225の
『ココがPOINT!』
「新型肺炎」と日経平均株価~その短期展望、中長期展望は?
投資情報部 鈴木英之
1月の日経平均株価は前月末比451円44銭(1.9%)下げ、月足としては5ヵ月ぶりの下落となりました。2/4(火)こそ少し落ち着きを取り戻したものの、中国で新型肺炎の感染拡大は続いており、2月相場もやや波乱の幕開けとなっています。
今後はどうなるのでしょうか。新型肺炎の影響を中心に考え、日経平均株価の短期展望、中長期展望について考えてみたいと思います。「世界の工場」である中国が米中通商摩擦と新型肺炎により大きな打撃を受け、それが世界経済に与える大きな影響については織り込み切れていないと思います。
ココがPOINT!
1.1月の日経平均株価(月足)は5ヵ月ぶりに下落
1月は海外からの悪材料に振り回される1ヵ月になりました。まず、1/3(金)に米国がイラン革命防衛隊ソレイマニ司令官を殺害し、地政学的リスクが一気に高まったことから、本年最初の取引となった1/6(月)の東京株式市場では、日経平均株価が大納会終値比で451円76銭安となりました。その後、イランがイラクにある米軍拠点を攻撃するなど、米国・イラン間の緊張が高まり、1/8(水)には日経平均株価が23,000円を割り込む場面がみられました。
ただ、両国首脳が紛争の激化を望まない姿勢を示したことから、この問題は取りあえず収束の方向になりました。その後市場の関心は米中通商協議が無事、第1段階の合意に署名できるか否かという点に向かいましたが、期待通り調印が実現できたことから、市場のリスク許容度が回復し、1/20(月)には日経平均株価終値が24,083円51銭と、昨年来高値更新の流れとなりました。
しかし、中国武漢市を発生源とした新型コロナウイルスが病原体の新型肺炎の感染が拡大し始め、次第に内外の株式市場への影響も本格化し始めました。中国はもともと1/24(金)以降は春節の休暇シーズンの予定でしたが、それに先立つ1/23(木)には中国政府が武漢市を閉鎖し、1/27(月)には団体旅行禁止の措置を取りました。それでも、1/23(木)の感染者数830人、死者数25人から、2/1(土)には感染者数14,380人、死者数304人と感染拡大の勢いは加速し、それを警戒する形で株式市場の下落基調も継続しました。
結局、1月の日経平均株価は前月末比451円44銭(1.9%)下げ、月足としては5ヵ月ぶりの下落となりました。こうした中、米国は1/31(金)に中国について「渡航禁止・避難勧告」の措置を取り、世界経済への影響が意識され、この日のNYダウは前日比600ドルを超える下げになりました。それを受けた2/3(月)の東京株式市場では、日経平均株価が233円24銭安となり、2月相場もやや波乱の幕開けとなりました。
表1 日経平均株価の値動きとその背景(2020/1/27~2020/2/4)
日経平均株価 | 日米株式市場等の動き | ||
終値 | 前日比 | ||
1/27(月) | 23,343.51 | -483.67 | 新型肺炎対策で中国が団体旅行禁止。我が国のインバウンド需要にも逆風。 |
1/28(火) | 23,215.71 | -127.80 | 新型肺炎の感染拡大を懸念し1/27のNYダウが453ドル安。 |
1/29(水) | 23,379.40 | +163.69 | 3営業日ぶりに反発。米当局が米中間の航空便停止を見送りとの報道も追い風。 |
1/30(木) | 22,977.75 | -401.65 | 世界的に肺炎拡大が懸念され、台湾・香港等が大幅安。決算発表も心配。 |
1/31(金) | 23,205.18 | +227.43 | 前日のNYダウが124ドル高。WHOが緊急事態宣言。決算発表に個別で反応も。 |
2/3(月) | 22,971.94 | -233.24 | 米国が中国に「渡航禁止・避難勧告」の措置。NYダウは603ドル安。上海株は急落。 |
2/4(火) | 23,084.59 | +112.65 | 急落の反動で前日のNYダウが反発。 |
図1 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図2 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図3 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
2.中国企業の事業再開は?
我が国では、上場企業の決算発表が本格化しています。発表社数ベースでは495社の発表が予定されている2/7(金)が最大のヤマ場ですが、その後2/14(金)までは毎営業日、数百社ずつの発表が予定されており、注目を怠れない状態が続きます。2/7(金)は米国で雇用統計(1月)の発表も予定されており、内外で重要スケジュールが重なることになります。
なお、個別企業レベルではソニー(6758)、三菱UFJ(8306)、花王(4452)、武田(4502)などの決算発表が予定されている2/4(火)に続き、2/6(木)にはトヨタ(7203)、資生堂(4911)、NTT(9432)などが決算発表を予定しており、目の離せない日々になると考えられます。ソフトバンクグループ(9984)は2/12(水)に決算発表を予定しています。
ただ、後でご説明するように、今回の新型肺炎の影響で、中国のみならず世界経済は相当のダメージを受けると考えられます。弱い企業はこの荒波を乗り切れるか否か微妙と考えられます。春節以前の経済データはマクロ、ミクロともに、大きな意味を持たなくなる可能性があります。その意味で、中国の多くの省・都市などで実施されている春節休暇の延長がどこまで続くのか、実はその見通しが非常に重要と言えるかもしれません。
表2 当面の重要スケジュール
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
2/4(火) | 日本 | ★決算発表(119件) | 花王、武田薬、CTC、ソニー、三井物、三菱UFJ |
米国 | 12月製造業受注 | ||
米国 | トランプ大統領一般教書演説 | ||
米国 | ☆決算発表 | ウォルト・ディズニー、フォード | |
2/5(水) | 日本 | ★決算発表(171件) | 協和キリン、住友電工、伊藤忠、丸紅、三菱商事 |
米国 | 米1月ADP雇用統計 | 労働省雇用統計の前哨戦 | |
米国 | 1月ISM非製造業景況指数 | 雇用、新規受注などの個別指標にも注目 | |
米国 | ☆決算発表 | GM、クアルコム | |
2/6(木) | 日本 | 1月都心オフィス空室率 | |
日本 | ★決算発表(225件) | 三菱ケミカル、資生堂、トヨタ、オリンパス、NTT | |
米国 | ☆決算発表 | ツイッター | |
2/7(金) | 日本 | ★決算発表(495件)~件数ベースでは最大のヤマ場 | 件数ベースでは最大のヤマ場 |
中国 | 1月貿易統計 | ||
米国 | 1月雇用統計 | 市場コンセンサスは非農業部門雇用者数が前月比16万人増 | |
2/10(月) | 日本 | 1月景気ウォッチャー調査 | |
日本 | ★決算発表(183件) | 東レ、三菱地所 | |
中国 | 1月生産者物価/消費者物価 | ||
米国 | 2021年度予算教書(予定) | ||
2/11(火) | 日本 | ◎東京市場は休場(建国記念の日) | |
米国 | パウエルFRB議長が議会証言 | ||
2/12(水) | 日本 | 1月工作機械受注 | |
日本 | ★決算発表(271件) | 国際帝石、ダイキン、ソフトバンクG | |
米国 | ☆決算発表 | アプライド・マテリアルズ、シスコシステムズ、トリップアドバイザー | |
2/13(木) | 日本 | ★決算発表(401件) | 大和ハウス、アサヒ、電通G、楽天、日産自 |
日本 | NISAの日 | ||
2/14(金) | 日本 | ★決算発表(393件)~主要企業の決算発表はほぼ一巡 | キリンHD、リクルートHD、日本郵政、東芝、第一生命、東京海上 |
ドイツ | 10~12月期GDP | ||
米国 | 1月小売売上高 |
表3 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2020年 | |
日銀金融政策決定会合 | 3/19(木)、4/28(火)、6/16(火)、7/22(水)、9/17(木)、10/29(木)、12/18(金) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 3/18(水)、4/29(水)、6/10(水)、7/29(水)、9/16(水)、11/5(木)、12/16(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 3/12(木)、4/30(木)、6/4(木)、7/16(木)、9/10(木)、10/29(木)、12/10(木) |
3.【ココがPOINT!】新型肺炎の感染拡大と日経平均株価
新型肺炎の感染拡大を背景とする相場の混乱はいつまで続くのでしょうか。相場が下げ止まるための契機になりそうな出来事はいくつかあると想定されます。
ひとつは、中国企業の事業再開です。ただ、こちらは流動的な面が強いようです。上海市、広東省などの都市・省では春節休暇が2/9(日)まで延長される予定です。新型肺炎の発生源となった湖北省では2/13(木)まで休みが伸びそうです。2月第2週まで、中国GDPの7割弱を占める都市・省等で休暇が延長される予定です。長く止めた工場をすぐに再開できる保証はありません。そもそも、閉鎖された武漢市は中国の東西南北を結ぶ交通の要所に当たります。物流面での滞りも大きそうです。
新型肺炎の感染者数、死亡者数の増加が鈍化してくれば、そのことも株価が下げ止まる契機になりそうです。最初の項で触れましたように、1/23(木)の感染者数830人、死者数25人から、2/1(土)には感染者数14,380人、死者数304人と感染拡大の勢いは加速。2/3(月)現在では、感染者数20,438人、死亡者数425人となっています。
現状では、診察を受けたくても受けられなかった人がようやく受診し、感染者数に数えられ始めていること、潜伏期間が終わり発症する人が増えていること等を背景に、感染者数が増えやすい状態なのかもしれません。中国が人の移動を制限し始めて10日を超えてくるため、そろそろ感染者数の増加数に鈍化の兆しが出てきても不思議ではないと思います。
したがって、前回の「225の『ココがPOINT!』」でご紹介した下値支持ラインは依然有効であると考えられます。以下に再掲載してご紹介(時間の経過を加味してアップデート済み)したいと思います。
(1)22,775円・・・・2/3に付けた2020年の安値。昨年8月安値から本年1月高値の上昇幅に対する3分の1押しにも近い。
(2)22,726円・・・・昨年11/21に付けた安値水準。26週移動平均株価(22,693円)にも近い。
(3)22,255円・・・・昨年9/19の高値水準。
(4)22,113円・・・・昨年8月安値から本年1月高値の上昇幅に対する2分の1押し。200日移動平均株価(22,090円)にも近い。
(5)22,000円・・・・心理的な節目。
ただ、「世界の工場」である中国が米中通商摩擦と新型肺炎により大きな打撃を受け、それが世界経済に与える大きな影響については織り込み切れていないと思います。東京五輪が無事開催されるか否かも微妙になってきています。さらに、現在はコンセンサスになっているとみられる日本企業の来期増益転換シナリオも不透明になりつつあります。中長期展望が不透明になってきたことを、日経平均株価の一目均衡表(図4)は織り込もうとしているのかもしれません。
株式市場の更なる波乱はもう少し後に起こる可能性もありそうです。
図4 日経平均株価(日足)・一目均衡表
相場が大きく動いたら?
SBI証券なら多彩な商品群で取引チャンスを逃がしません!
- 国内株式
レパレッジ型ETFを活用すれば、日経平均の急な動きにも対応可能!
- 外国株式
米国株式、中国株式を含めた9ヵ国に投資!海外ETFで分散投資も可能です!
- 投資信託
日本の株式市場の動きを予測して短期でハイリターンを狙えるファンドがあります!
- FX
約5,000円から取引できる!ほぼ24時間取引&手数料はもちろん0円!
- 先物・オプション
日経平均に少ない資金で投資できる!レバレッジを効かせて、大きな利益を狙え!
- CFD
先進諸国の株価指数がほぼ24時間取引可能!特徴を理解することが勝利への道!
- ワラント
ダイナミックな値動きがeワラントの特徴!商品の魅力を知るなら必見!
- 金・プラチナ
有事の際の金・プラチナでリスクヘッジも!ほぼ24時間リアルタイムで取引可能!
先物・オプション取引
先物・オプション取引を
はじめるには
先物・オプションのお取引には、先物・オプション取引口座の開設が必要になります。
※PCでのお手続きを推奨しております
当社の総合口座をお持ちでないお客さま
先物・オプション取引関連ページ
信用取引のご注意事項
-
-
・信用取引に関するリスク
信用取引は、差し入れた委託保証金額の約3倍の取引を行うことができます。そのため、現物取引と比べて大きなリターンが期待できる反面、時として多額の損失が発生する可能性も含んでいます。また、信用取引の対象となっている株価の変動等により、その損失の額が、差し入れた委託保証金額を上回るおそれがあります。この場合は「追加保証金」を差し入れる必要があり状況が好転するか、あるいは建玉を決済しない限り損失が更に膨らむリスクを内包しています。
追加保証金等自動振替サービスは追加保証金が発生した際に便利なサービスです。 -
・信用取引の「二階建て」に関するご注意
委託保証金として差し入れられている代用有価証券と同一銘柄の信用買建を行うことを「二階建て」と呼びます。当該銘柄の株価が下落しますと信用建玉の評価損と代用有価証券の評価額の減少が同時に発生し、急激に委託保証金率が低下します。また、このような状況下でお客さま自らの担保処分による売却や、場合によっては「追加保証金」の未入金によって強制決済による売却が行われるような事態になりますと、当該株式の価格下落に拍車をかけ、思わぬ損失を被ることも考えられます。よって、二階建てのお取引については、十分ご注意ください。 - もっと見る 閉じる
-
・信用取引に関するリスク
先物・オプション取引の免責事項・注意事項
-
- ・本資料は投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたもので、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。万一、本資料に基づいてお客さまが損害を被ったとしても当社、および情報発信元は一切その責任を負うものではありません。本資料は著作権によって保護されており、無断で転用、複製、または販売等を行うことは固く禁じます。
-
・必要証拠金額は当社SPAN証拠金(発注済の注文等を加味したSPAN証拠金×100%)-ネット・オプション価値(Net Option Value)の総額となります。
・当社SPAN証拠金、およびネット・オプション価値(Net Option Value)の総額は発注・約定ごとに再計算されます。
・SPAN証拠金に対する掛け目は、指数・有価証券価格の変動状況などを考慮のうえ、与信管理の観点から、当社の独自の判断により一律、、またはお客さまごとに変更することがあります。
・「HYPER先物コース」選択時の取引における建玉保有期限は新規建てしたセッションに限定されます。必要証拠金額はSPAN証拠金×50%~90%の範囲で任意に設定が可能であり、また、自動的に決済を行う「ロスカット」機能が働く取引となります。
・先物・オプションのSPAN証拠金についてはこちら(日本証券クリアリング機構のWEBサイト)
・指数先物の価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。市場価格が予想とは反対の方向に変化したときには、比較的短期間のうちに証拠金の大部分、またはそのすべてを失うこともあります。その損失は証拠金の額だけに限定されません。また、指数先物取引は、少額の証拠金で多額の取引を行うことができることから、時として多額の損失を被る危険性を有しています。
・日経平均VI先物取引は、一般的な先物取引のリスクに加え、以下のような日経平均VIの変動の特性上、日経平均VI先物取引の売方には特有のリスクが存在し、その損失は株価指数先物取引と比較して非常に大きくなる可能性があります。資産・経験が十分でないお客さまが日経平均VI先物取引を行う際には、売建てを避けてください。
・日経平均VIは、相場の下落時に急上昇するという特徴があります。
・日経平均VIは、急上昇した後に数値が一定のレンジ(20~30程度)に回帰するという特徴を持っています。
・日経平均VIは、短期間で急激に数値が変動するため、リアルタイムで価格情報を入手できない環境での取引は推奨されません。
・指数オプションの価格は、対象とする指数の変動等により上下しますので、これにより損失を被ることがあります。なお、オプションを行使できる期間には制限がありますので留意が必要です。買方が期日までに権利行使又は転売を行わない場合には、権利は消滅します。この場合、買方は投資資金の全額を失うことになります。売方は、市場価格が予想とは反対の方向に変化したときの損失が限定されていません。また、指数オプション取引は、市場価格が現実の指数に応じて変動しますので、その変動率は現実の指数に比べて大きくなる傾向があり、場合によっては大きな損失を被る危険性を有しています。
・未成年口座のお客さまは先物・オプション取引口座の開設は受付いたしておりません。
・「J-NETクロス取引」で取引所 立会市場の最良気配と同値でマッチングする場合、本サービスをご利用いただくお客さまには金銭的利益は生じないものの、SBI証券は取次ぎ手数料をSBIジャパンネクスト証券から受取ます。
・J-NETクロス取引の詳細は適宜修正される可能性がありますのでご留意ください。 - もっと見る 閉じる