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『ココがPOINT!』
≪株価波乱≫株式市場が恐れているリスク要因とは
投資情報部 鈴木英之・長谷川綾乃
日経平均株価は10/6(水)の取引時間中安値27,293円62銭を底値に、10/11(月)は一時28,581円36銭まで回復しました。しかし、10/12(火)は再び売り先行となるなど、依然不安定な値動きが続いています。
こうした値動きの背景にある投資家の不安材料とは、どういったことが挙げられるのでしょうか。
そこで今回は、改めて株式市場のリスク要因を整理すると共に、重要なポイントについて考え方を整理してみたいと思います。
ココがPOINT!
1.10月第2週(10/4~10/8)は荒っぽい相場に
日経平均株価の10月第2週(10/4~10/8)終値は28,048円94銭となりました。前週末(10/1)比で722円13銭(2.5 %)安、週足ベースでは3週続落となりました。
一方、NYダウは10月第2週(10/4~10/8)終値が前週末比0.9%安、週足ベースで続落となりました。
10/5(火)は9月のISM非製造業景況感指数が市場予想を上回って上昇したことなどを受け、上昇。
10/6(水)は共和党上院トップのマコネル院内総務が、12月まで債務上限の拡大を一時的に容認したことが伝わると、米国債の債務不履行(デフォルト)懸念が後退して、買われました。
10/8(金)に行われた9月雇用統計の発表では、非農業部門雇用者数が市場予想を大きく下回った一方、失業率は市場予想以上に改善。平均時給については大幅な上昇となり、インフレへの懸念が高まる展開となりました。また、WTI原油先物が2014年11月以来、およそ7年ぶりの高値を付けて上昇。需要に対し、供給が逼迫するとの見方から当面は割安感のある原油に買いが向かうとの見方もあるようです。
図表1 日経平均株価の値動きとその背景
日経平均株価 | 株式市場の動き | ||
終値 | 前日比 | ||
10/5(火) | 27,822.12 | -622.77 | 米長期金利の上昇に対する警戒感から幅広い銘柄が売られ、下げ幅は一時900円超となった。 また、岸田首相が金融所得課税の見直しを検討する方針を示したことも重荷に。 |
10/6(水) | 27,528.87 | -293.25 | 8日続落。終値ベースで8/23(月)以来、1ヵ月半ぶりの安値。なお、8日続落は2009年7月の9日続落以来、およそ12年3ヵ月ぶり。 米長期金利が上昇し、売りが優勢となった。一方、真鍋淑郎氏がノーベル物理学賞を授与されることが決まって、再生エネルギー関連銘柄の一角が買われた。 ソフトバンクグループ(9984)が大幅安で年初来安値を更新。 |
10/7(木) | 27,678.21 | 149.34 | 9日ぶりに反発。 前日までの8日間でおよそ2,700円超下げていたため、自律反発狙いの買いが優勢となった。 米長期金利の上昇や原油高が一服し、節目の2万8,000円を上回る場面もあった。 |
10/8(金) | 28,048.94 | 370.73 | 終値ベースで4営業日ぶりに2万8,000円台を回復。 米国債のデフォルト(債務不履行)リスクが後退して、買いが優勢となった。 東京エレクトロンなど、値がさ株が高い。 |
10/11(月) | 28,498.20 | 449.26 | 中国の電力不足問題による供給制約への懸念が和らいだ。この他、岸田首相が金融所得課税の見直しについて、当面は考えていないことを示唆し、税率引き上げへの懸念が後退した。 |
図表2 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図表3 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図表4 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
図表5 主な予定
月日 | 国・地域 | 予定 | 備考 |
10/13(水) | 日本 | 8月機械受注 | |
★決算発表 | サカタタネ、ビックカメラ、ベル24HD | ||
中国 | 9月貿易収支 | ||
アメリカ | FOMC議事要旨(9月21日、22日開催分) | ||
9月消費者物価指数 | 市場コンセンサスはコア指数(前年同月比)で4.0%上昇 | ||
★決算発表 | JPモルガンチェース、ブラックロック、デルタ航空 | ||
10/14(木) | 日本 | ★決算発表 | 久光薬、いちご、出前館、ファストリ |
◎衆議院解散の予定 | |||
中国 | 9月生産者・消費者物価指数 | ||
アメリカ | 新規失業保険申請件数 | ||
9月生産者物価指数 | |||
★決算発表 | 台湾セミコンダクター、ウェルズファーゴ、バンクオブアメリカ、シティグループ | ||
10/15(金) | 日本 | ★決算発表 | ウエストHD、パソナG、マネーフォワード |
アメリカ | 9月小売売上高 | ||
★決算発表 | コインベース(E)、ゴールドマンサックス | ||
10/18(月) | 日本 | 9月首都圏新規マンション発売 | |
中国 | 7-9月期実質GDP | 市場コセンサスは前年同期比+5.0% | |
9月鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資 | |||
アメリカ | 9月鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資 | ||
10月NAHB住宅市場指数 | |||
10/19(火) | 日本 | 衆議院議員選挙公示の予定 | |
アメリカ | 9月住宅着工・建設許可件数 | ||
★決算発表 | ジョンソン&ジョンソン、P&G、ネットフリックス、フィリップモリスインターナショナル | ||
10/20(水) | 日本 | 9月貿易統計 | |
アメリカ | 地区連銀経済報告(ベージュブック) | ||
★決算発表 | IBM、ベライゾンコミュニケーションズ | ||
10/21(木) | 日本 | ★決算発表 | ディスコ |
アメリカ | 9月中古住宅販売件数 | ||
新規失業保険申請件数 | |||
★決算発表 | AT&T、インテル、ダウ、ユニオンパシフィック | ||
10/22(金) | 日本 | 9月消費者物価 | |
★決算発表 | 中外製薬、東京製鉄 | ||
アメリカ | ★決算発表 | テスラ、アメリカンエキスプレス、サウスウエスト航空 |
図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定
2021年 | 2022年 | ||
日銀金融政策決定会合 | 10/28(木)、12/17(金) | 1/18(火)、3/18(金)、4/28(木)、6/17(金)、7/21(木)、9/22(木)、10/28(金)、12/20(火) | |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 11/3(水)、12/15(水) | 1/26(水)、3/16(水)、5/4(水)、6/15(水)、7/27(水)、9/21(水)、11/2(水)、12/14(水) | |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 10/28(木)、12/16(木) | 1/20(木)、3/10(木)、4/14(木)、6/9(木)、7/21(木)、9/8(木)、10/27(木)、12/15(木) |
図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位
コード | 銘柄 | 東証33業種 | 株価(10/11) | 株価(10/4) | 騰落率(10/4~10/11) |
3659 | ネクソン | 情報・通信業 | 1,887 | 1,680 | 12.3% |
5232 | 住友大阪セメント | ガラス・土石製品 | 3,390 | 3,075 | 10.2% |
2768 | 双日 | 卸売業 | 1,958 | 1,779 | 10.1% |
5019 | 出光興産 | 石油・石炭製品 | 3,230 | 2,951 | 9.5% |
7205 | 日野自動車 | 輸送用機器 | 1,124 | 1,032 | 8.9% |
5541 | 大平洋金属 | 鉄鋼 | 1,964 | 1,804 | 8.9% |
5233 | 太平洋セメント | ガラス・土石製品 | 2,443 | 2,249 | 8.6% |
7003 | 三井E&Sホールディングス | 機械 | 535 | 495 | 8.1% |
1605 | INPEX | 鉱業 | 965 | 893 | 8.1% |
7186 | コンコルディア・フィナンシャルグループ | 銀行業 | 473 | 440 | 7.5% |
図表8 日経平均株価採用銘柄の下落率上位
コード | 銘柄 | 東証33業種 | 株価(10/11) | 株価(10/4) | 騰落率(10/4~10/11) |
4502 | 武田薬品工業 | 医薬品 | 3,245 | 3,614 | -10.2% |
6952 | カシオ計算機 | 電気機器 | 1,659 | 1,794 | -7.5% |
8267 | イオン | 小売業 | 2,684.5 | 2,869 | -6.4% |
9983 | ファーストリテイリング | 小売業 | 73,520 | 78,270 | -6.1% |
9020 | 東日本旅客鉄道 | 陸運業 | 7,409 | 7,871 | -5.9% |
4151 | 協和キリン | 医薬品 | 3,705 | 3,930 | -5.7% |
9007 | 小田急電鉄 | 陸運業 | 2,446 | 2,586 | -5.4% |
9001 | 東武鉄道 | 陸運業 | 2,884 | 3,045 | -5.3% |
4519 | 中外製薬 | 医薬品 | 3,924 | 4,142 | -5.3% |
9008 | 京王電鉄 | 陸運業 | 5,650 | 5,960 | -5.2% |
2.株式市場が恐れているリスク要因とは
株式市場が恐れているリスク要因について、国別に列挙しました。
■米国
歳出削減懸念や債務上限問題など、財政をめぐる懸念。長期金利上昇やインフレ懸念、新型コロナウイルス対策。
■中国
米国を巡る対立や規制強化懸念。恒大集団を巡る諸問題。
■日本
岸田政権の経済政策など政治への懸念、新型コロナウイルス対策。
この内、米国の長期金利上昇やインフレ懸念は、最も注意すべき問題ではないでしょうか。
特に景気停滞とインフレが併存した“スタグフレーション”に陥ってしまった場合、人々の暮らしに強い逆風となるためです。
一般的にインフレ(物価上昇)を示す重要な指標のひとつとして、消費者物価があります。この指数から食品とエネルギーを除いた物価指数を“コア指数”と言って、米国ではインフレ動向を判断する材料のひとつとして使われます。この他に、FRB(連邦準備制度理事会)はPCE(個人消費支出)デフレーターも判断材料として、重視しているとされています。
図表9は、米コア指数の前年同月比増減率と米株価(S&P500)の動きをグラフ化したものです。
米コア指数は2021年6月に、前年同月比で4.5%上昇して、1991年11月以来の高水準を記録しました(図表9の水色の丸で囲んだ部分)。同指数は2021年8月時点で同4.0%の上昇と、依然高水準を維持しており、今後の上昇加速を懸念する声も出ています。こうしたインフレ懸念が米株価のリスク要因となり、さらに日本株にも影響を及ぼしています。
では、米国を中心に世界ではなぜインフレ懸念が強まっているのでしょうか。
以下の理由が想定されます。
(1) ベース効果
前年同月の物価指数が新型コロナウイルスの感染拡大による影響で急減。本年の前年同月比は大きく増えやすい傾向にある。
(2)エネルギーコストの上昇
原油価格(WTI)が2014年10月以来、1バレル80ドル台と上昇。石炭価格も上昇し、タンカー料金も騰勢。
(3)財政拡大
新型コロナウイルスへの対策で各政府の財政が民需を刺激。ただ、財政拡大は通貨価値を棄損。
(4)サプライチェーンでのボトルネック
新型コロナウイルスの感染拡大が生産や物流に支障を与え、脱炭素にも影響か。
(5)労働者需要拡大で賃金上昇圧力
経済回復で求人が回復。ただし、求職者はそれ程増えず。
今後も、インフレ上昇は加速するのでしょうか。
10/8(金)に発表された9月の米雇用統計では、雇用者数の伸びは予想を大きく下回ったものの、賃金が上昇したことからインフレ懸念が強まる展開となりました。一方、インフレの高まりは、新型コロナウイルスの感染拡大から回復する過程での一時的な現象であるとの指摘もあって冷静に見定める必要があり、10/13(水)に発表される9月の米消費者物価の結果に注目が集まります。
なお、図表9で米株価の上昇局面を矢印で示した通り、米コア指数の伸びが株価の下げに直結してきたわけではなく、実際は株高になる傾向にあります。
ただ、過去にはハイパーインフレで経済が波乱となったこともあるため、インフレ懸念が高まる現在、株価の動向には注意が必要でしょう。
図表9 米国コア消費者物価と米株価(S&P500)
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