平均株価は7/25(木)に、21,823円という小天井がありますが、少なくとも、その辺までの戻りがあっても不思議ではないと思います。
ただ、9/11(水)は一目均衡表(日足)を用いたテクニカル分析上、要注意日に相当します。これまで急速に戻ってきただけに、短期的な反動安や波乱に注意が必要かもしれません。
そもそも、相場反転の契機になった香港や英国の情勢について、明確に好転した訳ではありません。米中通商摩擦についても、9月に実施予定だった閣僚級会議が10月に延期されたのに過ぎないという側面があります。現状は、株価が売られ過ぎからの回復局面であり、ファンダメンタルズの強化を伴っている訳ではない点に注意が必要です。
図4 日経平均株価・一目均衡表(日足)
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