225の
『ココがPOINT!』

日経平均が大きく上昇した「ワケ」と、今後のポイントは?

2020/12/8
投資情報部 鈴木英之

日経平均株価は上昇一服の状況となっています。これまで、新型コロナウイルスに対するワクチンへの期待や、財政支出への期待が、新型コロナウイルスの感染拡大に絡む不安を飲み込む形で株価は上昇してきましたが、12月第2週は目新しい材料が不足している印象を受けます。いったんは足元を見つめ直すべき場面にきているのかもしれません。

今回の「225の『ココがPOINT!』」では、日経平均採用銘柄の個別の株価や業績について再考し、足元の日経平均株価を見つめ直してみることとしました。日経平均株価は妥当な水準にあり、上値余地はあると言えるでしょうか。

ココがPOINT!

1.12月は買い先行も、足元を見つめ直すべき局面か?

12月相場が始まりました。前回ご紹介したように、11月の日経平均株価の月末終値は前月末比3,456円49銭(15.0%)高と反発(月足ベース)し、月間上昇率としては1994年1月の16.1%以来、およそ26年10ヵ月ぶりの大幅上昇となりました。米大統領選挙の終了や、新型コロナウイルスワクチンの開発、米国など財政出動への期待などから、リスクマネーの動きが本格化したことが追い風になり、12月相場もこうした流れを引き継ぎ、買い優勢でのスタートになりました。

11月下旬から12月上旬にかけては、3月決算企業を中心に中間配当の支払い等があり、推定で3兆円超の現金が投資家の懐に入ることになります。これを受け、再投資や先物買いを中心に、需給の引き締まりが期待され、特に配当支払いがもっとも多いと予想された12/1(火)には、日経平均株価が353円超も上昇するなど、好需給の効果が示現しました。

12月に入って以降も日経平均株価は、たびたび26,800円台に乗せ、27,000円への回復が意識される状況となりました。ただ、平成バブル高値38,915円87銭(1989年末)からバブル崩壊後安値7,054円98銭(2009/3/10終値)までの下落幅が31,860円89銭に対し、黄金分割比率(61.8%)の分だけ戻すと、26,745円01銭という節目株価が計算され、26,800円はこれを上回ることになります。1991/3/18(月)の戻り高値27,146円91銭という節目もあり、27,000円前後は戻り売りが出やすいとの見方から、足元ではやや上値が重くなりつつあります。

これまで、新型コロナウイルスに対するワクチンや、財政支出への期待が、新型コロナウイルスの感染拡大に絡む不安を飲み込む形で株価は上昇してきましたが、12月第2週は目新しい材料が不足している印象を受けます。日経平均株価は、2021年にかけて上昇を維持できるのか、いったんは足元を見つめ直すべき場面にきているのかもしれません。

表1 日経平均株価の値動きとその背景(2020/12/1~2020/12/8)

  日経平均株価 日米株式市場等の動き
終値 前日比
12/1(火) 26,787.54 +353.92 中間配当支払い額が推定で1兆円超あり、朝方から買い先行。
12/2(水) 26,800.98 +13.44 ファイザーが欧州でもコロナワクチンの使用許可を申請。国内外でワクチン早期実用化期待。
12/3(木) 26,809.37 +8.39 政府がGo Toトラベルの延長を検討と報道で、空運や陸運が上昇。
12/4(金) 26,751.24 -58.13 ファイザーのワクチン出荷見通し下方修正で、供給に不安広がる。
12/7(月) 26,547.44 -203.80 米追加経済対策早期成立期待でダウは3万ドル台回復で、過去最高値更新。
12/8(火) 26,467.08 -80.36 国内外のコロナ感染拡大に景気悪化懸念。菅首相が表明した財政出動の継続が相場を下支え。

※日経平均株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。

図1 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事

※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2020/12/8取引時間中。

図2 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事

※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2020/12/8現在。

図3 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事

※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2020/12/8取引時間中。

表2 当面の重要スケジュール

月日 国・地域 予定内容 ポイント
12/14(月) 日本 12月調査日銀短観  
    10月第三次産業活動指数  
  アメリカ 米大統領選、選挙人による投票  
12/15(火) 中国 11月工業生産 前月は前年同月比6.9%増。
    11月小売売上高 前月は前年同月比4.3%増。
    11月都市部固定資産投資  
  アメリカ 12月NY連銀製造業景気指数 米景気の動向を示す先行指標。
    11月鉱工業生産・設備稼働率  
  - FOMC(米連邦公開市場委員会)~12/16  
12/16(水) 日本 11月貿易統計  
    11月訪日外客数  
  アメリカ 11月小売売上高  
    12月NAHB住宅市場指数 米住宅市場の動向を示す先行指標。
  - パウエルFRB議長会見(経済見通し発表)  
12/17(木) 日本 日銀金融政策決定会合  
    11月首都圏新規マンション発売  
  アメリカ 11月住宅着工件数 前月は153.0万件。
    11月建設許可件数 前月は154.5万件。
    12月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数  
    米バイオ製薬モデルナのコロナワクチンが承認される見通し。  
  イギリス 金融政策  
12/18(金) 日本 黒田日銀総裁会見  
    11月消費者物価  
  アメリカ 7-9月期経常収支  
  ドイツ 12月Ifo景況感指数  

※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。

表3 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)

  2020年 2021年
日銀金融政策決定会合 12/18(金) 1/21(木)、3/19(金)、4/27(火)、6/18(金)、7/16(金)、9/22(水)、10/28(木)、12/17(金)
FOMC(米連邦公開市場委員会) 12/16(水) 1/27(水)、3/17(水)、4/28(水)、6/16(水)、7/28(水)、9/22(水)、11/3(水)、12/15(水)
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 12/10(木) 1/21(木)、3/11(木)、4/22(木)、7/22(木)、9/9(木)、10/28(木)、12/16(木)

※日米欧中銀WEBサイトを基にSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。 なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しています。日付は日本時間(ただし、ECBの結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。

2.日経平均株価は来期大幅増益を織り込みつつある?

日経平均株価は27,000円台に乗せて2020年を終えるのでしょうか。
また、2021年には30,000円の大台を回復するのでしょうか。
そうした予想をする際に、日本の景気・企業業績全般を予想することも重要ですが、日経平均採用銘柄の個別の株価や業績について再考することが、足元を見つめ直すことにつながるかもしれません。

日経平均株価終値は11/6(金)に24,325円となり、2018/10/2(火)高値24,270円を上回り、1991/11/13(水)24,416円以来29年ぶりの高値水準となりました。2018年以来抜けそうで抜けなかった24,000円台前半の上値抵抗ラインを突破したことで、長期的な“保ち合い放れ”となり、その後は上昇が加速、11/6(金)~12/7(月)の上昇幅は2,222円になりました。

表4はこの間に、日経平均採用銘柄で上昇に寄与度が大きかった10銘柄と、小さかった10銘柄について、いくつかのデータをチェックしたものです。日経平均株価が2,222円上昇したうちの半分強に相当する1,245円分は、いわゆる日経平均高寄与銘柄と称される“値がさ株”によって、もたらされたことがわかります。

上場企業(金融を含む全産業)の今期純利益は前期比33%減の見通し(11/17付・日経報道)ですが、高寄与度銘柄の半分は今期増益予想です。もっとも寄与度の高いファーストリテイリング(9983)は前期比96%増益予想(市場コンセンサス)、ソフトバンクグループ(9984)は前期の9,615億円の赤字から今期は1兆6千億円近い黒字に転換する予想(市場コンセンサス)です。予想増益率が高い一方で、予想PERやPBRも高めであり、グロース銘柄的な存在になっていると見受けられます。

それに対し、日経平均株価の上昇寄与度が低い銘柄は、今期の業績予想が冴えない銘柄が多い傾向にあり、来期に回復期待が強い銘柄群と言えそうです。また、予想PERやPBRは低く、予想配当利回りは高いバリュー銘柄が比較的多いといえます。

日経平均株価の上昇は、高寄与度銘柄の短期的な増益期待が高いことが影響しており、株式市場の評価軸が今期から来期へとシフトすることについて注意を払うべきであると考えられます。
来期は、日経平均高寄与度銘柄や、低寄与度銘柄についても、増益見通しの銘柄が増えてきそうです。ただ、高寄与度銘柄の回復は、予想PERなどから判断する限り、織り込みが進んでいるように思われます。さらなる株価上昇を導くには、これらの銘柄の業績予想が上方修正や、低寄与度銘柄に対する過小評価が解消に向かうなどの動きが必要になると考えられます。

ちなみに、12/4(金)時点での日経平均株価の予想EPS(1株利益)は1,066円と計算されます。市場コンセンサスのデータが存在する日経平均採用銘柄だけで計算すると、純利益ベースでの来期予想増益率は40%程度とみられます。もし、その通りであれば予想EPSについて1,500円程度は見通せることになります。日経平均株価を26,500円と置いた場合、予想PERは17.7倍程度と計算されます。日経平均株価は来期4割程度の増益は織り込みつつあると考えられ、株価が上振れるには、5~6割増益程度の予想が成り立つようになることが重要かもしれません。

表4 日経平均採用銘柄の株価・業績

ウェイト(合計) 変化寄与(合計)(円) 来期PER(倍) PBR(倍) 来期予想配当利回り 今期予想増益率 来期予想増益率
合計/平均 38.28% 1245.54 40.9 8.02 1.1% - 18.8%
9983 ファーストリテイリング 11.57% 352.55 42.5 9.08 0.7% 96.0% 20.2%
8035 東京エレクトロン 5.00% 283.05 22.4 6.99 2.3% 17.9% 18.9%
6954 ファナック 3.51% 113.44 47.6 3.83 1.3% -2.0% 52.5%
4063 信越化学工業 2.35% 95.79 21.7 2.65 1.5% -5.0% 11.3%
9984 ソフトバンクグループ 5.80% 86.64 24.0 2.02 0.6% 黒字転換 -61.4%
6857 アドバンテスト 2.04% 82.11 26.1 6.48 1.2% -17.0% 29.3%
4519 中外製薬 2.05% 65.79 33.6 9.91 1.3% 37.3% 16.2%
2413 エムスリー 2.75% 58.86 134.9 33.42 0.1% 47.3% 33.5%
6762 TDK 1.97% 57.62 17.4 2.22 1.5% 38.2% 35.6%
6645 オムロン 1.25% 49.70 38.6 3.56 0.9% -50.2% 31.6%
合計/平均 7.70% -181.89 14.2 2.3 2.6% - -
6473 ジェイテクト 0.11% -2.38 11.4 0.52 3.0% 黒字転換 1015.1%
7912 大日本印刷 0.13% -2.70 18.7 0.64 3.4% -63.5% 30.7%
8252 丸井グループ 0.26% -2.81 16.9 1.47 3.1% -33.4% 49.6%
4755 楽天 0.14% -2.92 -32.6 1.94 0.5% 赤字拡大 赤字縮小
6770 アルプスアルパイン 0.18% -3.82 12.4 0.82 2.6% 黒字転換 358.3%
9433 KDDI 2.42% -4.54 10.2 1.41 4.3% 1.9% 2.7%
4503 アステラス製薬 1.02% -10.44 12.2 2.18 3.0% -5.6% 24.9%
4704 トレンドマイクロ 0.77% -16.93 24.0 4.24 3.2% -1.4% 20.6%
6098 リクルートホールディングス 1.65% -40.84 40.6 6.91 0.7% -33.8% 42.2%
4523 エーザイ 1.03% -94.53 28.3 3.21 2.2% -40.7% 10.4%

※日経平均株価データおよびBloombergデータをもとにSBI証券が作成。変化寄与は、11/6(金)~12/7(月)の日経平均株価の上昇金額のうち、当該銘柄がいくら貢献したかを示している。来期PER、および予想増益率(今期、来期)はBloomberg集計の市場コンセンサス。合計/平均の欄について、ウェイト(12/7現在)と変化寄与は10銘柄合計で、あとは10銘柄平均。上段10銘柄は上昇への寄与度が大きかった10銘柄で、下段10銘柄は寄与度が小さかった銘柄。

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