特集レポート
【マーケット・フラッシュ】日米株価急落~本質的理由は?今後は?
投資情報部 鈴木 英之
東京株式市場では、日経平均株価が6/16(水)~6/18(金)に3日続落した後、6/21(月)も午前から大きく値を下げ、午後は前週末比1,000円超安でスタートする波乱になっています。米国時間6/16(水)に結果発表のFOMC(米連邦公開市場委員会)を経て、FOMCメンバーの利上げ開始時期に関する見方が、2024年から2023年に前倒しされ、NYダウが続落となったことが契機と考えられます。6/18(金)には、セントルイス連銀のブラード総裁が、利上げ開始時期の予想を2022年終盤に前倒ししたことが報じられ、この日のNYダウが533ドル下げ、週明けの日本株の波乱につながったと考えられます。
日米株価を急落に導いた最大の要因は、「高圧経済が終焉に向かうとの市場の懸念」であると考えられます。これまで、株式市場は「米国経済は回復傾向を続け、インフレ率は上昇に向かうものの、FRB(米連邦準備制度理事会)の出口戦略は緩やかなものになり、株価は上昇傾向を続ける」と考えてきました。言い換えれば「FRBは多少のインフレ高進には目をつぶるであろう」という「高圧経済容認」への読みがあったと考えられます。このため、インフレ懸念からドルが他の通貨に対して総じて売られる展開(対円は例外的に上昇)になり、金の上昇や一時の暗号資産高の要因になりました。
しかし、市場でテーパリング(量的緩和の縮小)、FRBの出口戦略が意識されるようになり、現在の株価波乱につながりました。足元では、ドル実効為替は反発に転じ、NY金先物は6/2(水)の1トロイオンス1,909ドル台から6/18(金)には1,769ドル台まで反落しました。一見不可解なのは、米10年国債の動きです。FOMC直後は利上げの前倒し観測から一時利回りが上昇しましたが、その後は低下に転じました。高圧経済観測の後退を背景に、長期金利の水準に影響を与えるインフレ高進への期待が低下に転じたことが要因であると考えられます。
6/21(月)の大幅安で、強気に傾きかけていた日経平均株価のトレンドが崩れるため、足元は波乱継続の余地が残りそうです。ただ、以下の諸点から、現在の株価波乱は長期化しないと予想されます。
(1)6/18(金)の米国株式市場は、先物とオプション等の清算が集中するクアドルプル・ウィッチングに相当し、波乱が助長されやすかった面があること。
(2)2013/5のバーナンキ・ショック以降、半年程度長期金利上昇傾向があったことを考えると、長期金利の急低下が行き過ぎである可能性があること。
(3)当面はFRBによる債券の買いが続く予定であるものの、将来はテーパリングへの移行で、米債券の需給は緩やかに悪化(金利上昇)に向かうとみられること。
(4)国内では、職域でのワクチン接種が本格化し、遅ればせながら景気回復への期待が強まりやすいこと。
押し目買いの候補としては、足元の下げが厳しい鉄鋼株や、「骨太の方針」で国策化しつつある半導体関連株等に妙味がありそうです。
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