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『ココがPOINT!』
株式市場は「新しいステージ」に入っている可能性
投資情報部 鈴木英之
日経平均株価は「三角保ち合い」を上放れる展開となり、12/13(金)には前日比598円29銭高と大幅高し、終値は24,023円10銭と昨年10/3(水)以来の24,000円台回復(終値ベース)となりました。
今後はどうなるのでしょうか。"「保ち合い」は放れた方に付け"と言います。上に放れた株式相場は「新しいステージ」に入った可能性が大きく、上昇相場が続くものと予想されます。
ココがPOINT!
1.日経平均株価は「三角保ち合い」を上放れる展開
日経平均株価は10/4(金)の安値21,276円01銭をボトムとし、11/8(金)の取引時間中に23,591円09銭の高値を付けるまで、上昇局面となりました。以下の理由から、米国株が上昇傾向となり、過去最高値を更新する展開となったことが、日本株にも追い風になりました。
(1)製造業の先行きに不透明感はあるものの、完全雇用・低金利に支えられた米国経済は総じて好調が続いていること
(2)市場では、FRB(米連邦準備制度理事会)が緩和的金融政策を続けるとの見方が支配的となったこと
(3)米中通商摩擦は続いているものの、合意が近いとたびたび報道され、市場の不安が鎮められたこと
こうした中、10月下旬から本格化した我が国の上場企業の決算発表では、業績悪化も目立ちましたが、株価的には決算発表直後から悪材料出尽くしで上昇するケースも少なくありませんでした。業績悪化でも下げない株式相場は、ある意味相当強い相場と言えそうです。日経平均株価は約1ヵ月で11%弱の上昇となりました。
しかし、11月上旬以降はもみ合う展開になりました。23,500円をはさんで前後100円程度まで上昇する場面はあったものの、それ以上は上昇しませんでした。米中通商交渉において、実際の合意になかなかたどり着けなかったこと、決算発表シーズンが終了し、「悪材料出尽くしという好材料」が供給されなくなったこと、ドル・円相場についても、1ドル109円台半ばが壁となり、円安・ドル高方向に突き抜ける空気が感じられなかったこと等が要因と考えられます。
こうした中、12/12(木)の米国市場では、米中通商協議がようやく「第1の合意」に達し、中国から米国への輸入に対する関税の第4弾のうち、スマホやノートPC等への課税は見送られる方向であることが報じられました。事実、米中通商協議は「第1の合意」に達し、中国の輸入拡大の見返りに、スマホやノートPC等への課税は見送られ、すでに9月から課税されていた部分の関税も15%から半減されることが決定しました。
12/12(木)の米国市場で株価が上昇したことを受け、12/13(金)の東京株式市場では日経平均株価が前日比598円29銭高と本年最大の上昇を記録し、終値は24,023円10銭と昨年10/3(水)以来の24,000円台回復(終値ベース)となりました。図1をご覧いただければ「一目瞭然」で、チャート的には「三角保ち合い」を上放れる典型的な形になっています。”「保ち合い」は放れた方に付け”と言います。上に放れた株式相場は「新しいステージ」に入った可能性が大きく、上昇相場が続くものと予想されます。
★表1 日経平均株価の値動きとその背景(2019/12/9~12/17)
日経平均株価 | 日米株式市場等の動き | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
終値 | 前日比 | |||||||
12/9(月) | 23,430.70 | +76.30 | 雇用統計の上振れで12/6のNYダウが337ドル高。ただ、予想外の円高で株価伸びず。 | |||||
12/10(火) | 23,410.19 | -20.51 | 重要日程を控えて様子見気分が強まりました。 | |||||
12/11(水) | 23,391.86 | -18.33 | 重要日程を控え、利益確定売りが目立ちました。アジア株高が下支え要因でした。 | |||||
12/12(木) | 23,424.81 | +32.95 | FOMCを受け、FRBの緩和姿勢継続に期待。半導体株の上昇も寄与しました。 | |||||
12/13(金) | 24,023.10 | +598.29 | 米中協議で第1の合意に達したと報じられました。英選挙で保守党過半数の報道も。 | |||||
12/16(月) | 23,952.35 | -70.75 | 米中合意発表で好材料出尽くしとなりました。関税引き下げが想定以下との声も。 | |||||
12/17(火) | 24,066.12 | +113.77 | 米中協議合意後の好地合いが続く展開でした。 |
図1 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図2 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図3 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
2.重要日程は少ない
米中通商協議での合意を受けて株価が大幅高した12/13(金)は、東京株式市場ではメジャーSQの算出日でした。また、欧州では12/12(木)にBrexitを巡って重要な英国議会選挙が実施されましたが、日本時間の12/13(金)早朝にはすでに、出口調査の形で保守党優位が伝わっていました。このように、12/13(金)は多くの材料が重なる重要な日となり、それを無事通過できたということだけでも、株式市場には好材料になっていると考えられます。
それに比べると12月第3週以降は、重要なスケジュールは少ないと言えます。12/16(月)のNY連銀製造業景況指数に続き、12/19(木)にはフィラデルフィア連銀製造業景況指数が発表され、米製造業のマインドをチェックする重要な機会になると考えられます。ただ、製造業の景況感を示す指標でもっとも重要なIMS製造業指数がいまだ底ばい状態であるためか、市場の期待値も高くないとみられ、仮に弱い数字が出ても大きな波乱材料にはならないと考えられます。
表2 当面の重要スケジュール
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
12/16(月) | 中国 | 11月都市部固定資産投資 | 市場コンセンサス(前年同月比)は5.2%増 |
中国 | 11月工業生産 | 市場コンセンサス(前年同月比)は5.0%増 | |
中国 | 小売売上高 | 市場コンセンサス(前年同月比)は7.2%増 | |
米国 | 12月NY連銀製造業景況指数 | ||
12/17(火) | 米国 | 11月住宅着工件数 | 市場コンセンサス(前月比)は2.0%増 |
米国 | 11月鉱工業生産・設備稼働率 | ||
12/18(水) | 日本 | 11月貿易統計 | |
日本 | 11月訪日外客数 | 1~10月累計では2,691万人(前年同月比+3.1%) | |
ドイツ | 12月Ifo景況感指数 | 約7千社のドイツ企業に景況感をアンケート | |
米国 | ☆決算発表 | マイクロン・テクノロジー(半導体株に影響も) | |
12/19(木) | 日本 | 日銀金融政策決定会合/黒田総裁会見 | 金融政策に変更はない見通し |
米国 | 12月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数 | ||
米国 | 11月中古住宅販売件数 | 市場コンセンサス(前月比)は0.6%減 | |
12/20(金) | 日本 | 11月消費者物価指数 | |
米国 | 7~9月期GDP確報値 | 市場コンセンサス(前期比・年率)は+2.1% | |
日本/米国 | スターウォーズ最新作が日米同時公開 | ||
12/23(月) | 日本 | 安倍首相が中国訪問(~25日) | |
米国 | 11月新築住宅販売件数 | ||
10/24(火) | 日本 | 日銀金融政策決定会合(10/31発表)議事要旨 | |
- | 日中韓サミット開催 | ||
米国 | 11月耐久財受注 | 米設備投資の先行指標 | |
12/25(水) | 米国 | クリスマス(米国ほか世界の主要市場が休場) | |
12/26(木) | 日本 | 受け渡しベースで年内最終日 | |
12/27(金) | 日本 | 11月失業率有効求人倍率 | |
日本 | 11月鉱工業生産・設備稼働率 | ||
12/30(月) | 日本 | 大納会 | |
12/31(火) | 日本 | 大晦日 | |
中国 | 12月製造業PMI |
表3 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2019年 | 2020年 | |
日銀金融政策決定会合 | 12/19(木) | 1/21(火)、3/19(木)、4/28(火)、6/16(火)、7/22(水)、9/17(木)、10/29(木)、12/18(金) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 全日程終了 | 1/29(水)、3/18(水)、4/29(水)、6/10(水)、7/29(水)、9/16(水)、11/5(木)、12/16(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 全日程終了 | 1/23(木)、3/12(木)、4/3(金)、6/4(木)、7/16(木)、9/10(木)、10/29(木)、12/10(木) |
3.【ココがPOINT!】株式市場は「新しいステージ」に入っている可能性
図1をご覧いただければ、お分かりいただける通り、日経平均株価は「三角保ち合い」から上放れた形になっています。上に放れた株式相場は「新しいステージ」に入った可能性が大きく、上昇相場が続くものと予想されます。
さらに日経平均株価は実は、歴史的にも重要な水準に差し掛かってきたと見受けられます。いわゆる日本経済の「失われた20年」を示している長期ボックス相場を少し抜けてきた水準に今差し掛かってきたのかもしれません。
前の元号となった「平成」はバブル相場の最高値形成(1989年・平成元年)で幕を開け、その翌年から日経平均株価は急落しました。宮沢内閣の緊急経済対策でようやく1番底(1992年8月)を付けますが、そこまで下落率は63%に達しました。その後も日本経済は長期的に低迷を続け、非常に大雑把に表現すると、下値7,000円、上値を22,000円とする大ボックス相場を演じることになりました。
「失われた20年」がどんな時代であったのか説明すると、ここではスペースが足りませんが、要は銀行の不良債権問題や日本経済の長期デフレ傾向が重大な問題を引き起こしました。昨年日経平均株価は一時24,448円まで回復(月足)しましたが、この「失われた20年」を克服したことが印象付けられる瞬間でした。
今、日経平均株価がその水準を回復し、昨年10月にもその水準を付けた24,000円台は1991年11月以来の高値水準でした。そこからさらに古い時代にさかのぼると、バブル相場のピークまでの時間も短く、相場の滞留期間は長くありません。すなわち、日経平均株価の24,000円台以上の水準には大きな抵抗ラインがあまりないことになります。
相場の過熱感も強い訳ではありません。特にPBR(株価純資産倍率)でみると、リーマンショック前には2.4倍ありましたが、現在では1.17倍に過ぎないのです。それどころか、4ヵ月前には1倍を少し超える程度の「解散価値」ぎりぎりの水準まで下がっていました。むしろ、PBRでみた場合、日本株は歴史的安値と言えます。予想PERでみると14倍台ですが、こちらですら、歴史的には安値圏に近いと言えます。
日本株の割安感が意識され、株価が上値抵抗力の弱い局面に入ってきたため、日経平均株価が予想外に跳ねる可能性は十分あると考えられます。その意味で、株式市場はすでに「新しいステージ」に入っているのかもしれません。
図4 日経平均株価(月足)・長期推移
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