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『ココがPOINT!』
「日経平均が24,000円回復」で考えておきたいリスク要因は?
投資情報部 鈴木英之
日経平均株価は1/14(火)取引開始後早々に、12/18(水)以来となる24,000円台を回復(取引時間中ベース)してきました。米国とイランとの緊張状態が一時から比べると緩和してきたことに加え、米中通商協議が第1の合意について、署名のはこびとなり、株式市場ではリスクオンのムードが高まっています。1/14(火)以降、米国で2019年10~12月期の決算発表が本格化してきますが、市場では警戒感よりも期待感の方が大きいとの指摘も出ています。
東京株式市場でも、決算発表シーズンの前哨戦となる安川電(6506)の2019年9~11月期決算発表で、中国での受注底入れが観測され、米国同様、リスク許容度が高まっているように思われます。投資家としてはここから先、強気で臨むべきでしょうか。注意すべきことはないのでしょうか。
ココがPOINT!
1.日経平均株価が24,000円を回復
2020年、東京株式市場は波乱の幕開けとなりました。年明けは大発会の1/6(月)に日経平均株価が451円安の急落となり、その後は1/7(火)に370円高、1/8(水)に370円安、1/9(木)に535円高と、文字通り乱高下する展開になっています。
1/3(金)に米国がイラン革命防衛隊ソレイマニ司令官を暗殺したことで、中東での地政学的リスクの高まりが警戒され、その日の米国株が下落し、それを受けて、1/6(月)の日経平均株価は大納会終値に対し451円76銭安と急落しました。1/7(火)はいったん自律反発となりましたが、1/8(水)には、イランがイラク内にある米軍拠点を攻撃したことが嫌気され、日経平均株価は再び下げました。ただ、米国とイランの双方から紛争の拡大を望まない旨の発言があり、買い安心感が強まる中、1/9(木)は大幅高になりました。
そうした中、1/8(水)にテヘラン(イランの首都)発キエフ(ウクライナの首都)行きのウクライナ国際航空機が、テヘランを離陸後に墜落する事件があり、新たな波乱要因となっています。当初は人為的なミスと報道されましたが、のちにイラン軍による誤射と伝えられました。死亡した人はイラン人とカナダ人が多かったため、イラン国内で反政府デモが発生する契機になっています。株式市場ではいまだ、十分織り込まれていない材料とみられ、今後の成り行きに注意が必要です。
1/10(金)には、中国の劉副首相が1/15(水)に米中通商協議での第1の合意について、米国で署名すると伝えられ、米中通商摩擦への懸念後退が期待され、日経平均株価は110円高と続伸しました。1/14(火)以降、米国で2019年10~12月期の決算発表が本格化してきますが、市場では警戒感よりも期待感の方が大きいようで、1/14(火)の東京株式市場も買い先行となり、日経平均株価は取引開始後早々に、12/18(水)以来となる24,000円台を回復(取引時間中ベース)してきました。
東京株式市場でも、決算発表シーズンの前哨戦となる安川電(6506)の2019年9~11月期決算発表で、中国での受注底入れが観測され、米国同様、リスク許容度が高まっているように思われます。外為市場では1ドル110円台に乗せる円安・ドル高となっており、日本株には好材料になっているようです。投資家としてはここから先、強気で臨むべきでしょうか。注意すべきことはないのでしょうか。
表1 日経平均株価の値動きとその背景(2020/1/6~2020/1/14)
日経平均株価 | 日米株式市場等の動き | ||
---|---|---|---|
終値 | 前日比 | ||
1/6(月) | 23,204.86 | -451.76 | 米軍がイラン司令官を殺害したことを警戒し、海外で株安・円高が進行。 |
1/7(火) | 23,575.72 | +370.86 | 前日の米国株が反発したことで落ち着きを取り戻した形。 |
1/8(水) | 23,204.76 | -370.96 | イランがイラクの米軍拠点にミサイル攻撃。地政学的リスクが再燃。 |
1/9(木) | 23,739.87 | +535.11 | 米国、イラン双方から武力衝突を望まない旨の発言。好調な米経済指標も追い風。 |
1/10(金) | 23,850.57 | +110.70 | 中国の劉副首相が米国と15日にも署名と伝わり、NY株が続伸。 |
1/14(火) | 24,025.17 | +174.60 | 米中合意への期待に加え、企業業績への楽観論も強まりました。 |
図1 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図2 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図3 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
2.マクロからミクロへ
米国では1/10(金)、労働省から雇用統計(12月)の発表がありました。非農業部門雇用者数が事前予想の前月比16.0万人増に対して14.5万人増にとどまったほか、時間当たり賃金は事前予想の前年同月比3.1%増に対し、同3.0%増にとどまるなど、労働市場のさらなるひっ迫を示す材料にはなりませんでした。ただ、もともと単月ではブレの大きい指標であるだけに、今後も注視を続けていく必要がありそうです。
前項でも触れましたが、1/14(火)以降、米国では2019年10~12月期の決算発表が本格化してきます。我が国でも、前哨戦となる安川電(6506)の決算発表が終わりましたが、日本電産(6594)が発表する1/23(木)あたりから2019年10~12月期の決算発表が本格化してくるはこびです。現状では、400社超の発表が予定されている1/31(金)が第1のヤマ場、500社超の発表が予定されている2/7(金)が最大のヤマ場になりそうです。
個別には、ソニー(6758)が2/4(火)、トヨタ自動車(7203)が2/6(木)、ソフトバンクグループ(9984)が2/12(水)などとなっており、決算発表スケジュール上の重要な節目になると考えられます。
表2 当面の重要スケジュール
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
1/14(火) | 日本 | 12月景気ウォッチャー調査 | |
米国 | 12月消費者物価指数 | ||
米国 | ☆決算発表 | シティ、JPMチェースほか | |
中国 | 12月貿易統計 | 市場コンセンサスは輸出(前月比)1.6%増、輸入8.2%増 | |
1/15(水) | 日本 | 12月工作機械受注 | 前回は前年同月比37.9%減 |
日本 | 自動運転EXPO(東京)(~17日) | ||
米国 | ☆決算発表 | バンカメ、GS他 | |
1/16(木) | 日本 | 11月機械受注 | 民間設備投資の先行指標 |
米国 | 12月小売売上高 | ||
米国 | 1月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 | ||
1/17(金) | 米国 | 12月住宅着工件数 | |
米国 | 12月鉱工業生産・設備稼働率 | ||
米国 | 1月ミシガン大学消費マインド指数 | ||
1/21(火) | 日本 | 日銀金融政策決定会合結果発表/黒田総裁会見 | |
- | 世界経済フォーラム(ダボス会議) | ||
1月ドイツZEW景況感調査 | 350人の市場関係者に景況感をアンケート | ||
1/22(水) | 米国 | 12月中古住宅販売件数 | |
1/23(木) | 日本 | 12月貿易統計 | |
欧州 | ECB定例理事会/ラガルド総裁会見 | ||
1/24(金) | 中国 | ◎春節の休暇(~30日頃) |
表3 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2020年 | |
日銀金融政策決定会合 | 1/21(火)、3/19(木)、4/28(火)、6/16(火)、7/22(水)、9/17(木)、10/29(木)、12/18(金) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 1/29(水)、3/18(水)、4/29(水)、6/10(水)、7/29(水)、9/16(水)、11/5(木)、12/16(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 1/23(木)、3/12(木)、4/30(木)、6/4(木)、7/16(木)、9/10(木)、10/29(木)、12/10(木) |
3.【ココがPOINT!】「日経平均が24,000円回復」で考えておきたいリスク要因は?
冒頭で触れましたように、日経平均株価は1/14(火)取引開始後早々に、12/18(水)以来となる24,000円台を回復(取引時間中ベース)してきました。米国とイランとの緊張状態が一時から比べると緩和してきたことに加え、米中通商協議が第1の合意について、署名のはこびとなり、株式市場ではリスクオンのムードが高まっています。投資家としてはここから先、強気で臨むべきでしょうか。注意すべきことはないのでしょうか。
報道等によれば、米国と中国は第1の合意についてホワイトハウスで署名のはこびとなっています。中国が米国からの輸入を拡大し、金融市場の開放や為替介入の透明化を約束するのと見返りに、米国は対中関税第4弾(2019年12月実施予定分)の発動見送りなどに応じるというものです。
株式市場ではここに至るまで何度となく、米中交渉の前進を強調するニュースが流れ、その多くの場合、株価は上昇という形で応えてきました。しかし、現実に妥結にこぎつけた内容は、知財の保護や補助金の問題の解決にはほど遠い内容のものであるとの批判も出てきそうです。米国内では、共和党保守派や民主党からの反発を招く可能性も残りそうです。大統領選挙を控え、米国経済への影響に配慮せざるを得なかったものとみられ、今後、2国間の摩擦が再び激化する可能性も十分ありそうです。
米国とイランの問題についても、解決に向かう材料は今の所確認されていないと思われます。楽観論が台頭している日米の企業業績についても、事前に回復を織り込んだ動きがみられてきただけに、今後は逆に好材料出尽くしとなる可能性も出てきそうです。
日経平均株価が24,000円を回復した1/14(火)の東京株式市場ですが、中身をみると、東証1部では値下がり銘柄数の比率が過半を占め、TOPIXの上昇は限定的でした。前日下げたファーストリテイリング(9983)の反発の影響を割り引くべきであると考えられます。
東京株式市場では、目先はややもみ合いとなっているものの、NT倍率の上昇基調が観測され、日経平均株価とTOPIXのかい離が問題視されています。予想EPSの推移をみる限り、日経平均採用銘柄とTOPIXのかい離が拡大する兆しをみせており、東証1部の上場基準の問題がくすぶり続ける背景になりそうです。日経平均株価は24,000円を回復してきた現状ですが、TOPIXとのかい離というもうひとつの「収益チャンス」を検討したほうがいいのかもしれません。
図4 NT倍率(週足)
図5 日経平均・TOPIXの予想EPS(週足)
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