特集レポート
【マーケットフラッシュ】どうなる原油価格?株式市場への影響は?
投資情報部 長谷川 稔
原油価格が急落しています。3/9(月)NY市場のWTI先物は一時1バレル27ドル台をつける局面もあり、引け値は先週末比25%下落の31.13ドル/バレルとなりました。最近の原油価格は新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済のスローダウンを懸念し、年初の60ドル/バレル前後の水準から40ドル台前半まで下落していましたが(図1参照)、一挙に40ドル台を下回り30ドル台前半と、2016年2月の安値26.21ドル/バレル近辺までの急落です。
市況急落の背景は、先週末開催されていた「OPECプラス」(OPECと非加盟の産油国)の閣僚会議が決裂したことにあります。今回の「OPECプラス」では、世界景気の減速を受けて原油市況の回復を狙い、3月末で切れる原油の減産協定の延長と、さらなる追加減産が討議される予定でした。ところが報道によればロシアが減産に合意しなかったことから、最大の石油輸出国であるサウジアラビアは、これまでの減産から逆に増産への方針転換を表明した模様です。また同国はすべての輸出先に対し輸出価格の大幅引き下げ(1バレル当たり6~8ドル)を通告した模様です。
OPECとしての正式コメントが発表されていませんが、今回の会議決裂は、ロシアの減産拒否を受けて、サウジアラビアの生産姿勢が、従来のスイングプロデューサーの立場(減産強化=価格維持)から、一転して増産によるシェア確保に転換した可能性が高いとみられます。一方、ロシアも増産を表明しており、他の産油国も石油収入を増やすためには増産しか手段はないので、原油需給は急速に緩和し、その結果として価格低迷は当面継続する可能性が高いと考えられます。
<ご参考>サウジアラビア原油政策について
原油需給を考えるうえで重要なサウジアラビアの原油に関する基本的な考え方を以下にまとめてみます。サウジアラビアの原油政策は、①~④の優先順位をめぐって変遷するものと考えられます。
①サウジアラビアは膨大な埋蔵量を有しており、原油価格が高くなりすぎて代替エネルギー開発や省エネが進行し、埋蔵原油が宝の持ち腐れになることが長期的には最大のリスクと考えています。
②ただし、埋蔵量の少ない産油国は、原油価格は高ければ高い方が良いとみられます。これらの相反する意見を持った国々をまとめるためには、サウジが主導できる生産カルテル(OPEC)を結成し、サウジ自らが多少の犠牲(減産負担)を払ってでも、価格形成の主導権を握りたいところです。
③基本的にサウジアラビアは原油市場での生産シェア(影響力)は維持したいとの考えです。シェアを保つことが、国際政治の中で自国の影響力や優位性を担保する唯一の手段であることを十分に認識しています。
④ここ数年、人口増加、原油価格の低迷などの背景により、サウジアラビアの財政赤字が大きな問題となっています。
今回のサウジアラビアの政策転換は、これまでの②を主体とする方針から、③への転換と考えられます。また、さらにはシェールオイルに奪われてきたシェアを奪回する目的も背景になっている可能性もあります。ただし、サウジアラビアをはじめロシアなどの産油国の財政事情から考えて、価格競争がかなり長期化(2~3年以上)する公算は小さいように思われます。
今後原油価格の低迷が継続した場合、どのようなセクターが恩恵を受けるのでしょうか?また逆にデメリットを受けるセクターはどこでしょうか。過去5年間の東証の業種別株価指数と原油価格の相関性を調べてみました。原油価格以外にも株価を左右する要因はたくさんありますから、絶対とは言えませんが、まずはイメージをつかむことが大事です。
原油価格と株価の相関が高いトップ3業種(原油安デメリット)は、1.鉱業、2.石油・石炭製品、3.卸売業となりました。1、2についてはイメージ通りですが、3に卸売業が来ているのが意外です。これは資源分野に強い総合商社が分類されているためだと思われます。
逆に相関が低い、つまり原油安メリットを享受する業種は、1.空運業、2.陸運業、3.電気・ガス業の順になりました。これはほぼイメージ通りではないでしょうか。これら業種のうち、空運については、新型コロナウイルスの感染拡大があり、現状では原油安メリット株として評価することは難しいと思いますが、ひとたび感染拡大が収まった時には注目される可能性が高いのではないでしょうか。陸運業では景気減速による貨物量の減速との見合いとなりますが、逆に宅配貨物には増加要因となる可能性もあり注目されるセクターではないでしょうか。
図1 WTI原油価格(ドル/バレル)
表1 主な原油安デメリット株、メリット株をピックアップ
●デメリット組
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄名 | 株価(円) 3月9日 |
原油1ドル下落による 年間デメリット |
1605 | 国際石油開発帝石 | 766 | 9ヵ月で38億円* | |||
1662 | 石油資源開発 | 1,974 | 4.2億円*(ガスを除く) | |||
5020 | JXTGホールディングス | 374 | 8億円(在庫評価で80億円) | |||
5019 | 出光興産 | 2,435 | 10億円(在庫評価で50億円) | |||
5021 | コスモエネルギーホールディングス | 1,408 | 9億円(在庫評価で20億円) | |||
8031 | 三井物産 | 1,617 | 31億円* | |||
8058 | 三菱商事 | 2,471.5 | 25億円* | |||
8002 | 丸紅 | 611.4 | 4億円* | |||
6366 | 千代田化工建設 | 268 | 間接デメリット | |||
1963 | 日揮ホールディングス | 1,101 | 間接デメリット | |||
6269 | 三井海洋開発 | 1,486 | 間接デメリット |
●メリット組
取引 | チャート | ポート フォリオ |
コード | 銘柄名 | 株価(円) 3月9日 |
原油1ドル下落による 年間メリット |
9201 | 日本航空 | 2,372 | 27億円 | |||
9202 | ANAホールディングス | 2,781 | 33億円 | |||
9101 | 日本郵船 | 1,417 | 約14億円 | |||
9104 | 商船三井 | 1,933 | 約19億円 | |||
9107 | 川崎汽船 | 1,039 | 約5億円 |
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