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『ココがPOINT!』
≪投資チャンスに繋がる可能性≫迫る"東証再編"で主力銘柄にも変動が!?
投資情報部 鈴木英之
米国で主要3指標が高値を更新する中、日経平均株価は上値の重い展開となっています。
そうした中、株式市場では公募・売り出し他、資本移動が増加傾向にあります。その要因は2022年4月から実施される東証の市場再編が背景にあるようです。
主力銘柄も対応を迫られるケースが多く想定され、今後、株式市場の波乱要因や個別銘柄の投資チャンスにつながる可能性もありそうです。
今回はその理由について解説します。
ココがPOINT!
1.米国で主要3指標が高値を更新する中、日経平均株価は上値の重い展開
日経平均株価は、6月第5週(6/28~7/2)終値が28,783円28銭となり、前週末(6/25)比で282円90銭(1.0%)安、週足ベースで4週ぶりに反落となりました。
6/30(水)は3日続落。中国購買担当者景気指数(PMI)で製造業、非製造業ともに前月を下回ったことから、中国経済への先行き不透明感が漂い、景気敏感株の一部が売られました。
7/2(金)は5日ぶりに反発。米株高を追い風に上昇し、ソフトバンクG(9984)など、値がさ株の一角が上昇。日銀短観(6月)の発表を受けて、買い直す動きもありましたが、米雇用統計の発表を控え、様子見の投資家も多く、上値の重さが目立ちました。
7/5(月)は反落。東京での大型イベントを目前に控え、国内での新型コロナウイルス新規感染者数が増加傾向にあることも重荷に。売買代金は1兆7,144億円で昨年12/25以来の低水準に。米国の休場により、外国人投資家が不在であったことが主な要因とされます。
なお、6月末の日経平均終値は28,791円53銭と、前月末比68円55銭(0.2%)安の反落となりました。
一方、6月末のNYダウ終値は34,502ドル51セントと、前月末比26ドル94セント(0.1%)安となり、5ヵ月ぶりに反落しました。週足ベースでは、6月第5週(6/28~7/2)が前週末比1.0%高、週足ベースで続伸となりました。
6/30(水)はADP雇用統計(6月)が市場予想を上回り、景気回復期待の高まりから景気敏感株を中心に買われ、上昇。
7/1(木)は新規失業保険申請件数が市場予想を下回り、昨年3月以降で最低水準となったことから幅広い銘柄が買われました。
7/2(金)は4日続伸。株式市場は主要3指標が揃って、高値を更新しました。雇用統計(6月)では、非農業部門雇用者数が予想を上回り増加したものの、失業率が予想よりも悪化したことから、テーパリングの縮小観測は後退。長期金利が1.42%台まで低下したことで、主力ハイテク株が上昇し、アルファベットなどが上場高値を更新しています。
なお、S&P500はこの日まで7日続伸し、連日で高値を更新する展開となりました。
図表1 日経平均株価の値動きとその背景
日経平均株価 | 日米株式市場等の動き | ||
終値 | 前日比 | ||
6/29(火) | 28,812.61 | -235.41 | 続落。6/21以来およそ1週間ぶりの安値。6月期末の配当落ち影響額は28円程度。 |
6/30(水) | 28,791.53 | -21.08 | 3日続落。心理的な節目となる2万9,000円を前に上値は重い。 |
7/1(木) | 28,707.04 | -84.49 | SOX指数が軟調で、値がさの半導体に売りが波及。米雇用統計を控え、様子見気分の投資家も増えている模様。 |
7/2(金) | 28,783.28 | 76.24 | 5日ぶりに反発。米株高を追い風に上昇。円安・ドル高が進み、自動車株なども追い風。 |
7/5(月) | 28,598.19 | -185.09 | 売買代金は米国休場で外国人投資家不在もあり、12/25以来の低水準。ソフトバンクG、ファストリの2銘柄でおよそ147円押し下げる。 |
図表2 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図表3 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図表4 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図表5 当面の重要スケジュール
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | 備考 |
7/7(水) | 日本 | 5月景気動向指数 | |
★決算発表 | ウエルシアHD、イオンFS、ディップ | ||
アメリカ | FOMC議事要旨(6/15、16日分) | ||
7/8(木) | 日本 | 6月都市オフィス空室率 | |
6月景気ウオッチャー調査 | |||
★決算発表 | セブン&IHD、ローソン、久光薬 | ||
アメリカ | 5月消費者信用残高 | ||
7/9(金) | 日本 | 6月マネーストック | |
オプションSQ | |||
東証が上場企業に新市場選択に必要な手続き・書類を通知(予定) | |||
★決算発表 | 安川電、ビックカメラ、OSG | ||
中国 | 6月生産者・消費者物価指数 | ||
ベネチア | G20財務相・中央銀行総会合(~10日) | ||
7/12(月) | 日本 | 5月機械受注 | |
★決算発表 | クリエイトSDH、コスモス薬品、コーナン商 | ||
7/13(火) | 日本 | ★決算発表 | 東宝、松竹、イズミ |
中国 | 6月貿易収支 | ||
アメリカ | 6月消費者物価 | ||
★決算発表 | JPモルガンチェース、ゴールドマンサックス、ペプシコ | ||
7/14(水) | 日本 | ★決算発表 | サカタタネ、いちご、Sansan、サイゼリヤ |
アメリカ | ベージュブック(米地区連銀経済報告) | ||
6月生産者物価 | |||
★決算発表 | ウェルズファーゴ、バンクオブアメリカ、シティグループ | ||
7/15(木) | 日本 | 日銀金融政策決定会合(~16日) | |
5月第三次産業活動指数 | |||
★決算発表 | ウエストHD、マネーフォワ、ファストリ | ||
中国 | 4-6月期GDP | ||
6月小売売上高 | |||
6月工業生産 | |||
6月都市部固定資産投資 | |||
アメリカ | 6月鉱工業生産・設備稼働率 | ||
米独首脳会談(ワシントン) | |||
★決算発表 | TSMC、モルガンスタンレー、ユナイテッドヘルスグループ | ||
7/16(金) | 日本 | 黒田日銀総裁会見 | |
日銀「経済・物価情勢の展望」(展望レポート) | |||
★決算発表 | R-阪急神 | ||
アメリカ | 6月小売売上高 | ||
7月ミシガン大学消費者マインド |
図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2021年 | 2022年 | |
日銀金融政策決定会合 | 7/16(金)、9/22(水)、10/28(木)、12/17(金) | 未定 |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 7/28(水)、9/22(水)、11/3(水)、12/15(水) | 1/26(水)、3/16(水)、5/4(水)、6/15(水)、7/27(水)、9/21(水)、11/2(水)、12/14(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 7/22(木)、9/9(木)、10/28(木)、12/16(木) | 1/20(木)、3/10(木)、4/14(木)、6/9(木)、7/21(木)、9/8(木)、10/27(木)、12/15(木) |
2.迫る“東証再編”でどうなる日本株
7/5(月)に東証1部の東京産業(8070)が334万株超の株式売り出しを発表。同時に200万株を上限とする自社株買いも発表しています。
売り出しの目的は、株式持ち合いの解消、株主層の拡大、株式分布状況の改善と説明されています。通常、株式売り出しは需給の悪化を背景に、直後の株式市場では売り材料になりがちですが、今回は自社株買いと組み合わせたことで、逆に期待感が高まり、7/6(火)の株価は上昇する展開となりました。
この東京産業(8070)のニュースは、まさに“大きな流れの断片”を示しているに過ぎません。
6月以降、東京株式市場では株式の公募、第三者割当等による増資や売り出し等の資本移動が増加傾向にあります。こうした資本移動ラッシュの背景には、東証の市場再編(市場区分の見直し)が関係しているとみられます。
2022/4/4以降、東証の市場再編が実施されます。
これまで東証上場企業は、一部、二部、マザーズ、ジャスダック(スタンダード、グロース)各市場に区分され、上場してきましたが、今後は「プライム」、「スタンダード」、「グロース」の3市場に括り直される予定です。
条件を満たせば、ジャスダックや東証マザーズに上場する銘柄が、プライム市場に“新規上場”となり、市場での認知度が高まるケースも想定されます。逆に、現状は東証1部銘柄であっても、プライム市場に上場し続けることができるとは限りません。
図表7にあるように、2022年1月には各上場銘柄の上場市場が判明するため、株価が大きく変動する銘柄が増えることが想定されます。タイミング的に正月休み直後であるため、2021年の年末から動きが本格化する可能性もあるでしょう。
図表7 東証の市場再編に向けた当面のスケジュール
2021年7月 | 東証が上場会社に対し、新市場区分の選択に際し必要な手続きや書類等を通知(7/9予定) |
2021年9~12月 | 上場会社による新市場区分の選択申請手続き |
→新市場区分の上場基準とコーポレートガバナンス・コードを踏まえた選択 | |
2022年1月 | 移行日に上場会社が所属する新市場区分一覧の公表(東証Webサイトで1/11公表予定) |
2022年4月4日 | 一斉移行日 |
各市場の上場基準の概要は図表8の通りです。
株式市場では、プライム市場上場に必要な時価総額が話題になってきましたが、着地点は250億円とされています。TOPIXを構成する2,187銘柄のうち、時価総額が250億円に満たない銘柄はおよそ3分の1に達します。このうち、日経平均採用銘柄は1銘柄のみです。(2021/7/6時点)
ここで注意すべきは、時価総額の大きい主力銘柄でも、プライム市場での上場を維持するため、流通株式比率の条件をクリアしなければならないという点です。
プライム市場への上場には、流通株式比率(流通株式÷発行済み株式数)を35%以上とするという条件があります。
東証は発行済み株式のうち、市場で流通していない株式(図表9の「非流通株式」)を除いた部分を「流通株式」と定義しており、実はこの数字を満たしていない銘柄は主力銘柄にも多く存在しています。
東証は、各上場銘柄の流通株式比率を公表していません。
したがって、現状はTOPIX算入時の「浮動株比率」や、会社四季報で確認できる「特定株を除いた部分の発行済み株式数」を参考にする他ありません。
図表8では、東証や東洋経済が市場で流通している株式をどう認識しているかを示しています。
詳細は別の機会でご紹介していきますが、流通株式以外のデータも参考になると考えます。
たとえば、ゆうちょ銀行(7182)は、筆頭株主は日本郵政(保有比率74.1%)で、現状では流通株式が25.9%(100-74.1)以下であることは容易に計算できます。
このように、親子上場の特に子会社にとっては、厳しい条件になると考えられます。
今後、公募・売出などの増加で需給の悪化や、MBO等の活用、資本政策の発動が大きく増加する可能性があります。
なお、この話題については銘柄戦略に絡めて、今後も詳しくご紹介していく予定です。
図表8 東証各新市場区分への上場基準(形式基準)
図表9 市場で流通している株式と流通していない株式の区分
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