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『ココがPOINT!』
日経平均株価24,000円台へ出遅れ感解消か
投資情報部 鈴木英之
日経平均株価はジリ高の展開になっています。9月第2週(9/7~9/11)も201円06銭(0.9%)高と続伸し、9/14(月)の終値は23,559円30銭となり、約7ヵ月ぶりの高値水準回復となりました。
世界の株式市場ではこれまで、世界シェアの高い商品を抱えるなど、強い競争力を有し、新型コロナウイルスの流行や景気循環などに左右されにくいグロース銘柄が投資家に選好され、逆に日本株を含むバリュー銘柄は伸び悩みが目立つ状況でした。今後、新型コロナウイルスの感染拡大が後退し、景気回復の確度が増すにつれ、日本株や、米国のバリュー株銘柄などが、相対的に強い展開となりそうです。
ココがPOINT!
1.日経平均株価が約7ヵ月ぶりの高値水準を回復
日経平均株価はジリ高の展開になっています。9月第1週(8/31~9/4)の前週末比322円78銭(1.4%)高に続き、第2週(9/7~9/11)も201円06銭(0.9%)高と続伸しました。9/14(月)の終値は23,559円30銭となり、約7ヵ月ぶりの高値水準回復となりました。続く9/15(火)は利益確定売りが増えているようです。
安倍首相が8/28(金)に辞意を表明したものの、後任として菅官房長官が早々に有望視され、政治の安定が期待されたことが日本経済へ追い風になりました。そうした中、国内の新型コロナウイルスの新規感染者数が漸減となり、東京都の飲食店への営業時間短縮要請終了や、「Go To トラベル」における東京除外の撤廃方針などにより、経済再開・景気回復への期待が高まりました。また、工作機械受注や機械受注など、設備投資関連指標が予想を上回ったことも好感されました。
これに対し、米国株式市場では、ハイテク株の組み入れが多いナスダックが9月第1週に3.3%安、第2週に4.1%安と下落し、グロース株を中心とする調整モードが続き、東京株式市場にとっても一部逆風となりました。これまでグロース銘柄の株価上昇をけん引してきたテスラについて、S&P500への採用が見送られ、同社株が急落したことも響きました。また、英国の製薬大手アストラゼネカとオックスフォード大学による新型コロナウイルスに対するワクチンの臨床試験が一時中断され、新型コロナウイルスの早期収束に対する期待も後退しました。
ただ、日本株については米国株と比較し、バリュー銘柄の構成比が高いとみられ、グロース銘柄の構成比が高い米国株ほどに過熱感や割高感が強くなかったこともあり、米国株下落の影響は限定的でした。図1にもあるように、日経平均株価が25日移動平均線を終値で割り込むといったこともなく、上昇基調が維持されました。
9/14(月)には、ソフトバンクグループ(9984)が英半導体設計アーム・ホールディングスを米半導体大手エヌビディアに全売却することを発表し、財務改善期待から大幅高となり、1銘柄で日経平均株価を約120円押し上げ、同株価は約7ヵ月ぶりの高値回復となりました。続く9/15(火)はソフトバクグループに利益確定売りが増えたこともあり、日経平均株価も売り先行となっています。
表1 日経平均株価の値動きとその背景(2020/9/7~2020/9/15)
日経平均株価 | 日米株式市場等の動き | ||
終値 | 前日比 | ||
9/7(月) | 23,089.95 | -115.48 | IOC関係者の東京五輪開催意向報道を受け、電通Gなど五輪関連銘柄が高い。 |
9/8(火) | 23,274.13 | +184.18 | 3日ぶりに反発。ワクチンの10月実用化報道でコロナウイルス終息に期待高まる。 |
9/9(水) | 23,032.54 | -241.59 | 米株下落で一時400円近く下げる。川崎船など3社出資のコンテナ船事業期待で海運株上昇。 |
9/10(木) | 23,235.47 | +202.93 | ワクチン治験再開報道で景気回復期待感高まる。米株の上昇を受けて反発も上値は重い。 |
9/11(金) | 23,406.49 | +171.02 | 経済活動の再開に期待高まる。東京のGoToトラベル追加方針で陸運など買われる。 |
9/14(月) | 23,559.30 | +152.81 | ソフトバンクGがアーム社をエヌビディアに売却方針で、日経平均を120円押し上げ。 |
9/15(火) | 23,454.89 | -104.41 | 4日ぶり反落。利益確定売りが優勢。 |
図1 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図2 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図3 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
表2 当面の重要スケジュール
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
9/15(火) | 中国 | 8月工業生産 | |
中国 | 8月小売売上高 | 市場コンセンサスは前年同月比変わらず | |
中国 | 8月都市部固定資産投資 | 市場コンセンサスは前年同月比0.4%減 | |
米国 | FOMC(~16日) | ||
米国 | 9月NY連銀製造業景気指数 | ||
米国 | 8月輸出入物価 | ||
米国 | 8月鉱工業生産・設備稼働率 | ||
ドイツ | 9月ZEW景況感指数 | 350人の市場関係者に景況感をアンケート | |
- | 国連総会開会(一般討論演説は9/22から) | ||
9/16(水) | 日本 | 日銀金融政策決定会合(~17日) | |
日本 | 9月貿易統計 | ||
日本 | 8月訪日外客数 | 4月~7月は前年同月比99.9%減 | |
日本 | 臨時国会召集の見通し(新首相を選出し新内閣発足) | ||
米国 | パウエルFRB議長会見(経済見通し発表) | 日本時間17日早朝発表。経済見通しとFOMCメンバーの金利見通しがポイント | |
米国 | 8月小売売上高 | ||
米国 | 9月NAHB住宅市場指数 | ||
米国 | 7月対米証券投資 | ||
9/17(木) | 日本 | 黒田日銀総裁会見 | |
- | アジア開発銀行(ADB)年次総会(~18日) | ||
米国 | 8月住宅着工件数 | ||
米国 | 9月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数 | 米製造業のマインドは? | |
英国 | 金融政策発表 | ||
9/18(金) | 日本 | 8月消費者物価 | |
米国 | 4-6月期経常収支 | ||
米国 | 9月ミシガン大学消費者マインド指数 | 米国の消費マインドは? | |
9/21(月) | 米国 | 8月シカゴ連銀全米活動指数 | |
9/22(火) | 米国 | 8月中古住宅販売件数 | |
米国 | 国連総会で米中ロ首脳が一般討論演説 | ||
9/23(水) | 日本 | 7月全産業活動指数 | |
日本 | 8月コンビニエンスストア売上高 | ||
日本 | 東京ゲームショウ2020オンライン開催(~27日) | ||
米国 | 7月FHFA住宅価格指数 | ||
9/24(木) | 日本 | 7月14・15日開催の日銀金融政策決定会合議事録要旨 | |
米国 | 8月新築住宅販売件数 | ||
ドイツ | 9月IFO景況感指数 | ||
9/25(金) | 日本 | 8月企業向けサービス価格指数 | |
米国 | 8月耐久財受注 | 米国の民間設備投資の先行指標 | |
- | 国連総会で日本の新首相が一般討論演説 |
表3 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2020年 | 2021年 | |
日銀金融政策決定会合 | 9/17(木)、10/29(木)、12/18(金) | 1/21(木)、3/19(金)、4/27(火)、6/18(金)、7/16(金)、9/22(水)、10/28(木)、12/17(金) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 9/16(水)、11/5(木)、12/16(水) | 1/27(水)、3/17(水)、4/28(水)、6/16(水)、7/28(水)、9/22(水)、11/3(水)、12/15(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 10/29(木)、12/10(木) | 1/21(木)、3/11(木)、4/22(木)、7/22(木)、9/9(木)、10/28(木)、12/16(木) |
2.【ココがPOINT!】割安感が見直され、日本株のジリ高が続くと予想
古くから「米国がくしゃみをすると日本は風邪を引く」と言われています。米国と日本の経済には密接な関係があり、米国株が上昇(下落)すると、日本株も上昇(下落)する傾向が強いとされていました。ただ、近年は日本の株価は米国に比べてパフォーマンスが振るわなくなっているようです。図4にもあるように、日経平均株価はナスダックに対し、大きくアンダーパフォーマンスする傾向が強まっています。このことは、米国株が上がっても日本株はあまり上がらず、米国株が下げる時は日本株も、より大きく下げる傾向にあるとみられています。
ナスダックをけん引する主な銘柄は「GAFAM」と言われ、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフトを指し、これらは世界経済をけん引する銘柄でもあります。残念ながら、日本にはこれらと「勝負」できるような存在感のある銘柄はまったくと言ってよいほどなく、それが日本株全体(日経平均株価)の伸び悩みにつながっているとみられます。
こうした中、足元では日経平均株価のNYダウへの相対パフォーマンスの悪化には歯止めがかかっています。また、同じ米国株でも「GAFAM」に象徴されるグロース銘柄に対するバリュー銘柄の相対的な弱さが目立っています。言い換えれば、米国のグロース銘柄だけが過熱感を伴って買われ、日本株や米バリュー銘柄は取り残される形になり、米国グロース銘柄の割高感が目立ってきました。
すなわち、最近の米国株は市場全体が調整局面に入ったというよりも、割高感の強いグロース銘柄が売られ、バリュー銘柄が見直されているという側面が強そうです。そうした中で、典型的なバリュー銘柄である日本の商社株に対し、ウォーレン・バフェット氏が買いを入れてきたことが明らかになり、バリュー銘柄の再評価が本格化してきたという流れになっています。
日本のメディアでは、米国株の状況を伝えるニュースは依然として、NYダウが中心となっているように思われます。しかし、このように現在、市場をけん引するのはナスダック上場銘柄であり、全体を示す指標としてはS&P500が一般的であったりします。9/11(金)の米国株式市場では、NYダウは131ドル高でしたが、ナスダックは66ポイント安でした。このように、同じ米国市場でも、指数によって方向感が異なるケースが増えているように思われますので、米国市場をチェックする時は、しっかり物色方向の違いまで、気を付けておく必要があります。
ちなみに、グロース銘柄は、世界シェアの高い商品を抱えるなど、強い競争力を有し、新型コロナウイルスの流行や景気循環などに左右されにくい傾向にあり、投資家に選好され、これまで買い進められてきたとみられます。一方、バリュー銘柄の多くは、景気敏感株であることが多く、新型コロナウイルスの流行や景気変動の影響を受けやすい傾向にあります。日本株も全体としてみれば“バリュー銘柄的な特徴”が強いと考えられます。
したがって、今後、新型コロナウイルスの感染拡大が後退し、景気回復の確度が増すにつれ、世界の中では景気敏感株とされる日本株や、米国のNYダウ採用銘柄に多い米バリュー株などに、相対的な強さが増してくると予想されます。言い換えれば、日本株の割安感が見直され、日経平均株価のジリ高が続く可能性が大きいと予想されます。
図4 日経平均株価の対NYダウおよびナスダック指数の相対株価
図5 グロース株の相対的な強さが米株式市場でナスダック優位につながる
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