225の
『ココがPOINT!』

日経平均は「失われた20年」を克服したのか?

2019/11/26
投資情報部 鈴木英之

日経平均株価は短期調整の後、再び高値をうかがう展開になっています。11/26(火)の取引時間中には一時、取引時間中の本年高値を上回る23,608円06銭まで上昇しました。米中協議合意への期待を背景に、米主要株価指数が最高値を更新した流れを引き継ぐ展開になりました。

日経平均株価が仮に、現在の本年高値水準を上回ってくると、次の「目標水準」は2018/10/2(火)の高値水準、すなわち取引時間中ベースでは24,448円07銭となります。日経平均株価が仮に昨年の高値水準を上回ってくると、1991/11/13(水)以来、28年ぶりの高値水準を回復することになります。

株価は高値圏であり、今後は下落に転じてしまうでしょうか。そう考える前に、チャートの時間軸を長めに延長し、回復される株価水準の意義を考えると、また、別の見方ができるのではないでしょうか。

ココがPOINT!

1.日経平均株価は一時、11/8(金)取引時間中に付けた高値を更新

日経平均株価は11/8(金)の取引時間中に、一時23,591円09銭の高値を付けました。取引時間中ベースではここが本年高値となっています。また、終値ベースでは11/12(火)の23,520円01銭が本年高値となっています。しかし同株価はその後、下落局面となっています。米中協議の早期合意への期待が後退する中、米国株の上昇が一服となったことや、外為市場で円安・ドル高の動きが一服したこと等が響きました。

ただ、下落局面は短期間のうちに収束しました。図1にあるように、日経平均株価は11/21(木)、重要な下値支持線とみられる25日移動平均を下回り、一時22,726円71銭の安値を付けました。しかし、この安値水準が「下ヒゲ」となる形で押し目買いが入り、11/22(金)以降は連騰となり、11/26(火)の取引時間中には一時、冒頭で触れた取引時間中の本年高値を上回る23,608円06銭まで上昇しました。米中協議合意への期待を背景に、米主要株価指数が最高値を更新した流れを引き継ぐ展開になりました。

以前ご紹介した通り、日経平均株価が仮に、現在の本年高値水準を上回ってくると、次の「目標水準」は2018/10/2(火)の高値水準、すなわち取引時間中ベースでは24,448円07銭、終値ベースでは24,270円62銭となります。日経平均株価が仮に昨年の高値水準を上回ってくると、1991/11/13(水)以来、28年ぶりの高値水準を回復することになります。一般的に、1991年は平成バブルの崩壊過程と理解されていますので、回復される株価水準は「平成バブル(崩壊)以降の高値水準」と表現されることが多いようです。

「平成バブル相場」と呼ばれる大きな上昇相場は平成元年(1989年)12月末に高値を付け、翌年以降株価は長期低迷局面を迎えることになります。仮に、「平成バブル(崩壊)以降の高値水準」を回復するのが令和元年(2019年)12月末ということになると、それは非常に感慨深いもののように思われます。

表1 日経平均株価の値動きとその背景(2019/11/18~11/26)

 日経平均株価日米株式市場等の動き
終値前日比
11/18(月) 23,416.76 +113.44 NYダウが史上初の28,000ドル台乗せ。ただ、円安・ドル高の勢いは限定的でした。
11/19(火) 23,292.65 -124.11 NYダウは続伸も、円高基調が続きやや売り優勢となりました。
11/20(水) 23,148.57 -144.08 米上院が「香港人権法案」を可決し、米中関係悪化が懸念されました。
11/21(木) 23,038.58 -109.99 「香港人権法案」に大統領が署名し、米中関係悪化となる可能性を懸念しました。
11/22(金) 23,112.88 +74.30 引き続き米中対立を心配しつつ、電子部品株を中心に押し目買いが入りました。
11/25(月) 23,292.81 +179.93 米中合意へ向けた両国首脳の前向きな発言を好感。香港株高も追い風になりました。
11/26(火) 23,373.32 +80.51 中国が知財保護で妥協したとされ、米国株が最高値を更新した流れを引き継ぎました。

※日経平均株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。

図1 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事

※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2019/11/26取引時間中。

図2 NYダウ(日足)

※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2019/11/25現在。

図3 ドル・円相場(日足)

※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/11/26取引時間中。

2.米年末商戦がスタート

米国では11/28(木)、「感謝祭」(Thanksgiving Day)の休日となります。米国では多くの家族、友人グループで食事会が催されることになりそうです。そして、その翌日はいわゆる「ブラックフライデー」ということになります。買い物客が殺到して小売店が繁盛しやすい日となっており、米国の小売業界では1年でもっとも、多くの売り上げが見込める日になっているようです。一般的に、この日以降米国では「年末商戦」に本格的に突入すると言われています。

米国では、労働市場が「完全雇用」状態にある上、低金利の長期化もあり、家計の消費は堅調に推移しやすい環境にあるとみられます。全米小売業協会では、本年11~12月の小売売上高を前年同期比で4%前後伸びると予想しているようです。米個人消費が堅調に推移し、米内需株の業績に追い風が吹けば、米国株もその分下支えされると期待されます。

表2 当面の重要スケジュール

月日(曜日) 国・地域 予定内容 ポイント
11/26(火) 米国 9月FHFA住宅価格指数
  米国 9月S&PコアロジックCS住宅価格
  米国 10月新築住宅販売件数 市場コンセンサス(前月比)は+0.4%
  米国 11月消費者信頼感指数  
11/27(水) 米国 7~9月期GDP改定値 市場コンセンサス(前期比・年率)は1.9%増
  米国 10月耐久財受注 米民間設備投資の先行指標
11/28(木) 米国 ◎米国市場は休場(感謝祭)
11/29(金) 日本 10月失業率・有効求人倍率 失業率は7、8月の2.2%(26年9ヵ月ぶり低水準)から9月は2.4%に。
  日本 10月鉱工業生産
  米国 ブラックフライデー 米国年末商戦の開始
11/30(土) 中国 11月製造業PMI 5~10月に50割れ
12/2(月) 日本 7~9月期法人企業統計
  米国 11月製造業景況指数 米国製造業のマインドは?
  米国 サイバーマンデー  
12/4(水) 米国 11月ADP雇用統計 市場コンセンサスは15.5万人増
  米国 11月ISM非製造業景況指数 雇用・新規受注等の指標にも注目
12/5(木) 米国 10月貿易収支
  米国 10月製造業受注
  - OPEC総会・OPECプラス閣僚会議  
12/6(金) 米国 11月雇用統計 非農業部門雇用者数の市場コンセンサスは19.5万人増

表3 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)

  2019年 2020年
日銀金融政策決定会合 12/19(木) 1/21(火)、3/19(木)、4/28(火)、6/16(火)、7/22(水)、9/17(木)、10/29(木)、12/18(金)
FOMC(米連邦公開市場委員会) 12/11(水) 1/29(水)、3/18(水)、4/29(水)、6/10(水)、7/29(水)、9/16(水)、11/5(木)、12/16(水)
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 12/12(木) 1/23(木)、3/12(木)、4/3(金)、6/4(木)、7/16(木)、9/10(木)、10/29(木)、12/10(木)

※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表3の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。

3.【ココがPOINT!】日経平均は「失われた20年」を克服したのか?

1989年12月末まで続いた平成バブルが崩壊した後、日経平均株価は急速に下落し、1992年8月に「1番底」を付けるまで63%下落しました。その後、同株価は大雑把にみると、上値22,000円台、下値7,000円台の雄大なボックス相場を展開することになりました。この時期の日本経済を示す表現として、多くの人が「失われた20年」と言っています。一時は米国を脅かし、世界一の存在も期待された日本経済は長期低迷に苦しみ、投資家の関心は中国など、成長著しい新興国へ向かうことになりました。

そうした中、2012年11月に野田前首相が解散を表明し、その後スタートした「アベノミクス」相場において、ボックス相場の上限をトライすることになります。2017年10月にすでに、1996年6月の高値水準であり、「失われた20年」の高値である22,000円を超え、日経平均株価は新たな局面に入っていたとみられますが、24,000円まで上値を伸ばしてきたことで、日本経済が「失われた20年」を克服した可能性が一層強まったと考えられます。

多くの投資家にとり、日経平均株価が23,000円近辺を推移している現状は、経験が少ないため、株価は高値圏に達しているように思われるでしょう。無論、それら多くの投資家の読み通りとなり、日経平均株価が今後間もなく下落に転じる可能性もあります。

ただ、大きく上昇して株価が高値圏にみえる時、チャートの時間軸をさらに拡大して、その意義を考えることが重要になる時もあります。平成バブル相場が崩落する過程で、日経平均株価が2万円近辺まで下がるのに、それほどの期間があった訳ではなく、株価の滞留期間は比較的短かったと考えられます。言い換えれば、日経平均株価が昨年付けた24,448円07銭近辺の株価を超えてくると、戻り売りの抵抗はそれほどないかもしれません。

「失われた20年」の雄大なボックス相場の戻り売りをこなしつつ上昇してきたものの、むしろ信用売りや裁定売りも多く、予想PERも歴史的に高い訳ではないと思います。株価は高値圏であり、今後は下落に転じてしまうでしょうか。そう考える前に、チャートの時間軸を長めに延長し、回復される株価水準の意義を考えると、また、別の見方ができるのではないでしょうか。

表4 日経平均株価(月足)

※日経平均株価データをもとにSBI証券が作成

相場が大きく動いたら?

SBI証券なら多彩な商品群で取引チャンスを逃がしません!

先物・オプション取引

SBI証券の先物・オプション取引の魅力

先物・オプション取引を
はじめるには

先物・オプションのお取引には、先物・オプション取引口座の開設が必要になります。

ログインして専用口座を開設する

※PCでのお手続きを推奨しております

当社の総合口座をお持ちでないお客さま

総合口座を開設する(無料)

先物・オプション取引関連ページ

信用取引のご注意事項

  • ・信用取引に関するリスク
    信用取引は、差し入れた委託保証金額の約3倍の取引を行うことができます。そのため、現物取引と比べて大きなリターンが期待できる反面、時として多額の損失が発生する可能性も含んでいます。また、信用取引の対象となっている株価の変動等により、その損失の額が、差し入れた委託保証金額を上回るおそれがあります。この場合は「追加保証金」を差し入れる必要があり状況が好転するか、あるいは建玉を決済しない限り損失が更に膨らむリスクを内包しています。
    追加保証金等自動振替サービスは追加保証金が発生した際に便利なサービスです。
  • ・信用取引の「二階建て」に関するご注意
    委託保証金として差し入れられている代用有価証券と同一銘柄の信用買建を行うことを「二階建て」と呼びます。当該銘柄の株価が下落しますと信用建玉の評価損と代用有価証券の評価額の減少が同時に発生し、急激に委託保証金率が低下します。また、このような状況下でお客さま自らの担保処分による売却や、場合によっては「追加保証金」の未入金によって強制決済による売却が行われるような事態になりますと、当該株式の価格下落に拍車をかけ、思わぬ損失を被ることも考えられます。よって、二階建てのお取引については、十分ご注意ください。
  • もっと見る 閉じる

先物・オプション取引の免責事項・注意事項

  • ・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社、および情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製、または販売等を行うことは固く禁じます。
  • ・必要証拠金額は当社SPAN証拠金(発注済の注文等を加味したSPAN証拠金×100%)-ネット・オプション価値(Net Option Value)の総額となります。

    ・当社SPAN証拠金、およびネット・オプション価値(Net Option Value)の総額は発注・約定ごとに再計算されます。

    ・SPAN証拠金に対する掛け目は、指数・有価証券価格の変動状況などを考慮のうえ、与信管理の観点から、当社の独自の判断により一律、、またはお客さまごとに変更することがあります。

    ・「HYPER先物コース」選択時の取引における建玉保有期限は新規建てしたセッションに限定されます。必要証拠金額はSPAN証拠金×50%~90%の範囲で任意に設定が可能であり、また、自動的に決済を行う「ロスカット」機能が働く取引となります。

    先物・オプションのSPAN証拠金についてはこちら(日本証券クリアリング機構のWEBサイト)
    ・指数先物の価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。市場価格が予想とは反対の方向に変化したときには、比較的短期間のうちに証拠金の大部分、またはそのすべてを失うこともあります。その損失は証拠金の額だけに限定されません。また、指数先物取引は、少額の証拠金で多額の取引を行うことができることから、時として多額の損失を被る危険性を有しています。

    ・日経平均VI先物取引は、一般的な先物取引のリスクに加え、以下のような日経平均VIの変動の特性上、日経平均VI先物取引の売方には特有のリスクが存在し、その損失は株価指数先物取引と比較して非常に大きくなる可能性があります。資産・経験が十分でないお客さまが日経平均VI先物取引を行う際には、売建てを避けてください。

    ・日経平均VIは、相場の下落時に急上昇するという特徴があります。

    ・日経平均VIは、急上昇した後に数値が一定のレンジ(20~30程度)に回帰するという特徴を持っています。

    ・日経平均VIは、短期間で急激に数値が変動するため、リアルタイムで価格情報を入手できない環境での取引は推奨されません。

    ・指数オプションの価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。買方が期日までに権利行使又は転売を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。売方は、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。また、指数オプション取引は、市場価格が現実の指数に応じて変動しますので、その変動率は現実の指数に比べて大きくなる傾向があり、場合によっては大きな損失を被る危険性を有しています。

    ・未成年口座のお客さまは先物・オプション取引口座の開設は受付いたしておりません。

    ・「J-NETクロス取引」で取引所 立会市場の最良気配と同値でマッチングする場合、本サービスをご利用いただくお客さまには金銭的利益は生じないものの、SBI証券は取次ぎ手数料をSBIジャパンネクスト証券から受取ます。

    ・J-NETクロス取引の詳細は適宜修正される可能性がありますのでご留意ください。
  • もっと見る 閉じる
page top